妊娠がわかった直後から、多くの方が身構えるのが「つわり」です。いつ始まるのか、どのくらいつらいのか、いつ終わるのか。まだ来ていない人は不安で、すでに始まっている人は「あと何日耐えればいいのか」を知りたい——検索される言葉を見ていると、そのどちらかであることがよくわかります。

この記事は、まず週数のタイムラインから始めます。いつ始まり、いつピークで、いつ抜けるのか。ここがはっきりすると、先が見えます。

そのうえで、多くの記事が触れていない2つのこと——妊娠後期にもう一度来る「後期つわり」と、仕事を休むために使える公的な制度についても書きます。つらさを我慢して乗り切るものだと思われがちですが、法律で守られている部分が実際にあります。

先に結論だけ知りたい方へ
  • 始まるのは妊娠5〜6週ごろ(生理予定日から1〜2週間後)。早い人で4週台
  • ピークは8〜11週。落ち着くのは12〜16週が目安です
  • 水分がとれない・体重が5%以上減ったなら、我慢せず受診してください。点滴で楽になります
  • 仕事は「母性健康管理指導事項連絡カード」で休業や時短を申し出られます。医師に書いてもらう書類で、事業主には対応する義務があります

つわりはいつから?|週数別のタイムライン

いちばん多い疑問から答えます。まず全体像を見てください。

妊娠週数時期つわりの状態その時期の記事
4週妊娠2か月に入るまだない人が大半。早い人で違和感が出始める妊娠2ヶ月
5〜6週妊娠2か月始まる人が最も多い時期妊娠2ヶ月
7週妊娠2か月末症状がはっきりしてくる妊娠2ヶ月
8〜11週妊娠3か月ピーク。いちばんつらい時期妊娠3ヶ月
12〜15週妊娠4か月軽くなり始める人が増える妊娠4ヶ月
16週妊娠5か月多くの人が抜ける。安定期に入る妊娠5ヶ月
20週以降妊娠6か月〜一部の人は続く。長い人は出産まで妊娠6ヶ月7ヶ月
28週以降妊娠8か月〜「後期つわり」が始まることがある妊娠8ヶ月

週数の数え方があいまいな方は、妊娠週数の数え方を先にご覧ください。最終月経の初日を0週0日として数えます。この基準がずれていると、以下の話も全部ずれます。

いまが何週で、ピークまであと何日か

この表を自分に当てはめるには、今日が妊娠何週何日かがわかっている必要があります。すぐ出す方法を書いておきます。

30秒で出す手順
  • 最後の生理が始まった日を思い出す(その日が0週0日です)
  • その日から今日までが何日かを数える
  • 7で割る。商が「週」、余りが「日」

例:最終生理が6月1日で今日が7月20日なら、経過は49日。49÷7=7あまり0なので妊娠7週0日です。
計算が面倒なら、最終生理日から数えて「◯週目の同じ曜日」を見るほうが早いこともあります。詳しい数え方は妊娠週数の数え方にまとめました。

週数が出たら、ピークまでの距離がわかります。

  • いま5〜7週 → ピークは1〜4週間先。これから重くなる可能性があります。いまのうちに仕事の調整と、食べられるものの買い置きを
  • いま8〜11週まさにピークのなかにいます。いちばんつらい時期です。無理をしないでください
  • いま12週以降下り坂に入っています。まだつらくても、多くの方は数週間のうちに変化を感じ始めます

「あと何日」と言い切れないのがもどかしいところですが、自分が上り坂にいるのか下り坂にいるのかがわかるだけでも、気持ちの持ち方は変わります。

始まるのは妊娠5〜6週ごろ

妊娠5週は、生理予定日を1週間ほど過ぎたころにあたります。妊娠検査薬で陽性が出て、「本当に妊娠していた」と実感し始めるのとほぼ同じタイミングです。

この時期に、なんとなく胃がむかつく、においが気になる、食欲が落ちる——といった変化が出てきます。最初は「風邪かな」「疲れかな」と感じる程度のことも多く、はっきりつわりだとわかるのは6〜7週になってからという方も少なくありません。

いちばん早い人で、4週台から

「つわりは1番早くていつから始まりますか」という質問がよく検索されています。

個人差はありますが、妊娠4週台(生理予定日ごろ)から感じる方もいます。ただしこの時期は、まだhCGというホルモンが十分に上がりきっていません。「妊娠超初期のつわり」として語られる症状の一部は、黄体期に起きる変化(プロゲステロンによる胃腸の動きの低下、だるさ、眠気)と区別がつきにくいものです。

実際、生理前にも吐き気が出る方はいます。生理前の吐き気と妊娠初期のつわりは、感じ方だけでは見分けられません。詳しくは妊娠超初期症状の記事にまとめています。

「つわりが始まる予兆」はあるのか

これもよく検索されている質問です。明確な予兆といえるものはありません。ある日突然、朝起きたときに胃がむかつく——そういう始まり方をする方が多いようです。

強いていえば、においに敏感になることが先に来るケースがあります。炊きたてのごはん、冷蔵庫を開けたときのにおい、夫の整髪料。「そういえば数日前からにおいが気になっていた」と、あとから振り返って気づく形です。

ピークは8〜11週

「つわりが1番きついのは妊娠何週からですか」——答えは8〜11週です。

これは、つわりに関わるとされるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンの分泌が、妊娠10週前後で最も高くなることと重なります。この時期は妊娠3か月にあたり、外見はまだ変わらないのに、体のなかでは大きな変化が起きています。

そして、ここが精神的にもつらい時期です。まだ職場に伝えていない方が多く、外からは元気に見えるため、つらさが理解されにくい——この構造が、つわりの苦しさを二重にしています。

落ち着くのは12〜16週

hCGは10週前後をピークに、その後は下がっていきます。それに合わせて、12週を過ぎたあたりから軽くなる方が増え、16週までにはほとんどの方が抜けます。

ただし、ここは正直に書きます。16週で必ず終わるわけではありません。20週を過ぎても続く方、出産まで何らかの症状が残る方もいます。「安定期に入れば楽になる」と言われて、そうならなかったときのつらさは相当なものです。終わらないのは、あなたが弱いからではありません。

つわりが終わる兆候
  • 朝起きたときのむかつきが軽くなる
  • においが気にならなくなる——最初に戻ることが多い感覚です
  • 食べたいものが思い浮かぶようになる
  • 吐く回数が減る/量が減る
  • 「今日はちょっと楽かも」という日が、週に何度か出てくる

終わり方は、ある日ぱたりと止まるというより、楽な日と つらい日を繰り返しながら、楽な日が増えていく形が一般的です。1日楽だったからといって終わりとは限らず、翌日また戻ることもあります。

始まりはどんな感じ?——最初に気づくこと

「つわりが始まったのか、ただの体調不良なのか分からない」——検索でいちばん多く聞かれているのがここです。

いきなり吐くところから始まる人は、実はあまり多くありません。最初に気づかれるのは、もっと地味な変化です。

最初に気づく変化 どんなふうに
においが気になる いちばん多い入口。炊きたてのごはん、冷蔵庫、洗剤、人の香り
空腹になると気持ち悪い 胃が空くとムカムカする。食べると少し楽になる
眠気とだるさ 「風邪のひきはじめみたい」と表現されることが多い
口の中が気持ち悪い 唾液が増える、口の中が苦い・金属っぽい
食べたいものが変わる 今まで好きだったものを受けつけなくなる
乗り物・人混みがつらい 通勤中に急に気分が悪くなる

生理前の不調との見分け方

時期が重なるため、PMSと迷う方が多くいます。ただ、決定的な違いがあります。

生理が来れば、PMSは終わります
生理前の不調は生理が始まると軽くなるのが特徴です。一方つわりは、生理予定日を過ぎても続き、むしろ強くなっていきます。「いつもの生理前の感じが、今回は終わらない」——これがいちばん分かりやすいサインです。
「確かめる方法」は症状ではありません

症状の出方には個人差が大きく、つわりかどうかを症状だけで確かめることはできません。においに敏感になるのも、だるくなるのも、妊娠していなくても起こります。

確かめられるのは妊娠検査薬だけです。生理予定日の1週間後から使えば、はっきりした答えが出ます。

日によって軽い・重いがあるのはなぜ?

「昨日は動けたのに、今日は起き上がれない」——この波に振り回されるのが、つわりのつらさの一部です。

波があるのは、あなたの気の持ちようではありません。いくつかの要因が重なって起きています。

波をつくる要因 どう効くか
空腹の時間 いちばん大きい。胃が空くと症状が強くなります
睡眠と疲れ 寝不足の翌日は確実に重くなります
その日出会うにおい 予測できないぶん、振り回されやすい要因
水分の足りなさ 脱水気味になると吐き気が強まる悪循環に入ります
時間帯 夕方に強くなる人が多いとされます。朝だけではありません
波があること自体は、悪いサインではありません
「良い日があるということは、たいしたことないのでは」と自分を疑う必要はありません。波があるのがふつうです。そして良い日にがんばりすぎると、翌日に返ってくる——これも多くの方が経験します。動ける日にまとめて片づけたくなりますが、7割くらいで止めておくほうが、結果的に楽に過ごせます。
波が消えて「ずっと重い」になったら

良い時間帯がまったくなくなった、水分も受けつけない、体重が減り続けている——このときは波の問題ではありません。妊娠悪阻の段階に入っている可能性があります。

「みんな通る道だから」と我慢する場面ではありません。点滴で楽になることも、入院が必要なこともあります。

なぜ起こるのか|わかっていること・わかっていないこと

先に大切なことをお伝えします。つわりの原因は、実ははっきりと特定されていません。いくつかの要因が関わっていると考えられていますが、「これが原因」と断定できる段階にはありません。

関わっているとされるものを挙げます。

要因考えられている仕組み
hCGの急上昇妊娠すると急激に増え、10週前後でピークになる。つわりの経過と時期が一致する
プロゲステロン胃腸の動きをゆるやかにする。食べたものが胃に留まりやすくなる
エストロゲンの変動吐き気に関わる可能性が指摘されている
嗅覚の変化においに敏感になる。においが吐き気の引き金になる
自律神経の変化妊娠による体の変化に自律神経が対応する過程で、胃腸の動きが乱れる
心理的な要因関わることはあるが、「気の持ちよう」で起きるものではありません

「体を守るための反応ではないか」という説もあります。妊娠初期は赤ちゃんの器官がつくられる大切な時期で、この時期に有害なものを口にしないよう、においや味に敏感になっているのではないか——という考え方です。興味深い説ですが、これも確立したものではありません。

知っておいてほしいこと
  • つわりは「気の持ちよう」ではありません。ホルモンと体の変化によって起きています
  • つわりの重さは母親の性格や心構えとは関係ありません
  • 「甘えている」「みんな通る道」といった言葉は、医学的な根拠のないものです
  • つらさの感じ方には大きな個人差があり、他の人と比べて判断する必要はありません

つわりの種類|自分がどれかで対処が変わる

つわり=吐くもの、というイメージがありますが、実際はさまざまな形があります。自分がどのタイプかがわかると、打つ手が変わります。

種類症状効きやすい対処
吐きつわり 吐き気・嘔吐が中心。食べても吐いてしまう 少量をこまめに。冷たいもの。水分を最優先
食べつわり 空腹になると気持ち悪い。常に何か食べていないとつらい 空腹をつくらない。枕元に小さなおにぎりやクラッカーを置く
においつわり 特定のにおいで吐き気。炊飯・生ごみ・整髪料・冷蔵庫 マスク。換気。においの出る調理を避ける
よだれつわり 唾液が止まらず、飲み込むと気持ち悪い タオルやペットボトルに吐き出す。飴・ガム
眠りつわり 異常な眠気。日中も抗いがたい 眠れるときに眠る。運転を避ける
頭痛・だるさ型 吐き気より頭痛やだるさが前面に 脱水と低血糖を避ける。薬は自己判断しない

食べつわりは、体重が増えて悩むことがあります

「食べていないと気持ち悪いので食べる」→「体重が増える」→「健診で注意される」という流れで悩む方が多くいます。

対策は、食べるものと食べ方を変えることです。

  • 一度にたくさん食べず、少量を何度も——1日5〜6回に分ける
  • 枕元に置いておく——朝起きた瞬間がいちばんつらいので、起き上がる前に少し口に入れる
  • 選ぶなら、噛みごたえのあるもの・たんぱく質——菓子パンやチョコレートより、ナッツ、チーズ、小さなおにぎり、するめ
  • 飲みものでごまかさない——甘い飲料は血糖値の乱高下を招き、かえって空腹感が早く来ます

そして知っておいてください。この時期の体重増加を、健診の場で強く責められる筋合いはありません。気になることがあれば、「食べつわりで空腹になると吐き気が出る」と具体的に伝えてください。

においつわりは、生活の組み替えが効きます

においつわりは、意志の力ではどうにもならない代わりに、環境を変えると劇的に楽になることがあります。

  • 炊きたてのごはんのにおいがだめ——冷ましてから食べる、パックのごはんにする、パンや麺に替える
  • 調理のにおいがだめ——加熱調理を減らす。この時期は惣菜・冷凍食品でかまいません
  • 冷蔵庫・生ごみ——ごみは小分けにして密閉、こまめに出す
  • 人のにおい——柔軟剤、整髪料、香水を家族に変えてもらう。言いにくくても伝えたほうが早いです
  • マスク——自分の好きな香りを少しつけたマスクが助けになることがあります

