「低用量ピル=避妊薬」というイメージを持っている方は多いと思います。けれども実際に処方を受けている方の中には、避妊のためではなく、生理の重さを軽くするために飲んでいる方がたくさんいます。

この記事では、低用量ピルにどんな作用があり、何が期待できて、何は期待できないのかを整理します。効果の話だけでなく、副作用・血栓症のサイン・使えない人・費用・やめたあとまで、判断に必要なことをひととおり書きました。

最初に、いちばん大事な前提をお伝えします。

低用量ピルは、医師の処方が必要な医療用医薬品です
  • 市販されていません。婦人科・産婦人科などで診察を受けたうえで処方されます
  • 誰にでも使えるわけではありません。喫煙・年齢・持病・既往歴によっては使えない、あるいは慎重に判断されます
  • 効果の感じ方には個人差があります。ここに書くのは「一般に知られている作用」であって、あなたに同じことが起きると約束するものではありません
  • 他人に処方された薬を飲まないでください。個人輸入もすすめられません
  • この記事は受診前に知識を持っておくためのものです。使用の可否と目的は、必ず医師と相談して決めてください

低用量ピルとは|前提を3つ

①2つの女性ホルモンで作られている

低用量ピルは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲスチン(黄体ホルモンに似た成分)の2種類を組み合わせた薬です。正式には低用量経口避妊薬(OC)、治療目的で用いられるものはLEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤)と呼ばれます。

「低用量」という名前は、かつて使われていたピルよりエストロゲンの量を減らしてあることから来ています。含まれるホルモン量が少ないほど、体への負担は小さくなる方向に設計されています。

②OCとLEPは、同じような薬でも「目的」が違う

 OC(経口避妊薬)LEP(治療用)
主な目的避妊月経困難症・子宮内膜症などの治療
費用自費保険が適用されることがあります
処方のきっかけ避妊を希望して受診生理痛や経血量の相談から
避妊効果あり結果として避妊効果も伴います

ここが分かっていないと、「生理痛で相談したら保険が使えた」という話と「避妊だと自費」という話が矛盾して聞こえます。実際には、診断名がつくかどうかで扱いが変わるということです。

③「効果」は、何を目的にするかで変わる

この記事では7つの効果を挙げますが、すべての方に全部が当てはまるわけではありません。避妊を目的に飲んでいる方が結果として生理痛が軽くなることもあれば、生理痛のために飲み始めた方がニキビの変化を感じることもあります。

大事なのは「自分は何を一番よくしたいのか」をはっきりさせて受診することです。それによって処方の判断も、続けるかどうかの評価も変わります。

体に作用する仕組み|3つの働き

低用量ピルの作用は、大きく3つです。この3つが分かると、7つの効果はすべて説明がつきます。

①排卵を抑える

脳は、血液中の女性ホルモンの量を見て「卵胞を育てろ」という指令(FSH・LH)を出しています。低用量ピルを飲むとホルモンが一定量ある状態が保たれるため、脳は「すでに足りている」と判断し、指令を出しません。

その結果、卵胞が育たず、排卵が起こらなくなります。これが避妊作用の中心であり、同時に卵巣を休ませることにもつながります。

②子宮頸管粘液を変える

子宮の入り口(頸管)にある粘液は、排卵期には精子が通りやすいようさらさらになります。低用量ピルを飲むとこの粘液が粘り気を保ったままになるため、精子が子宮内へ進みにくくなります。

③子宮内膜を薄く保つ

ここが、避妊以外の効果を説明するいちばん大事な作用です。

通常の周期では、子宮内膜は妊娠に備えて厚くなり、妊娠しなければはがれ落ちます。これが生理です。低用量ピルを飲んでいると、内膜が厚くならず、薄い状態で保たれます。

内膜が薄いと、何が変わるのか
  • はがれる量が少ない→ 経血量が減る→ 貧血が改善に向かうことがあります
  • はがすための収縮が弱くて済む→ 痛みの原因物質(プロスタグランジン)の量が減る→ 生理痛が軽くなることがあります
  • 内膜組織が増える勢いが抑えられる→ 子宮内膜症の進行を抑える目的で用いられます

