口の中にひとつできただけで、食事も会話もつらくなる。それが口内炎です。小さいのに存在感がありすぎて、けれど人に言うほどのことでもない——そう思って、市販薬を買って、治るのを待つ。多くの方がそうしていると思います。
ただ、もし「毎月のようにできる」「同じ時期に必ずできる」「一度に何個もできる」「2週間たっても治らない」のなら、少し立ち止まってみる価値があります。口内炎は、体の状態を映しやすい場所だからです。
この記事では、口内炎そのものの説明に加えて、女性に多い背景——生理前、妊娠中、そして繰り返す方に見落とされがちな鉄のこと——を中心にお話しします。「疲れているから」で片づけられてきたものに、別の説明がつくかもしれません。
- 今できていてつらい方は「まずやること・やらないこと」と「しみない食べ物」へ
- 毎月のように繰り返す方は「生理前に決まってできる方へ」と「繰り返す口内炎と鉄不足」へ
- 妊娠中の方は「妊娠中の口内炎」へ
- 治らなくて不安な方は「2週間治らないとき」へ
今できている口内炎へ|まずやること・やらないこと
口内炎と一緒に味の変化があるときは口の中が苦いもあわせてご覧ください。
歯ぐきが下がってきた場合は歯茛が下がるにまとめています。
できてしまったものを今日中に消す方法はありません。ただ、治りを邪魔しないことと痛みを減らすことはできます。
やること
- 口の中を清潔に保つ——うがいをこまめに。歯みがきは続けますが、患部は避けてやさしく
- 刺激を減らす——熱いもの、辛いもの、酸っぱいもの、硬いものを数日避ける
- 患部を覆う——貼るタイプの市販薬は、食事や歯が当たる刺激から守る役割があります
- 水分をとる——口が乾くと治りにくくなります
- 睡眠を確保する——身も蓋もないようですが、これがいちばん確実です
やらないこと
- 塩を直接すりこむ——強い刺激で傷が深くなることがあります。痛みも相当です
- お酒(アルコール)で消毒する——粘膜を傷めます
- 患部を舌でさわり続ける・つぶす——治りかけをまた傷つけることになります
- 刺激の強いうがい薬を濃いまま使う——説明書の濃度を守ってください
- 痛いからと歯みがきをやめる——口の中の環境が悪くなり、かえって長引きます
ふつうのアフタ性口内炎であれば、おおむね1〜2週間で自然に治っていきます。逆にいえば、それを大きく超えるときは別の見方が必要になります(後述)。
口内炎とは|口の中で起きていること
口内炎は、口の中の粘膜に起きた炎症の総称です。ひとつの病気の名前ではなく、いくつかの違う原因で起こる状態をまとめて呼んでいます。
口の粘膜は、体の中でいちばん入れ替わりが早い場所のひとつ
口の中の粘膜は、皮膚よりずっと薄く、そして数日から10日ほどで新しく入れ替わります。入れ替わりが早いということは、それだけ材料(栄養)と体力を必要とするということです。
だから、栄養が足りない・睡眠が足りない・体調を崩しているといった状態が、口の中には比較的早く現れます。「口内炎ができたら疲れのサイン」と言われるのは、感覚的な話ではなく、この仕組みによるものです。
いちばん多いのは「アフタ性口内炎」
一般に「口内炎」と呼ばれるものの多くはアフタ性口内炎です。特徴は次のとおりです。
- 白っぽい、あるいは黄色がかった円形・楕円形の浅いくぼみ
- まわりが赤く縁取られている
- 直径は数ミリ程度。ひとつのことも、複数のこともある
- 触れるとしみるように痛む
- 1〜2週間で自然に治り、跡は残らない
はっきりした原因が特定できないことも多く、疲労・ストレス・栄養不足・睡眠不足・免疫の状態などが複合的に関わると考えられています。
口内炎の種類|見た目と対処が変わります
「口内炎」とひとことで言っても、原因が違えば対処も変わります。ここを知っておくと、市販薬で様子を見ていい場合と、受診したほうがいい場合の区別がつきやすくなります。
| 種類 | 見た目・特徴 | 主な原因 | 対処の方向 |
|---|---|---|---|
| アフタ性 (いちばん多い) |
白〜黄色の円形のくぼみ、まわりが赤い。数ミリ | 疲労・栄養不足・睡眠不足・ストレスなど | 市販薬で様子を見てよい。1〜2週間で治る |
| カタル性 (傷が原因) |
境目がぼんやりした赤み・ただれ。白い膜は目立たない | 頬を噛んだ、矯正器具や入れ歯が当たる、やけど | 原因になっている刺激を取り除くことが最優先 |
| カンジダ性 | 白い苔のようなものが付着。こすると取れることがある | 常在するカビ(真菌)の増殖。体調不良・薬・入れ歯 | 受診が必要。ふつうの口内炎の薬では対応が違います |
| ウイルス性 | 小さな水ぶくれが集まる。発熱を伴うことも | 単純ヘルペスウイルス、手足口病など | 受診を。人にうつることがあります |
| アレルギー性 | 特定の食品・薬・金属に触れたあとに出る | アレルギー反応、歯科金属 | 原因を特定する必要があります |
| 全身の病気に伴うもの | 繰り返す、複数個、治りが悪い | 鉄・ビタミン不足、ベーチェット病、免疫の低下など | 背景を調べる価値があります |
①「白いものがこすると取れるか」——取れるならカンジダ性の可能性があり、受診の対象です。アフタ性の白い部分はこすっても取れません(無理にこすらないでください)。②「小さな水ぶくれが集まっていないか」——集まっているならウイルス性を疑います。
