夕方になると足がパンパンで、朝はすんなり履けた靴がきつい。靴下のゴムの跡が、お風呂に入るころまで消えない。すねを押すと、指のかたちにへこんだまま戻らない——。

「むくみ」は、多くの女性が「そういう体質だから」「立ち仕事だから」と、何年もそのままにしている症状です。実際、その大半は一時的なもので、ひと晩眠れば元に戻ります。

けれど同時に、むくみは体があなたに送っているサインの中で、いちばん目に見えやすいものでもあります。甲状腺の働きが落ちているとき、鉄が足りていないとき、心臓や腎臓が無理をしているとき、足の静脈に血のかたまりができたとき——そのどれもが、まず「むくみ」というかたちで現れることがあります。

そしてもうひとつ。むくみは女性のほうが圧倒的に多い症状です。それは気のせいでも、我慢が足りないからでもありません。筋肉のつき方、女性ホルモンの働き方、骨盤の中の構造という、はっきりした理由があります。

この記事では、むくみのしくみを整理し、「様子を見ていいむくみ」と「今日中に相談してほしいむくみ」を切り分けられるようにお伝えします。生理前・妊娠中・産後・更年期という女性のライフステージごとに、むくみの理由がまったく違うことも一緒に見ていきましょう。

この記事の使い方
まず「4分類セルフチェック」で自分のむくみのタイプを確かめてください。タイプによって、読むべきセクションと、やるべき対策がまったく変わります。片足だけ・急に・息苦しさをともなうむくみの方は、セルフケアの前に「すぐに受診したい危険なサイン」へ進んでください。

むくみとは?体の中で何が起きているのか

むくみ(医学的には浮腫(ふしゅ)といいます)とは、皮膚の下の組織に、余分な水分がたまった状態のことです。

血管から染み出した水分が「戻れなくなった」状態

私たちの体の中では、細い血管(毛細血管)から水分が少しずつ染み出し、細胞に酸素や栄養を届けています。役目を終えた水分は、ふたたび血管に吸収されるか、リンパ管を通って回収され、心臓へ戻っていきます。

この「出ていく量」と「戻る量」のバランスが崩れて、出ていく側が多くなったとき、行き場を失った水分が皮膚の下にたまります。これがむくみです。

つまりむくみは、水を飲みすぎたから起きるのではなく、水が「回収されずに残っている」から起きるもの。ここを取り違えると、対策の方向がまるごと逆になってしまいます(水分を控えるとかえって悪化することについては、通説の検証でくわしく説明します)。

なぜ「足」に出やすいのか

むくみが真っ先に足に出るのは、単純に重力のためです。立っている時間が長いほど、水分は体の低いところ=足首やふくらはぎに引っ張られます。夕方になると足がむくむのに、朝起きたときは顔やまぶたがむくんでいる、という人が多いのはこのためです(寝ている間は体が水平なので、水分が顔のほうにも回ります)。

足には、もうひとつ不利な条件があります。心臓から足までは重力に従って血液が下りていけばよいのですが、足から心臓まで血液を押し上げる仕事は、心臓だけでは足りないのです。そこを補っているのが、次のセクションで説明する「ふくらはぎの筋肉」です。

朝は顔、夕方は足——時間帯で出る場所が変わる理由

「朝は顔とまぶたがむくんで、夕方になると足がむくむ」という人はとても多いのですが、これは別々の現象ではなく、同じ水分が重力に従って移動しているだけです。

眠っている間、体は水平になっています。日中に足へ下りていた水分が全身に散らばり、皮膚のやわらかい顔やまぶたにたまります。起き上がってしばらくすると、その水分がまた下へ移動していく——だから朝の顔のむくみは、動き出して1〜2時間ほどで自然に軽くなっていきます。

むくむ場所タイミング考え方
顔・まぶた起きたとき。午前中に軽くなる生理的な範囲。前日の塩分・アルコール・睡眠不足で強まる
足・足首夕方以降に強い。朝には戻る生活習慣型。筋ポンプ不足が主な原因
顔が昼になっても引かない1日じゅう続く腎臓・甲状腺の確認を(隠れた病気へ)
顔も足も同時に強い朝から晩まで全身型。受診をおすすめします

朝の顔のむくみを早く落ち着かせたいときは、起きたらすぐ横にならず、体を起こして動くことがいちばん確実です。蒸しタオルで温めたあとに冷やす、軽く顔の輪郭を下から上へなでる、白湯を飲む、といった方法も、血流を促すという意味では理にかなっています。ただし前日の塩分やアルコールが原因なら、翌朝のケアより前日の食事を見直すほうが確実です

セルフチェック:すねを10秒押してみる

自分のむくみの程度を知るいちばん簡単な方法が、圧痕(あっこん)テストです。

  • すねの骨の上(足首から10cmほど上のあたり)を、親指で10秒ほど押します
  • 指を離して、へこみがどれくらいで戻るかを見ます
へこみの戻り方目安
すぐ戻る(跡が残らない)むくみはほとんどない状態
数秒でうっすら戻る軽いむくみ。生活要因のことが多い
10〜30秒たっても跡が残るはっきりしたむくみ。原因の切り分けを
40秒以上へこんだまま/押しても硬くてへこまない受診をすすめたい状態。とくに「押してもへこまない硬いむくみ」は甲状腺やリンパの問題が隠れていることがあります
「押してもへこまないむくみ」に注意
むくみというと「へこんだまま戻らない」イメージがありますが、押してもへこまない、ゴムのように弾力のあるむくみもあります。これは甲状腺の働きが落ちているとき(粘液水腫)や、リンパの流れが滞っているときに見られるタイプで、セルフケアでは変化しにくいのが特徴です。心当たりがあれば、むくみの裏に隠れている病気のセクションを確認してください。

女性が男性よりむくみやすい3つの理由

「女性のほうがむくみやすい」というのは、なんとなくの印象ではなく、体のつくりから説明できることです。理由は大きく3つあります。

①筋肉量が少なく「第二の心臓」の力が弱い

ふくらはぎの筋肉は、歩いたり足首を動かしたりするたびに収縮し、静脈を外側からぎゅっと押して血液を心臓へ送り返しています。このはたらきを筋ポンプ(ミルキングアクション)と呼び、ふくらはぎが「第二の心臓」と言われる理由になっています。

女性は男性にくらべて、体格あたりの筋肉量が少ない傾向があります。とくにふくらはぎの筋肉が細く、筋ポンプの力が弱いと、足に下りてきた血液を押し上げきれず、水分が足にとどまりやすくなります。