「なぜ避妊薬で生理痛が軽くなるのか」の答えが、ここにあります。痛み止めのように痛みを抑えているのではなく、痛みが生まれる量そのものを減らしているという違いです。

期待される効果|7つ

①避妊

正しく飲んだ場合、避妊法の中でも高い確実性を持つ方法のひとつとされています。ただし「正しく飲んだ場合」という条件が重要です。実際には飲み忘れが起こるため、現実の使用における失敗率は、理想的な使用よりも高くなります。

避妊について、必ず知っておいてほしいこと
  • 低用量ピルは性感染症を防ぎません。HIV・クラミジア・梅毒などの予防にはコンドームが必要です
  • 飲み忘れると効果が下がります。対処法はピルの飲み忘れを確認してください
  • 飲み始めてすぐは効果が不十分な場合があります(後述)
  • 下痢や嘔吐があったときも、吸収が不十分になることがあります
  • ほかの避妊法との比較は避妊法の種類と選び方を参照してください

②月経困難症(生理痛)

低用量ピル(LEP)は、月経困難症に対する治療として用いられます。先ほどの「内膜を薄く保つ」作用によって、痛みの原因物質の量が減ることが理由と考えられています。

鎮痛薬が効かない、毎回寝込むといった月経困難症の方が、「痛み止めを飲まなくて済むようになった」と話されることは少なくありません。ただし効果の感じ方には個人差があり、全員が同じ結果になるわけではありません。

薬を使わない対処と併せて考えたい方は生理痛を和らげる方法もご覧ください。

③経血量を減らす・貧血

内膜が薄くなるぶん、経血量が減る方が多いとされています。経血量が多いこと(過多月経)は、鉄が失われ続ける原因になります。

「生理のたびにフラフラする」「立ちくらみがある」という方は、生理と貧血を確認してみてください。経血量を減らすことは、貧血への対応としても意味を持ちます。量の目安は経血量を参照してください。

④PMS・PMDD

排卵が抑えられることでホルモンの変動が小さくなるため、生理前の不調が軽くなることがあります。

ただしここは効果の個人差が大きい領域です。楽になる方もいれば、変わらない方も、飲み始めに気分の変化を感じる方もいます。PMSPMDDで日常生活に支障が出ているなら、ピルを含めた選択肢を医師と相談する価値があります。

⑤子宮内膜症

子宮内膜症は、子宮の内側にあるはずの組織が別の場所で増えてしまう病気で、放置すると進行することがあります。

低用量ピル(LEP)は、その進行を抑える目的で用いられる治療の選択肢のひとつです。子宮腺筋症でも同様に用いられることがあります。

⑥周期を整える・生理日を移動する

低用量ピルを飲んでいる間の出血は、休薬期間に起こる消退出血です。シートどおりに飲めば出血の時期があらかじめ分かるため、予定を立てやすくなります。

試験・旅行・結婚式などに合わせて生理日を動かすこともできます(生理日の移動)。

なお飲んでいるうちに出血がごく少なくなったり、来なくなったりすることがあります。心配になりますが、内膜が薄いことによる想定内の変化であることが多いです(ピル服用中に生理が来ない)。

⑦ニキビ・肌

男性ホルモンの働きに関わる部分に作用することで、皮脂の分泌に変化が出るとされ、ニキビの改善を目的に処方されることがあります。

ただし日本では、ニキビ治療を目的とした処方は自費になることが一般的です。またすべての種類のピルが同じように用いられるわけではありません。生理前に悪化するタイプのニキビについては生理前のニキビもご覧ください。

7つの効果と、費用の扱い(早見表)

目的関係する作用費用の扱い(目安)
①避妊排卵抑制+粘液+内膜自費
②月経困難症(生理痛)内膜を薄く保つ診断がつけば保険適用のことがあります
③経血量・貧血内膜を薄く保つ同上
④PMS・PMDDホルモン変動を小さく目的により異なります。自費のことが多い
⑤子宮内膜症内膜組織の増殖を抑える診断がつけば保険適用のことがあります
⑥周期を整える・生理日移動周期のコントロール自費
⑦ニキビ皮脂への影響自費

保険が適用されるかどうかは、診察のうえで医師が判断します。「保険にしてほしい」と希望して決まるものではありません。ただし生理痛や経血量で困っているなら、そのことを正確に伝えることには意味があります。