なぜできるのか|6つの引き金
アフタ性口内炎の原因は、ひとつに絞れないことがほとんどです。次の6つのうち、いくつが当てはまるか見てみてください。
| 引き金 | 具体的には |
|---|---|
| ①栄養の不足 | 鉄、ビタミンB2・B6・B12、葉酸、亜鉛。ダイエット、偏った食事、つわり |
| ②睡眠不足・疲労 | 粘膜の入れ替わりに必要な体力が足りない状態 |
| ③ストレス | 免疫のはたらきや唾液の量に影響します |
| ④物理的な刺激 | 頬を噛む、歯ブラシで傷つける、矯正器具、合わない入れ歯、熱いもの |
| ⑤口の中の乾燥・不衛生 | 口呼吸、水分不足、唾液の減少、歯みがき不足 |
| ⑥体の状態の変化 | ホルモンの変動(生理前・妊娠中)、発熱、持病、薬の影響 |
「ストレスでできる」とよく言われますが、ストレスだけで説明しようとすると対策が「休む」しかなくなります。実際には、休めない時期に食事が乱れ、睡眠が削られ、その結果として起こっていることが多いのです。だから、栄養と睡眠のほうが手をつけやすい入口になります。
生理前に決まってできる方へ
「生理の前になると、必ず口内炎ができる」——この訴えは、婦人科の相談でも珍しくありません。ご自身で気づいて記録している方も多く、実際に規則性があります。
なぜ生理前なのか
はっきりした機序が完全に確立しているわけではありませんが、いくつかの要素が重なると考えられています。
- ホルモンの大きな変動——排卵後から生理前にかけて、プロゲステロンが増え、生理直前に急激に下がります。この落差の時期に、粘膜や免疫の状態が影響を受けると考えられています
- 唾液の量や質の変化——口の中が乾きやすくなる方がいます
- 睡眠の質が落ちる——生理前は眠りが浅くなったり、逆に眠気が強くなったりします
- 食欲と食事内容の変化——甘いものや炭水化物に偏りやすくなり、たんぱく質やビタミンが減りがちです
- その周期のあとに生理が来る——つまり毎月、鉄を失っているということでもあります(後述)
生理前の不調全般はPMS(月経前症候群)として整理されており、肌荒れ・ニキビや微熱と同じように、口内炎も「その時期に出やすい症状」のひとつとして捉えられます。
周期と結びついているか、確かめる方法
もし「なんとなく生理前が多い気がする」という段階なら、3周期だけ記録してみてください。スマホのメモでも、生理管理アプリのメモ欄でも構いません。
- 口内炎ができた日
- 生理が始まった日
- できた場所と個数(「舌の右側に1つ」など)
3周期分そろうと、「生理の◯日前に決まってできる」という形が見えてきます。これがあると、婦人科でも「周期と関係しているようです」と具体的に相談できます。
低用量ピルを飲んでいる方・検討している方へ
ホルモンの変動が引き金になっているのなら、変動をならす方法があるのでは——と考える方もいます。実際、低用量ピルはPMSの症状に対して用いられることがあります。
ただし、口内炎そのものを目的にピルを使うという考え方は一般的ではありません。また、ピルの副作用として口内炎が挙げられているわけでもありません。PMS全体がつらく、そのなかに口内炎も含まれている、という状況であれば、婦人科で相談する価値はあります。副作用も含めて説明を受けたうえで判断してください。
妊娠中の口内炎|増える理由と薬のこと
妊娠中に口内炎が増えた、という方はとても多くいます。理由がいくつも重なる時期だからです。
妊娠中に増える理由
| 理由 | 説明 |
|---|---|
| つわりで食事が偏る | 食べられるものが限られ、炭水化物と冷たいものに偏りやすい時期。ビタミンB群・鉄・亜鉛が不足しがちです |
| 歯みがきがつらい | 歯ブラシを口に入れると吐き気が出るため、口の中の環境が悪くなりやすい |
| 唾液の変化 | 唾液が増える方もいれば、口が乾く方もいます。どちらも口内環境に影響します |
| ホルモンの影響 | 歯ぐきが腫れやすくなる(妊娠性歯肉炎)時期でもあります |
| 鉄の需要が増える | 赤ちゃんに優先的に鉄が使われるため、妊娠中は鉄が不足しやすい |
| 睡眠が細切れになる | 後期は頻尿や体勢のつらさで眠りが浅くなります |
つわりの時期にできることは限られている、という前提で
「バランスよく食べましょう」という助言が、いちばん役に立たない時期でもあります。つわりのさなかに栄養を整えるのは現実的ではありません。
この時期は、「食べられるものを食べる」で構いません。そのうえで、口内炎の対策としては次の点を優先してください。
- うがいだけでもする——歯みがきがつらい日は、水やぬるま湯でのうがいだけでも口内環境が変わります
- ヘッドの小さい歯ブラシに替える——奥まで入れずに済み、吐き気が出にくくなります
- 食後すぐが無理なら、体調のいい時間帯に磨く——タイミングをずらすだけで続けられることがあります
- 水分をこまめに——口の乾燥を避けます
- 市販の口内炎の薬を自己判断で使わないでください。塗り薬・貼り薬・うがい薬・のみ薬、いずれも成分によって考え方が違います
- 薬局で買う場合も、必ず「妊娠中(授乳中)です」と伝えてから選んでください