つわりの時期には、吐き気以外の不調も重なります。妊娠初期の頭痛下痢腹痛——それぞれ原因も対処も違うので、気になる症状があれば個別に確認してみてください。妊娠初期の症状全体はこちらにまとめています。

なりやすい人の特徴|セルフチェック

「つわりになりやすい人」を調べる方が非常に多くいます。ただし、ここも先にお伝えしておきます。当てはまっても必ずなるわけではなく、当てはまらなくても重くなることがあります。

つわりが重くなりやすいとされる条件
  • 多胎妊娠(双子など)——hCGの量が多くなるため
  • 前回の妊娠でつわりが重かった——最も参考になる情報です
  • 乗りもの酔いをしやすい
  • 片頭痛もちである
  • 初めての妊娠である
  • もともと胃腸が弱い・逆流しやすい
  • 甲状腺の機能が高めである
  • 疲労や睡眠不足が続いている

「なりやすい人」は「あなたのせい」ではありません

この手の情報は、ときに逆向きに働きます。「ストレスをためやすい人がなりやすい」「几帳面な人が重くなる」といった説を見ると、「私の性格のせいでこんなにつらいのか」と自分を責めてしまうことがあります。

つわりの重さを決めているのは、主にホルモンと体質です。あなたの心構えでも、努力の不足でもありません。この一点は、はっきり書いておきます。

【今つらい人へ】今日を乗り切る

ここは、いま吐き気と闘っている方に向けた章です。原因の説明はもう十分でしょうから、できることだけを書きます。

優先順位は「水分 → 食べられるもの → 栄養」

この順番が大切です。栄養バランスは、この時期は考えなくてかまいません。

  1. 水分——脱水がいちばん危険です。ここだけは死守してください
  2. 食べられるもの——何でもいいので、口に入るものを
  3. 栄養バランス——つわりが明けてからで間に合います

水分がとれないときの工夫

  • 冷やす。常温より冷たいほうが飲みやすくなります
  • 少量ずつ、何度も。一気に飲むと戻しやすくなります。ひと口ずつ
  • 氷をなめる。飲めないときの最終手段として有効です
  • 炭酸水・レモン水・麦茶・経口補水液——水がだめでも、これなら通ることがあります
  • ストローを使う。においを避けられ、量も調整しやすくなります
  • 凍らせる。スポーツドリンクや果汁を凍らせてシャーベット状に
1日中まったく水分がとれない日が続くなら、受診してください
  • 尿の回数が減った/色が濃い
  • 立ちくらみがする、ふらつく
  • 唇や口のなかが乾く

脱水は自力で戻すのが難しく、点滴を1回受けるだけで驚くほど楽になることがあります。「このくらいで病院に行っていいのか」と迷う必要はありません。

ベッドサイドの小さなテーブルに置かれた水のグラスとビスケット

朝がいちばんつらい理由と、その対策

「morning sickness」と呼ばれるとおり、朝に強く出る方が多くいます。理由は長時間食べていないことによる空腹と、低血糖です。

ですから対策も単純で、起き上がる前に何か口に入れることです。

  • 枕元にクラッカー・ビスケット・小さなおにぎりを置いて寝る
  • 目が覚めたら、横になったまま少し食べる
  • 5〜10分してから、ゆっくり起き上がる
  • 夜中に目が覚めたときも、少し口に入れておくと朝が楽になります

やらないほうがいいこと

  • 「食べなきゃ」と無理に食べる。吐けば水分も失います。食べられないときは水分優先
  • 市販の吐き気止めを自己判断で飲む。妊娠中に使える薬は限られます。必ず医師に相談を
  • 「みんな通る道」と我慢し続ける。妊娠悪阻は治療の対象です
  • 体重が減っているのに様子を見る。次の章の基準を確認してください
  • 調べすぎる。他の人の重さと比べても、自分は楽になりません

家族に頼むこと|具体的に言葉にする

つわりは、家族の協力なしに乗り切るのが難しいものです。ところが「つらいから手伝って」だけでは、相手も何をすればいいのかわかりません。頼む内容を具体的にすると、動いてもらいやすくなります。

困っていることこう頼む
調理のにおいで吐いてしまう 「しばらく料理は代わってほしい」「無理なら惣菜や冷凍でいい。作らないことを責めないでほしい」
食べられるものが日替わりで変わる 「買ってきてもらっても食べられないことがある。そのときは捨ててかまわないと思っていてほしい」
生ごみのにおいがつらい 「ごみを毎日出してほしい」「三角コーナーをやめて、その都度密閉して捨ててほしい」
整髪料・柔軟剤・たばこのにおい 「一時的に無香料に替えてほしい」——遠慮しがちですが、伝えないと相手は気づけません
買い物に行けない 「ネットスーパーや宅配を使いたい」「重いものだけ運んでほしい」
上の子の相手ができない 「自治体の一時預かりを調べてほしい」「休日の午前だけでも外に連れ出してほしい」
つらさが伝わらない 数字で伝える。「今日は3回吐いた」「体重が2kg減った」——感覚より伝わります

そして、家族に読んでもらいたいことがひとつ。つわりの重さは本人の努力や気の持ちようとは関係がなく、外から見ても元気そうに見えることがあります。「顔色は悪くないのに」と思われがちですが、それは症状が軽いという意味ではありません。

食べ物|食べられたものと、考え方

白いトレイに並べたレモン・しょうが・クラッカー・そうめん・はちみつなど、つわり中に食べやすいとされる食品

食べやすいとされるもの

特徴
冷たいそうめん、冷やしうどん、ゼリー、アイス、冷やしたトマト
酸味があるレモン、梅干し、酢の物、グレープフルーツ、パイナップル
水分が多いすいか、なし、ぶどう、みかん
においが少ない白いごはんを冷ましたもの、食パン、素うどん
のどごしがよいゼリー飲料、ヨーグルト、豆腐、茶碗蒸し
塩気があるおにぎり、せんべい、ポテトチップス、みそ汁

共通しているのは「冷たい・においが少ない・のどを通りやすい」という3点です。逆に、温かい料理、揚げもの、においの強いものは受けつけないことが多くなります。

栄養バランスは、この時期は考えなくていい

ここは強調しておきます。

妊娠初期の赤ちゃんは非常に小さく、この時期に母体が十分な栄養をとれなくても、発育に大きな影響が出ることはまずありません。体に蓄えられているもので足ります。「野菜を食べていない」「毎日アイスばかり」と自分を責める必要はありません。

心配すべきなのは栄養バランスではなく、脱水と、極端な体重減少です。そこだけ見ていてください。

葉酸サプリはどうする?

葉酸は妊娠初期に推奨される栄養素ですが、つわりでサプリが飲めない場合は、無理に飲む必要はありません。においや大きさで吐いてしまうくらいなら、水分を優先してください。

飲めるようになったら再開すればよく、粒が小さいものや味のついたものに替える手もあります。詳しくは葉酸サプリの記事をご覧ください。

食べてはいけないものについて

つわりの時期は「食べられるものを食べる」が優先ですが、生ものやアルコールなど、妊娠中に避けたほうがよいものは変わりません。詳しくは妊娠中に食べてはいけないものにまとめています。

【重要】妊娠悪阻|受診の線引き

つわりが重くなり、治療が必要な状態を妊娠悪阻(にんしんおそ)といいます。ここは、我慢するかどうかの線引きになる大切な部分です。

つわり妊娠悪阻
食事食べられるものがあるほとんど食べられない
水分とれている水も飲めない・飲むと吐く
体重ほぼ変わらない〜少し減る妊娠前より5%以上減った
嘔吐1日数回まで1日に何度も。胃液しか出ない
日常生活つらいが動ける横になっているしかない
尿普通に出る回数が減る・色が濃い
対応生活の工夫で乗り切る点滴・入院などの治療

体重5%というのは、50kgの方なら2.5kgです。「妊娠したのに痩せた」と感じたら、体重を測って確かめてください。数字は、我慢しすぎているかどうかを教えてくれます。

すぐに受診してほしいサイン
  • 丸1日、水分がまったくとれていない
  • 妊娠前より体重が5%以上減った
  • 尿が半日以上出ない、色が非常に濃い
  • 立ち上がるとふらつく、意識が遠のく
  • 吐いたものに血が混じる
  • 物が二重に見える/まっすぐ歩けない/ぼんやりする——後述するビタミンB1不足のサインです
  • 強い腹痛や出血をともなう
白い花を飾った明るい産婦人科の待合スペース

治療で何をするのか

受診をためらう方のために、実際に何が行われるかを書いておきます。

  • 点滴——水分・電解質・ブドウ糖・ビタミンを補います。1〜2時間で終わり、通院で受けられます
  • 吐き気止め——妊娠中に使える薬が選ばれます。自己判断で市販薬を飲まないでください
  • 入院——外来の点滴で改善しない場合。数日から数週間、継続的に点滴を行います
  • ビタミンB1の補給——次に説明する理由から、重要な処置です

「点滴を受けたら別人のように楽になった」という声は、決して珍しくありません。1週間我慢するより、1回受診したほうが早いことがあります。

知っておいてほしい、ビタミンB1のこと

長く吐き続けると、ビタミンB1が不足します。これが進むと「ウェルニッケ脳症」という、脳に影響する重い状態を招くことがあります。

サインは、物が二重に見える・眼球が勝手に動く・まっすぐ歩けない・意識がぼんやりする。吐き気のつらさに紛れて見過ごされやすいのですが、これは緊急の受診が必要な状態です。

また、こういう事情があるため、糖分だけを補給するのは危険なことがあります。「甘いものなら飲める」と甘い飲料だけで数日過ごしている方は、その旨を医師に伝えてください。

仕事とつわり|使える制度があります

ここは、多くのつわり記事が扱っていない領域です。けれど実際にいちばん困るのは、体そのものより「仕事をどうするか」ではないでしょうか。

結論から書きます。つわりで仕事を休むことは、法律で認められています。そのための書類もあります。

母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)

これがいちばん強力な仕組みです。

妊娠中の女性が、医師から受けた指導内容を事業主に的確に伝えるための書類です。医師に記入してもらい、職場に提出します。そして——ここが重要です——事業主には、その内容に応じた措置を講じる義務があります(男女雇用機会均等法)。

受けられる措置内容
休業症状が重いとき、期間を定めて休む
勤務時間の短縮時短勤務
作業の制限立ち仕事・重いものを持つ作業・長時間の同一姿勢を避ける
通勤の緩和時差通勤、勤務時間の変更(満員電車を避ける)
休憩の配慮休憩時間を増やす、横になれる場所の確保

カードの様式は厚生労働省のサイトから入手でき、多くの母子健康手帳にも様式が掲載されています。健診のときに「母健連絡カードを書いてほしい」と伝えれば書いてもらえます。

傷病手当金

つわりで仕事を休み、その間に給与が支払われない場合、健康保険の傷病手当金を受けられることがあります。

  • 対象は健康保険の被保険者(お勤めの方)。国民健康保険では原則ありません
  • 連続する3日間を含めて4日以上仕事を休んだ場合に、4日目から支給されます
  • 支給されるのは、おおむね給与の3分の2程度です
  • 申請には医師の意見の記入が必要です
  • 有給休暇を使った日は対象になりません

具体的な条件や手続きは加入している健康保険によって異なります。勤務先の担当部署か、健康保険組合に確認してください。

いつ、誰に伝えるか

妊娠の報告は安定期に入ってから、という慣習がありますが、つわりが重い場合はその限りではありません。制度を使うには、少なくとも人事・上司には伝える必要があります。

伝え方で迷う方へ、実際的な順序を挙げておきます。

  • 直属の上司と、人事・総務にはまず伝える。周囲への共有範囲は「まだ伝えないでほしい」と希望を添えてかまいません
  • 症状ではなく、必要な配慮を具体的に伝える。「気持ち悪い」より「満員電車で吐いてしまうので、時差通勤にしたい」のほうが動いてもらえます
  • 母健連絡カードを使う。個人の申し出ではなく医師の指導として伝わるため、話が早く進みます
妊娠を理由にした不利益な取り扱いは、法律で禁止されています
  • 妊娠・つわりを理由とした解雇、降格、契約の不更新、不利益な配置転換は違法です
  • 「妊娠するなら辞めてもらう」といった言動は、いわゆるマタニティハラスメントにあたります
  • 困ったときの相談先:都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)。無料で相談できます

後期つわり|妊娠後期にもう一度来る吐き気

ここも、多くの記事が扱っていない部分です。つわりが明けて安心していたのに、妊娠後期にまた吐き気が来る——これを「後期つわり」と呼びます。

初期つわりとは、原因がまったく違います

ここを理解すると、対処も変わります。

初期つわり後期つわり
時期5〜16週28週ごろ〜出産まで
主な原因ホルモン(hCGなど)大きくなった子宮が胃を押し上げる
症状の特徴空腹時・朝につらい食後につらい。胸やけ・げっぷ・胃もたれ
楽になるとき週数が進むと軽くなる赤ちゃんが下がると急に楽になる
姿勢あまり関係しない前かがみ・横になると悪化しやすい

対処は「胃を圧迫しない」こと

  • 1回の食事量を減らし、回数を増やす——1日5〜6回に分ける
  • 食後すぐに横にならない——2〜3時間は起きているか、上体を起こして過ごす
  • 寝るときは上体を高くする——枕やクッションで背中から傾斜をつける
  • 脂っこいもの・炭酸・カフェインを控える——胃酸の逆流を招きます
  • 締めつけない服装にする——腹帯やパンツのゴムが胃を押していることがあります
  • 左を下にして横になる——胃の形の関係で、逆流しにくくなります

