「ピル」と一言でいっても、実際には目的も成分量も、保険が効くかどうかも違うものが複数あります。低用量、超低用量、中用量、ミニピル、アフターピル——名前は聞いたことがあっても、自分にどれが関係するのかは分かりにくいと思います。

調べると製品名がずらりと並んだ一覧が出てきますが、製品名を知る前に必要なのは「どの分類の話をしているのか」です。分類が分かれば、保険が効くかどうかも、婦人科で何を相談すればいいかも見えてきます。

この記事では、まず5つの分類に整理します。そのうえで目的から引ける形にし、費用の考え方と、そして飲む前に必ず知っておくべき安全情報までお伝えします。

この記事について
  • ピルは医師の診察と処方が必要な薬です。この記事は分類を整理するためのもので、特定の薬をすすめるものではありません
  • 個別の製品名は挙げていません。どの薬が合うかは症状・体質・持病・併用薬によって変わり、医師が判断します
  • 他人からもらう、個人輸入で入手するといった使い方は絶対にしないでください

そもそもピルはどう効くのか|3つの作用

分類の話に入る前に、共通の仕組みを押さえておきます。ここが分かると、なぜ種類が分かれるのかも腑に落ちます。

ピルは女性ホルモンを含む薬で、飲むことで体に「すでに排卵が終わった状態」に近い信号を送ります。その結果、次の3つが同時に起こります。

作用体で起きていること結果
①排卵を抑える 脳から卵巣への指令が抑えられ、卵子が育たない 妊娠の成立を根本から防ぐ
②子宮内膜を厚くしない 内膜が薄いまま保たれる 経血量が減る・生理痛が軽くなる
③頸管粘液を変える 子宮の入口の粘液が硬くなる 精子が子宮へ進みにくくなる

ここに、ピルが「避妊」と「治療」の両方に使われる理由があります。①は避妊のはたらき、②は月経困難症過多月経の治療のはたらき。同じ薬が、見る角度によって別の意味を持ちます。

含まれるホルモンは2種類(または1種類)

  • エストロゲン(卵胞ホルモン)——周期を安定させ、不正出血を抑える。ただし血栓症のリスクに関わるのもこの成分です
  • プロゲスチン(黄体ホルモン)——排卵を抑える主役。子宮内膜や頸管粘液にも作用します

この2つを両方含むか、プロゲスチンだけか——それが分類の大きな分かれ目になります。エストロゲンを含まないものが、次に出てくるミニピルです。

「生理が来る」のは生理ではありません

ピルを飲んでいるときの出血は、薬を休む期間(またはプラセボ錠の期間)にホルモンが下がることで起きる消退出血です。排卵をともなう自然な月経とは別のもので、量が少なくなるのは正常です。詳しくはピルで生理が来ないときの記事に。

まず5つに分ける|ピルの種類はここから

「ピル」と呼ばれるものは、大きく5つに分けて考えると整理できます。

分類主な目的成分費用
低用量ピル(OC) 避妊・月経周期の調整 エストロゲン+プロゲスチン 自費
超低用量ピル・LEP 月経困難症・子宮内膜症の治療 エストロゲン(より少量)+プロゲスチン 保険適用
中用量ピル 生理日の移動など、限定的な用途 エストロゲン(多め)+プロゲスチン 自費(目的による)
ミニピル エストロゲンが使えない人の避妊 プロゲスチンのみ 自費
アフターピル 避妊に失敗したあとの緊急避妊 プロゲスチン(高用量)など 自費

この表でまず押さえてほしいのは、「低用量」と「超低用量・LEP」は、成分の量だけでなく“目的”が違うということ。そしてその違いが、保険が効くかどうかを分けているという点です。ここは後の章で詳しく説明します。

低用量ピル(OC)

もっとも広く使われている分類です。エストロゲンとプロゲスチンという2種類の女性ホルモンを含み、排卵を抑えることで避妊効果を発揮します。

避妊が主な目的ですが、飲み続けることで経血量が減る・生理痛が軽くなる・周期が安定するといった変化が出ることが多く、それを目的に使う方もいます。ただしこの目的で処方される場合は自費です。詳しくは低用量ピルとは効果と副作用にまとめています。