- ビタミン剤・サプリメントも同じです。妊娠中は摂りすぎに注意が必要な栄養素があります
- 妊婦健診で相談してよい症状です。「口内炎ができやすくて食事がつらいです」と伝えてください
- 歯科健診は妊娠中も受けられます。多くの自治体で妊婦歯科健診の制度があります。「妊娠中です」と伝えたうえで受診してください
繰り返す口内炎と「鉄不足」
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。
毎月血を失っている、ということ
生理のある女性は、毎月、鉄を失っています。これは病気ではなく通常のことですが、失う量と入ってくる量の収支で考えると、女性は常に鉄が減る方向に傾いています。
鉄が不足すると、酸素を運ぶ力が落ちるだけでなく、入れ替わりの早い組織——粘膜、皮膚、髪、爪——から影響が出ます。口の粘膜は、まさにその代表です。
だから、「口内炎が毎月のようにできる」「口角が切れる」「舌がひりひりする」「爪が割れやすい」「髪が抜ける」——これらが同時に起きているなら、鉄の状態を一度確認する価値があります。
「貧血はないと言われました」でも足りていないことがある
ここが重要なところです。
健康診断で調べるヘモグロビンは、いわば「今、血液の中で働いている鉄」の量です。一方、体には貯蔵鉄(フェリチン)という蓄えがあります。
鉄が足りなくなるとき、体はまず貯蔵鉄から使います。だから、貯蔵鉄が減っていってもヘモグロビンはしばらく正常のままです。ヘモグロビンが下がるのは、蓄えを使い切ったあと——つまりかなり進んでからです。
- 健診で「貧血なし」=ヘモグロビンは足りているということ
- しかし貯蔵鉄(フェリチン)が減っている段階では、健診に出てきません
- この段階でも、粘膜のトラブル・だるさ・抜け毛・爪の変化は起こりえます
- フェリチンは健診の標準項目ではないため、頼まないと測られません
詳しくは生理と貧血・鉄不足で解説しています。経血量が多い方、生理が8日以上続く方、子宮筋腫を指摘されている方は特に、一度確認しておくと安心です。
検査を頼むときの言い方
フェリチンの検査は、こちらから頼まないと行われないことがほとんどです。難しく考えず、次のように伝えれば通じます。
- 「口内炎を繰り返していて、鉄が足りていないか気になります。フェリチンも測っていただけますか」
- 経血量が多い自覚があるなら「生理の量が多いほうだと思います」と添える
- 受診先は内科・婦人科のどちらでも構いません。生理の量が気になるなら婦人科のほうが話が早いことがあります
鉄は「足りないなら飲めばいい」という単純なものではありません。過剰になると体に負担がかかることがあり、また、鉄が足りない背景に別の原因(消化管からの出血など)が隠れていることもあります。まず測る、それから考える——この順番をおすすめします。妊娠中・授乳中の方は特に、必ず医師に相談してください。
ビタミンB群・亜鉛の話
口内炎といえばビタミンB2、というイメージをお持ちの方も多いと思います。実際、粘膜の健康には複数の栄養素が関わっています。
| 栄養素 | 粘膜との関わり | 多く含む食品 |
|---|---|---|
| ビタミンB2 | 皮膚や粘膜の健康維持に関わります | レバー、卵、納豆、乳製品、うなぎ、きのこ |
| ビタミンB6 | たんぱく質の代謝に関わります | まぐろ、かつお、鶏肉、バナナ、にんにく |
| ビタミンB12・葉酸 | 血液をつくるはたらきに関わります | B12=あさり、レバー、魚介/葉酸=ほうれん草、ブロッコリー、枝豆 |
| 鉄 | 粘膜の入れ替わりと酸素の運搬に関わります | 赤身肉、レバー、あさり、小松菜、大豆製品 |
| 亜鉛 | 細胞の新生・味覚に関わります | 牡蠣、牛赤身肉、チーズ、ナッツ、卵 |
| たんぱく質 | 粘膜そのものの材料。これが足りないと他をいくら足しても追いつきません | 肉、魚、卵、大豆製品、乳製品 |
サプリを買う前に、一度だけ確認したいこと
「ビタミンBのサプリを飲めばいい」と考える前に、直近1週間の食事を思い出してみてください。朝を抜いていないか、昼が麺類やパンだけになっていないか、夜が遅くて軽く済ませていないか。
とくにたんぱく質は、意識しないと減ります。ダイエット中の方、忙しい方、つわり中の方は、ここが土台から抜けていることがあります。ビタミンは「材料を使う道具」で、たんぱく質は「材料そのもの」と考えると分かりやすいと思います。
そのうえでサプリメントを使うのは、選択肢のひとつです。ただし妊娠中・授乳中の方、持病のある方、他の薬を飲んでいる方は、医師や薬剤師に相談してからにしてください。
更年期の口の乾きと口内炎
40代後半から50代にかけて、「口の中が乾く」「舌がひりひりする」「味がわかりにくい」と感じる方が増えます。舌の見た目そのものが気になる場合は舌が白いときもあわせて読んでみてください。
唾液には、粘膜を守る役割がある
唾液は、単に食べ物を飲み込みやすくするだけのものではありません。口の中を洗い流し、細菌の増殖を抑え、粘膜を保護しています。唾液が減ると、口の中は傷つきやすく、治りにくい環境になります。
更年期に口の乾きを感じやすくなる背景には、エストロゲンの減少に伴う粘膜の変化、自律神経の影響、飲んでいる薬の影響(一部の薬には口が乾く作用があります)などが考えられています。
