妊娠が判明した喜びの直後に、出血や腹痛が起き「もしかして流産?」と不安になる方は少なくありません。また、以前に流産を経験し「自分のせいだったのだろうか」「また同じことになるのでは」と心配しながら次の妊娠に臨む方もいらっしゃいます。

流産は医療的にはけっして珍しいことではなく、全妊娠の約15〜20%に起こるとされています。しかし数字で知っていても、自分が経験したときの悲しさや不安は別物です。

この記事では、流産の確率・原因・種類・症状から、受診の目安・流産後のケア・次の妊娠までを助産師の立場から丁寧に解説します。「正しく知ること」が、不安を少しでも和らげる力になればと思います。

流産とは?定義と種類の基礎知識

流産の定義(妊娠22週未満)

流産とは、妊娠22週未満に妊娠が終了することを指します。妊娠22週以降の胎児の死亡は「死産」、出産後に亡くなることは「新生児死亡」と区別されます。

流産の約80〜90%は、胎芽(妊娠8週以前の赤ちゃん)または胎児が子宮内で発育を停止する「稽留流産」です。多くは妊娠初期(妊娠12週未満)に起こり、全流産の約90%がこの時期に集中しています。

用語メモ
「胎芽」は妊娠8週以前、「胎児」は妊娠9週以降の赤ちゃんの呼称です。超音波検査で心拍が確認される前後が、一般的に胎芽から胎児への移行期にあたります。

流産の種類一覧

一口に「流産」といっても、状態によっていくつかの種類に分けられます。診断名によって対応や処置が異なります。

種類 状態 特徴
稽留流産 胎芽・胎児が子宮内で亡くなっているが、排出されていない 自覚症状が少ない。超音波で発見されることが多い
進行流産 流産が進行中(子宮口が開き、出血・腹痛あり) 出血量が多い。完全流産または不全流産に移行する
完全流産 胎芽・胎児・胎盤などがすべて排出された 出血・腹痛が落ち着く。処置が不要な場合もある
不全流産 一部が子宮内に残っている 出血が続く。掻爬(そうは)などの処置が必要になることがある
切迫流産 流産しそうな兆候があるが、妊娠継続の可能性がある 出血や腹痛があっても心拍が確認できる状態。安静が指示されることが多い
化学流産 着床したが妊娠5週頃までに終了(超音波で胎嚢が確認されない) 妊娠検査薬で陽性が出た後、生理様の出血で気づく

稽留流産は自覚症状がほとんどなく、「先週まで普通に過ごしていたのに、検診でいきなり告げられた」という経験をされる方も少なくありません。突然の告知に混乱するのは自然なことです。

切迫流産と流産(確定診断)は別物です。出血や腹痛があっても、心拍が確認されていれば「切迫流産」の段階です。詳しくは切迫流産の原因・症状・安静の過ごし方をあわせてご覧ください。

化学流産については化学流産とは?妊娠検査薬の陽性後に起こる流産を助産師が解説で詳しく解説しています。

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流産の確率|週数別・年齢別データ

妊娠週数別の流産確率

流産の確率は、妊娠週数とともに大きく変化します。特に妊娠初期(12週未満)は最もリスクが高く、心拍が確認された後は確率が大幅に下がることがわかっています。

妊娠週数 目安の流産確率 ポイント
4〜5週 約10〜15% 化学流産を含むと実際の数字はさらに高い
6〜7週 約5〜10% 胎嚢は確認できるが心拍未確認の時期
8〜9週(心拍確認後) 約2〜5% 心拍確認で確率が急激に低下する
10〜12週 約1〜2% 妊娠維持の見通しが立ちやすくなる
12週以降 約1%未満 後期流産・死産の確率はさらに低い

心拍が確認された後の流産確率は大幅に低くなります。産婦人科での心拍確認は、妊娠継続の大きな節目といえます。

年齢と流産確率の関係

流産確率は母体の年齢とも深く関係しています。年齢が上がるにつれ卵子の質(染色体正常率)が下がるため、流産リスクが高まることが知られています。

母体の年齢 目安の流産確率
20〜24歳 約5〜10%
25〜29歳 約10〜12%
30〜34歳 約12〜15%
35〜39歳 約15〜20%
40〜44歳 約25〜35%
45歳以上 約50%以上
数字について
上表の確率はWHO・厚生労働省・各種産科学会の報告値を参考にした目安です。検査技術・集計方法によって数値に差があるため、「傾向を理解するための参考値」としてご覧ください。

流産の原因

最多は染色体異常(偶発的なもの)

流産の原因の約80%は、受精卵の染色体異常です。受精の際に染色体の数や構造に偶発的なエラーが生じ、正常に発育できなくなった場合に起こります。

この染色体異常は、両親の染色体に問題がなくても「受精の際にたまたま起きる偶発的なエラー」であることがほとんどです。つまり、流産したのはお母さんやお父さんのせいではありません。

医学的には「胎芽・胎児の染色体に問題があり、自然に淘汰された」と解釈されます。「あのとき〇〇しなければよかった」と後悔するお気持ちはよくわかりますが、日常的な行動(仕事・家事・性交渉・軽い運動など)が流産の直接原因になることは、ほぼないとされています。

その他の原因

染色体異常以外にも、以下のような要因が関わることがあります。ただし、これらは繰り返し流産する「習慣性流産(不育症)」の原因として調べるものであり、1〜2回の流産では必ずしも検査は必要ありません。

  • 子宮の形態異常:子宮中隔・双角子宮など、子宮の形に先天的な問題がある場合
  • 子宮筋腫・子宮腺筋症:内腔を圧迫する位置にある場合に着床・維持に影響することがある
  • 黄体機能不全:妊娠を維持するホルモン(プロゲステロン)の分泌が不十分な場合
  • 抗リン脂質抗体症候群:免疫系の問題で血栓が形成されやすく、胎盤への血流が障害される
  • 甲状腺機能異常:甲状腺ホルモンの過不足が妊娠維持に影響することがある
  • 染色体構造異常(両親由来):両親のどちらかに均衡型染色体転座がある場合(3〜5%)

「ストレスや運動が原因?」よくある誤解を解消

流産後に多くの方が「あのときストレスがかかっていたせいでは」「家事をしすぎたせいでは」と考えます。その気持ちは自然ですが、医学的な根拠はほぼありません。

流産の原因にならないもの(よくある誤解)
  • 通常の仕事・家事・軽い運動
  • 性交渉(妊娠中のものも含む)
  • 日常的なストレス・心配ごと
  • 転倒・軽い打撲などの外力(ただし強い衝撃は別)
  • 辛い食べ物・カフェイン(適量の範囲内)
  • 入浴(適温であれば)
これらは「流産の引き金になった」と感じやすいですが、流産の根本原因(染色体異常など)は妊娠初期から決まっていることがほとんどです。

流産の兆候・症状

流産の主な兆候は「出血」「腹痛」「妊娠症状の急激な消失」の3つです。ただし、これらの症状があっても必ずしも流産とは限りません。

出血(量・色・形状の目安)

妊娠初期の出血は、流産の最もよく見られる兆候の一つです。色や量はさまざまで、茶色の少量出血から鮮血の大量出血まで幅があります。

  • 茶色〜暗赤色の少量出血:古い血液。少量であれば切迫流産・着床出血の可能性もある
  • 鮮血で量が増えている:流産が進行している可能性。速やかに受診する
  • 組織(肉のかたまり)が出た:進行流産・完全流産の可能性が高い

着床出血との見分け方については着床出血の見分け方・時期・量・色のポイントで詳しく解説しています。

腹痛・下腹部痛

生理痛のような下腹部の痛みや重さが出ることがあります。軽い引きつり感であれば子宮の変化によるものの可能性もありますが、強くなる・出血を伴う場合は受診が必要です。

妊娠初期の腹痛について詳しくは妊娠初期の腹痛はなぜ起こる?正常な痛みと危険なサインの見分け方もご参照ください。

妊娠症状(つわり・胸の張り)の急激な消失

つわりや胸の張りなどの妊娠症状が突然なくなったと感じると不安になる方もいます。ただし、妊娠症状は日や時間帯によって強弱があるため、「今日は楽だった」という程度であれば必ずしも問題ではありません。

一方で「昨日まであったつわりが今日完全になくなり、出血もある」という場合は稽留流産の可能性があります。超音波検査で確認することが大切です。

出血・腹痛があっても流産とは限らない

妊娠初期の出血は「着床出血」「絨毛膜下血腫」「頸管ポリープ」など、流産以外の原因でも起こります。出血があっても赤ちゃんの心拍が確認できれば「切迫流産」として経過観察となり、そのまま妊娠が続くケースも多いです。

「出血=流産確定」ではありませんが、自己判断は禁物です。出血があれば産婦人科に連絡して指示を仰いでください。

リビングのソファに座りスマートフォンで電話している30代前半の日本人女性。ベージュのニットを着用し、明るい自然光が差し込む部屋で穏やかな表情

流産かもと思ったら:受診のタイミング

すぐ受診すべき症状チェックリスト

以下の症状がある場合は、当日中または救急対応で産婦人科を受診してください。

すぐに受診が必要なサイン
  • 生理よりも多い鮮血の出血が続いている
  • 夜用ナプキンが1時間以内に完全に濡れるほどの出血
  • 組織(肉のかたまりのようなもの)が排出された
  • 強い腹痛・腰痛が出血と同時に起きている
  • 立ちくらみ・意識が遠のく感覚がある
  • 片側の強い腹痛+出血(子宮外妊娠のリスク)

子宮外妊娠は流産とは異なり、緊急手術が必要になる場合があります。片側の痛みと出血には特に注意が必要です。詳しくは子宮外妊娠の症状・確率・検査・治療を助産師が解説をご確認ください。

翌日〜数日以内に受診する症状

緊急ではないものの、早めに受診して超音波検査を受けることをおすすめする状態です。

  • 茶色〜暗赤色の少量出血が2〜3日以上続いている
  • つわり等の妊娠症状が突然消えた気がする
  • 軽い腹部の不快感・重さが続いている

受診時に医師へ伝えること

受診の際、以下の情報を事前に整理しておくとスムーズです。

  • 最終月経の開始日(妊娠週数を計算するため)
  • 妊娠検査薬の結果と検査日
  • 出血の開始日・量・色(写真があれば持参)
  • 腹痛の場所・強さ・持続時間
  • 過去の妊娠・流産の回数

流産後の体と心のケア

体の回復(生理再来・排卵の時期)

流産後の体の回復には個人差がありますが、一般的な目安を知っておくことで見通しが立てやすくなります。

時期 体の状態
流産直後〜2週間 出血が続く(完全に止まるまで1〜2週間が目安)
約4〜6週後 排卵が再来することが多い(個人差あり)
約6〜8週後 次の生理が来ることが多い
2〜3ヶ月後 ほぼ流産前の状態に戻る方が多い

流産後の出血が長引く・増える・発熱があるといった場合は感染や遺残の可能性があるため、早めに受診してください。

流産後の性生活・入浴について
出血が完全に止まり、医師から許可が出るまでは性交渉・入浴(湯船につかること)を控えることが一般的です。シャワーは問題ありません。目安は出血停止後1〜2週間ですが、必ず主治医の指示に従ってください。

流産後の心のつらさとグリーフケア

流産はたとえ初期であっても、心理的な影響は大きいです。悲しみ・怒り・罪悪感・空虚感など、さまざまな感情が入り混じるのは自然なことです。

「早い段階だったから大したことない」「また妊娠できるから」という周囲の言葉が傷つくことも少なくありません。感情を無理に切り替えようとせず、自分のペースで悲しむ時間を持つことが大切です。

また、パートナーも同様に悲しんでいることを忘れないでください。男性は「気持ちを表に出しにくい」「強くいなければ」と自分を抑えることがありますが、同じ喪失を経験しています。ふたりで悲しみを共有することが、お互いの回復と関係の強さにつながります。

  • パートナーや信頼できる人に話す
  • 流産経験者のコミュニティやサポートグループに参加する
  • 気持ちが落ち着かない・眠れない・日常生活に支障が出る場合は、産婦人科または心療内科に相談する

流産後に次の妊娠はできる?

次の妊娠を試みる時期の目安

流産後に次の妊娠を希望する場合、いつから妊活を再開してよいか気になる方は多いです。

日本産科婦人科学会のガイドラインでは、「流産後の次の妊娠は、1〜2回の正常月経を確認してから試みることが望ましい」とされています。体の回復確認の意味合いが大きく、2〜3ヶ月待つことが一般的です。

ただし、心身の準備が整っていれば、医師の判断によってより早いタイミングが許可されるケースもあります。担当医に相談の上で決めましょう。

流産後の次回妊娠の見通し
1〜2回の自然流産を経験した方の大多数は、次回の妊娠を正常に維持できます。2回連続して流産(反復流産)または3回以上繰り返す(習慣性流産)場合は、専門的な検査・治療が選択肢となります。

繰り返す場合(習慣性流産・不育症)はどうする?

流産を3回以上繰り返すことを「習慣性流産(不育症)」と呼びます。日本産科婦人科学会の定義では「2回以上の流産を反復流産」、「3回以上を習慣性流産」と区分しています。

不育症の原因の約60%は染色体異常(偶発的)ですが、残り約40%は抗リン脂質抗体症候群・子宮形態異常・両親の染色体転座など、検査・治療によって対応できる場合があります。

  • 2回の流産後、または1回の流産でも心配な場合は不育症外来・専門クリニックに相談する
  • 検査には抗リン脂質抗体・夫婦染色体検査・子宮形態検査などがある
  • 原因が判明すれば、低用量アスピリン・ヘパリン療法など治療の選択肢がある

「また流産したらどうしよう」という不安を抱えながら妊活するのはつらいことです。繰り返している場合は一人で抱え込まず、専門家に相談することをおすすめします。

明るいクリニックの待合室で白いチェアに座り穏やかに微笑む30代前半の日本人女性。清潔感のある医療施設の内装、温かい自然光

よくある質問(FAQ)

Q 流産したのに妊娠検査薬が陽性のままです。おかしいですか?

A.おかしくありません。流産後、妊娠ホルモン(hCG)が体内から完全に排出されるまでに数日〜2週間かかることがあります。この間は妊娠検査薬が陽性を示し続ける場合があります。完全に流産が完了しているかどうかは超音波検査で確認するのが確実です。

Q 流産後、仕事はいつから再開できますか?

A.自然流産の場合は出血が落ち着けば(数日〜1週間程度)復帰できる方も多いですが、手術(掻爬術・子宮内容除去術)を行った場合は術後の安静が必要なため、医師の指示に従ってください。心身の疲弊がある場合は無理をせず、必要に応じて休職・時短の相談をすることも大切です。

Q 流産した後、次の妊娠でまた流産する確率は高くなりますか?

A.1回の流産経験後に次回妊娠で再び流産する確率は約20〜25%で、初回妊娠者(約15〜20%)と大きく変わりません。多くの方が次の妊娠を正常に維持できます。ただし、2回・3回と繰り返す場合は確率が上昇するため、不育症の専門外来への受診をご検討ください。

Q 流産の痛みはどのくらいですか?

A.稽留流産(自覚症状が少ないタイプ)の場合はほとんど痛みがないこともあります。進行流産では生理痛のような下腹部の痛みや張りが出ることが多く、重症の場合は強い腹痛になることもあります。痛みが強い場合は医師に相談し、必要に応じて鎮痛薬の処方を受けましょう。

Q 流産後の生理はいつ来ますか?

A.流産後の出血が止まってから、通常4〜8週間程度で次の生理が来ることが多いです。流産後の初回生理は量が多めになったり、不規則になったりすることがあります。2〜3ヶ月たっても生理が来ない場合は産婦人科に相談してください。

まとめ

この記事のポイントまとめ
  • 流産は全妊娠の約15〜20%に起こる。妊娠12週未満に最も多い
  • 原因の約80%は受精卵の染色体異常(偶発的)。お母さんの行動が原因になることはほぼない
  • 心拍確認後は流産確率が大幅に低下(2〜5%程度)する
  • 出血・腹痛があっても流産確定ではない。ただし症状があれば産婦人科に相談を
  • 鮮血の多量出血・強い腹痛・組織の排出は当日受診のサイン
  • 流産後の次の妊娠は1〜2回の月経を確認してからが目安
  • 2〜3回繰り返す場合は不育症外来への受診を検討する

流産を経験した後、「もっと早く気づいていれば」「何かできたことがあったはず」と自分を責めてしまう気持ちはとても自然なことです。しかし、流産のほとんどは受精卵側の偶発的な染色体異常が原因であり、お母さんやお父さんの力では防ぎきれないものです。

正しく知ることで、不必要な自責や不安を少しでも和らげていただけると幸いです。体と心の回復を大切に、次の一歩を焦らずに進めてほしいと思います。

妊娠初期の体の変化や注意点については妊娠初期症状まとめ|いつから始まる?つわり・胸の張り・眠気までもあわせてご覧ください。

この記事を書いた人

白石まい(助産師・フェムテックエキスパート)

産婦人科病院で13年間、助産師として延べ2,000件以上の分娩に立ち会う。生理・妊活・更年期など、女性のライフステージに寄り添った健康相談を得意とする。現在はフリーランス助産師として活動しながら、フェムテックエキスパートとして「女性が自分の体をもっと好きになれる社会」を目指してfemnoteで情報を発信中。

参考文献

  • 日本産科婦人科学会「流産・切迫流産」(2023年)
  • 日本産科婦人科学会「不育症の診断・治療に関する提言」(2022年)
  • 厚生労働省「不妊治療の実態に関する調査研究 最終報告書」(2021年)
  • Cohain JS, et al. "Spontaneous miscarriage rates by gestational age: a systematic review and meta-analysis." Hum Reprod Open. 2017.
  • Nybo Andersen AM, et al. "Maternal age and fetal loss: population based register linkage study." BMJ. 2000;320(7251):1708-1712.
  • WHO "Recurrent Pregnancy Loss" (2024年)