時期でいうと妊娠8か月ごろから始まり、妊娠9か月にかけて強くなることが多く、妊娠10か月で赤ちゃんが骨盤のなかに下がると、嘘のように楽になる方が少なくありません。

後期つわりの正体は、多くの場合逆流性食道炎に近い状態です。胸やけやのどの違和感が強い方は、逆流性食道炎の記事の対処法も参考になります。

後期の吐き気で、必ず伝えてほしいこと

妊娠後期の吐き気は、まれに妊娠高血圧症候群やHELLP症候群など、緊急の対応が必要な状態のサインであることがあります。次の症状をともなうときは、様子を見ずに連絡してください。

  • 強い頭痛、目がチカチカする、視界がぼやける
  • みぞおちや右上腹部の痛み
  • 急激なむくみ、急な体重増加
  • 胎動が減った・感じない

つわりがない・急になくなった

つわりがなくても、異常ではありません

つわりの程度には非常に大きな個人差があり、まったくない方も一定数います。これは赤ちゃんが元気でないということではありません。

むしろ「つわりがなくて不安」という相談は、産科でよく聞かれるものです。心配なら健診で確認すればよく、つわりの有無を心配の材料にする必要はありません。順調に経過している方はたくさんいます。

ただ、周囲の「つわりがないなんて羨ましい」という言葉が、かえってつらいことがあります。心配する気持ちは、なかったことにしなくていいものです。

つわりが急になくなったとき

ここは、正直に、かつ丁寧に書きます。

つわりが軽くなること自体は、正常な経過です。12週前後から落ち着くのは、hCGの分泌が下がる自然な流れです。

ただ、妊娠初期に、まだ早い時期に、ある日を境にぱたりと症状が消えたという場合、稽留流産のあとにつわりが引くことがある、という事実はあります。これを検索して不安になる方が多いことも知っています。

ここで大切なのは3点です。

  • つわりが軽くなった=流産、ではありません。圧倒的多数は正常な経過です
  • 逆に、稽留流産が起きてもつわりが続くことがあります。hCGはすぐには下がらないためで、つわりの有無で判断することはできません
  • 確かめる方法は超音波だけです。不安なら、次の健診を待たずに受診してかまいません

「こんなことで受診していいのか」と迷う方へ。産科では、この相談はごく日常的なものです。数日不安なまま過ごすより、確認したほうが心が休まります。切迫流産流産について詳しく知りたい方は、それぞれの記事もご覧ください。

よくある質問

Q つわりは1番早くていつから始まりますか?

A.早い方で妊娠4週台(生理予定日ごろ)から違和感を覚えることがあります。ただしこの時期は、生理前に起きる変化と区別がつきにくいものです。もっとも多いのは5〜6週で、これは妊娠検査薬で陽性が出るころと重なります。「まだ来ない」と焦る必要はなく、7〜8週から始まる方もいます。

Q つわりが1番きついのは何週ですか?

A.8〜11週です。つわりに関わるとされるhCGというホルモンが妊娠10週前後でピークになることと重なります。逆にいえば、そこを越えれば下り坂です。いま9週なら、あと2〜3週で変化が出てくる可能性が高い——そう考えると少し先が見えるかもしれません。

Q つわりで仕事を休めますか?

A.休めます。「母性健康管理指導事項連絡カード」を医師に書いてもらい職場に提出すると、事業主には休業・時短・通勤緩和などの措置を講じる義務が生じます(男女雇用機会均等法)。給与が出ない期間については、健康保険の傷病手当金を受けられることがあります。妊娠を理由とした解雇や不利益な扱いは違法です。

Q つわりがまったくないのですが、大丈夫でしょうか?

A.大丈夫です。つわりの程度には大きな個人差があり、まったくない方も一定数います。つわりの有無は、赤ちゃんの元気さを示すものではありません。順調に経過している方はたくさんいます。それでも不安が続くなら、健診で確認すれば済むことです。心配する気持ちを「気にしすぎ」と片づける必要はありません。

Q つわりが急になくなりました。流産でしょうか?

A.つわりが軽くなること自体は正常な経過で、多くの場合は心配ありません。ただしつわりの有無で流産かどうかを判断することはできません。稽留流産が起きていてもhCGはすぐに下がらないため、つわりが続くことがあるからです。確かめる方法は超音波だけです。不安なら次の健診を待たずに受診してかまいません。よくある相談です。

Q 吐き気止めの薬は飲めますか?