超低用量ピル・LEP(治療用)

エストロゲンの量をさらに減らしたもので、LEP(Low dose Estrogen Progestin)と呼ばれます。

大きな違いは「治療薬」として承認されていることです。月経困難症子宮内膜症の治療として使われ、この目的なら健康保険が使えます。

「避妊もしたいけれど生理痛もつらい」という方は多いのですが、保険が使えるのは治療目的の場合だけです。ここは診察で相談してください。

中用量ピル

エストロゲンの量が多いタイプです。かつては避妊にも使われていましたが、現在は低用量ピルが主流になり、用途は限られています。

いまも使われるのは、生理日の移動など短期間の調整が中心です。成分量が多いぶん吐き気などの副作用が出やすく、必要な場面に限って使われます。

もうひとつ知っておきたいのが、低用量ピルでも生理日を動かせるということです。すでに服用中なら、飲み方を調整することでずらせる場合があります。中用量ピルが必要になるのは、服用しておらず、直前に動かしたいようなケースです。どちらが向くかは予定までの日数で変わるため、できるだけ早めに相談してください。目安として、少なくとも1か月前には受診できると選択肢が広がります。

ミニピル(プロゲスチン単剤)

エストロゲンを含まないのが最大の特徴です。エストロゲンによる血栓症のリスクを避けたい方——授乳中の方、喫煙する方、片頭痛のある方、年齢や持病でエストロゲンが使いにくい方——の選択肢になります。

ただし飲む時間の正確さがより求められるという難しさがあります。日本では取り扱う医療機関が限られる面もあります。詳しくはミニピルの記事をご覧ください。

アフターピル(緊急避妊薬)

ほかの4つとは性質が違います。継続して飲む薬ではなく、避妊に失敗したあとに1回飲む薬です。

時間の経過とともに効果が下がるため、できるだけ早く受診してください。詳しくはアフターピルとは効果費用の記事に分けてまとめています。

アフターピルは「次回以降の避妊」にはなりません

飲んだあとの性交渉に対する避妊効果はありません。また繰り返し使う前提の薬でもありません。継続的な避妊を考えるなら、低用量ピルや子宮内システムなど、別の方法を検討してください。

目的から選ぶ|あなたに当てはまるのはどれか

分類が分かったところで、逆から引けるようにします。

やりたいこと関係する分類費用
避妊したい 低用量ピル(エストロゲンが使えないならミニピル) 自費
生理痛がつらい・経血量が多い 超低用量ピル・LEP 保険適用の可能性
子宮内膜症・子宮腺筋症の治療 超低用量ピル・LEP 保険適用
PMSがつらい 低用量ピル(症状により) 自費が基本
旅行・試験に生理を重ねたくない 中用量ピル/低用量ピル 自費
避妊に失敗した アフターピル(急いで受診) 自費
授乳中・喫煙する・片頭痛がある ミニピルなど、エストロゲンを含まない選択肢 自費
ニキビが気になる 低用量ピル(副次的な変化として) 自費

複数に当てはまる方も多いはずです。その場合も、どれか1つを選ぶのではなく「いちばん困っていること」を医師に伝えてください。治療として保険が使える可能性があるなら、そこから話が始まります。

木の机に開いて置かれた淡いピンクのポーチと、水のグラス・メガネ・白いカード

保険が効くのはどれ?|自費と保険の分かれ目

ここは費用に直結するのに、意外と説明されていない部分です。

分けているのは「成分」ではなく「目的」です

同じようにエストロゲンとプロゲスチンを含む薬でも、何のために処方されるかで、保険が使えるかどうかが変わります。

目的保険費用の目安(1か月)
避妊使えない(自費)2,000〜3,000円程度
月経周期の調整・PMS原則使えない2,000〜3,000円程度
月経困難症の治療使える600〜2,500円程度(3割負担)
子宮内膜症の治療使える同上
緊急避妊使えない(自費)6,000〜20,000円程度

※ 医療機関や薬によって幅があります。初診料・再診料・検査費は別にかかります。

「生理痛がつらい」は、治療の対象になりえます。避妊目的だと思って自費で飲み続けている方のなかには、症状を伝えれば保険診療になるケースがあります。診察のときには「生理痛で困っている」「経血量が多い」と具体的に伝えてください。