また、寝汗やホットフラッシュで水分を失っているのに、頻尿が気になって水分を控えている——という組み合わせも、口の乾きを強めます。これはこむら返りのところでもお話しした構造と同じです。
口の乾きへの対処
- こまめに少しずつ水を飲む——一度に大量に飲むより効果的です
- よく噛む——噛むことで唾液が出ます。硬いものが無理なら、噛む回数を意識するだけでも
- 口呼吸になっていないか確認する——鼻づまりがあるなら、そちらの対処も
- ドライマウス用の保湿ジェルやスプレー——歯科や薬局で相談できます
- 飲んでいる薬を確認する——口が乾く作用のある薬があります。医師・薬剤師に相談を
口の乾きと目の乾きが同時に続いている場合、シェーグレン症候群という自己免疫の病気が背景にあることがあります。患者さんの大多数が女性で、40〜60代に多いと知られています。「更年期だから」で片づける前に、強い口の乾き・目の乾き・関節の痛みが重なっているなら、内科やリウマチ科で相談してみてください。橋本病など他の自己免疫の病気を合併することもあります。
できる場所でわかること
できた場所によって、考えられる原因や注意点が少し変わります。
| 場所 | 考えられること・注意点 |
|---|---|
| 舌(上面・先) | 食べ物や歯が当たりやすく、痛みを強く感じる場所。ひりひりする感じが広い範囲に続くなら、鉄・ビタミン不足や口の乾きも考えます |
| 舌の側面(横) | 歯が当たって繰り返すことが多い場所。同じ場所に何度もできる/2週間以上治らない場合は必ず受診してください |
| 唇の裏・内側 | アフタ性の好発部位。噛んだ傷から始まることも |
| 頬の内側 | 噛みぐせ、歯の詰め物や矯正器具が当たっていることが多い |
| 歯ぐき | 歯みがきの傷、歯周のトラブル、親知らずの周囲の炎症のことも |
| 喉の奥・扁桃のあたり | ウイルス感染に伴うことがあります。発熱・強い喉の痛みを伴うなら受診を |
| 口の上(口蓋) | やけどや硬いものによる傷が多い場所。腫れて押すと痛む場合は歯科へ |
| 口角(口の端) | 切れて痛む口角炎。鉄・ビタミンB群の不足のほか、カビの一種が関わることもあり、対応が変わります |
「口の中に血豆ができた」とき
紫〜黒っぽい血の袋のようなものができることがあります。多くは噛んだ・こすれたなどの物理的な刺激によるもので、自然に吸収されていきます。
ただし、何度も繰り返す・大きい・原因に心当たりがない・なかなか消えない場合は、歯科口腔外科での確認をおすすめします。
口唇ヘルペス・手足口病との違い
「口内炎だと思っていたら違った」というケースで多いのが、この2つです。
| アフタ性口内炎 | 口唇ヘルペス | 手足口病 | |
|---|---|---|---|
| できる場所 | 口の中(粘膜) | 唇のふち・皮膚との境目 | 口の中+手のひら・足の裏 |
| 見た目 | 白〜黄色の円形のくぼみ | 小さな水ぶくれが集まる | 小さな水ぶくれ・発疹 |
| 前ぶれ | 特にない | ピリピリ・かゆみが先行 | 発熱・喉の痛み |
| 繰り返し | 繰り返すことがある | 同じ場所に繰り返す | 通常は一度(型が違えば再感染も) |
| 人にうつるか | うつらない | うつる(接触) | うつる(子どもに多い) |
| 対応 | 市販薬で様子を見てよい | 受診を。抗ウイルス薬が使われます | 受診を。大人がかかると重くなることも |
お子さんから、うつることがあります
手足口病は子どもに多い病気ですが、大人がうつると、口の中の痛みが強く出ることがあります。「保育園で流行っている」「子どもが最近かかった」という心当たりがあり、口の中が広く痛むなら、単なる口内炎ではない可能性があります。
また、妊娠中の方は特に、感染症についてはご自身で判断せず産科に相談してください。
なお、ヘルペスウイルスの仲間には、帯状疱疹や性器ヘルペスを起こすものもありますが、それぞれ別のウイルスによる別の病気です。混同しないようにしてください。
唇のふちに小さな水ぶくれが集まっていて、出る前にピリピリした前ぶれがあったなら、口内炎ではなく口唇ヘルペスかもしれません。うつる期間や、やってはいけないことは口唇ヘルペスの記事にまとめています。
また、口のなかではなく唇の表側が乾いて皮むけし、なかなか治らないという場合は口唇炎です。こちらは塗っているリップが原因になっていることがあります。
2週間治らないとき|口腔がんとの見分け
ここは、不安をあおるためではなく、目安をはっきり持っていただくために書きます。
まず、大多数は心配のいらない口内炎です
口内炎は非常にありふれた症状で、そのほとんどはアフタ性やカタル性のものです。「口内炎ができた=がんを疑う」という話ではまったくありません。
ただし「2週間」は目安として覚えておいてください
ふつうのアフタ性口内炎は、1〜2週間で自然に治ります。だからこそ、2週間を超えても治らない口の中の傷は、一度みてもらうという目安が広く使われています。
| ふつうの口内炎 | 受診を考えたい所見 | |
|---|---|---|
| 経過 | 1〜2週間で治る | 2週間以上治らない、だんだん大きくなる |
| 形 | 円形・楕円形で境目がはっきり | 形がいびつ、境目がはっきりしない |