「運動不足だとむくむ」とよく言われますが、正確には「足首を動かす回数が少ないとむくむ」ということ。ジムに通うかどうかより、日中どれだけ足首が動いているかのほうが影響します。

②女性ホルモンが水分をためこむ方向に働く

排卵から生理までの約2週間(黄体期)に多く分泌されるプロゲステロン(黄体ホルモン)には、体に水分と塩分をためこむ方向のはたらきがあります。妊娠に備えて、体の中の環境を安定させるための変化です。

いっぽうエストロゲン(卵胞ホルモン)にも、血管のしなやかさを保つ作用と、水分をためる方向の作用の両方があります。この2つのホルモンが月の中で大きく上下するのは女性だけで、男性にはこの「周期的にむくむ日がある」という現象そのものがありません。

くわしいしくみは女性ホルモンのバランスの記事でも解説しています。

③骨盤内のうっ滞・冷え・締めつけ

女性の骨盤の中には子宮と卵巣があり、その周囲には豊富な血管が走っています。生理前や生理中に骨盤内が充血すると、足から戻ってくる血液の通り道である骨盤の静脈が圧迫され、下半身の血液が戻りにくくなることがあります。

また、子宮筋腫や大きな卵巣のう腫があると、骨盤内の静脈を物理的に押して、片側の足のむくみとして現れることがあります。「筋腫があると言われている」「生理の量が多い」という人でむくみが強い場合は、この可能性も頭に置いてください。

加えて、冷えやすさ、締めつけの強い下着・ストッキング、ヒールの高い靴(足首が動きにくくなる)といった生活面の条件も、女性のほうが重なりやすいのが実際のところです。

要因むくみへの影響対策の方向
ふくらはぎの筋肉が少ない血液を押し上げる力が弱い足首を動かす回数を増やす
プロゲステロンの周期変動排卵後〜生理前に水分をためこむむくむ時期を「予測」して備える
骨盤内のうっ滞下半身の血液が戻りにくい長時間同じ姿勢を避ける・冷やさない
締めつけ・ヒール足首の動きが減り、筋ポンプが働かない通勤時だけでも歩きやすい靴に

あなたのむくみはどのタイプ?4分類セルフチェック

むくみの対策でいちばん大事なのは、自分のむくみがどのタイプかを先に見極めることです。生活習慣型のむくみに病院で薬を出してもらう必要はありませんし、逆に片側型のむくみをマッサージで解決しようとするのは危険です。

次の表で、自分に近いものを探してみてください。

タイプ特徴考えられる主な原因まずやること
①生活習慣型 両足。夕方に強く、朝には戻っている。立ち仕事・座りっぱなしの日に強い 筋ポンプ不足・長時間同じ姿勢・塩分・睡眠不足 セルフケアから始める
②周期型(ホルモン型) 両足+顔や手。生理の1〜10日前に強くなり、生理が始まると軽くなる。体重も1〜2kg増える プロゲステロンによる水分貯留(PMSの一症状) 生理前のむくみを読む
③片側型 片方の足だけ。急に始まった。ふくらはぎが痛い・熱い・赤い 深部静脈血栓症・リンパ浮腫・骨盤内の圧迫 セルフケアをせず受診
④全身型(持続型) 朝になっても戻らない。まぶたも顔もむくむ。だるさ・息切れ・尿の量が減った 甲状腺・腎臓・心臓・肝臓・貧血・薬の影響 隠れた病気を確認し受診
この3つのどれかに当てはまったら、セルフケアより受診を優先してください
  • 片足だけが、はっきりわかるほど太くなった(左右差がある)
  • 朝起きても、むくみがまったく引いていない日が数日続く
  • むくみと一緒に、息切れ・動悸・胸の苦しさ・急な体重増加がある

むくみそのものより、こうした「組み合わせ」のほうが大事な情報です。当てはまるものがあれば、すぐに受診したい危険なサインへ進んでください。

一時的なむくみを起こす7つの生活要因

むくみの相談で最も多いのが、①生活習慣型です。心配のいらないむくみですが、原因を知っておくと「今日はむくむ日だ」と予測して先回りできます。

①長時間の立ちっぱなし

接客・販売・医療・美容など、立ち仕事の方に最も多いパターンです。立っているだけでは、ふくらはぎの筋肉はほとんど収縮しません。「立っている」と「歩いている」はまったく別物で、むくみを防ぐのは後者です。

②長時間の座りっぱなし

デスクワークや長距離の移動では、股関節とひざが曲がったまま固定され、静脈が折れ曲がった状態で圧迫されます。飛行機や長距離バスでのむくみが強く出るのはこのためです。

③塩分の取りすぎ

塩分(ナトリウム)は水分を引き寄せます。外食・コンビニ食・ラーメンの汁・加工食品が続いた翌日にむくむのは、体が塩分濃度を一定に保つために水分を抱えこんでいるからです。

④アルコール

お酒を飲んだ翌朝に顔がむくむのは、アルコールが血管を広げて水分が染み出しやすくなること、そして利尿作用で一度脱水になった体が水分をためこもうとすることの両方が重なるためです。

⑤睡眠不足

眠りが浅い、寝る時間が短いという状態が続くと、水分バランスを調整するホルモンのリズムが乱れます。眠れない・寝つけない状態が続いている方は、むくみだけを追いかけるより睡眠の立て直しが近道になることがあります。

⑥冷え

体が冷えると血管が縮み、血流が落ちて水分の回収が滞ります。夏の冷房で足先が冷えている人ほど、夏のむくみが強く出ることは珍しくありません。

⑦運動不足・急なダイエット

筋肉が落ちると筋ポンプが弱まります。また極端な食事制限でたんぱく質が不足すると、血管の中に水分をとどめる力(アルブミンという血中のたんぱく質のはたらき)が落ちて、かえってむくみやすくなります。「やせるためにむくみを取りたい」つもりの食事制限が、むくみを作っていることがあるのです。

夜のデスクでノートパソコンに向かい、長時間座ったまま作業を続ける日本人女性

生理前に足がむくむのはなぜ?

「生理前になると靴がきつい」「体重が1〜2kg増えるのに、生理が来たらすっと戻る」——これは②周期型のむくみです。

プロゲステロンが水分をためこむ

排卵が終わると、卵巣ではプロゲステロンの分泌が増えます。このホルモンには、腎臓に働きかけて塩分と水分を体にとどめる方向のはたらきがあります。妊娠が成立したときに備えて、体が「蓄える」モードに切り替わるためです。

その結果、排卵後から生理が始まるまでの約2週間、体の水分量がじわじわ増えます。個人差はありますが、この時期の体重増加は1〜2kg程度が一般的で、そのほとんどは水分です。脂肪が増えたわけではないので、生理が始まってプロゲステロンが下がると自然に戻ります。

いつからいつまで?

時期体の状態むくみ
生理〜排卵前(卵胞期)エストロゲンが増えるもっともむくみにくい時期
排卵直後プロゲステロンが上がり始めるむくみ始める人も
生理の7〜10日前プロゲステロンがピークむくみが最も強い
生理開始〜数日プロゲステロンが急落水分が抜けて軽くなる

この波は基礎体温の高温期とほぼ一致します。基礎体温をつけている方は、「高温期に入ると靴がきつい」という自分のパターンが見えてくるはずです。

むくみ以外の症状も一緒に出るなら

むくみと同時に、胸の張り・イライラ・頭痛・便秘・食欲の増加などがまとまって現れる場合は、PMS(月経前症候群)の一症状としてとらえるほうが、対策が立てやすくなります。生理前のむくみだけを深く知りたい方は、生理前のむくみの原因と解消法の記事で、時期別の対処法をくわしくまとめています。

周期型のむくみを軽くする考え方
  • むくむ時期を「なくす」のではなく、予測して備える(この時期はゆるめの靴、締めつけない服)
  • 体重が1〜2kg増えても、その時期は体重計の数字を判断材料にしない
  • 塩分は「減らす」より、むくむ2週間だけ意識するほうが続きます
  • むくみを含むPMSがつらい場合、低用量ピルでホルモンの波そのものをゆるやかにする選択肢もあります(医師と相談のうえで)

妊娠中のむくみ|正常な範囲と危険なサイン

妊娠中のむくみは、とてもよく見られる変化です。妊婦さんの多く、とくに妊娠後期にはほとんどの方が何らかのむくみを経験します。

妊娠中にむくむのは自然なこと

妊娠すると、赤ちゃんに酸素と栄養を届けるために、体を流れる血液の量が妊娠前の約1.4倍に増えます。増えるのは主に血液の液体成分(血漿)なので、体全体の水分量が大きく増えることになります。

さらに妊娠後期には、大きくなった子宮が骨盤の中の太い静脈(下大静脈)を押すため、足から心臓へ戻る血液の流れが物理的に妨げられます。プロゲステロンが高い状態が続くことも重なり、妊娠後期のむくみは「体のつくりから見て起こって当然」の変化です。

時期むくみの傾向ポイント
妊娠初期(〜15週)むくみは軽いことが多い強いむくみがある場合は他の原因も検討
妊娠中期(16〜27週)夕方の足のむくみが出始める妊娠6ヶ月ごろから自覚する人が増える
妊娠後期(28週〜)足首・ふくらはぎのむくみが強くなる横向きで休むと軽くなりやすい
臨月最も強い時期。靴が入らないことも血圧と体重増加のペースを必ず確認

妊娠高血圧症候群のサインとしてのむくみ

妊娠中に次のむくみが出たら、健診日を待たずに連絡を
  • 1週間で体重が500g以上のペースで急に増えた
  • 顔やまぶたがはっきりむくむ(足だけでなく上半身に出た)
  • 手がむくんで、指輪が抜けなくなった
  • むくみに加えて、頭痛・目がチカチカする・みぞおちの痛み・吐き気がある
  • 尿の量が明らかに減った

これらは妊娠高血圧症候群のサインとして知られています。かつては「妊娠中毒症」と呼ばれ、むくみが診断基準に含まれていましたが、現在の診断は血圧とたんぱく尿が中心です。それでも急に強くなったむくみは、血圧を測るきっかけとして重要です。自己判断で様子を見ず、かかりつけの産科に連絡してください。

妊娠中のむくみ対策で気をつけたいこと

  • 水分を控えるのは逆効果です。妊娠中はとくに脱水を避ける必要があります
  • 横になるときは左を下にした横向き(シムス位)に。子宮が下大静脈を押す力がゆるみます
  • 塩分は「減らす」より「極端に多い日を作らない」。妊娠中の過度な減塩は推奨されていません
  • 着圧ソックスは妊婦向けの弱めの圧のものを。強すぎるものは避けてください
  • むくみと一緒に強い眠気や倦怠感がある場合は、妊娠糖尿病や貧血の検査結果もあわせて確認してもらいましょう

妊娠後期の過ごし方については、妊娠8ヶ月妊娠9ヶ月の記事でも、むくみを含む体の変化をまとめています。

産後のむくみはいつまで続く?

「産んだらむくみは消えると思っていたのに、退院してからのほうがひどい」という声は、産後の相談でとてもよく聞きます。

産後1〜2週間がむくみのピークになることも

出産後、妊娠中に増えていた大量の水分は、尿と汗として一気に体の外へ出ていきます。産後数日、驚くほど汗をかいたり、トイレが近くなったりするのはこのためです。

ただし、この排出が進む前の産後数日から2週間ほどは、妊娠中の水分がまだ体に残っているうえに、出産時の点滴や出血、そして横になっている時間が長いことが重なり、むくみが一時的に強くなることがあります。多くは産後2週間〜1ヶ月で自然に落ち着いていきます。

産後のむくみが長引くときに考えたいこと

状況考えられること対応
1ヶ月健診を過ぎてもむくみが続く貧血・甲状腺(産後甲状腺炎)健診で血液検査を相談
強い倦怠感・気分の落ちこみをともなう産後甲状腺炎、産後うつとの区別が必要ひとりで抱えず相談を
片足だけむくむ・ふくらはぎが痛い産後は血栓ができやすい時期すぐ受診
出血(悪露)が長引いている貧血によるむくみ・だるさ悪露の量と期間を確認
産後は「血栓ができやすい時期」です
  • 妊娠中から産後6週間ごろまでは、出血に備えて血液が固まりやすい状態になっています
  • とくに帝王切開のあと、長時間の分娩のあと、安静が続いたあとはリスクが上がります
  • 片方のふくらはぎだけが痛い・腫れている・熱をもっているときは、マッサージをせずに受診してください

血のかたまりを手で押し流そうとするのは危険です。「マッサージでほぐす」は、片側型のむくみでは絶対にやってはいけない対応と覚えておいてください。

更年期以降にむくみやすくなる理由

40代後半から「これまでむくまなかったのに、急にむくむようになった」と感じる方は少なくありません。理由は一つではなく、いくつかの変化が同時に起こるためです。

エストロゲンの低下がもたらす3つの変化

  • 血管のしなやかさが落ちる:エストロゲンには血管を広げ、しなやかに保つはたらきがあります。減ることで血流の調整がうまくいかず、水分が滞りやすくなります
  • 自律神経が乱れやすくなる:血管の収縮・拡張は自律神経が担っています。ホルモンの急な変動に自律神経が振り回されると、血流と体温の調節が不安定になります(自律神経の乱れ
  • 筋肉量が落ちる:年齢とともに筋肉量は自然に減ります。ふくらはぎの筋ポンプが弱くなれば、同じ生活をしていてもむくみやすくなります

更年期のむくみと「体重が落ちにくい」感覚

更年期に「体重が増えた」「顔がぼんやりむくんだ感じになった」と感じるとき、その一部は脂肪ではなく水分であることがあります。更年期の体重増加の記事でも触れていますが、この時期はむくみと体脂肪の増加が同時に進むため、鏡や体重計だけでは切り分けられません

更年期だと思っていたら甲状腺だった、というパターン

この年代でいちばん見逃されやすいのが甲状腺です
むくみ・だるさ・寒がり・体重増加・気分の落ちこみ・髪のパサつきは、更年期の症状としても、甲状腺の働きが落ちたとき(橋本病など)にも、まったく同じように現れます。甲状腺の病気は女性に圧倒的に多く、40〜50代で見つかることも珍しくありません。「更年期だから」で片づける前に、一度TSH(甲状腺刺激ホルモン)を含む血液検査を受けておくと安心です。

更年期の全体像は更年期障害とは、その手前の年代の変化はプレ更年期の記事にまとめています。

低用量ピルを飲んでいて片足だけむくんだら

ここは、この記事でいちばんお伝えしたいセクションです。

低用量ピルは、避妊だけでなく生理痛やPMSの改善のために多くの女性が使っている、有用な選択肢です。同時に、まれではあるものの血栓症(血管の中で血液が固まる)のリスクがわずかに上がることが知られています。

足のむくみが、最初のサインになることがある

深部静脈血栓症は、足の深いところにある静脈に血のかたまりができ、血液の戻り道がふさがれる状態です。ふさがれた側の足だけに水分がたまるため、「片足だけが急に太くなる」という、とてもわかりやすいかたちで現れます。

ふつうのむくみ注意したいむくみ
両足に同じように出る片足だけ/左右差がはっきりある
夕方に強く、朝には軽い朝でも変わらない/どんどん強くなる
だるさ・重さふくらはぎの痛み・熱っぽさ・赤み
数日で戻る急に始まって続く
低用量ピル服用中に覚えておきたい「ACHES(エイクス)」
  • Abdominal pain:激しい腹痛
  • Chest pain:強い胸の痛み・息苦しさ・押しつぶされるような痛み
  • Headache:激しい頭痛
  • Eye/speech:見えにくい、視野が欠ける、舌がもつれる
  • Severe leg pain:ふくらはぎの激しい痛み・むくみ・熱感

これらが出たときは、ピルの服用を中止し、すぐに医療機関を受診してください。受診の際は「低用量ピルを飲んでいます」と必ず最初に伝えます。この一言があるかないかで、医師が考える可能性の順番が変わります。とくに足の痛みや腫れは、胸の症状より先に現れることがあります。

リスクが上がる条件を知っておく

血栓のリスクは、次のような条件が重なると上がることが知られています。

  • 喫煙(とくに35歳以上で1日15本以上)
  • 長時間の飛行機・バス移動など、足を動かさない時間が続いたとき
  • 脱水(水分不足)
  • 手術やケガのあとで安静が続くとき
  • 家族に血栓症になった人がいる場合

これらは「ピルをやめるべき理由」ではなく、「その条件が重なる日は、意識して足首を動かし、水分をとる」ための知識です。長距離移動の日は1〜2時間ごとに立って歩く、こまめに水を飲む、というだけでリスクは下げられます。

ピルの副作用全般については低用量ピルの副作用、飲み始めの体の変化については飲み始め1ヶ月の変化の記事もあわせてご覧ください。なお、ピルによる一時的な「体が重い感じ」「軽いむくみ」は飲み始めの数ヶ月で落ち着くことが多く、これはピルで太るのかの記事で扱っています。

すぐに受診したい危険なサイン

むくみの大半は心配のいらないものですが、次のサインがあるときは、様子を見ずに医療機関へ相談してください。

今日中に受診してほしいサイン
  • 片足だけが急に腫れた(左右差がはっきりある)
  • ふくらはぎに痛みがあり、押すと痛い・熱をもっている・赤くなっている
  • むくみと同時に息切れ・胸の痛み・急な動悸がある
  • 横になると息苦しく、起き上がると楽になる
  • 数日で体重が2〜3kg以上増えた
  • 尿の量が明らかに減った/ほとんど出ない
  • 顔・まぶたが朝からはっきりむくみ、日中も戻らない
  • 妊娠中で、むくみに加えて頭痛・目のちらつき・みぞおちの痛みがある

とくに「片足のむくみ+息切れ・胸の痛み」の組み合わせは、足でできた血のかたまりが肺に移動している可能性を考えるべき状態です。夜間・休日であっても、迷わず救急外来に相談してください。

近いうちに(1〜2週間以内に)受診したいサイン

  • 朝起きてもむくみが引かない日が1週間以上続く
  • むくみと一緒に、強いだるさ・寒がり・髪が抜ける・便秘がある(甲状腺の可能性)
  • 立ちくらみ・動悸・息切れをともなう(貧血の可能性)
  • 新しく飲み始めた薬がある(薬の影響の可能性)
  • 婦人科の病気を指摘されていて、下腹部の張りや痛みもある

むくみの裏に隠れている病気

④全身型のむくみ、あるいはセルフケアで変わらないむくみでは、体のどこかに原因があることがあります。とくに女性に関係の深いものから見ていきましょう。

甲状腺の働きの低下(女性に圧倒的に多い)

甲状腺ホルモンは全身の代謝を調節しています。分泌が減ると、体の水分代謝が落ち、押してもへこみにくい、ぽってりとしたむくみが顔やまぶた、手足に出ます。

甲状腺の病気は女性に非常に多く、橋本病(慢性甲状腺炎)は男女比で1対20〜30とも言われます。むくみのほか、寒がり・体重増加・便秘・気力が出ない・髪のパサつき・生理が重くなるといった症状が重なるのが特徴です。逆に甲状腺が働きすぎるバセドウ病でも、すねの前面に特有のむくみが出ることがあります。

鉄不足・貧血

生理のある女性でとても多いのが鉄不足です。貧血そのものが直接むくみを作るというより、だるさ・動悸・息切れといった症状と重なって「体が重い、むくんでいる」と感じるケースが多く見られます。極端な食事制限による低栄養(低アルブミン血症)は、血管に水分をとどめる力を落とし、はっきりしたむくみの原因になります。

生理の量が多い方は、生理による貧血経血量の目安の記事も確認してみてください。

腎臓・心臓・肝臓

原因むくみの特徴一緒に出やすい症状
腎臓の機能低下朝のまぶた・顔から始まる尿の量の変化・尿が泡立つ・血圧上昇
心臓の機能低下夕方の両足。進むと戻らない息切れ・横になると苦しい・急な体重増加
肝臓の機能低下足+お腹の張りだるさ・黄疸・食欲低下
下肢静脈瘤両足または片足。だるさ・こむら返り足に血管が浮き出て見える

リンパ浮腫(女性特有の原因として知っておきたい)

あまり知られていませんが、婦人科のがんの手術でリンパ節を取ったあと、その側の足がむくむことがあります。これをリンパ浮腫といいます。

子宮体がん子宮頸がん卵巣がんの手術では、がんの広がりを調べるために骨盤内のリンパ節を切除することがあります。リンパ液の通り道が減るため、足のつけ根から下がむくみやすくなるのです。

特徴は、片側に出やすいこと、押してもへこみにくくなっていくこと、そして手術から数ヶ月〜数年たってから始まることもある点です。治療を受けた病院で、圧迫療法やリンパドレナージなどの専門的な管理を受けられることが多いので、「手術したのはずいぶん前だから」と思わず、必ず相談してください。

骨盤内の圧迫

大きな子宮筋腫卵巣のう腫子宮腺筋症による子宮の腫大があると、骨盤内の静脈やリンパ管が押されて、下半身のむくみとして現れることがあります。とくに片側だけのむくみ+下腹部の張りという組み合わせのときは、婦人科での確認をおすすめします。

薬の影響

一部の薬にも、むくみを起こしやすいものがあります。血圧の薬(カルシウム拮抗薬)、痛み止め(NSAIDs)、ステロイド、一部の漢方薬(甘草を多く含むもの)などです。「新しい薬を飲み始めてからむくむようになった」という時間の関係に心当たりがあれば、自己判断で中止せず、処方した医師や薬剤師に伝えてください。

何科に行けばいい?受診先早見表と伝え方

むくみは、原因になりうる臓器が多いぶん「どこに行けばいいかわからない」となりやすい症状です。迷ったときの目安をまとめます。

こんなとき受診先理由
どこに行けばいいかわからない内科(かかりつけ医)血液・尿検査でおおまかな原因を絞れる
片足だけ急にむくんだ・痛いすぐに救急外来・血管外科・循環器内科血栓の可能性を最優先で確認
息切れ・動悸・横になると苦しい循環器内科心臓の機能を確認
顔・まぶたのむくみ、尿の変化内科・腎臓内科腎臓の機能を確認
生理前だけむくむ・PMSがつらい婦人科ホルモンの波への対応が可能
妊娠中のむくみかかりつけの産科血圧・尿たんぱくとあわせて評価
だるさ・寒がり・体重増加もある内科(甲状腺の検査を希望と伝える)甲状腺機能の確認
婦人科手術のあと、片足がむくむ手術を受けた病院リンパ浮腫の専門的な管理が必要

診察室でそのまま使える伝え方

この3点を伝えるだけで、医師が考える範囲がぐっと絞れます
  • いつから:「3週間前から」「今朝から急に」
  • 片方か両方か:「右足だけです」「両足ですが右のほうが強いです」
  • 朝どうなっているか:「朝には戻っています」「朝も引きません」
診察室で、私服の女性が白衣の女性医師に足のむくみについて相談している様子

そのうえで、次の情報があれば追加してください。「低用量ピルを飲んでいます」「生理が重いです」「妊娠の可能性があります」「最近この薬を始めました」——このどれも、むくみの原因を考えるうえで欠かせない情報です。とくにピルの服用は、聞かれなくても必ず自分から伝えてください。

病院での検査と治療

初診で行われることの多い検査

検査わかること負担
問診・視診・触診左右差、へこみ方、皮膚の状態なし
血圧測定・体重測定心臓・腎臓への負担、体液量の変化なし
血液検査甲状腺(TSHなど)・貧血・腎機能・肝機能・アルブミン採血のみ
尿検査たんぱく尿の有無なし
下肢エコー(超音波)血栓の有無、静脈の逆流痛みなし・10〜20分程度
心電図・胸部レントゲン心臓の状態痛みなし

むくみの検査に内診はありません。婦人科を受診する場合でも、まずは問診と超音波検査から始まるのが一般的です。「足のむくみで婦人科に行ったら内診されるのでは」という不安から受診をためらう方がいますが、その心配はいりません。

費用の目安

内容3割負担の目安
初診+問診・血圧のみ約1,500〜2,500円
初診+血液検査・尿検査約3,000〜6,000円
初診+血液検査+下肢エコー約6,000〜10,000円
再診(結果説明のみ)約1,000〜2,000円

初回は5,000〜10,000円程度を用意しておくと安心です。医療機関や検査内容によって幅があります。

治療の考え方

  • 原因のある病気が見つかった場合:その病気の治療が中心になります(甲状腺なら甲状腺ホルモンの補充、貧血なら鉄剤、など)。むくみは原因の改善とともに軽くなっていきます
  • 弾性ストッキング(圧迫療法):下肢静脈瘤やリンパ浮腫では、医療用の弾性ストッキングが基本の対応になります。市販の着圧ソックスとは圧の設計が異なり、サイズの測定が必要です
  • 利尿薬:心臓や腎臓の病気がある場合に医師の判断で使われる薬です。「むくみを取りたいから」という理由で自己判断で使う薬ではありません。体に必要な水分まで抜いてしまうリスクがあります
  • 漢方薬:体質や症状に応じて、水分の巡りを整える目的で処方されることがあります。市販のものもありますが、甘草を多く含むものは長期に飲むとかえってむくみを招くことがあるため、薬剤師に相談したうえで選んでください

更年期の症状全般に対する漢方の使われ方は、更年期と漢方の記事でも解説しています。

今日からできるむくみ対策10

ここからは、①生活習慣型・②周期型のむくみに対して、今日から試せることをまとめます。③片側型・④全身型の方は、まず受診を優先してください。

①1時間に1回、かかとの上げ下げを10回

立ったまま、あるいは座ったままでもかまいません。かかとを上げてつま先立ちになり、ゆっくり下ろす。これを10回。ふくらはぎの筋ポンプを直接動かす、最も効率のよい方法です。「歩く時間がとれない」人ほど、この10回に価値があります。

②足首を回す・足の指をグーパーする

デスクの下でもできます。足首の動きが増えるだけで、静脈の血流は変わります。会議中でも、電車の中でもできるのが利点です。

③夕方以降、15分だけ足を高くする

横になって、クッションや畳んだ布団の上に足を乗せます。高さは心臓より少し上、10〜20cm程度で十分です。壁に足を上げて長時間過ごす必要はありません。15分でも、たまった水分は戻り始めます。

自宅のソファでクッションに足を乗せ、着圧ソックスを履いて休んでいる日本人女性

④着圧ソックスは「圧の数値」で選ぶ

圧の目安向いている使い方
10〜20hPa程度(軽圧)日中の予防、立ち仕事、妊娠中
20〜30hPa程度(中圧)むくみが強い日、長時間の移動
就寝用としてつくられたもの寝るとき(日中用を寝るときに使わない)
医療用弾性ストッキング静脈瘤・リンパ浮腫。医師の指導のもとで
着圧ソックスで気をつけたいこと
  • 強ければ効くわけではありません。強すぎる圧はかえって血流を妨げます
  • 日中用を寝るときに履かない(寝ている間は足が水平なので、日中と同じ圧は必要ありません)
  • 食い込んで跡がつく、しびれる、冷たくなるときはすぐ外す
  • 糖尿病で足の感覚が鈍い方、動脈の病気がある方は、使う前に医師に確認を

⑤カリウムを含む食材を「毎食どれか1つ」

カリウムには、ナトリウム(塩分)を尿として体の外へ出すのを助けるはたらきがあります。サプリメントに頼らなくても、ふだんの食事から十分にとれます。

食材の種類具体例取り入れ方
果物バナナ、キウイ、アボカド、メロン朝食に1つ
いも類さつまいも、里いも、じゃがいも汁物の具に
豆・海藻納豆、大豆、ひじき、わかめ副菜として
野菜ほうれん草、小松菜、かぼちゃ、トマト汁ごと食べられる調理で

カリウムは水に溶け出しやすいため、ゆでこぼすより、スープや味噌汁のように汁ごと食べられる調理法のほうが効率的です(塩分は控えめに)。なお腎臓の病気を指摘されている方は、カリウムを増やすことが制限されている場合があります。必ず主治医の指示に従ってください。

⑥水分は「控えない」

くり返しになりますが、水分を控えるとかえってむくみやすくなります。体は「水が入ってこない」と判断すると、今ある水分を手放さなくなるからです。1日1.2〜1.5リットル程度を、こまめに分けて取るのが基本です(心臓・腎臓の病気で水分制限がある方は主治医の指示を優先してください)。

⑦塩分は「引き算」より「置き換え」

減塩は続かなければ意味がありません。汁物を1日1杯までにする、麺類の汁を残す、しょうゆを「かける」から「つける」に変える、だし・酸味・香辛料で味を補う。この4つだけで、1日の塩分は目に見えて減ります。

⑧湯船に10分つかる

入浴には、体が温まって血管が広がる効果と、お湯の水圧が足を外から押す効果の両方があります。ぬるめ(38〜40度)に10分程度が目安です。長すぎる入浴や熱すぎるお湯は、脱水を招くので逆効果になります。

⑨寝る前のストレッチとふくらはぎのさすり上げ

足首からひざに向かって、下から上へやさしくさすります。強く揉む必要はありません。強い力でのマッサージは、毛細血管を傷めて内出血の原因になることがあります。「流す」というより「表面をなでる」くらいの強さで十分です。ただし、片足だけがむくんでいるときは、マッサージをしないでください。

⑩睡眠時間を確保する

水分バランスを調節するホルモンは、睡眠のリズムと連動しています。むくみだけを対策しても、慢性的な睡眠不足があると効果は出にくくなります。眠れないときの対処法寝ても寝ても眠いときの記事もあわせてご覧ください。

どれから始めればいい?(実行の順番)
  • 1週目:①かかとの上げ下げ + ③夕方に15分足を上げる ——この2つだけ
  • 2週目:⑦塩分の置き換え + ⑥水分をこまめに ——食事の習慣を1つずつ
  • 3週目以降:④着圧ソックス、⑤カリウム、⑧入浴 ——生活に合うものを足していく

10個すべてを一度にやろうとすると、まず続きません。「どれが自分に効いたか」を知るためにも、1〜2個ずつ増やしていくほうが確実です。

職場でできること|働き方別のむくみ対策

むくみ対策のいちばんの障害は「職場ではできない」ことです。働き方によって、できることもやるべきことも違います。

働き方むくむ理由職場でできること
デスクワーク 股関節とひざが曲がったまま、静脈が圧迫され続ける 1時間に1回立つ/座ったまま足首を回す・つま先を上下させる/足を組まない/足元に小さな台を置いてひざの角度をゆるめる
立ち仕事(販売・医療・美容) 立っているだけでは筋ポンプが動かない その場でかかとの上げ下げ10回/片足ずつ重心を移す/休憩中は必ず座って足を伸ばす/日中から着圧ソックスを履く
長時間の運転・移動 足を動かせず、脱水も重なる 1〜2時間ごとに停車・立ち上がる/水をこまめに飲む/座席でつま先の上下運動/ピル服用中はとくに意識して
在宅ワーク 通勤がなくなり、1日の歩数が激減する 会議は立って参加する/トイレのたびに家の中を一周/昼休みに10分だけ外に出る

靴と服装の選び方

意外に見落とされがちですが、身につけるものの影響は小さくありません。

  • 靴のヒール:高いヒールは足首がほとんど動かないため、筋ポンプが働きません。3〜5cm程度までの、かかとが安定するものが現実的な落としどころです。通勤だけスニーカーに替えるのも十分に効果があります
  • 靴のサイズ:夕方はむくむ前提で、靴は夕方に選ぶのが基本です。朝ぴったりの靴は夕方きつくなります
  • 下着・ボトムス:足のつけ根を強く締めつけるものは、下半身から戻る血液の通り道を圧迫します。ゴムの跡が深く残るものは見直しを
  • 冷え対策:夏の冷房下では、薄手のレッグウォーマーやひざ掛けが有効です。足首を冷やさないだけで、夕方のだるさが変わることがあります

こむら返り(足がつる)を繰り返すとき

むくみと一緒に「夜中にふくらはぎがつる」という相談も多く寄せられます。両者は別の症状ですが、背景が重なることがあります。

考えられる背景特徴対応
水分・ミネラル不足汗をかいた日、飲酒した日に起きやすい水分とミネラルを補う
筋肉疲労・冷え立ち仕事の日の夜に多い入浴・ストレッチ・足首を冷やさない
妊娠後期とてもよくある。子宮による圧迫と血流の変化就寝前のふくらはぎのストレッチ
下肢静脈瘤だるさ・血管の浮き出しをともなう血管外科で相談
甲状腺・腎臓の問題、薬の影響頻度が高く、日中にも起こる内科で血液検査を

つったときは、つま先を手前に引き寄せて、ふくらはぎをゆっくり伸ばすのが基本です。無理に立ち上がったり、強く揉んだりしないでください。毎晩のように繰り返す、日中も起こる、という場合は、むくみとあわせて医師に伝えましょう。

どれくらいで変化を感じられる?経過の見通し

「やってみたけれど変わらない」と思ったとき、それが「効いていない」のか「まだ早い」のかがわからないと、続けようがありません。目安を示します。

取り組み変化を判断する期間変わらないときに考えること
足上げ・かかとの上げ下げその日のうち(夕方の重さが軽くなるか)まったく変わらないなら生活習慣型以外の可能性
着圧ソックス1〜3日(夕方の靴のきつさで判断)圧が合っていないか、原因が別にある
塩分の見直し3〜7日塩分以外の要因が主である
睡眠・運動習慣の改善2〜4週間甲状腺・貧血の確認を
生理前のむくみ対策1〜2周期(同じ周期日で比べる)PMS全体の相談を婦人科へ
2〜4週間続けても変わらないときは、やり方ではなく原因を疑う
セルフケアを2〜4週間しっかり続けても、夕方のむくみがまったく軽くならない・朝も引かない日が増えていく——このときに必要なのは、もっと強い着圧ソックスでも、もっと厳しい減塩でもありません。血液検査で甲状腺・貧血・腎機能を一度確認することです。原因が別にあるむくみを生活習慣で押し返そうとしても、報われません。

その方法、本当に効く?むくみの通説を検証

むくみは情報が多い分野で、根拠のはっきりしない対策も広く信じられています。よく聞くものを整理します。

「むくむから水分を控える」→ 逆効果です

最も多い誤解です。体は水分が入ってこないと判断すると、抗利尿ホルモンを増やして水分を保持しようとします。水分制限は、むくみを悪化させる方向にはたらきます。むくみの原因は水の量ではなく、水の回収がうまくいっていないことにあります(医師から水分制限を指示されている場合はその指示が優先です)。

「レモン系のドリンクを飲むとむくみが取れる」→ 過度な期待はしない

クエン酸やカリウムを含む飲料に、水分代謝を助ける成分が入っていることはあります。ただし飲めばむくみが取れるというものではありません。むしろ、水分をとるきっかけになる点に意味があると考えるのが現実的です。糖分の多い飲料を毎日習慣にすると、別の問題が出てきます。

「マッサージで足が細くなる」→ 一時的な水分移動です

マッサージ直後に足が細くなるのは、たまっていた水分が移動したためで、脂肪が減ったわけではありません。それ自体は悪いことではありませんが、数時間で戻ります。「細くする」ではなく「その日のだるさを軽くする」目的なら、意味のあるケアです。

「着圧は強いほど効く」→ 強すぎると逆効果

圧が強すぎると、静脈だけでなく動脈の流れまで妨げてしまいます。しびれる、冷たくなる、跡が深く残るのは強すぎるサインです。

「一晩じゅう足を高くして寝るとよい」→ 15分で十分

寝ている間は体が水平なので、足を高くし続ける必要はありません。むしろ不自然な姿勢で腰を痛めることがあります。足上げは、夕方から寝る前までの15〜20分が効率的です。

「むくみは体質だから仕方ない」→ 半分は正しく、半分は違います

筋肉量やホルモンの周期といった「変えにくい条件」があるのは事実です。けれど、足首を動かす回数・塩分・睡眠・冷えは、どれも変えられる条件です。そして何より、体質で片づけてしまうと、甲状腺や貧血、血栓といった「見つければ対応できる原因」を見逃すことになります。

むくみの記録のしかた

受診するとき、「なんとなくむくむんです」と伝えるより、1〜2週間の記録があるほうが診断の助けになります。むずかしく考えず、次の項目だけで十分です。

日付生理周期(何日目)朝のむくみ夕方のむくみ体重その日のできごと
8/1022日目なし強い(靴がきつい)52.8kg立ち仕事8時間・外食
8/1123日目少しあり強い53.4kg睡眠4時間
8/1224日目なしふつう53.0kg在宅・よく歩いた
8/15生理1日目なし軽い52.2kg——
記録で医師が読み取っていること
  • 朝の欄に「あり」が並ぶか:ここが埋まっていると、生活習慣型ではない可能性が上がります
  • 生理周期との連動:高温期にむくみが集中していれば周期型と判断できます
  • 体重の動き方:数日で2kg以上動いていれば、体液量の変化を示す重要な情報になります
  • 左右差の記載:「右だけ」と一行あるだけで、確認すべき検査が変わります

スマートフォンのメモやカレンダーアプリで十分です。生理周期の記録アプリを使っている方は、そこにメモを残しておくと、周期との関係がひと目でわかります。

よくある質問

Q 足のむくみはどうやったら取れますか?

A.その日のむくみをやわらげるだけなら、かかとの上げ下げを10回、夕方以降に15分足を高くする、湯船に10分つかる、の3つが効率的です。ただし、これで変わらないむくみ・朝も残るむくみ・片足だけのむくみは、対策の問題ではなく原因の問題です。セルフケアを重ねるより、受診して原因を確かめるほうが早く解決します。

Q 足のむくみがやばいと感じるとき、何を目安に受診すればいいですか?

A.目安は3つです。①片足だけが急に腫れた ②朝になっても引かない日が続く ③息切れ・胸の痛み・急な体重増加をともなう。このどれかがあれば受診してください。とくに①と③が重なるときは、その日のうちに医療機関に相談してほしい状態です。

Q むくみがあるとき、歩いたほうがいいですか?