費用を左右するその他の要素

  • 先発品かジェネリックか——ジェネリックのほうが安くなります
  • 何か月分まとめて処方されるか——通院回数が減ると再診料の負担が変わります
  • オンライン診療か対面か——送料や手数料がかかることがあります。詳しくはピルの処方の記事
  • 定期的な検査——血圧測定や血液検査が必要になることがあります

診察でそのまま使える伝え方

「具体的に伝えてください」と言われても、診察室では言葉が出ないものです。そのまま使える形にしておきます。

伝えたいことこう言う
生理痛がつらい 「毎回痛み止めを飲んでいます」「痛みで学校や仕事を休む日が月に◯日あります」「痛み止めが効かないことがあります」
経血量が多い 昼用ナプキンが1〜2時間でいっぱいになります」「夜用でも漏れます」「500円玉より大きい塊が出ます」
日常に支障が出ている 「生理の日は予定を入れられません」「毎月同じ時期に寝込みます」
避妊もしたい 「避妊も考えていますが、いまいちばん困っているのは生理痛です」
費用が心配 保険が使える方法があれば知りたいです

ポイントは「回数」「時間」「日数」で言うことです。「つらい」は人によって幅がありますが、「月に2日休む」は誰が聞いても同じ意味になります。診断がつくかどうかは、この具体性で変わります。

なお、子宮内膜症子宮筋腫が背景にあることもあります。その場合は超音波などの検査が行われ、治療として保険が使えます。

避妊効果はどれくらい違うのか

「ピルを飲んでいれば絶対に妊娠しないのか」——よく検索される疑問なので、数字で答えます。

方法正しく使った場合実際の使用
低用量ピル約0.3%約7%
ミニピル約0.3%約7%
子宮内システム約0.1〜0.4%約0.1〜0.4%
コンドーム約2%約13%
何もしない約85%

※ 1年間その方法を使った場合に妊娠する人の割合です。

「正しく使えば0.3%」と「実際には7%」の差はどこから来るのか

この差の正体は、ほぼ飲み忘れです。

低用量ピルは毎日ほぼ同じ時間に飲むことで効果が保たれます。飲み忘れると排卵が起きる可能性が出てきます。約7%という数字は「飲み忘れる人がいる現実」を含んだ数字で、薬の性能が低いという意味ではありません。

飲み忘れたときの対応は、何錠目を、何時間忘れたかで変わります。自己判断せず、飲み忘れたときの記事で手順を確認してください。

ピルは性感染症を防ぎません

低用量ピルもミニピルも子宮内システムも、性感染症の予防効果はありません。クラミジアなどは症状が出にくく、放置すると不妊につながることがあります。感染の予防にはコンドームの併用が必要です。

ピル以外の選択肢も、比べたうえで選ぶ

避妊を目的にするなら、ピルだけが選択肢ではありません。毎日飲むことが負担なら、他の方法のほうが続くこともあります。

方法続けるための手間向いている人
低用量ピル 毎日ほぼ同じ時間に飲む 生理痛やPMSも一緒に軽くしたい人
子宮内システム(IUS) 入れたら数年そのまま 飲み忘れが心配な人。過多月経の治療で保険が使えることも
コンドーム そのつど使う 性感染症も防ぎたい人(唯一防げる方法)
ミニピル 毎日、より正確な時間に飲む エストロゲンが使えない人

組み合わせるという考え方もあります。ピルで避妊しつつ、性感染症の予防にコンドームを併用する——これは矛盾ではなく、目的が違うからです。方法ごとの比較は避妊方法の選び方に詳しくまとめました。

【重要】安全に使うために知っておくこと

どの分類を選ぶにしても、共通して知っておくべきことがあります。ここは飲み始める前に読んでください。

血栓症——もっとも注意すべき副作用

エストロゲンを含むピル(低用量・超低用量・中用量)では、血栓症——血管のなかで血のかたまりができる状態——のリスクがわずかに上がることが知られています。

頻度は高くありませんが、起きたときの影響が大きいため、サインを覚えておくことが安全につながります。とくに飲み始めの3か月間は注意が必要とされています。

ACHES(エイクス)|すぐに服用をやめて受診すべきサイン
  • Abdominal pain — 激しい腹痛
  • Chest pain — 胸の痛み、息切れ、押しつぶされるような感じ
  • Headache — 激しい頭痛、いつもと違う頭痛
  • Eye problems — 見えにくい、視野が欠ける、舌がもつれる
  • Severe leg pain — 片側のふくらはぎの痛み・腫れ・赤み

これらが出たら服用を中止し、すぐに受診してください。受診の際は「ピルを飲んでいる」と必ず伝えてください。夜間・休日なら救急外来へ。

服用できない人・慎重に考える人

エストロゲンを含むピルには、使えない条件(禁忌)があります。主なものを挙げます。

  • 35歳以上で、1日15本以上の喫煙——この組み合わせは血栓症のリスクが大きく上がります
  • 前兆をともなう片頭痛——目のちらつきなどが先に来るタイプの片頭痛
  • 血栓症の既往、または家族に血栓症の人がいる
  • コントロールされていない高血圧
  • 乳がんの既往
  • 妊娠中・授乳中の一定期間
  • 手術の予定がある、長期間動けない状態

これらに当てはまる場合でも、エストロゲンを含まないミニピルや、ホルモンを全身に回さない方法が選択肢になることがあります。「使えない」で終わりではないので、診察で相談してください。

血栓症を起こしにくくするためにできること
  • 水分をこまめにとる——脱水は血液を固まりやすくします
  • 長時間同じ姿勢を続けない——飛行機・長距離バス・デスクワークでは1時間に一度は足を動かす
  • 喫煙をやめる——年齢にかかわらず、リスクを下げる最も確実な方法のひとつです
  • 手術の予定ができたら医師に伝える——一時的に中止することがあります

低用量ピルの「世代」と「相性」

低用量ピルをさらに細かく見ると、世代相性(そうせい)という2つの分け方があります。処方の場面で耳にすることがあるので、概略だけ押さえておきましょう。

世代|含まれるプロゲスチンの違い

プロゲスチンの種類によって第1世代から第4世代に分けられます。新しい世代ほど優れているという単純な話ではなく、それぞれ性質が違います。ニキビへの影響、むくみ、血栓症リスクなどが世代ごとに異なるため、何を優先するかで選ばれるものが変わります。

相性|ホルモン量の並び方

  • 一相性——すべての錠剤のホルモン量が同じ。飲み間違いに気づきやすく、生理日の移動もしやすい
  • 三相性——自然な周期に近づけて量が段階的に変わる。錠剤の順番を守る必要がある

ジェネリック

先発品と有効成分・量が同じと認められた後発品で、費用を抑えられます。添加物や錠剤の形が違うことはあります。

世代・相性・ジェネリックの具体的な比較は低用量ピルの種類と選び方で詳しく扱っています。どれが自分に合うかは、症状・体質・目的をふまえて医師が判断します。自分で指定する必要はありません。

飲み始めてからのこと

どの分類を選んでも、飲み始めの時期には体が慣れるまでの変化が出ることがあります。

よくある変化経過詳しくは
吐き気・頭痛・胸の張り多くは1〜3か月で落ち着く飲み始めの1か月
不正出血飲み始めに起きやすく、続くうちに減るピルと不正出血
生理が来ない・量が減る予定どおりのことが多いピルで生理が来ない
体重が気になるピル自体で太るという確かな根拠は乏しいピルと体重
気分の変化個人差が大きい。つらければ相談を副作用

「合わない」と感じたら、我慢せずに相談してください。種類を変えることで落ち着くことがあります。ただし自己判断で中断すると避妊効果がなくなり、不正出血も起きやすくなります。やめるかどうかも含めて医師と決めてください。

毎日飲むということ|実際のところ

初めて検討する方がいちばん不安に感じるのは、効果や副作用より「毎日飲み続けられるか」だったりします。実際のところを書いておきます。

疑問実際
何時に飲む? 毎日ほぼ同じ時間なら、何時でも構いません。大事なのは時刻そのものより「思い出せる時間」。歯みがき・就寝前など、必ずやることに紐づけると続きます
いつから効き始める? 飲み始めるタイミングによって変わります。効果が安定するまでは他の避妊も併用してください。開始日は医師の指示に従います
数時間ずれたら? 低用量ピルは多少のずれなら問題ないとされますが、ミニピルは時間の正確さがより求められます。分類で違います
1日忘れたら? 何錠目を何時間忘れたかで対応が変わります。自己判断せず飲み忘れの記事で手順を確認してください
途中でやめたくなったら? やめること自体はできますが、自己判断で急に中断しない。避妊効果がなくなり、不正出血も起きやすくなります
お酒は飲める? 通常の範囲であれば問題ないとされます。ただし飲みすぎて嘔吐すると吸収されないことがあります

飲み忘れが不安なら、それを診察で伝えてください。錠剤の並びが分かりやすいタイプを選ぶ、あるいは毎日飲まなくてよい子宮内システムを検討するなど、対応の幅があります。「続けられるかどうか」は、選ぶうえで正当な判断材料です。

明るい診察室で、白衣の医師に向かって落ち着いて相談している20代の女性

婦人科での処方の流れ

診察で聞かれること

  • 何のためにピルを使いたいか(ここで保険適用かどうかが決まります
  • 最終月経の開始日、周期、経血量、生理痛の程度
  • 喫煙の有無と本数、年齢
  • 片頭痛の有無(前兆があるかどうか
  • 持病、飲んでいる薬、サプリメント
  • 血栓症の既往、家族歴
  • 妊娠・授乳の可能性

伝えるときのコツ

「ピンとこない」と感じたら、症状を具体的に伝えるのが近道です。「生理痛がつらい」より「毎回鎮痛薬を飲んでも仕事を休む日がある」。「経血が多い」より「昼用ナプキンが1〜2時間でいっぱいになる」。数字と場面で伝えると、治療が必要な状態かどうかが伝わります。

受診先の選び方、オンライン診療の流れ、費用の内訳はピルの処方の記事にまとめました。

よくある質問

Q ピルにはどんな種類がありますか?

A.大きく5つです。低用量ピル(避妊が主目的・自費)、超低用量ピル/LEP(月経困難症などの治療・保険適用)、中用量ピル(生理日の移動など限定的な用途)、ミニピル(エストロゲンを含まない)、アフターピル(緊急避妊)。製品名を覚える必要はありません。「何のために使いたいか」が決まれば、分類はおのずと決まります。

Q ピルを飲んでいれば妊娠しませんか?

A.100%ではありません。正しく飲めば1年間で妊娠する人は約0.3%ですが、実際の使用では約7%とされています。この差のほとんどは飲み忘れです。また、下痢や嘔吐で薬が十分に吸収されなかったとき、一部の薬やサプリメントと併用したときにも効果が下がることがあります。不安なときは飲み忘れの記事で対応を確認してください。

Q 低用量ピルと超低用量ピルは何が違うのですか?

A.エストロゲンの量が違いますが、実務上いちばん大きな差は「目的」と「保険」です。超低用量ピル(LEP)は月経困難症や子宮内膜症の治療薬として承認されており、その目的なら健康保険が使えます。一方、避妊目的での処方は自費です。同じように見えても、何のために処方されるかで扱いが変わります。

Q 保険が使えるかどうかは、どう決まるのですか?

A.成分ではなく「診断」で決まります。月経困難症や子宮内膜症と診断され、その治療として処方される場合は保険が使えます。避妊目的は自費です。生理痛で困っているなら、それを具体的に伝えてください。「毎回鎮痛薬が必要」「仕事を休む日がある」など、日常への影響を伝えると状態が伝わります。自費で飲み続けていた方が、相談したら保険診療になるケースもあります。

Q タバコを吸っていてもピルは飲めますか?

A.35歳以上で1日15本以上の喫煙がある場合、エストロゲンを含むピルは使えません。血栓症のリスクが大きく上がるためです。これより少ない本数・若い年齢でも、喫煙自体がリスクを上げます。ただしエストロゲンを含まないミニピルなど、別の選択肢があります。診察では本数を正確に伝えてください。少なく申告すると、安全な判断ができなくなります。

Q ピルの種類は自分で選べますか?

A.最終的に決めるのは医師です。症状・体質・持病・併用薬・年齢・喫煙の有無などを総合して判断されます。ただし希望を伝えることはできます——「費用を抑えたい」「飲み忘れが心配なので分かりやすいものがいい」「以前これを飲んで吐き気が出た」。こうした情報は選択に直接影響します。製品名を指定する必要はありませんが、困りごとは遠慮なく伝えてください。

Q 合わないと感じたら、種類を変えられますか?

A.変えられます。吐き気や不正出血は飲み始めの1〜3か月で落ち着くことが多いため、まずはその期間を見ることが多いのですが、つらさが続くなら相談してください。ただし自己判断で中断しないでください。避妊効果がなくなりますし、不正出血も起きやすくなります。「やめる」「変える」も含めて、医師と決めるのが安全です。

Q やめたあと、妊娠しにくくなりませんか?

A.ピルの服用が、その後の妊娠しやすさを下げるという根拠は示されていません。中止後、多くの方は数か月以内に排卵が戻ります。ただし戻るまでの期間には個人差があり、もともと周期が不安定だった方は時間がかかることがあります。妊娠を希望する時期が決まっているなら、その予定を医師に伝えておくと相談しやすくなります。

Q 個人輸入や、友人からもらうのはどうですか?

A.やめてください。ピルには使えない条件(禁忌)があり、診察なしでは自分が該当するか分かりません。血栓症は頻度こそ高くないものの、命に関わることがあります。また個人輸入品は成分や品質が保証されず、健康被害が起きても救済制度の対象外です。費用が心配なら、まず「保険が使えるかどうか」を相談してください。治療目的と判断されれば、自費より安くなることがあります。

まとめ

ピルの種類は、製品名から入ると迷います。まず5つの分類——低用量・超低用量(LEP)・中用量・ミニピル・アフターピル——を押さえ、そこから「自分は何のために使いたいのか」で絞っていくほうが、ずっと早く整理できます。

そして知っておいてほしいのは、目的によって保険が使えること。生理痛や経血量の多さで困っているなら、それは治療の対象になりえます。診察で具体的に伝えてください。

どの分類を選ぶにしても、血栓症のサイン(ACHES)と、使えない条件だけは飲み始める前に知っておいてください。頻度は高くありませんが、知っているかどうかで対応が変わります。

この記事のポイントまとめ
  • ピルは大きく5分類——低用量(避妊・自費)/超低用量・LEP(治療・保険適用)/中用量(生理移動など)/ミニピル(エストロゲンなし)/アフターピル(緊急)
  • 保険が使えるかは成分ではなく「診断」で決まる。月経困難症・子宮内膜症の治療なら保険適用
  • 製品名を覚える必要はない。「何のために使いたいか」が決まれば分類は決まる
  • 避妊効果は正しく使えば約0.3%、実際の使用では約7%。差のほとんどは飲み忘れ
  • ピルは性感染症を防がない。予防にはコンドームの併用が必要
  • 血栓症のサイン=ACHES(激しい腹痛/胸痛・息切れ/激しい頭痛/視覚・言語の異常/片側のふくらはぎの痛み)。出たら中止して受診
  • 35歳以上+1日15本以上の喫煙ではエストロゲンを含むピルは使えない。ただし別の選択肢がある
  • 飲み始めの吐き気・不正出血は1〜3か月で落ち着くことが多い。つらければ相談を。自己判断で中断しない
  • 個人輸入・他人からの譲渡は絶対にしない。費用が心配なら、まず保険適用の可否を相談する

この記事について

femnote 編集部

生理・妊活・フェムケア・更年期など女性の健康に関する情報を、厚生労働省「e-ヘルスネット」や日本産科婦人科学会をはじめとする各学会の診療ガイドラインなど、公的な資料をもとに編集しています。診断や治療の判断については、必ず医療機関にご相談ください。

参考文献

  • 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編」
  • 日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬・低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤ガイドライン」
  • 厚生労働省「緊急避妊薬に係る取扱いについて」
  • 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「患者向医薬品ガイド」
  • World Health Organization「Medical eligibility criteria for contraceptive use」
  • Trussell J. 「Contraceptive failure in the United States」Contraception