A.市販薬を自己判断で飲むことは避けてください。妊娠中、とくに器官が形成される初期は、使える薬が限られます。ただし「妊娠中は薬が一切使えない」というのも誤りで、医師の判断で使われる薬はあります。つらいときは我慢せず、「吐き気で困っている」と産科に伝えてください。点滴を含め、できることがあります。

Q 上の子がいて休めません。どうすればいいですか?

A.この時期に「手を抜く」ことは、怠慢ではなく必要な判断です。食事は惣菜や冷凍食品でよく、掃除は後回しでかまいません。自治体の一時預かり・ファミリーサポート・産前産後のヘルパー派遣など、妊娠中から使える支援があります。お住まいの市区町村の子育て支援窓口か、母子保健の担当に「つわりがつらくて上の子をみるのが難しい」と伝えてみてください。使える制度は自治体によって違いますが、知らずに耐えている方が多い領域です。

Q 後期つわりは初期つわりと同じものですか?

A.別のものです。初期つわりはホルモンによるもので空腹時につらくなりますが、後期つわりは大きくなった子宮が胃を押し上げることによるもので、食後につらくなります。胸やけやげっぷをともなうのが特徴です。対処も変わり、少量ずつ食べる・食後すぐ横にならない・上体を起こして寝る、が効きます。赤ちゃんが下がると急に楽になることが多いものです。

Q 「みんな通る道」と言われるのがつらいです

A.つわりの重さには大きな個人差があり、「みんな同じ」ではありません。ほとんど症状のない方から、入院が必要な方までいます。そして重さは、心構えや性格とは関係ありません。つらいものはつらい——それは事実として扱ってよいものです。理解されないつらさを抱えているなら、数字で伝えるのがひとつの方法です。「1日◯回吐いている」「体重が◯kg減った」。感覚より、周囲にも医療者にも伝わります。

まとめ

つわりは、いつ始まっていつ終わるのかが見えないことが、つらさを大きくします。まずは全体像を持ってください。5〜6週に始まり、8〜11週がピーク、12〜16週で落ち着く。いまがどこなのかがわかれば、少し先が見えます。

そして、我慢しなくていい部分があります。水分がとれないなら受診してください。点滴1回で変わることがあります。仕事がつらいなら、母健連絡カードがあります。これは制度として用意されているもので、遠慮して使わずにいるのはもったいないものです。

最後にもう一度書きます。つわりの重さは、あなたの性格でも努力の不足でもありません。つらいと言っていいものです。

この記事のポイントまとめ
  • 始まるのは5〜6週(早い人で4週台)、ピークは8〜11週、落ち着くのは12〜16週
  • ピークがhCGの分泌ピーク(10週前後)と重なる。11週を越えれば下り坂
  • 原因ははっきり特定されていない。ただし「気の持ちよう」ではないことは確か
  • 種類(吐き・食べ・におい・よだれ・眠り)によって効く対処が違う
  • 優先順位は水分 → 食べられるもの → 栄養。この時期の栄養バランスは考えなくてよい
  • 水分がとれない/体重が5%以上減ったなら妊娠悪阻。点滴・入院という治療がある
  • 物が二重に見える・まっすぐ歩けないはビタミンB1不足のサイン。緊急受診を
  • 仕事は母性健康管理指導事項連絡カードで休業・時短・通勤緩和を申し出られる。事業主には対応の義務がある
  • 休業中の給与は傷病手当金の対象になることがある(健康保険の被保険者)
  • 後期つわりは28週ごろから。原因は子宮による胃の圧迫で、初期とは別もの。食後につらい
  • つわりがなくても異常ではない。つわりの有無で流産かどうかは判断できない——確かめる方法は超音波だけ

この記事について

femnote 編集部

生理・妊活・フェムケア・更年期など女性の健康に関する情報を、厚生労働省「e-ヘルスネット」や日本産科婦人科学会をはじめとする各学会の診療ガイドラインなど、公的な資料をもとに編集しています。診断や治療の判断については、必ず医療機関にご相談ください。

参考文献

  • 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン 産科編」(妊娠悪阻の項)
  • 日本産科婦人科学会「用語集・用語解説集」(つわり・妊娠悪阻)
  • 厚生労働省「働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について」
  • 厚生労働省「母性健康管理指導事項連絡カード」様式および記入例
  • 全国健康保険協会「傷病手当金」
  • 厚生労働省「妊娠中と産後の食事について」「妊産婦のための食生活指針」
  • American College of Obstetricians and Gynecologists「Nausea and Vomiting of Pregnancy」