健診の結果に「尿酸値(UA)」という項目があります。多くの女性にとって、それは見たこともないくらい気にしたことのない欄ではないでしょうか。血圧やコレステロールは気にしても、尿酸値は「お酒を飲む男性の項目」だと思って読み飛ばしてきた——そういう方が大半だと思います。

実際、痛風は圧倒的に男性に多い病気です。それは事実です。けれど、その理由をご存じでしょうか。

閉経前の女性は、エストロゲンによって尿酸を体の外へ出しやすい状態に保たれているからです。つまり「女性は痛風になりにくい」のではなく、「閉経前の女性は守られていた」というのが正確なところです。そして、その守りは閉経とともに外れます。

この記事では、痛風と尿酸値について、女性の体という軸で整理します。発作の激痛の話だけでなく、発作が起きていない段階で健診の数値をどう読むか、そして利尿薬や急なダイエットといった、女性に起こりやすい誘因まで扱います。

いま足が痛くて、それどころではない方へ
  • いますぐ:患部を冷やして、心臓より高くして安静に。温める・揉む・動かすのは逆効果です発作が起きたときの対処
  • やってはいけない:尿酸を下げる薬を「あるから」と自己判断で飲み始めること。発作中に始めると悪化することがあります
  • 今日中に:発熱を伴う、皮膚が広く赤く腫れている、複数の関節が同時に痛む——この場合は痛風以外の可能性があります → 痛風ではないかもしれないサイン

痛風とは? 尿酸の結晶が関節で炎症を起こす

尿酸は、体の中で細胞が新しく入れ替わるときや、食べ物に含まれるプリン体が分解されるときにできる「燃えかす」のような物質です。通常は血液に溶けて腎臓に運ばれ、尿として体の外に出ていきます。

ところが、作られる量が多すぎたり、出ていく量が少なすