生理中に急に立ちくらみがする、生理前になると頭がぼーっとして集中できない。「生理だから仕方ない」と受け流している方は多いのですが、こうしためまいの背景には、経血として失われる鉄分と、女性ホルモンの変動という2つの要因が関わっています。

特に経血量が多い方(過多月経)は、毎月の出血によって体内の鉄が慢性的に不足し、気づかないうちに「隠れ貧血」が進行しているケースが少なくありません。一方で、貧血ではなく自律神経の乱れによる一時的な立ちくらみのこともあり、原因によって必要な対策は異なります。

この記事では、産婦人科で13年間助産師として働いてきた立場から、生理に伴う貧血・めまいが起こるメカニズム、放っておくとどうなるか、今日から試せる対策、婦人科を受診すべきサインまでを詳しく解説します。

生理中・生理前に貧血・めまいが起こる原因

木製トレイに赤身肉・ゆで卵・海苔で包んだ料理・大豆・葉野菜が並ぶフラットレイ。鉄分を意識した食材のイメージ

生理にまつわるめまいには、主に3つの原因が考えられます。それぞれ仕組みが異なるため、まずは自分の症状がどのタイプに近いかを知ることが対策の第一歩です。

経血による鉄分の喪失(鉄欠乏性貧血)

月経は毎月一定量の血液を体外に排出する生理現象です。血液中のヘモグロビンは鉄を材料にして酸素を全身に運んでいるため、経血量が多いほど体外に失われる鉄の量も増えます。

体内の鉄は、食事から補給される量と経血で失われる量のバランスで保たれています。もともと鉄の摂取量が少ない、あるいは経血量が多い方は、この収支がマイナスに傾き、体内の貯蔵鉄(フェリチン)が徐々に減少していきます。フェリチンが枯渇すると血液中のヘモグロビン濃度そのものが下がり、鉄欠乏性貧血という状態になります。

貧血になると全身への酸素供給が不足するため、脳への酸素供給も低下し、めまい・立ちくらみ・頭がぼーっとする感覚として自覚されます。これが、生理中から生理後半にかけてめまいを感じやすくなる最大の理由です。

自律神経の乱れによる立ちくらみ

貧血がなくても、生理前後にめまいを感じることがあります。これは、排卵後に増加するプロゲステロンと、生理前に急降下するエストロゲンの変動が、血管の収縮・拡張を調整する自律神経に影響を与えるためです。

自律神経が乱れると、座った状態や横になった状態から急に立ち上がったときに血圧の調整が追いつかず、一時的に脳への血流が減少します。これが起立性のめまい・立ちくらみで、貧血がなくても起こりうる症状です。もともと血圧が低め、冷え性の方はこの傾向が強く出やすくなります。

迷走神経反射(強い生理痛によるめまい)

生理痛が強い場合、痛みという強いストレスが迷走神経を刺激し、血圧・脈拍が急激に低下する迷走神経反射が起こることがあります。症状としては、急な吐き気・冷や汗・顔面蒼白・意識が遠のくような感覚が特徴で、採血中に気分が悪くなる現象と同じメカニズムです。

強い月経困難症がある方ほどこのタイプのめまいを経験しやすく、痛みそのものの管理が、めまいの予防にもつながります。

生理のめまい・3つの原因まとめ
  • 経血による鉄分喪失で起こる「鉄欠乏性貧血」(生理後半〜終了後に出やすい)
  • ホルモン変動による自律神経の乱れで起こる「起立性の立ちくらみ」(生理前後に出やすい)
  • 強い生理痛のストレスで起こる「迷走神経反射」(生理痛のピークと同時に出やすい)

貧血のめまい?チェックリスト

「ただの立ちくらみ」なのか「貧血が進行しているサイン」なのかを見分けるには、めまい以外の症状も合わせて確認することが大切です。以下の項目に複数当てはまる場合は、貧血が背景にある可能性があります。

  • 階段や坂道で以前より息切れしやすくなった
  • 立ち上がったときだけでなく、じっとしていても動悸がする
  • 顔色が青白い、または黄色っぽいと人から指摘される
  • まぶたの裏(結膜)の赤みが薄い
  • 爪が薄くなり反り返る、割れやすくなった(スプーンネイル)
  • 氷や土など食べ物ではないものを無性に食べたくなる(氷食症)
  • 以前より疲れやすく、朝から強い倦怠感がある
  • 経血量が多い、レバー状の塊が頻繁に出る
一時的な立ちくらみ 貧血によるめまい
主なきっかけ 急に立ち上がったとき・長時間同じ姿勢のあと 特にきっかけがなくても、日常的に繰り返す
持続時間 数秒〜数十秒で治まる 数分続く、あるいは一日中頭が重い
伴う症状 目の前が暗くなる・耳鳴り 動悸・息切れ・強い倦怠感・顔色の悪さ
出やすい時期 生理前後(ホルモン変動時) 生理後半〜終了後(鉄の消費がピークを迎えたあと)

正確に診断するには血液検査(ヘモグロビン値・フェリチン値)が必要です。チェックリストに複数当てはまる場合は、自己判断せず婦人科または内科での血液検査を検討しましょう。

過多月経と鉄欠乏性貧血の悪循環

生理による貧血で特に注意したいのが、経血量が多い「過多月経」の方です。経血量の目安については経血量が多い・少ない原因で詳しく解説していますが、以下のようなサインがある場合は過多月経の可能性があります。

  • 昼用ナプキンが1〜2時間でいっぱいになる
  • 夜用・多い日用ナプキンでも漏れることが多い
  • 500円玉大以上の経血の塊が頻繁に出る
  • 生理期間が8日以上続く
  • 経血量が多い日が3日以上続く

過多月経が続くと、食事から補給できる鉄の量よりも経血で失われる鉄の量の方が多くなり、貯蔵鉄(フェリチン)がどんどん目減りしていきます。フェリチンが減ると鉄欠乏性貧血が進行し、めまい・倦怠感が悪化する、という悪循環に陥ります。

注意:過多月経の背景に婦人科疾患が隠れていることも
経血量が急に増えた、以前より生理期間が長くなった場合は、子宮筋腫子宮腺筋症など、経血量が増える婦人科疾患が関わっていることがあります。「生理だから多くて当たり前」と自己判断せず、経血量の変化を感じたら婦人科でエコー検査を受けることをおすすめします。

貧血になりやすい人の特徴

同じ経血量でも、貧血になりやすい人とそうでない人がいます。以下のような方は、鉄欠乏性貧血のリスクが特に高いといわれています。

  • ダイエット中・食事量が少ない方:肉や魚を控える食生活は、そもそも鉄の摂取量が不足しがちです
  • ベジタリアン・ヴィーガンの方:吸収率の高いヘム鉄(動物性食品)をとる機会が少なく、非ヘム鉄だけでは不足しやすくなります
  • 激しい運動習慣がある方:発汗や足裏への衝撃による赤血球の破壊(スポーツ貧血)で、鉄の消費量が増えます
  • 10代〜20代で成長・月経が重なる時期の方:体の成長に必要な鉄と月経で失う鉄の両方が重なり、需要が高くなります
  • 子宮内避妊具(IUD)のうち銅付加タイプを使用している方:経血量が増える傾向があり、鉄の喪失量も増えやすくなります

これらに当てはまる方は、経血量が特別多くなくても貧血が進行しやすい体質といえます。次の章で紹介するセルフチェックや対策を、より意識して取り入れることをおすすめします。

生理前・生理中・更年期のめまいの違い

めまいは生理に関連するものだけでなく、年代によって背景にある原因が変わります。似ているようで対処法が異なるため、それぞれの特徴を整理しておきましょう。

時期・年代 主な原因 特徴
生理前(黄体期) プロゲステロン・エストロゲンの変動による自律神経の乱れ むくみ・眠気など他のPMS症状と同時に出やすい
生理中〜終了後 鉄欠乏性貧血、強い生理痛による迷走神経反射 経血量が多い方ほど出やすく、倦怠感・動悸を伴いやすい
更年期(40代後半〜50代) エストロゲンの急激な低下による自律神経失調 ほてり・発汗(ホットフラッシュ)を伴うことが多い

