「生理が来るたびに、なんとなく気持ちが悪くなる」「吐き気がして食欲がない」「吐き気が生理痛より先に始まって、毎月不安になる」。生理と吐き気は、一見つながりがわかりにくいように思えますが、実はれっきとした医学的な因果関係があります。
生理痛(腹痛・腰痛)と違い、吐き気は「自分だけ?」「もしかして妊娠?」という心配を呼びやすいのも特徴です。毎月のように繰り返す吐き気を「体質だから仕方ない」と我慢し続けている方も多いのですが、対処法はいくつかあります。
この記事では、産婦人科で13年間助産師として働いてきた立場から、生理前・生理中の吐き気が起こるメカニズム、妊娠との見分け方、今日から試せる対処法、そして「これは受診すべき」というサインまで、丁寧に解説していきます。
生理前に吐き気が起こる原因
生理前(排卵後〜生理開始前)は、女性ホルモンの変動が急激に起こる時期です。この時期に吐き気が出る主な原因は3つあります。
プロゲステロン(黄体ホルモン)による消化器への影響
排卵後に増加するプロゲステロン(黄体ホルモン)は、妊娠に備えて子宮内膜を維持する働きをしますが、消化管の動きを緩める副作用を持ちます。プロゲステロンは平滑筋(腸や胃の壁を動かす筋肉)を弛緩させる性質があり、胃腸の蠕動(ぜんどう)運動が低下します。
この結果、「胃がもたれる」「消化が遅れる」「満腹感が早く来る」「吐き気がする」という症状が現れます。生理前の便秘もこの蠕動低下が原因です。プロゲステロンは妊娠中にさらに高濃度になるため、妊婦のつわりとメカニズムが一部共通しています。
セロトニンの変動
脳内の神経伝達物質であるセロトニンは、女性ホルモン(特にエストロゲン)と密接に連動しています。生理が近づくにつれエストロゲンが低下すると、セロトニンも減少します。セロトニンは腸に多く存在し(腸内に全体の約90%が分布する)、腸の動きを調整する重要な物質です。セロトニンのバランスが崩れると、消化器症状として吐き気・下痢・便秘が現れることがあります。
セロトニン低下は気分の落ち込み・イライラとも関連するため、「生理前に気持ち悪くて気分も沈む」という状態はこのメカニズムが関与しています。PMS(月経前症候群)の主な症状のひとつとして、吐き気・消化器症状は医学的に認められています。
自律神経の乱れ
生理前はホルモン変動の影響で自律神経のバランスが崩れやすくなります。自律神経は消化器の働きも調整しているため、バランスが乱れると胃腸の動きが不規則になり、吐き気・胃もたれ・食欲不振が起こります。
特に、睡眠不足・過労・精神的なストレスが重なる時期は自律神経の乱れが大きくなり、生理前の吐き気が悪化しやすくなります。日常生活の負荷が高いシーズンに「生理前の吐き気がいつもよりひどい」と感じる方は、このパターンが考えられます。
・排卵後5〜10日目(黄体期中期):プロゲステロンがピークに達する
・生理3〜7日前:エストロゲン・プロゲステロンが急降下し始め、セロトニンも低下
・生理1〜2日前:ホルモンが最低値となりPMS症状が最も強くなる
生理中に吐き気・気持ち悪さが起こる原因
生理が始まってからも吐き気が続く、または生理開始と同時に吐き気が出るタイプの方もいます。生理中の吐き気は生理前とは原因が異なります。
プロスタグランジンの過剰分泌が最大の原因
生理が始まると、子宮内膜を剥がして排出するためにプロスタグランジンという物質が分泌されます。プロスタグランジンは子宮を収縮させる役割がありますが、同時に腸や胃の収縮も引き起こします。
プロスタグランジンが多量に分泌されると、腸管の急激な収縮が起こり、吐き気・嘔吐・下痢が生じます。生理痛(子宮収縮による下腹部痛)と同じ物質が原因であるため、「生理痛がひどい人ほど吐き気も強い」傾向があります。プロスタグランジンは生理開始後1〜2日目に最も多く分泌されるため、吐き気のピークも生理初日〜2日目になりやすいです。
生理中の下痢についても同じメカニズムが関わっています。詳しくは生理中の下痢ガイドもあわせてご覧ください。
迷走神経反射(血管迷走神経性失神との関連)
強い生理痛がある場合、痛みのストレスが迷走神経を刺激し、迷走神経反射(血管迷走神経性反応)を引き起こすことがあります。これは、強いストレス・痛みに反応して副交感神経が過剰に働き、血圧・脈拍が急低下する反応です。症状は「突然の強い吐き気・冷や汗・顔面蒼白・意識が遠のく感じ」で、採血時や痛みで気を失う現象と同じメカニズムです。
生理痛がひどく「吐き気・冷や汗・顔が青ざめる・倒れそうになる」という経験がある方は、このパターンの可能性があります。横になって足を少し高くすると血圧が安定し、症状が和らぎます。
貧血による気持ち悪さ
経血量が多い方(過多月経)は、生理後半〜終了後にかけて鉄欠乏性貧血が進行し、吐き気・めまい・立ちくらみ・倦怠感が出ることがあります。貧血では脳への酸素供給が低下するため、「なんとなく気持ちが悪い」「食欲がない」「立つとふらつく」という症状が現れます。
「生理のたびに大量出血がある」「生理中にレバー状のかたまりが出る」という方は、貧血の進行に注意が必要です。婦人科での検査(血液検査・エコー)をおすすめします。
吐き気はいつからいつまで続く?時期別の特徴
「生理前の吐き気なのか、生理中の吐き気なのか」は、原因と対処法の選択に関わります。自分の吐き気がどのタイミングで起こるかを把握しておくと、対処が早くできます。
生理前(排卵後〜生理開始まで)の吐き気
生理前の吐き気は、主に排卵後5〜10日目あたりから始まり、生理開始後2〜3日で自然に収まることが多いです。ただし個人差があり、生理2〜3日前から急に強くなる方もいれば、排卵直後から続く方もいます。
生理前の吐き気はPMS(月経前症候群)の症状のひとつとして現れるケースが多く、「胸の張り・イライラ・眠気・だるさ」など他のPMS症状と同時に出るのが特徴です。生理前の胸の張りや生理前のだるさ・眠気と一緒に出る方は、PMSとしてまとめてケアするアプローチが効果的です。
生理中(生理開始〜終了まで)の吐き気
プロスタグランジンが原因の吐き気は生理開始後1〜2日目がピークで、3〜4日目以降は次第に落ち着くことが多いです。生理中の吐き気は生理痛とほぼ同時に現れるのが典型的です。
「生理初日は仕事も休みたいほど気持ち悪い」「生理が始まってすぐは食事ができない」という方は、プロスタグランジン過剰分泌タイプの可能性が高いです。
生理後半〜終了後の吐き気
生理後半(4〜7日目以降)や生理が終わってからも「ふわふわした気持ち悪さ・倦怠感」が続く場合は、前述の鉄欠乏性貧血が原因のことがあります。生理量が多い方は特に注意が必要で、フェリチン(貯蔵鉄)の低下が慢性的に続いている可能性があります。
| 時期 | 主な原因 | 特徴 | 持続期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 生理前(排卵後〜生理前日) | プロゲステロン・セロトニン低下・自律神経 | 他のPMS症状と同時に出ることが多い | 生理開始後2〜3日で自然に治まることが多い |
| 生理初日〜2日目 | プロスタグランジン過剰分泌 | 生理痛と同時に現れる・最もひどくなりやすい | 生理3〜4日目以降に軽快することが多い |