A.生活習慣型・周期型のむくみなら、歩くのはとても有効です。ふくらはぎの筋ポンプが動き、血液が心臓へ戻りやすくなります。ただし、片足だけが急にむくんで痛みがある場合は別です。血栓の可能性があるときは、動かすことや揉むことで状況が変わることがあるため、まず受診してください。

Q 片足だけむくむのはどうしてですか?

A.むくみの原因が「全身にかかわるもの」なら、ふつうは両足に出ます。片方だけということは、その足の血液やリンパの通り道に、局所的な問題がある可能性を示しています。深部静脈血栓症、リンパ浮腫、骨盤内の腫瘤による圧迫、蜂窩織炎(皮膚の感染)などです。片側のむくみは、原因を確かめるべきサインと考えてください。

Q 生理前に体重が2kg増えるのですが、太ったのでしょうか?

A.その多くは水分です。プロゲステロンのはたらきで体が水分をためこむため、生理前に1〜2kg増えるのはよくあることで、生理が始まると数日で戻ります。この時期の体重を判断材料にしないこと、そして「同じ生理周期の同じ日」で前月と比べることをおすすめします。

Q 水を飲むとむくみますか?

A.健康な腎臓は、余分な水分を尿として出してくれます。むくみの原因は水の量ではなく、水が回収されないことにあります。むしろ水分を控えると、体が水をためこもうとしてむくみやすくなります。気をつけるべきは水の量より、一緒にとっている塩分の量です。

Q 妊娠中のむくみは、どこからが心配なむくみですか?

A.足のむくみだけで、朝には軽くなり、体重の増え方も順調なら、多くは経過を見てよいむくみです。連絡してほしいのは、①1週間で500g以上のペースで体重が増える ②顔や手がむくむ ③頭痛・目のちらつき・みぞおちの痛みがある ④尿が減った、という場合です。健診日を待たず、産科に電話で相談してください。

Q 低用量ピルを飲んでいます。むくみは副作用ですか?

A.飲み始めの1〜3ヶ月に、体が重い・軽くむくむと感じる方はいます。多くは体が慣れるにつれて落ち着きます。ただし片足だけの急なむくみ、ふくらはぎの痛みや熱感は別です。この場合は服用を中止して受診し、「低用量ピルを飲んでいます」と必ず伝えてください。判断に迷ったら、処方を受けているクリニックに電話で相談するのがいちばん確実です。

Q 市販のむくみ用サプリや漢方は飲んでも大丈夫ですか?

A.市販薬や漢方を選ぶ前に、まず原因の見当をつけることをおすすめします。とくに腎臓の病気がある方はカリウムの摂取に制限がある場合があり、甘草を多く含む漢方は長く飲むとかえってむくみやすくなることがあります。購入時に薬剤師へ「今飲んでいる薬」と「持病」を伝えて選んでもらってください。

Q エステやサロンのリンパマッサージは受けたほうがいいですか?

A.生活習慣型のむくみに対して、その日のだるさを軽くしたり、リラックスの時間として利用したりする分には問題ありません。ただし「むくみが根本的に解消する」「脚が細くなる」といった期待は持たないほうが現実的です。効果は一時的で、原因が別にあるむくみには届きません。また、片足だけがむくんでいるとき、ふくらはぎに痛みや熱感があるときは、施術を受ける前に必ず受診してください。なお、がんの手術後のリンパ浮腫に対して行われる医療的なリンパドレナージは、エステのマッサージとはまったく別のもので、専門の資格を持つ人が医療機関で行います。

Q 婦人科の手術を受けたあと、足がむくむようになりました

A.骨盤内のリンパ節を切除する手術のあとには、リンパ浮腫が起こることがあります。手術から数ヶ月〜数年たってから始まることもあり、片側に出やすく、押してもへこみにくくなっていくのが特徴です。早い段階で圧迫療法などの管理を始めるほうが経過がよいとされているため、手術を受けた病院に必ず相談してください。「今さら」と思う必要はありません。

まとめ|むくみは、体が出している読み取れるサイン

むくみは、女性にとってあまりにも身近な症状です。だからこそ「体質」「年のせい」「立ち仕事だから」と、体からのサインを読み飛ばしてしまいがちです。

大切なのは、むくみを「取ること」ではなく、「どのタイプのむくみか」を知ること。両足で夕方に強く朝には戻るむくみは、足首を動かす回数を増やせば変わります。生理の前だけ強くなるむくみは、時期を予測して備えれば楽になります。そして、片足だけ・朝も引かない・息切れをともなうむくみは、セルフケアではなく検査が答えを出してくれます。

むくみは、目に見えて、手で触って確かめられる、数少ない体のサインです。自分の体を読み取る手がかりとして使っていきましょう。

この記事のポイントまとめ
  • むくみは水の飲みすぎではなく、血管から染み出した水分が回収されずに残った状態
  • 女性がむくみやすいのは、筋肉量・女性ホルモンの周期・骨盤内のうっ滞という3つの理由がある
  • まず「生活習慣型/周期型/片側型/全身型」のどれかを切り分ける
  • 生理前のむくみはプロゲステロンによる水分貯留。体重1〜2kgの増加はほぼ水分
  • 妊娠中は急なむくみ+頭痛・目のちらつきがあれば健診日を待たずに産科へ
  • 片足だけの急なむくみ・ふくらはぎの痛みはマッサージをせずに受診。低用量ピル服用中はとくに注意
  • 朝も引かないむくみでは、甲状腺・貧血・腎臓・心臓・リンパ浮腫を確認する
  • セルフケアの中心は、かかとの上げ下げ・夕方15分の足上げ・塩分の置き換え。水分は控えない
  • 着圧ソックスは強ければよいわけではなく、日中用を寝るときに使わない

この記事について

femnote 編集部

生理・妊活・フェムケア・更年期など女性の健康に関する情報を、厚生労働省「e-ヘルスネット」や日本産科婦人科学会をはじめとする各学会の診療ガイドラインなど、公的な資料をもとに編集しています。診断や治療の判断については、必ず医療機関にご相談ください。

参考文献

  • 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン 産科編」
  • 日本妊娠高血圧学会「妊娠高血圧症候群の診療指針」
  • 日本循環器学会ほか「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン」
  • 日本静脈学会「下肢静脈瘤に対する血管内治療のガイドライン」
  • 日本リンパ浮腫学会「リンパ浮腫診療ガイドライン」
  • 日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン」
  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「身体活動・運動」