生理前のむくみや自律神経の乱れについては生理前のむくみ、基礎体温の変化については基礎体温の測り方もあわせてご覧ください。更年期のめまいについては更年期のめまいで詳しく解説しています。

今すぐできる対策7選

白いテーブルの上に鉄サプリメントのボトルと水の入ったグラス、オレンジが置かれたフラットレイ。鉄分補給のセルフケアのイメージ

①ヘム鉄を多く含む食品を意識してとる

鉄には吸収率の高い「ヘム鉄」と、植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」があります。レバー・赤身の肉・カツオやマグロなどの赤身魚には吸収率の高いヘム鉄が多く含まれており、貧血予防に効率的です。

②非ヘム鉄はビタミンCと一緒にとる

ほうれん草・小松菜・ひじき・大豆製品に含まれる非ヘム鉄は、そのままでは吸収率が低いのが難点です。ビタミンCを多く含む果物や野菜(柑橘類・パプリカ・ブロッコリーなど)と一緒に摂ることで、鉄の吸収率を高めることができます。

③食後すぐの緑茶・コーヒーは控えめに

緑茶・コーヒー・紅茶に含まれるタンニンは、鉄の吸収を妨げる性質があります。貧血が気になる時期は、食事の直前直後の摂取を避け、時間をずらして楽しむようにしましょう。

④立ち上がるときはワンクッション置く

自律神経の乱れによる立ちくらみを防ぐには、座った状態や横になった状態から急に立ち上がらず、一度座り直す・手すりにつかまるなど、ワンクッション置いてゆっくり動くことが効果的です。

⑤こまめな水分・塩分補給

脱水気味になると血液量そのものが減り、めまいが起こりやすくなります。常温の水をこまめに飲み、汗をかきやすい時期は経口補水液などで塩分も適度に補給しましょう。

⑥市販の鉄剤・サプリメントを活用する

食事だけで鉄を十分に補いきれない場合は、薬局で購入できる鉄剤やサプリメントも選択肢になります。ただし、鉄剤は便秘や胃の不快感などの副作用が出ることがあるため、量を守り、体に合わない場合は薬剤師に相談してください。

⑦経血量が多い場合は低用量ピルも選択肢に

過多月経が貧血の根本原因になっている場合、食事やサプリメントだけでは対処しきれないことがあります。低用量ピルには子宮内膜の増殖を抑えて経血量そのものを減らす効果があり、貧血の根本的な改善につながる場合があります。婦人科で相談してみましょう。

対策7選まとめ
  • ヘム鉄(レバー・赤身肉・赤身魚)を意識してとる
  • 非ヘム鉄(ほうれん草・ひじき・大豆)はビタミンCと一緒に
  • 食後すぐの緑茶・コーヒーは控えめにする
  • 立ち上がるときはワンクッション置いてゆっくり動く
  • こまめな水分・塩分補給を意識する
  • 食事で不足する分は鉄剤・サプリメントも活用する
  • 過多月経が原因の場合は低用量ピルで根本改善も検討する

婦人科・内科への受診目安

セルフケアで様子を見てよいめまいと、医療機関での検査が必要なめまいがあります。以下に当てはまる場合は、早めに受診することをおすすめします。

  • 立っていられないほどの強いめまい・失神したことがある
  • じっとしていても動悸・息切れがある
  • 経血量が多く、貧血チェックリストに複数当てはまる
  • 顔色の悪さ・爪の変化を人から指摘された
  • 生活習慣を見直しても倦怠感・めまいが数か月改善しない

婦人科・内科では血液検査でヘモグロビン値とフェリチン値を確認し、鉄欠乏性貧血と診断されれば鉄剤の処方を受けられます。あわせて経血量が多い場合は婦人科でエコー検査を行い、子宮筋腫や子宮腺筋症など経血量を増やす疾患の有無も確認したうえで、低用量ピルなどの治療方針を相談できます。

よくある質問

Q 生理中のめまいは病院に行くべきですか?