| 生理後半〜終了後 | 鉄欠乏性貧血 | めまい・立ちくらみ・倦怠感を伴う | 貧血が改善されないと続く |
妊娠初期のつわりとの見分け方
生理前の吐き気と妊娠初期のつわりは、どちらも「生理が来る前後」に現れるため区別しにくいことがあります。「もしかして妊娠?」という不安を持つ方は非常に多く、実際に診察室でもよく相談を受けます。
生理の吐き気とつわりの違い
はっきりとした区別は難しいのが正直なところですが、いくつかの目安があります。
| 項目 | 生理前・生理中の吐き気 | 妊娠初期のつわり |
|---|---|---|
| 始まる時期 | 排卵後〜生理開始前後(周期的に毎月) | 受精・着床後、hCGが上昇し始める妊娠4〜6週ごろ |
| 生理との関係 | 生理が来ると改善・消失する | 生理が来ない(生理の遅れを伴う) |
| においへの反応 | 通常程度 | 普段気にならないにおいで急に吐き気が悪化するケースが多い |
| 持続期間 | 生理の前後で収まる | 妊娠12〜16週ごろまで続くことが多い |
| 乳房の変化 | 生理前に張ることがある(PMSの一症状) | 乳頭の敏感さが増し、持続的に張る |
| 基礎体温 | 生理が来ると体温が下がる(低温期へ移行) | 高温期が2週間以上続く |
最も確実な見分け方は妊娠検査薬
「生理が来るはずの日になっても来ない+吐き気がある」という場合は、妊娠検査薬を使用するのが最も確実な見分け方です。市販の妊娠検査薬は、生理予定日の1日後(生理予定日当日より翌日以降)から使用できる製品が多く、精度は99%以上とされています。
「生理が少し遅れている・吐き気がある・妊娠の可能性がある」場合は、吐き気の原因を自己判断する前に検査薬で確認することを強くおすすめします。妊娠検査薬の使い方については妊娠検査薬の正しい使い方ガイドも参考にしてください。
基礎体温でも判断できる
日頃から基礎体温をつけている方は、高温期が17日以上続いている場合、妊娠の可能性があります。高温期が2週間を超えても体温が下がらず、生理が来ない場合は妊娠検査薬での確認を検討してください。
・生理予定日から1週間以上遅れているのに妊娠検査薬が陰性(稀に子宮外妊娠の可能性も)
・妊娠検査薬が陽性だったが出血・強い腹痛がある
・吐き気が強くて食事が全く取れない状態が3日以上続く
これらは自己判断せずに婦人科での診察を受けることをおすすめします。
生理の吐き気・気持ち悪さの対処法7選
生理の吐き気には、今すぐ試せる対処法がいくつかあります。原因によって効果のある方法が異なりますが、まずは複数試してみて、自分に合う方法を見つけることが大切です。
①食事の工夫(少量頻回・脂質を控える)
プロゲステロンの影響で胃腸の動きが低下している生理前は、消化に負担のかかる食事が吐き気を悪化させます。以下の食事の工夫が役立ちます。
- 少量を何回かに分けて食べる:一度に大量に食べると胃への負担が増します。1回の食事量を少なめにして、1日4〜5回に分けて食べると胃腸への負担が軽くなります
- 脂質の多い食事を避ける:揚げ物・バター・生クリームなど脂質の多い食事は消化に時間がかかり、胃もたれと吐き気を悪化させます。生理前後は特に避けましょう
- 温かく消化しやすいものを選ぶ:おかゆ・うどん・温野菜スープ・豆腐・卵料理など、胃腸に優しい食事が負担を減らします
- 炭酸水で一時的に和らげる:少量の炭酸水(甘くないもの)が吐き気を一時的に和らげる方もいます
②水分補給(ちびちびと常温水)
吐き気があると水分補給がおろそかになりがちですが、脱水になると吐き気がさらに悪化する悪循環が起こります。一度にたくさん飲もうとせず、コップ1杯(150〜200ml)の常温水を少しずつこまめに飲むことを意識してください。冷たい水は胃腸を刺激するので、常温か温かいお湯がおすすめです。
経口補水液(OS-1など)は胃腸の吸収が早く、吐き気で食事が取れない場合の水分・電解質補給として有効です。
③温める(下腹部・体全体)
プロスタグランジンによる子宮収縮が原因で吐き気が起きている場合、下腹部や腰を温めることで子宮の緊張が和らぎ、吐き気も軽減されることがあります。
- 使い捨てカイロや電気毛布で下腹部を温める
- 38〜40℃のぬるめのお湯にゆっくり入浴する(シャワーのみより入浴の方が全身の血流改善に効果的)
- 生理初日は痛みが強くて入浴が難しい方は、温熱シートや湯たんぽだけでも
④横になって安静にする
吐き気が強いときは無理に動かず、横になって安静にするのが基本です。特に迷走神経反射が関係している場合(生理痛の強い痛みに反応してふらつく・顔が青くなる)は、足を少し高くして横になると、脳への血液循環が回復して症状が落ち着きやすくなります。
⑤ツボ押し(内関・足三里)
東洋医学では、吐き気・胃の不快感に効くとされるツボが複数あります。
- 内関(ないかん):手首の内側、手首の横ジワから指3本分ひじ側の中央部にあるツボ。つわりや乗り物酔いの吐き気にも使われる代表的なツボです。親指で3〜5秒押して離す動作を10回繰り返します
- 足三里(あしさんり):膝の外側から指4本分下のすねの外側にあるツボ。胃腸全般を整える効果があるとされています。同様に親指でゆっくり押します
ツボ押しはセルフケアの補助として効果を感じる方も多く、薬を使わない選択肢として気軽に試せます。
⑥市販薬の活用(鎮痛剤・胃腸薬)
吐き気の原因がプロスタグランジンである場合、イブプロフェンやロキソプロフェンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)系鎮痛剤がプロスタグランジンの産生を抑制するため、吐き気の軽減にも効果的です。生理痛と吐き気が同時に出る方は、痛み止めを飲むことで吐き気も同時に改善することが少なくありません。
胃腸の吐き気専用では、ドンペリドン(ナウゼリンOD)やメトクロプラミドを含む胃腸薬が市販されています。ただし、妊娠の可能性がある場合は薬の使用前に妊娠検査薬で確認するか、薬剤師・医師に相談してください。
| 薬の種類 | 期待できる効果 | 注意点 |
|---|---|---|
| NSAIDs鎮痛剤(イブプロフェン・ロキソプロフェン) | プロスタグランジン産生を抑制→生理痛と吐き気を同時に軽減 | 空腹時を避けて服用。月10日以内を目安に |
| 制吐薬(ドンペリドン含有) | 胃腸の動きを整え、吐き気を直接抑える | 妊娠の可能性がある場合は使用前に確認 |
| 胃腸薬(消化酵素・健胃薬) | 消化を助けて胃もたれ・吐き気を和らげる | プロスタグランジン原因の吐き気には効果が限定的 |
⑦アロマ・生姜のナチュラルケア
薬を使わないケアとして、以下も試す価値があります。
- 生姜(しょうが):生姜に含まれるジンゲロール・ショウガオールは吐き気抑制効果が複数の研究で示されています。生姜湯・生姜入りハーブティー・飴(生姜飴)などを試してみてください。つわりにも使われる安全性の高いナチュラルケアです
- ペパーミントアロマ:ペパーミントの香りは吐き気を和らげる効果があるとされています。ティッシュに1〜2滴たらして鼻の近くに置く、またはアロマディフューザーを使う方法が手軽です
- レモン・柑橘系の香り:つわりの吐き気にレモンの香りが効くという報告があります。レモン水を飲む・レモンの香りを嗅ぐだけでも一時的に気持ちが楽になることがあります
・睡眠不足・疲労:自律神経が乱れ、胃腸の動きが悪化する
・過度のカフェイン摂取:胃酸分泌を増やし、胃への刺激が強まる
・アルコール:胃粘膜への刺激が強く、吐き気を悪化させる
・食事を抜く:空腹の状態は胃酸が分泌されたままになり、吐き気が悪化しやすい
・においの強い場所にいる:プロゲステロンによる嗅覚過敏で、においへの感受性が高まる
こんな吐き気は婦人科へ|受診の目安と根本治療
セルフケアで対処できる吐き気と、医療機関の助けが必要な吐き気があります。以下に当てはまる場合は、早めに婦人科を受診することをおすすめします。
毎月の吐き気で日常生活に支障がある
「生理のたびに仕事を休む」「食事ができない」「横になるしかない」という状態が毎月続くのは、体からの「対処してほしい」というサインです。生理痛と吐き気が月経困難症(強い生理痛で日常生活が困難になる状態)として診断されれば、低用量ピルや鎮痛剤の定期処方など根本的な治療の選択肢が広がります。
月経困難症については月経困難症とはで詳しく解説しています。
吐き気とともに嘔吐が続き水分が取れない
吐き気が強くて嘔吐を繰り返し、水分・食事が全く取れない状態が続くと脱水が進み、点滴治療が必要になります。「全く水分が取れない状態が半日以上続く」場合は、救急受診を含め早急に医療機関を受診してください。
生理以外のタイミングでも吐き気がある
生理の時期だけでなく、周期に関係なく常に吐き気・胃もたれ・食欲不振が続く場合は、生理以外の原因(胃腸疾患・甲状腺疾患・妊娠など)が考えられます。婦人科だけでなく、内科・消化器科への受診も検討してください。
低用量ピルで根本的に改善できる
生理痛・吐き気がひどい方に対し、婦人科では低用量ピルが有効な選択肢として提案されることが多いです。低用量ピルはプロスタグランジンの過剰分泌を抑制し、生理痛・経血量・吐き気を同時に軽減できます。
実際に「ピルを飲み始めてから生理のたびに休まなくてよくなった」という方は多く、QOL(生活の質)を大きく改善できる選択肢です。低用量ピルの効果と副作用については低用量ピルの効果ガイドもあわせてご覧ください。
子宮内膜症・子宮筋腫の可能性
生理痛と吐き気が年々ひどくなっている場合、背景に子宮内膜症や子宮筋腫などの婦人科疾患が隠れていることがあります。これらは「ひどい生理痛は普通」と放置されがちですが、早期発見・早期治療が重要です。経腟超音波検査(エコー)で比較的簡単に確認できるため、婦人科での検査をおすすめします。
よくある質問
Q 生理前の吐き気は毎月必ず出るものですか?
A.個人差があります。毎月必ず出る方もいれば、ストレスや睡眠不足が重なる月だけ出る方もいます。また、年齢・体調・生活環境の変化によっても症状の強さは変わります。「以前は気にならなかったのに最近ひどくなった」という場合は、生活習慣の変化(睡眠不足・ストレス増加・食生活の乱れ)や、子宮内膜症などの婦人科疾患の進行が関係していることもあります。
Q 生理前の吐き気で食事が取れないときはどうすればいいですか?
A.無理に食べようとせず、まずは水分だけでも摂ることを優先してください。水・お茶・経口補水液を少量ずつこまめに飲みます。食べられる場合は、クラッカー・おにぎり・バナナなど胃に優しく消化しやすいものから少量試してみてください。「どうしても何も食べられない・飲めない状態が半日以上続く」場合は脱水のリスクがあるため、医療機関への相談をおすすめします。
Q 生理痛はないのに吐き気だけ出るのはなぜですか?
