アフターピルを飲んだあと、あるいは飲もうか迷っているとき。「どのくらい効くのか」は誰もが知りたいところだと思います。
調べると「95%」といった数字が出てきますが、この数字の意味は、多くの人が思っているものと違います。そこを誤解したまま安心してしまう方も、逆に必要以上に不安になる方もいます。
この記事では、まず数字の正しい読み方から始めます。そのうえで、効かないことがあるのはなぜか、飲んだあとに「効いたかどうか」をどう確認するのかを順に説明します。
避妊できる確率は、どのくらいか
まず「成功率」という言葉の落とし穴
ここがこの記事でいちばん大事な部分です。
「アフターピルの成功率は95%」という表現を見かけます。多くの方はこれを「飲んだ100人のうち95人は妊娠しない」と読みます。けれど、その読み方は正確ではありません。
正しくは、「もし飲まなかったら妊娠していたはずの人のうち、何割の妊娠を防げたか」という意味です。
- ある条件で、飲まなければ100人中8人が妊娠する状況だったとします
- アフターピルを飲んだことで、実際に妊娠したのが1人だったとします
- このとき「8人のうち7人の妊娠を防げた」=防げた割合は約87%と表現されます
- けれど「飲んだ100人のうち妊娠したのは1人」という見方もできます
つまり「95%」は「5%の人が妊娠する」という意味ではありません。実際に妊娠する人の割合は、これよりずっと小さくなります。
そもそも、1回の性行為で妊娠する確率は
前提として押さえておきたい数字です。避妊せずに1回性行為をした場合に妊娠する確率は、周期のどのタイミングかによって大きく変わります。
- 排卵日の直前——もっとも高くなります(排卵日の記事)
- 排卵の数日前——精子が数日生きられるため、可能性があります
- 排卵から離れた時期——低くなりますが、ゼロではありません
「安全日だったから大丈夫」と考える方がいますが、排卵日は周期によってずれます。安全日の記事で詳しく扱っていますが、結論として確実に安全といえる日はありません。
時間で、どのくらい変わるのか
アフターピルの主な作用は排卵を遅らせることです。だから排卵が起きる前に飲めるかどうかがすべてを決めます。
| 服用のタイミング | 期待できる度合い |
|---|---|
| 24時間以内 | もっとも高い |
| 24〜48時間 | 高い |
| 48〜72時間 | やや下がる |
| 72〜120時間 | 成分によっては選択肢がある(後述) |
排卵のタイミングは基礎体温をつけていれば見当がつきますが、記録していなければ分かりません。時間の経過とともに下がる理由は、単純です。時間が経つほど「もう排卵してしまっていた」可能性が上がるから。飲むのが遅れると、薬が作用する余地がなくなっていきます。
成分による違い
日本で使われているのは2つの成分です。どちらを使うかは医師が判断します。
処方されるときは商品名で渡されるため、手元の薬がどちらの成分なのか分からないことがあります。次の表で確認してください。ジェネリック(後発品)では「レボノルゲストレル錠」のように成分名がそのまま商品名になっていることもあります。
| レボノルゲストレル (ノルレボ錠など) | ウリプリスタール酢酸エステル (エラワン錠) | |
|---|---|---|
| 使える時間 | 72時間以内 | 120時間以内 |
| 72時間以内の効果 | おおむね同等とされています | |
| 72〜120時間 | 適応外 | ここが選択肢になる |
| 排卵直前での作用 | やや落ちるとされる | 比較的保たれるとされる |
| 入手 | 医療機関。条件を満たす薬局での取り扱いも | 医療機関 |
要点は2つです。72時間以内ならどちらでも大きな差はないこと。そして72時間を過ぎたらウリプリスタール酢酸エステル(エラワン錠)が選択肢になること。
体重による影響
あまり知られていませんが、体重が重いほど効果が下がる可能性が指摘されています。とくにレボノルゲストレル(ノルレボ錠など)でその傾向が報告されています。
ただし「体重が重いから飲んでも無駄」ということではありません。飲まないより飲んだほうがよいことに変わりはなく、医師が成分を選ぶ際の判断材料のひとつになります。診察で体重を聞かれたら、正確に答えてください。
効かないことがあるのは、なぜか
「アフターピルで失敗する確率は?」という疑問への答えでもあります。効かない理由は、だいたい4つに分けられます。
| 理由 | なぜそうなるか |
|---|---|
| ①すでに排卵が済んでいた | いちばん多い理由。排卵を遅らせる薬なので、排卵後では作用しにくい |
| ②飲んで2時間以内に吐いた | 吸収されていない可能性がある。すぐ医療機関へ連絡を |
| ③飲み合わせ | 一部の抗てんかん薬・抗結核薬・セント・ジョーンズ・ワート(ハーブ)などで効果が下がることがある |
| ④同じ周期に、別の性行為があった | 見落とされがち。飲んだあとの性行為には避妊効果がありません |
いちばん多いのは「排卵が済んでいた」