カレンダーと手帳が並ぶデスク。生理サイクルの記録を連想させる、チェックしやすい雰囲気の写真

効果が出るまでの期間

「飲み始めたのに変わらない」と感じて途中でやめてしまう方がいます。効果によって、現れるまでの時間がまったく違うことを知っておくと、判断を誤りません。

目的目安の期間補足
避妊飲み始めのタイミングによる生理初日から飲み始めた場合と、それ以外では扱いが変わります。最初の期間は他の避妊法の併用を指示されることがあります。必ず処方時の説明に従ってください
生理痛1〜3周期次の生理から軽くなる方も、数周期かかる方もいます
経血量1〜3周期比較的早く変化を感じやすい項目です
貧血の数値数か月経血量が減ってから、体内の鉄が回復するまで時間がかかります
PMS2〜3周期個人差が大きい領域です
ニキビ3〜6か月いちばん時間がかかります。飲み始めに一時的に悪化したと感じる方も
子宮内膜症継続して評価症状と画像を見ながら医師が判断します
「効かない」と判断する前に
  • ニキビ目的なら3か月、生理痛なら3周期——ここまでは見てから判断するのが一般的です
  • 飲み始めの1〜2か月は、副作用のほうが先に出ることが多いです。ここでやめてしまうと、効果を確かめる前に終わってしまいます(ピルを飲み始めた1か月目
  • 合わないと感じたら、種類を変えるという選択肢があります。ピルは1種類ではありません(低用量ピルの種類
  • ただしつらい症状が強い場合は、3か月待たずに相談してください。我慢の期間ではありません

シートの読み方と、飲み方の実際

処方されて最初につまずくのが、ここです。「錠数が違うのはなぜ」「白い錠剤は何」「休む期間に飲まなくていいの」——先に整理しておきます。

21錠タイプと28錠タイプ

 21錠タイプ28錠タイプ
実薬(ホルモンが入っている)21錠21錠(または24錠など製剤による)
偽薬(プラセボ・ホルモンなし)なし残りが偽薬
休む期間7日間、何も飲まない偽薬を飲み続ける(休む期間の代わり)
メリット錠数が少ない毎日飲む習慣が途切れないので飲み忘れにくい
注意飲み始めの日を忘れやすい偽薬は飲み忘れても避妊効果に影響しないとされますが、次のシートの開始日はずらさない
偽薬(プラセボ)について
  • ホルモンは入っていません。飲む習慣を途切れさせないためのものです
  • 製剤によっては鉄分が含まれているものもあります
  • 色が違うので見分けられます。シートに曜日や番号が印字されているものが多いです
  • この期間に出血が来ます。これが「消退出血」で、通常の生理とは仕組みが違います
  • 錠数や飲み方は製剤ごとに異なります。必ず処方時の説明と添付文書に従ってください

飲み忘れを減らす、現実的な工夫

飲み忘れは効果にも副作用にも直結します。対処法を覚えるより、忘れない仕組みを作るほうが確実です。

  • 毎日同じ時刻にアラーム。スマホの繰り返し設定にする
  • すでに毎日やっていることとセットにする。歯みがき・スキンケア・寝る前のスマホ充電
  • 置き場所を決める。歯ブラシの横・枕元・洗面所。バッグの中は取り出す手間で忘れます
  • 飲んだかどうか分からなくなる問題——シートの押し出した跡で確認できます。曜日が印字されたタイプを選ぶ手もあります
  • 服薬記録アプリを使う。カレンダーに印をつけるだけでも十分です
  • 旅行・出張のときは、時差と持ち忘れに注意。予備を別の場所に入れておく

実際に飲み忘れたときの対処は、何錠・いつ忘れたかと製剤によって変わります。ピルの飲み忘れを確認し、判断に迷うときは処方元に問い合わせてください。

ほかの医療機関・薬局で伝えること

これは意外と知られていないのですが、低用量ピルを飲んでいることは、婦人科以外でも申告が必要な情報です。

場面なぜ伝えるのか
ほかの科を受診するとき飲み合わせがあります。一部の抗てんかん薬・結核の薬・抗HIV薬・抗真菌薬などは、ピルの効果に影響することが知られています
抗生物質を処方されるとき種類によって扱いが異なります。処方する医師に判断してもらってください
手術・入院が決まったとき血栓症のリスクに関わります。手術前に一時的に中止する判断がされることがあります。必ず事前に伝えてください
抜歯・歯科の処置抗生物質が出ることがあります。お薬手帳を見せれば伝わります
市販薬・サプリを買うときセント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)を含むサプリは、ピルの効果に影響することが知られています。薬剤師に相談を
救急を受診するとき最初に伝えてください。胸痛・頭痛・脚の痛みの見立てが変わります
長時間のフライト血栓症のリスクに関わります。水分をとり、こまめに足を動かす
いちばん簡単な方法は、お薬手帳です
  • ピルもお薬手帳に記載してもらってください。「言いにくい」と感じる方がいますが、これがいちばん確実で早い方法です
  • 電子版のお薬手帳アプリでも構いません
  • 手帳がないときは、「低用量ピルを飲んでいます」と口頭で伝えるだけで十分です。薬の名前まで覚えていなくても構いません
  • 下痢や嘔吐が続いたときも、吸収が不十分になることがあります。避妊目的の方は処方元に確認してください

副作用と、続けられるかどうか

効果だけを並べるのはフェアではないので、こちらも書きます。実は「低用量ピル 効果」で検索する方の多くは、同時に副作用も知りたがっていることが分かっています。

飲み始めに起こりやすいもの

症状経過の目安
吐き気・胃のむかつき飲み始めの数週間に多く、続けるうちに落ち着くことが多い
不正出血(少量の出血)1〜3周期で落ち着くことが多い(ピル服用中の不正出血
頭痛飲み始めや休薬期間に出やすい
胸の張り数か月で落ち着くことが多い
むくみ・体重の変化体重そのものが増えるかはピルで太るのかを参照
気分の変化個人差が大きい。つらいときは必ず相談を

詳しくは低用量ピルの副作用で解説しています。

飲み方の工夫で軽くなることがあります

  • 飲む時間を夜にする——吐き気が出ても眠っている間に過ぎることがあります
  • 空腹時を避ける
  • 毎日同じ時間に飲む——アラームを設定する。飲み忘れは効果にも副作用にも影響します
  • それでもつらいときは種類の変更を相談する——含まれる成分は製剤によって異なります

【重要】血栓症のサイン

ここは、この記事でもっとも真剣に読んでいただきたい部分です。

低用量ピルには、血栓症(血管の中に血のかたまりができる状態)のリスクがわずかに高まることが知られています。頻度としてはまれですが、起きたときの重大性が高いため、必ずサインを知っておいてください。

リスクをどう捉えるか

前提として知っておきたいこと
  • 血栓症はピルを飲んでいない女性にも起こります
  • 妊娠中・産後のほうが、ピル服用中よりリスクが高いことが知られています
  • とはいえ「だから気にしなくていい」ではありません。サインを知っていれば、早く動けます
  • とくに飲み始めの数か月と、長期間の休薬後に再開したときはリスクが高まるとされています
  • 喫煙・肥満・長時間の同じ姿勢・脱水はリスクを上げる方向に働きます

ACHES|覚えておく5つの症状

医療の現場では、頭文字をとってACHES(エイクス)として共有されています。どれかが出たら、服用を中止してすぐに受診してください。

頭文字症状疑われること
Abdominal pain激しい腹痛腹部の血栓など
Chest pain激しい胸痛・息切れ・押しつぶされるような痛み肺の血栓(肺塞栓)
Headache激しい頭痛脳の血栓
Eye / speech見えにくい・視野が欠ける・舌がもつれる・言葉が出ない脳の血栓
Severe leg painふくらはぎの痛み・腫れ・赤み(片脚だけ)足の血栓(深部静脈血栓症)
とくに見逃されやすいのが「S」です
  • 片方のふくらはぎだけが痛い・腫れている・熱を持っている——これを「こむら返り」「筋肉痛」と思ってしまう方がいます
  • 両脚ではなく片脚だけというのが重要な手がかりです
  • 足の血栓は、はがれて肺に飛ぶと命に関わります
  • 「C(胸痛・息切れ)」と「S(片脚の痛み)」がそろったら、救急です
  • 受診のときは「低用量ピルを飲んでいます」と必ず最初に伝えてください。これで医師の考える順番が変わります