A.生理痛(子宮収縮による下腹部痛)と吐き気は同じプロスタグランジンが原因のことが多いですが、個人によってどの症状が強く出るかは異なります。生理痛は軽くても吐き気や下痢が強く出る方は珍しくありません。また、生理前の吐き気であればPMS(プロゲステロン・セロトニン変動)が原因のことが多く、生理痛とは別のメカニズムです。「生理痛はないのに毎月吐き気だけがひどい」場合は、PMSとして婦人科で相談すると対処法を提案してもらえます。
Q 生理中の吐き気に酔い止め薬は効きますか?
A.酔い止め薬(ジメンヒドリナート・スコポラミン成分など)は乗り物酔い特有のメカニズム(前庭系・視覚のミスマッチ)に作用するものが多く、プロスタグランジンや消化器の吐き気に対しては効果が限定的です。生理の吐き気には、NSAIDs系鎮痛剤(イブプロフェン・ロキソプロフェン)がプロスタグランジンの産生を抑えるため、より根本的な対処になります。どちらを使うか迷う場合は薬剤師に相談してください。
Q ピルを飲んでいるのに生理中に吐き気が出ます。なぜですか?
A.2つのケースが考えられます。①ピル自体の副作用としての吐き気:服用開始から1〜3か月間は、エストロゲン成分による胃腸への影響で吐き気が出ることがあります。就寝前に飲む・食後に飲むなどで改善するケースが多いです。②休薬期間中の消退出血に伴う吐き気:ピルの休薬期間(偽の生理が来る週)に生理痛・吐き気が出る場合は、プロスタグランジンが依然として分泌されているためです。ピルを飲み始めて3か月以上経っても症状が改善しない場合は、処方医に相談して製剤の変更や連続服用法を検討してもらいましょう。
まとめ
- 生理前の吐き気はプロゲステロンによる胃腸の動き低下・セロトニン変動・自律神経の乱れが主な原因
- 生理中(初日〜2日目)の吐き気はプロスタグランジンの過剰分泌が最大の原因。生理痛と同時に出やすい
- 吐き気のピークは生理前3〜7日〜生理開始後2日目ごろ。生理後半は鉄欠乏性貧血に注意
- 妊娠初期のつわりとの違いは「生理が来ると治まるか・生理が来ないか」。迷ったら妊娠検査薬で確認
- 対処法は食事の工夫・水分補給・温める・横になる・ツボ押し・市販薬・アロマの7つ
- NSAIDs系鎮痛剤はプロスタグランジンを抑えるため、生理痛と吐き気の両方に効果的
- 毎月日常生活に支障が出るなら、低用量ピルで根本改善できる。婦人科に相談を
生理のたびに繰り返す吐き気や気持ち悪さは、「仕方ない」と我慢し続けるものではありません。原因が分かれば対処の方法も見つかります。セルフケアで対処しながら、毎月仕事を休んだり食事が取れなくなるほど症状がひどい場合は、婦人科で相談することを遅らせないでください。あなたの毎月の生活が少しでも楽になりますように。
生理全般の症状については生理痛を和らげる方法や生理中に食べるといい食べ物・避けるべき食べ物も参考にしてください。
参考文献
- 日本産科婦人科学会「月経困難症・子宮内膜症治療ガイドライン2022」
- American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG). "Dysmenorrhea and Endometriosis in the Adolescent." ACOG Committee Opinion No. 760, 2018.
- Daley AJ. Exercise and primary dysmenorrhoea: a comprehensive and critical review of the literature. Sports Med. 2008;38(8):659-670.
- 厚生労働省「女性の健康推進室ヘルスケアラボ:月経前症候群(PMS)」
- Heitkemper MM, Jarrett M. Irritable bowel syndrome and gender differences. Biol Res Nurs. 2008;9(4):253-263.
- Vickers AJ. Can acupuncture have specific effects on health? A systematic review of acupuncture antiemesis trials. J R Soc Med. 1996;89(6):303-311.
- Marx W, et al. Ginger and nausea and vomiting: a systematic literature review of human clinical trials. Nutr Rev. 2017;75(11):884-896.
- 日本女性医学学会「月経前症候群(PMS)診療ガイドライン2023」