これは避けようがない部分です。排卵がいつ起きるかを事前に正確に知ることはできません。だから「早く飲む」以外に打てる手がないのです。
逆にいえば、効かなかったとしても、それはあなたの落ち度ではありません。タイミングの問題です。
飲み合わせについて
飲み合わせの影響はピルの副作用まとめでも扱っています。該当する薬を飲んでいる方は、診察で必ず伝えてください。サプリメントやハーブも含みます。とくにセント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)は、気分を整える目的のサプリメントに含まれていることがあります。
④が見落とされやすい
「アフターピルを飲んだから、しばらく大丈夫」——これは誤解です。
アフターピルには、飲んだあとの性行為に対する避妊効果はありません。同じ周期のうちに避妊せずに性行為があれば、また妊娠の可能性が生じます。次の生理が来るまでは、コンドームなどで確実に避妊してください。
「効いたか」を確認する方法
飲んだあと、いちばん不安な期間です。確認の手順を整理します。
消退出血が、ひとつの目安になります
アフターピルを飲むと、多くの場合数日から3週間ほどで出血があります。これを消退出血と呼びます。ホルモンの変化で子宮内膜がはがれて起きるもので、これが来れば妊娠していない可能性が高いと考えられます。
- 時期——飲んで数日〜3週間の間に来ることが多い
- 量——普段の生理より少ないことも、多いこともあります
- 色——茶色っぽいことも。経血の色がいつもと違っても、多くは心配ありません
- 期間——数日で終わることが多い
「いつもの生理と違う」と感じても、それ自体は異常ではありません。ホルモンの急な変化によるものだからです。
消退出血と「次の生理」の見分け
厳密に区別するのは難しいのですが、実用的には区別しなくてかまいません。
大事なのは「出血があったかどうか」です。消退出血であれ通常の生理であれ、まとまった出血があれば、妊娠していない可能性が高いと考えられます。
出血が来ないとき、いつまで待つか
| 経過 | どうするか |
|---|---|
| 飲んで1週間以内に出血 | 消退出血のことが多い。様子を見てよい |
| 生理予定日どおりに来た | 問題ありません |
| 予定日から1週間以上遅れている | 妊娠検査薬を使う時期です |
| 飲んで3週間たっても出血がない | 妊娠検査をしてください。陰性でも来なければ受診を |
| 強い下腹部痛をともなう | すぐ受診。子宮外妊娠の可能性を確認する必要があります |
周期がずれること自体は、アフターピルを飲んだあとによく起こります。次の周期でたいてい戻ります。戻らない場合や、生理が来ない状態が続く場合は相談してください。
妊娠検査薬を使うタイミング
性行為から3週間後、または生理予定日から1週間後が目安です。それより早いと、妊娠していても陰性に出ることがあります。
検査薬の使い方、薄い線と蒸発線の見分け方は妊娠検査薬の記事に詳しくまとめています。早い時期の「陰性」は当てになりません。これだけは覚えておいてください。
それでも妊娠していた場合
可能性は高くありませんが、起こりうることなので書いておきます。
赤ちゃんへの影響について
多くの方が心配される点です。アフターピルを飲んだあとに妊娠が続いた場合、その薬が胎児に悪影響を及ぼすという根拠は確認されていません。
アフターピルは着床済みの妊娠に作用するものではなく、妊娠が成立していれば、その経過に影響を与えないと考えられています。「飲んでしまったから」と自分を責める必要はありません。
ただし受診時には「アフターピルを飲んだ」と必ず伝えてください。時期の計算に関わります。
これからのことを相談できる場所
妊娠が分かったとき、どうするかを決めてから受診する必要はありません。決まっていない状態のまま相談できます。
- 産婦人科——「まだどうするか決まっていない」と伝えてかまいません
- にんしんSOS(各都道府県の相談窓口)——匿名で相談できます
- 市区町村の保健センター、女性健康支援センター
- 妊娠が分かったあとの流れは妊娠週数の数え方や妊娠2か月の記事も参考になります
- 性暴力の被害であれば#8891(ワンストップ支援センター)
時間が経つほど選べる選択肢は減ります。決めてから動くのではなく、決まっていない段階で相談したほうが、結果的に選べることが多く残ります。
同じことを繰り返さないために
アフターピルは繰り返し使う前提の薬ではありません。効果は継続的な避妊法に劣りますし、そのたびに時間・費用・不安を抱えることになります。
| 方法 | 1年間の使用で妊娠する割合(実際の使用) |
|---|---|
| 子宮内システム(IUS) | 約0.1〜0.4% |
| 低用量ピル | 約7% |
| コンドーム | 約13%(性感染症も防げる唯一の方法) |
| 何もしない | 約85% |
方法ごとの比較は避妊方法の選び方、ピルの分類はピルの種類にまとめています。アフターピルを処方してもらうその場で、次の方法も相談できます。
よくある質問
Q アフターピルで失敗する確率はどのくらいですか?