リスクを下げるためにできること

  • 禁煙。これがもっとも大きい要素です。とくに35歳以上で1日15本以上の喫煙がある方には処方されません
  • 水分をとる。脱水は血液を濃くします
  • 長時間同じ姿勢を避ける。飛行機・長距離バス・デスクワークでは、こまめに立って足を動かす
  • 手術や長期の安静が予定されているときは、事前に医師に伝える。一時的に中止する判断がされることがあります
  • 定期的に受診する。血圧測定や必要な検査を受けてください

使えない人・慎重に判断される人

低用量ピルは、希望すれば誰でも処方されるものではありません。問診で細かく聞かれるのは、この判断のためです。

該当すること扱い
35歳以上で、1日15本以上の喫煙使用できません
血栓症の既往、血栓性素因使用できません
前兆(閃輝暗点など)のある片頭痛使用できません
乳がん・子宮体がんの既往や疑い使用できません
重い肝機能障害使用できません
妊娠中・妊娠の可能性・産後まもない時期使用できません
コントロール不良の高血圧・糖尿病の合併症慎重に判断されます
肥満・高齢・手術予定慎重に判断されます
授乳中時期と種類によります。必ず申告を
ほかの薬を飲んでいる相互作用があります。お薬手帳を必ず持参
問診では正直に答えてください
  • 喫煙は、電子タバコ・加熱式も含めて申告してください
  • 「前兆のある片頭痛」かどうかは自分では判断しにくいです。頭痛の前にギザギザした光が見える・視野が欠ける経験があるなら、必ず伝えてください
  • 家族に血栓症の人がいる場合も伝えてください
  • これらは処方を断るための質問ではなく、あなたを守るための質問です
  • 使えない場合でも、ほかの選択肢がありますミニピルミレーナ・漢方・鎮痛薬の使い方の見直しなど)
ノートに書かれた健康記録と花の入った花瓶。日々の体のケアを連想させる明るい雰囲気の写真

費用と保険

保険が適用されることがある場合

月経困難症・子宮内膜症などの診断がついた場合、LEP製剤には保険が適用されることがあります。判断するのは医師です。

内容自己負担の目安(3割)
初診+問診おおむね1,000〜2,000円前後
超音波検査おおむね1,500〜3,000円前後
LEP製剤(保険適用)1か月分でおおむね1,000〜2,500円前後
再診+処方おおむね1,500〜3,000円前後

自費の場合

内容費用の目安
診察料(自費)施設により0〜3,000円程度
OC(自費)1か月分でおおむね2,000〜3,000円前後
血液検査(必要に応じて)数千円程度
まとめ処方3か月分などまとめて処方される場合があります

施設によって設定はかなり異なります。初回の電話や予約時に「自費だといくらくらいですか」と聞いて構いません。入手方法の全体像はピルの入手方法を参照してください。

オンライン診療について

オンラインで処方を受けるときに確認したいこと
  • 医師の診察を経て処方されるものかどうか。問診票だけで薬が届くサービスには注意が必要です
  • 血圧測定や必要な検査について、どう案内されるか——定期的な確認は続けたほうが安心です
  • 体調に変化があったときの相談窓口があるか
  • 血栓症のサイン(ACHES)について説明があるか
  • 個人輸入は避けてください。成分や品質が確認できず、副作用が出たときの救済制度の対象にもなりません

やめたあとのこと

「一度始めたら一生飲み続けるのでは」という不安を持つ方がいます。そんなことはありません。

  • やめれば、排卵は戻ります。戻るまでの期間には個人差がありますが、多くは数か月以内とされています
  • やめると、飲む前の状態に戻ります。生理痛が軽くなっていた方は、痛みが戻ることがあります。「治った」のではなく「抑えていた」ということです
  • 妊娠を希望するタイミングで中止するのが一般的な流れです。中止のタイミングは医師に相談してください
  • 自己判断で急にやめると、不正出血などが起こることがあります。シートの途中でやめるより、区切りのよいところで、という指示を受けることが多いです
  • やめたあとに周期が乱れることがありますが、多くは時間とともに整っていきます。3か月以上生理が来ない場合は受診を(生理周期

通説の検証

「ピルを飲むと太る」は本当か

判定:体重そのものが増えるという明確な根拠は乏しいとされています。

かつてのホルモン量の多いピルでは体重増加が指摘されていましたが、低用量ピルについては、体重への影響は限定的とする報告が多いです。

ただし「むくみで一時的に重く感じる」「食欲が増したと感じる」という体感はありえます。飲み始めの数か月に多く、落ち着くことが多いとされています。詳しくはピルで太るのかで解説しています。

「妊娠しにくくなる」は本当か

判定:低用量ピルの服用が、その後の妊娠しやすさを下げるという根拠はありません。

やめれば排卵は戻ります。この誤解が根強いのは、「やめた=妊娠したい時期」であることが多く、そこで妊娠しなかったときに原因を探してピルに行き着くという事情があると考えられます。実際には、その間に年齢が上がっていたり、もともと別の背景があったりします。

むしろ子宮内膜症を放置するほうが、将来の妊娠に影響しうることが知られています。

「若いうちから飲むと体に悪い」は本当か

判定:年齢が若いこと自体は、使えない理由になりません。

月経困難症の治療として、10代でも処方されることがあります。むしろ、痛みで学校に行けない状態を何年も我慢するほうが、生活にも学業にも影響します。

もちろん医師の診察と判断が前提です。「若いから」ではなく、禁忌に当たらないか・目的は何かで判断されます。

「一度始めたらやめられない」は本当か

判定:いつでもやめられます。依存性のある薬ではありません。

ただしやめれば、抑えていた症状は戻ります。「やめられない」と感じるのは、やめると生理痛や経血量が元に戻るからであって、薬に縛られているわけではありません。

飲み続けるかどうかは、「困りごとが抑えられている価値」と「副作用・費用・通院の手間」を天秤にかけて、そのつど決めればよいものです。定期受診のときに、遠慮なく相談してください。

4つの通説まとめ
  • 太る:体重そのものへの影響は限定的とされる。むくみの体感は飲み始めに多い
  • 妊娠しにくくなる:根拠はありません。やめれば排卵は戻ります
  • 若いと体に悪い:年齢自体は理由になりません。10代でも治療として処方されます
  • やめられない:依存性はありません。やめれば元の状態に戻るだけです

受診と、続けるかどうかの判断

診察で伝える6項目

メモを持っていくとそのまま伝えられます
  • ①いちばん困っていること(生理痛/経血量/PMS/避妊/ニキビ)——これで保険の扱いも処方の判断も変わります
  • ②最終月経の開始日と、直近3周期の日数
  • ③痛みと経血量(薬が効くか・かたまりの有無・休む回数)
  • ④喫煙(電子タバコ・加熱式も含めて正直に)
  • ⑤持病・既往歴・家族歴(血栓症・片頭痛・乳がんなど)
  • ⑥飲んでいる薬・サプリ(お薬手帳を持参)

飲み始めてからのチェックポイント

時期見るところ
1か月目吐き気・不正出血が中心。ここは効果より副作用が目立つ時期1か月目
2〜3周期生理痛と経血量が変わったか。ここが最初の評価ポイント
3〜6か月PMS・ニキビの変化。続けるかどうかを判断できる時期
その後定期受診で血圧測定など。年1回の子宮頸がん検診も忘れずに
いつでもACHESの症状が出たら、服用を中止してすぐ受診