| 硬さ | まわりは柔らかい | しこりのように硬い、盛り上がっている |
| 色 | 白〜黄色のくぼみ+赤い縁 | 赤や白の斑がまだらに広がる |
| 痛み | しみるように痛い | 痛みが少ないのに大きいことも |
| 出血 | 通常はしない | 触れると出血する |
| 場所 | どこでも | 舌の側面・舌の裏・口の底に多いとされます |
| その他 | — | 首のリンパ節の腫れ、しびれ、ぐらつく歯 |
- 2週間以上治らない
- 同じ場所に何度も繰り返す(歯や詰め物が当たり続けていないかも確認を)
- 大きくなっていく、硬い、出血する
- 食事や会話に支障が出るほど痛む
- 発熱を伴う、口の中に広くできている
- 一度に何個もできる、年に何度も繰り返す
受診先は歯科口腔外科が基本です。「2週間治らないので、念のためみていただきたいのですが」と伝えれば十分です。
何度も繰り返すなら|ベーチェット病という可能性
口内炎を繰り返す方に、ぜひ知っておいていただきたい病気があります。
ベーチェット病とは
ベーチェット病は、全身に炎症を繰り返す病気で、指定難病のひとつです。頻度は高くありませんが、ほとんどの方で最初に現れる症状が、繰り返す口内炎(口腔内のアフタ)だと知られています。
特徴として、次のような症状が組み合わさることがあります。
- 繰り返す口内炎(何度も、複数個できる)
- 外陰部の潰瘍——デリケートゾーンに痛みを伴う潰瘍ができる
- 皮膚の症状——にきびのような発疹、脚に赤くて痛いしこり(結節性紅斑)
- 目の症状——目の痛み、充血、かすみ、まぶしさ
外陰部の潰瘍は、性感染症と間違われやすい症状です。デリケートゾーンに痛い潰瘍ができると、多くの方はまず性感染症を心配し、受診をためらいます。けれど「口内炎を繰り返している」ことと「外陰部の潰瘍」が同じ時期に起きているなら、その2つは別々の出来事ではないかもしれません。受診したときに「口内炎も繰り返しています」と伝えることが、診断への大きな手がかりになります。
- 口内炎を年に何度も、複数個繰り返す
- それに加えて外陰部にも痛い潰瘍ができたことがある
- 目の痛み・充血・見えにくさを伴う(目の症状は早めの受診が大切です)
- 脚に赤くて痛いしこりができる
- にきびのような発疹が繰り返し出る
受診先は内科・リウマチ科・膠原病内科です。目の症状があれば眼科も。頻度の高い病気ではないので過度に心配する必要はありませんが、この組み合わせを知らずに何年も別々の科を回ることがあるため、あえて記載しています。
そのほか、繰り返す背景として考えられること
- 鉄・ビタミンB群・亜鉛の不足(前述。頻度としてはこちらのほうがずっと多い)
- 消化管の病気——クローン病、潰瘍性大腸炎など。下痢や腹痛が続いている場合は伝えてください
- 甲状腺の病気——橋本病など
- 免疫を抑える治療中
- 歯や詰め物・矯正器具が当たり続けている——同じ場所に繰り返すならこれが最有力
市販薬・パッチ・病院の薬
薬局にはたくさんの種類が並んでいて、どれを選べばいいか迷うと思います。タイプごとの特徴を知っておくと選びやすくなります。
| タイプ | 特徴 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 貼るタイプ(パッチ) | 患部を物理的に覆います | 食事や歯が当たって痛い、平らな場所にできた |
| 塗るタイプ(軟膏・ゲル) | 患部に直接塗ります | 複数個ある、貼りにくい場所 |
| スプレータイプ | 手が届きにくい場所にも使えます | 喉に近い場所、奥のほう |
| うがい薬 | 口の中全体の清潔を保ちます | 広い範囲、歯みがきがつらいとき |
| のむタイプ(ビタミン剤) | 体の内側から粘膜の健康を支える目的 | 繰り返す、食事が偏っている自覚がある |
- 妊娠中・授乳中である(成分によって選び方が変わります)
- 持病がある、ほかに薬を飲んでいる(お薬手帳を見せてください)
- この口内炎が何日目か、繰り返しているか
- 白いものがこすると取れる場合は、市販薬の前に受診を。カンジダ性であれば対応が異なります
市販薬を使って1週間ほど経っても変化がない、あるいは悪化するときは、使い続けずに受診してください。
病院ではどうするか
歯科・歯科口腔外科では、まず見て確認し、必要に応じて塗り薬や貼り薬が処方されます。物理的な刺激が原因になっている場合は、とがった歯を丸める、詰め物や入れ歯を調整するといった処置で繰り返しが止まることがあります。これは市販薬では解決できない部分です。
繰り返している場合は、内科で血液検査(鉄・フェリチン・ビタミン・炎症の値など)を提案されることもあります。
何科に行けばいいか
| 状況 | 受診先 |
|---|---|
| ふつうの口内炎で、痛みが強い・治りが遅い | 歯科・歯科口腔外科 |
| 2週間以上治らない、硬い、出血する | 歯科口腔外科 |
| 同じ場所に繰り返す(歯や詰め物が当たる) | 歯科(調整で改善することがあります) |
| 喉の奥・発熱を伴う | 耳鼻咽喉科、内科 |
| 繰り返す+だるさ・抜け毛・爪の変化 | 内科(血液検査を相談) |
| 繰り返す+経血量が多い | 婦人科(鉄と生理の両方を相談できます) |