A.軽い立ちくらみ程度であれば、水分補給やゆっくり動くことで様子を見て問題ないことが多いです。ただし、動悸・息切れを伴う、経血量が多い、めまいで日常生活に支障が出ている場合は、貧血が進行している可能性があるため婦人科・内科での血液検査をおすすめします。

Q 貧血かどうかは自分でわかりますか?

A.顔色・爪の状態・疲れやすさなどからある程度は推測できますが、正確な診断には血液検査(ヘモグロビン値・フェリチン値)が必要です。特にフェリチン値は貯蔵鉄の量を表し、ヘモグロビン値が正常でもフェリチンだけが低い「隠れ貧血」もあるため、気になる方は血液検査を受けることをおすすめします。

Q 鉄分の多い食事を意識しているのにめまいが治りません。なぜですか?

A.経血量が多い過多月経の場合、食事で補給できる鉄の量よりも、毎月経血で失われる鉄の量の方が多くなっていることがあります。この場合、食事だけで鉄不足を補いきるのは難しく、鉄剤の処方や、経血量そのものを減らす低用量ピルなどの治療が必要になることがあります。婦人科で経血量とあわせて相談してみましょう。

Q 生理前のめまいと生理中のめまいは同じ原因ですか?

A.異なることが多いです。生理前のめまいはホルモン変動による自律神経の乱れが主な原因ですが、生理中〜生理後半のめまいは経血による鉄分喪失(貧血)が関わっていることが多くなります。どちらも起こる方は、自律神経ケアと鉄分補給の両方を意識するとよいでしょう。

Q 市販の鉄剤はどれくらいの期間飲めばよいですか?

A.貯蔵鉄(フェリチン)を回復させるには数か月単位の継続が必要とされています。自己判断で長期間服用を続けるより、婦人科・内科で血液検査を受けたうえで、必要な期間・用量を医師に確認しながら服用するのが安全です。過多月経が根本原因の場合は、鉄剤だけでなく経血量を減らす治療も並行して検討しましょう。

まとめ

この記事のポイントまとめ
  • 生理のめまいには「鉄欠乏性貧血」「自律神経の乱れ」「迷走神経反射」の3つの原因がある
  • 経血量が多い過多月経の方は、鉄欠乏性貧血が進行しやすい
  • 動悸・息切れ・顔色の悪さ・爪の変化を伴う場合は、貧血が背景にある可能性が高い
  • ヘム鉄・ビタミンCを意識した食事、ゆっくり立ち上がる習慣が対策の基本
  • 経血量が多いことが原因の場合、鉄剤や低用量ピルによる根本改善も選択肢
  • 強いめまいや失神、経血量の急な増加は婦人科・内科で血液検査を

毎月のめまいや立ちくらみを「体質だから」と我慢し続ける必要はありません。原因を知り、食事や生活習慣を見直すことで改善できることも多くあります。経血量が多い、めまいが強いという自覚がある方は、我慢せず婦人科での血液検査を検討してみてください。

経血量の目安については経血量が多い・少ない原因、生理痛全般のケアについては生理痛を和らげる方法もあわせてご覧ください。

この記事を書いた人

白石まい(助産師・フェムテックエキスパート)

産婦人科病院で13年間、助産師として延べ2,000件以上の分娩に立ち会う。生理・妊活・更年期など、女性のライフステージに寄り添った健康相談を得意とする。現在はフリーランス助産師として活動しながら、フェムテックエキスパートとして「女性が自分の体をもっと好きになれる社会」を目指してfemnoteで情報を発信中。

参考文献

  • 日本産科婦人科学会「月経困難症・過多月経の診療ガイドライン」
  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)鉄」
  • American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG). "Abnormal Uterine Bleeding." ACOG Practice Bulletin, 2021.
  • Percy L, et al. Iron deficiency and iron deficiency anaemia in women. J Obstet Gynaecol. 2017;37(3):283-294.
  • 日本鉄バイオサイエンス学会「鉄剤の適正使用による貧血治療指針」