効果を評価するための記録テンプレート

「なんとなく楽になった気がする」では、続けるかどうかを決められません。飲み始める前に1周期分、飲み始めてから毎周期、次の項目だけ記録してみてください。

記録する項目書き方の例何が分かるか
①出血のあった日8/3〜8/7周期が整っているか。不正出血の有無
②痛みの強さ(0〜10)1日目6/2日目3飲む前と比べられる。効果のいちばん分かりやすい指標
③鎮痛薬を飲んだ回数1周期で2回「3回→1回」のように数で言える
④経血量ナプキンの交換回数/かたまりの有無過多月経が改善したか
⑤生活への支障「休んだ日数0日(前は1日)」いちばん実感につながる項目
⑥副作用吐き気(1週目のみ)/不正出血(2日)落ち着いてきているかが分かる
⑦飲み忘れ0回/1回(何日目か)効果が出ないときの原因確認になる
3か月後、この記録で判断できること
  • 効いている:痛み6→2、鎮痛薬3回→0回、休んだ日1日→0日 → 続ける判断がしやすい
  • 効いていない:痛み6→5、鎮痛薬の回数も変わらない → 種類の変更や、別の原因の確認を相談する
  • 副作用が続いている:吐き気が3か月目も毎日 → 種類の変更を相談する
  • 飲み忘れが多い:月に3回以上 → 効果が出ないのは薬のせいではないかもしれない。28錠タイプへの変更や、飲む時間の見直しを

診察は数分です。この表をスマホで見せるだけで、口頭で説明するより正確に伝わります。

この考え方は生理痛を和らげる方法で紹介した記録と同じものです。ピルを飲む前から記録があると、比較ができるので理想的ですが、今から始めても遅くありません。

よくある質問

Q 避妊が目的ではないのですが、処方してもらえますか?

A.はい。生理痛・経血量の多さ・PMSの相談で受診する方は、たくさんいます。むしろ月経困難症子宮内膜症の診断がついた場合は、治療としてのLEP製剤に保険が適用されることがあります。受診のときは「生理痛がひどくて困っています」と、困りごとから伝えてください。「ピルをください」と言うより、そのほうが適切な選択肢を提案してもらえます。

Q 飲み始めて2週間ですが、吐き気と不正出血が続いています。やめたほうがいいですか?

A.飲み始めの数週間に多く、1〜3周期で落ち着くことが多い症状です。ただし自己判断で中止する前に、処方を受けた医療機関に相談してください。飲む時間を夜に変える、種類を変更するなど、対応の選択肢があります。途中でやめると不正出血がかえって起こることもあります。なお、ACHES(激しい腹痛・胸痛・頭痛・視覚や言葉の異常・片脚の痛みや腫れ)に当たる症状であれば、それは別です。その場合はすぐに中止して受診してください。

Q 飲んでいるのに生理が来ません。妊娠でしょうか?

A.飲み忘れがなく正しく服用できているなら、内膜が薄いために出血がごく少ない、あるいは出血がないという想定内の変化であることが多いです。ただし飲み忘れがあった場合や、不安が残る場合は妊娠検査薬で確認してください。2周期続けて出血がないときは、念のため受診を。詳しくはピル服用中に生理が来ないで解説しています。

Q タバコを吸っています。飲めませんか?

A.35歳以上で1日15本以上の喫煙がある場合は、使用できません。それ未満であっても、喫煙は血栓症のリスクを上げる方向に働くため、本数と年齢を正確に伝えたうえで医師が判断します。電子タバコ・加熱式タバコも申告してください。「怒られそうだから」と少なく申告するのは、いちばん危険です。なお、禁煙できれば選択肢が広がります。喫煙が理由で使えない場合も、ミニピルミレーナなど、ほかの方法を相談できます。

Q 避妊効果はいつから期待できますか?

A.飲み始めるタイミングによって変わります。生理初日から飲み始めた場合と、それ以外の日から始めた場合では扱いが異なり、最初の一定期間はコンドームなど他の方法を併用するよう指示されることがあります。製剤によっても案内が異なるため、処方時の説明と添付文書に必ず従ってください。この記事で具体的な日数を断定して書かないのは、そのためです。また低用量ピルは性感染症を防ぎません。その点はコンドームが必要です(コンドーム)。

Q 3か月飲みましたが、生理痛があまり変わりません。

A.そのことを、そのまま医師に伝えてください。効果の感じ方には個人差があり、種類を変更することで変わる場合があります低用量ピルの種類)。また、痛みが変わらない背景に、別の要因が隠れている可能性もあります。子宮筋腫子宮腺筋症などは、超音波で確認できます。伝えるときは「痛みが8→7で、鎮痛薬の回数も変わりません」と数字で。「あまり変わりません」より判断材料になります。

Q 飲み忘れました。どうすればいいですか?