| 繰り返す+外陰部の潰瘍・目の症状 | 内科・リウマチ科(+眼科) |
| 妊娠中 | まず妊婦健診で相談。歯科は「妊娠中です」と伝えて受診 |
| 白いものがこすると取れる | 歯科・歯科口腔外科・内科 |
しみない食べ物・避けたい食べ物
痛くて食べられないと、栄養が足りなくなり、さらに治りが遅くなります。食べられるものを食べることが、遠回りのようで近道です。
| 食べ物 | |
|---|---|
| しみにくいもの | 茶碗蒸し、豆腐、卵料理、おかゆ、うどん(ぬるめ)、ヨーグルト、牛乳、バナナ、じゃがいも、白身魚、ポタージュ(熱くしすぎない) |
| しみやすいもの | 柑橘類、トマト、酢の物、梅干し、香辛料、キムチ、炭酸飲料、熱いスープ、塩気の強いもの |
| 傷つけやすいもの | せんべい、フランスパン、揚げ物の衣、ナッツ、乾いた海苔 |
痛くて噛めない日の、たんぱく質の摂り方
「粘膜の材料はたんぱく質」とお伝えしましたが、いちばん必要なときにいちばん噛めない——というのが口内炎の困ったところです。噛まずに摂れる形を知っておくと、この数日をしのげます。
| 形 | 具体例 |
|---|---|
| そのまま飲める | 牛乳、豆乳、飲むヨーグルト、ポタージュ(ぬるめ)、たんぱく質入りの飲料 |
| スプーンで食べられる | 茶碗蒸し、卵豆腐、絹ごし豆腐、ヨーグルト、温泉卵、プリン |
| ほぐせば噛まずに済む | 白身魚の煮つけ、鮭のほぐし身、ツナ、ひき肉のあんかけ、豆腐ハンバーグ |
| 混ぜて栄養を足す | おかゆに卵を落とす/うどんに温泉卵/ポタージュに豆乳/ヨーグルトにきなこ |
コツは「1品足す」ではなく「今食べているものに混ぜる」ことです。おかゆに卵、うどんに温泉卵、スープに豆乳——それだけで、噛む回数を増やさずにたんぱく質が入ります。
栄養を落とさない工夫
- たんぱく質は、やわらかい形で——卵、豆腐、ヨーグルト、白身魚、ひき肉。「噛まなくていい形」にすれば摂れます
- 温度をぬるめに——熱いだけで痛みが強くなります。人肌程度に冷ますだけでかなり違います
- ストローを使う——患部を避けて飲めることがあります
- 小さく切る・とろみをつける——口の中での移動が減り、当たりにくくなります
- 食後のうがい——食べかすが残ると刺激になります
通説と裏ワザの検証
口内炎には、昔から言われている「裏ワザ」がたくさんあります。ひとつずつ見ていきます。
①「塩をすりこむ」→ すすめられません
強い痛みを伴ううえ、粘膜をさらに傷める可能性があります。殺菌のつもりでも、傷を深くしては本末転倒です。薄い塩水でうがいをする程度にとどめてください。
②「はちみつを塗る」→ 塗るなら刺激の少なさが利点。ただし条件つき
はちみつは粘膜を覆うため、しみにくく感じる方はいます。ただし1歳未満の乳児には絶対に与えないでください(乳児ボツリヌス症の危険があります)。また、糖分が口に残ると口内環境には良くないので、使ったあとはうがいを。
③「チョコレートやナッツを食べるとできる」→ 直接の原因とは言えません
特定の食品が引き金になる方はいますが、誰にでも当てはまるものではありません。ナッツやせんべいは物理的に粘膜を傷つけやすいので、その意味では心当たりがあるかもしれません。
④「ビタミン剤を飲めばすぐ治る」→ 予防寄りの位置づけです
粘膜の健康維持に関わる栄養素であることは確かですが、今できているものを即座に消すものではありません。繰り返す方が、食事の見直しとあわせて使うのが現実的な位置づけです。
⑤「口内炎は疲れのサインだから、休めば治る」→ 半分正しい
休息は大切です。ただ、「休めない時期に食事が乱れている」ことのほうが実際の引き金であることが多いので、休むのが無理なら食事と睡眠の質から手をつけるほうが現実的です。
⑥「口内炎は人にうつる」→ 種類によります
アフタ性口内炎はうつりません。ただしウイルス性のもの(口唇ヘルペス、手足口病など)はうつります。水ぶくれが集まっている、発熱を伴うときは、その前提で考えてください。
⑦「歯みがきをすると悪化するから、治るまで磨かない」→ 逆効果です
口の中が不衛生になると治りが遅くなります。患部を避けてやさしく磨き、うがいを増やすのが正解です。
繰り返さないために
できてしまったものへの対処より、繰り返さないことのほうが、結果的に楽になります。
痛い日の仕事と生活をどう乗り切るか
口内炎は休むほどのことではない——と多くの方が考えます。実際その通りなのですが、話すたびに痛む、食事のたびに痛むという状態で一日を過ごすのは、思っている以上に消耗します。場面ごとに、少しずつ楽にする方法があります。
| 場面 | できること |
|---|---|
| 人と話す仕事・接客 | 話す前に水をひと口含んで口を潤す。乾いた状態で話すといちばん痛みます。貼るタイプの薬で覆っておくと、当たる刺激が減ります |
| 会議・電話が続く日 | 手元に水を置いておく。長く話す予定の前に食事を済ませない(食後は患部が敏感になります) |
| 昼食(外・社食) | 麺類は熱さでしみるので少し冷ましてから。定食なら茶碗蒸し・冷奴・卵料理を選ぶ。味噌汁は熱いうちに飲まない |
| 会食・飲み会 | アルコールと香辛料は強くしみます。「口内炎がひどくて」と言えば、たいてい理解されます。無理に付き合わない |
| 歯みがき | 毛先の柔らかい歯ブラシに替え、患部だけ避けて磨く。しみる歯みがき粉なら、少量にするか一時的に水だけで磨く |
| 夜 | 寝る前のうがいを習慣に。口が乾いた状態で寝ると朝いちばん痛みます。口呼吸になりやすい方は加湿を |
| 家事・育児 | この数日は簡単な食事で構いません。自分が食べられるものと家族の食事を無理に揃えなくていい |
子どもに口内炎ができたとき
お子さんの口内炎は、大人以上に「食べられない」ことが問題になります。判断のポイントを挙げます。
- 水分がとれていない——おしっこの回数が減っている、機嫌が悪く元気がない。これがいちばん重要な目安です
- 発熱を伴う——ウイルス性(手足口病、ヘルパンギーナ、ヘルペス性歯肉口内炎など)の可能性
- 口の中に一度にたくさんできている
- 手のひら・足の裏・おしりに発疹がある——手足口病を疑います
- よだれが増えた、食事も水分も強く嫌がる
受診先は小児科です。口の中だけの問題なら歯科でも構いませんが、発熱や発疹を伴うなら小児科を優先してください。
食べられないときは、食事より水分を優先してください。冷たい麦茶、経口補水液、ゼリー飲料、アイスやプリンなど、冷たくてしみにくいものなら受けつけることがあります。柑橘系のジュースは強くしみるので避けてください。
なお、お子さんがウイルス性の口内炎の場合、大人にうつることがあります。看病した親が数日後に口の中を痛がる、というのはよくある流れです。見分け方を参考にしてください。
今日から変えられること
- 毎食にたんぱく質を1品——卵、豆腐、納豆、ヨーグルト、魚、肉のどれか。粘膜の材料です
- 水分をこまめに——口の乾燥は口内炎の土台になります
- 寝る前の歯みがきを飛ばさない——1日1回だけ丁寧にするなら、夜がおすすめです
- 歯ブラシを毛先の柔らかいものに——磨くときに傷つけているケースは案外多いです
- 睡眠を30分早める——「たっぷり寝る」は難しくても、これならできることがあります
年単位で考えたいこと
- 歯科で定期的にみてもらう——とがった歯、合わない詰め物や入れ歯が原因なら、それを直すのが根本的な対処です
- 健診で貧血の項目を確認する。「貧血なし」でも、繰り返すならフェリチンの相談を
- 生理の量が多いと感じているなら、婦人科で相談する——鉄が減り続ける原因そのものに手をつけられることがあります
- 極端な食事制限をしない——短期間で体重を落とす食事は、粘膜への影響が出やすくなります(食事の考え方)
よくある質問
Q 口内炎を最速で治す方法はありますか?
A.残念ながら、今日中に消す方法はありません。できるのは治りを邪魔しないことです。具体的には、①口の中を清潔に保つ(患部を避けてやさしく歯みがき+こまめなうがい)②刺激を減らす(熱い・辛い・酸っぱい・硬いものを避ける)③貼るタイプの薬で患部を覆う④水分をとる⑤睡眠を確保する。塩をすりこむ、アルコールで消毒するといった方法は、粘膜を傷めるためすすめられません。ふつうのアフタ性口内炎なら1〜2週間で自然に治ります。
Q 口内炎ができやすい人の特徴は?
A.睡眠不足・疲労が続いている方、食事が偏っている方(特にたんぱく質・鉄・ビタミンB群・亜鉛が不足しがちな方)、口の中が乾きやすい方、歯や詰め物・矯正器具が当たっている方、そして経血量が多く鉄を失いやすい女性です。妊娠中も、つわりによる食事の偏りと歯みがきのつらさから増えやすくなります。「同じ場所に繰り返す」なら、まず歯や詰め物が当たっていないかを歯科で確認してください。
Q 口内炎は何か栄養が不足しているからできるのですか?
A.栄養不足は主要な引き金のひとつですが、それだけではありません。関わるのはビタミンB2・B6・B12、葉酸、鉄、亜鉛、そしてたんぱく質です。見落とされやすいのがたんぱく質で、これは粘膜そのものの材料です。ビタミンだけ足しても、材料が足りなければ追いつきません。また女性の場合、毎月の生理で鉄を失い続けているという土台があります。繰り返すなら、栄養だけでなく睡眠・口の乾燥・物理的な刺激もあわせて見直してください。
Q 生理前になると必ずできます。どうしたらいいですか?
A.珍しいことではありません。排卵後から生理前にかけてのホルモンの変動、唾液の変化、睡眠の質の低下、食事の偏り(甘いものや炭水化物に傾きやすい)が重なります。まず3周期だけ「口内炎ができた日」と「生理が始まった日」を記録してみてください。周期との関係がはっきりすると対策が立てやすくなり、婦人科でも具体的に相談できます。そのうえで、生理前の1週間はたんぱく質を意識し、就寝を30分早める——これだけでも変わることがあります。
Q 健診で「貧血なし」でしたが、鉄不足はありえますか?
A.ありえます。健診で見るヘモグロビンは「今、働いている鉄」で、体には貯蔵鉄(フェリチン)という蓄えが別にあります。鉄が減るとき体はまず蓄えから使うため、フェリチンが減ってもヘモグロビンはしばらく正常のままです。この段階でも粘膜のトラブル・だるさ・抜け毛・爪の変化は起こりえます。フェリチンは健診の標準項目ではないので、「フェリチンも測っていただけますか」と自分から頼む必要があります。ただし鉄のサプリを自己判断で飲み続けるのは避け、まず測ってからにしてください。
Q 妊娠中です。市販の口内炎の薬を使ってもいいですか?