A.ひとつの数字では答えられません。周期のどのタイミングだったか、何時間後に飲んだかで大きく変わるからです。よく見る「成功率95%」は「飲まなければ妊娠していたはずの人のうち、何割の妊娠を防げたか」という意味で、「飲んだ100人のうち5人が妊娠する」という意味ではありません。実際に妊娠する人の割合はこれよりずっと小さくなります。確実なのは「早く飲むほど期待できる」ということです。
Q 消退出血が来たら、もう妊娠していないと考えていいですか?
A.まとまった出血があれば、妊娠していない可能性が高いと考えられます。ただし確定ではありません。ごく少量の出血は着床出血のことがあり、妊娠していても出血が起きることがあります。量が普段の生理と明らかに違って少ない場合や、心配が残る場合は、出血の有無にかかわらず妊娠検査をしてください。
Q 出血が来ません。いつ検査すればいいですか?
A.性行為から3週間後、または生理予定日から1週間後が目安です。それより早いと、妊娠していても陰性に出ることがあります。飲んで3週間たっても出血がなければ、検査してください。陰性でもその後も来ない場合は受診を。なお周期がずれること自体はよくあることで、次の周期でたいてい戻ります。
Q 飲んだあと、また性行為がありました。効果は残っていますか?
A.残っていません。アフターピルには、飲んだあとの性行為に対する避妊効果はありません。同じ周期のうちに避妊せずに性行為があれば、また妊娠の可能性が生じます。これは「効かないケース」で見落とされやすい理由のひとつです。次の生理が来るまでは、コンドームなどで確実に避妊してください。
Q 2時間以内に吐いてしまいました
A.薬が吸収されていない可能性があります。すぐに処方を受けた医療機関に連絡してください。追加の服用が必要になることがあります。時間が経つほど選択肢が減るため、「様子を見よう」ではなく、その場で連絡を。次回のために、吐き気が心配なら事前に医師へ相談すると、吐き気止めを一緒に処方してもらえることがあります。
Q 妊娠していた場合、赤ちゃんへの影響はありますか?
A.アフターピルが胎児に悪影響を及ぼすという根拠は確認されていません。アフターピルは着床済みの妊娠に作用するものではなく、妊娠が続いた場合もその経過に影響を与えないと考えられています。「飲んでしまったから」と自分を責める必要はありません。ただし受診時には「アフターピルを飲んだ」と必ず伝えてください——時期の計算に関わります。
Q 体重が重いと効きにくいというのは本当ですか?
A.体重が重いほど効果が下がる可能性が指摘されており、とくにレボノルゲストレルでその傾向が報告されています。ただし「飲んでも無駄」ということではありません。飲まないより飲んだほうがよいことに変わりはなく、医師が成分を選ぶ際の判断材料になります。診察で体重を聞かれたら正確に答えてください。言いにくいかもしれませんが、選択に直接影響します。
Q 効かなかったのは、自分のせいでしょうか
A.いいえ。効かない理由でいちばん多いのは「すでに排卵が済んでいた」ことで、これは避けようがありません。排卵がいつ起きるかを事前に正確に知る方法はないからです。あなたが選べたのは「早く飲む」ことだけで、それはやったはずです。タイミングの問題であって、落ち度ではありません。これからのことは、ひとりで抱えずに相談してください。
まとめ
アフターピルの効果を考えるとき、いちばん誤解されやすいのが「成功率」という言葉です。95%という数字は「5%の人が妊娠する」という意味ではなく、「防げた妊娠の割合」を指しています。
そして、効果を決めるのは排卵が起きる前に飲めたかどうか。時間が経つほど期待できる度合いが下がるのは、そのためです。
飲んだあとは、出血を待ち、3週間たっても来なければ検査する。これだけ覚えておけば足ります。
最後に。もし効かなかったとしても、それはあなたの落ち度ではありません。ひとりで抱えずに、相談してください。
- 「成功率95%」は「防げた妊娠の割合」。「5%が妊娠する」という意味ではない
- 効果を決めるのは排卵前に飲めたかどうか。だから早いほどよい
- 72時間以内なら2つの成分におおむね差はない。72時間を過ぎたらウリプリスタール酢酸エステルが選択肢
- 効かない理由は4つ=①すでに排卵済み(最多)②2時間以内の嘔吐 ③飲み合わせ ④飲んだあとの性行為
- 飲んだあとの性行為に避妊効果はない。次の生理までは別途避妊を
- 飲んで数日〜3週間で消退出血があることが多い。量や色がいつもと違っても多くは心配ない
- まとまった出血があれば妊娠していない可能性が高い。ただしごく少量なら着床出血のことも
- 検査は性行為から3週間後、または生理予定日から1週間後。それより早い陰性は当てにならない
- 3週間たっても出血がなければ検査を。強い下腹部痛があればすぐ受診
- 妊娠が続いた場合も、胎児への悪影響を示す根拠は確認されていない
- 効かなかったとしてもタイミングの問題であって、落ち度ではない
参考文献
- 日本産科婦人科学会「緊急避妊法の適正使用に関する指針」
- 厚生労働省「緊急避妊薬に係る取扱いについて」
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「患者向医薬品ガイド」
- World Health Organization「Emergency contraception(Fact sheet)」
- Trussell J. 「Contraceptive failure in the United States」Contraception