A.対処は、何錠・いつ忘れたかによって変わります。製剤ごとに指示が異なるため、まず処方時にもらった説明書か添付文書を確認してください。判断に迷うときは処方元に問い合わせを。共通して言えるのは、飲み忘れがあった期間は避妊効果が不確実になるため、他の方法の併用が必要になる場合があるということです。詳しくはピルの飲み忘れで解説しています。飲み忘れを減らす工夫(毎日同じ時刻のアラーム・歯みがきとセットにする)のほうが、対処法より効果的です。

Q 親に知られずに処方してもらえますか?

A.受診自体に保護者の同意は必須ではありません。ただし未成年の場合、内容によっては保護者への説明を求められることがあります。費用の面では、保険を使うと、加入している健康保険から「医療費のお知らせ」が世帯主宛に届くことがあります(医療機関名と金額が載る形式が一般的で、病名までは記載されないのが通常です。様式は保険者によって異なります)。自費であれば保険は使いません。不安な点は、予約時や受付で相談して構いません。心配で受診をやめてしまうのがいちばんもったいないので、まずは電話で聞いてみてください。

まとめ

低用量ピルは「避妊薬」という一語で語られがちですが、実際には、生理にまつわる困りごとへの治療の選択肢でもあります。作用の中心は「子宮内膜を薄く保つ」ことで、そこから経血量・生理痛・内膜症への効果が説明できます。

同時に、誰でも使える薬ではありません。喫煙・年齢・持病・既往歴によって使えないことがあり、まれではあっても血栓症という重大なリスクがあります。ACHESの5つのサインだけは、飲んでいる方全員が覚えておいてください。

この記事のポイントまとめ
  • 低用量ピルは医師の処方が必要な医療用医薬品。市販されておらず、個人輸入もすすめられない
  • 作用は3つ——①排卵を抑える ②頸管粘液を変える ③子宮内膜を薄く保つ
  • ③から、経血量・生理痛・内膜症への効果が説明できる。痛みを抑えるのではなく、痛みの原因の量を減らしている
  • OC(避妊目的・自費)とLEP(治療目的・保険適用のことがある)という区別がある
  • 期待される効果は7つ。ただし効果の感じ方には個人差がある
  • 効果が出るまでの時間は目的で違う——経血量は1〜3周期、ニキビは3〜6か月
  • 飲み始めの1〜2か月は効果より副作用が先に出る。ここでやめると効果を確かめられない
  • 合わないときは種類を変えるという選択肢がある
  • 【最重要】ACHES——激しい腹痛/胸痛・息切れ/激しい頭痛/視覚や言葉の異常/片脚のふくらはぎの痛み・腫れ。出たら中止してすぐ受診
  • 「片脚だけ」のふくらはぎの痛みを、こむら返りと思わないこと
  • 受診時は「低用量ピルを飲んでいます」と最初に伝える
  • 35歳以上で1日15本以上の喫煙は使用不可。前兆のある片頭痛・血栓症の既往なども使用不可
  • やめれば排卵は戻る。ただし抑えていた症状も戻る
  • 「太る」「妊娠しにくくなる」「若いと体に悪い」「やめられない」——いずれも根拠は乏しい
  • 受診では「ピルをください」より「何に困っているか」から伝える

迷っている段階なら、まず婦人科で「生理のことで相談したい」と言ってみてください。ピルを飲むかどうかはそのあとで決められますし、飲まない選択肢も含めて提案してもらえます。

この記事について

femnote 編集部

生理・妊活・フェムケア・更年期など女性の健康に関する情報を、厚生労働省「e-ヘルスネット」や日本産科婦人科学会をはじめとする各学会の診療ガイドラインなど、公的な資料をもとに編集しています。診断や治療の判断については、必ず医療機関にご相談ください。

参考文献

  • 公益社団法人 日本産科婦人科学会「OC・LEPガイドライン」
  • 公益社団法人 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編|月経困難症・子宮内膜症」
  • 一般社団法人 日本女性医学学会「女性医学ガイドブック」
  • 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル|血栓症」
  • 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「患者向医薬品ガイド・添付文書情報」
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「女性の健康と月経」
  • 公益社団法人 日本産婦人科医会「思春期の月経随伴症状とホルモン療法」
  • World Health Organization「Medical eligibility criteria for contraceptive use」
  • American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG)「Combined Hormonal Birth Control」
  • National Health Service (NHS)「Combined pill」