A.自己判断で使わないでください。塗り薬・貼り薬・うがい薬・のみ薬、いずれも成分によって考え方が変わります。薬局で選ぶ場合も、必ず「妊娠中(授乳中)です」と最初に伝えてください。ビタミン剤やサプリメントも同様で、妊娠中は摂りすぎに注意が必要な栄養素があります。妊婦健診で相談してよい症状ですし、歯科健診も妊娠中に受けられます(多くの自治体に妊婦歯科健診の制度があります)。まずは、うがいを増やす・ヘッドの小さい歯ブラシに替える・体調のいい時間帯に磨く、といった負担の少ない工夫から始めてください。
Q 2週間以上治りません。がんの可能性はありますか?
A.大多数は心配のいらない口内炎です。ただし「2週間以上治らない口の中の傷は一度みてもらう」という目安は覚えておいてください。特に、形がいびつ・境目がはっきりしない・しこりのように硬い・触れると出血する・だんだん大きくなる・舌の側面や裏、口の底にできているといった所見があれば、早めに歯科口腔外科を受診してください。「2週間治らないので、念のためみていただきたいのですが」と伝えれば十分です。確認して安心できることのほうが、はるかに多いはずです。
Q 年に何度も繰り返します。何か病気が隠れていますか?
A.頻度としていちばん多いのは鉄・ビタミンB群・亜鉛の不足と、歯や詰め物が当たり続けていることです。まずはこの2つを確認してください。そのうえで、外陰部の痛い潰瘍・目の痛みや充血・脚の赤いしこりが同じ時期に起きているなら、ベーチェット病という病気の可能性があり、内科やリウマチ科での相談をおすすめします。頻度の高い病気ではありませんが、受診時に「口内炎も繰り返しています」と伝えることが診断の手がかりになります。ほかに消化管の病気や甲状腺の病気が背景にあることもあります。
Q 白い部分がこすると取れます。ふつうの口内炎ですか?
A.アフタ性口内炎の白い部分は、こすっても取れません。白い苔のようなものがこすると取れる場合は、カンジダ性口内炎の可能性があります。これは口の中に常在するカビ(真菌)が増えた状態で、ふつうの口内炎の薬とは対応が異なります。体調不良、抗菌薬の使用、入れ歯、口の乾燥などが背景にあることが多く、受診が必要です。無理にこすらず、歯科・歯科口腔外科または内科を受診してください。
Q 痛くて食べられません。どうすればいいですか?
A.食べないと栄養が足りず、かえって治りが遅くなります。しみにくいもの——茶碗蒸し、豆腐、卵料理、おかゆ、ヨーグルト、白身魚、バナナ、ポタージュ(ぬるめ)——を選んでください。柑橘・トマト・酢の物・香辛料・炭酸・熱いもの・塩気の強いものはしみます。せんべいやナッツ、フランスパンは物理的に傷つけます。コツは温度を人肌程度に冷ますことと、やわらかい形でたんぱく質を摂ること。ストローを使うと患部を避けて飲めることもあります。
まとめ
口内炎は、小さくてありふれていて、けれど確実に生活の質を下げます。そして「疲れているから」で片づけられやすい症状でもあります。
一度きりなら、休んで、しみないものを食べて、治るのを待てば十分です。けれど毎月のように繰り返しているなら、そこには理由があります。生理前のホルモンの変動かもしれませんし、毎月失い続けている鉄かもしれませんし、当たり続けている歯かもしれません。
「体質だから仕方ない」と何年も付き合ってきた方こそ、一度フェリチンを測る、歯科でみてもらう——このどちらかを試してみてください。何年も繰り返してきたものが、意外にあっさり落ち着くことがあります。
- ふつうのアフタ性口内炎は1〜2週間で自然に治る。できるのは治りを邪魔しないこと
- 塩をすりこむ・アルコールで消毒するのは避ける。歯みがきをやめるのも逆効果
- 白いものがこすると取れるならカンジダ性の可能性。市販薬の前に受診を
- 水ぶくれが集まっているならウイルス性の可能性。人にうつることがある
- 生理前に繰り返すのは珍しくない。3周期記録すると周期との関係が見える
- 妊娠中は、つわり・歯みがきのつらさ・鉄の需要増が重なる。薬もサプリも自己判断で使わない
- 繰り返す人が見落としがちなのが鉄。健診の「貧血なし」はフェリチン不足を否定しない
- 粘膜の材料はたんぱく質。ビタミンだけ足しても追いつかない
- 更年期は口の乾きが増える。口と目の乾きが揃うならシェーグレン症候群も念頭に
- 2週間以上治らない口の中の傷は一度みてもらう。硬い・出血する・いびつなら早めに歯科口腔外科へ
- 年に何度も繰り返し、外陰部の潰瘍や目の症状を伴うならベーチェット病の可能性。受診時に「口内炎も繰り返しています」と伝える
- 同じ場所に繰り返すなら、歯や詰め物が当たっていないか歯科で確認を。調整で止まることがある
参考文献
- 日本口腔外科学会「口内炎・口腔粘膜疾患について」
- 日本歯科医師会「口腔の健康と全身の健康」
- 難病情報センター「ベーチェット病(指定難病56)」
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」
- 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン 産科編」
- 日本口腔ケア学会「口腔乾燥症(ドライマウス)について」
- 日本血液学会「鉄欠乏性貧血の診療に関する指針」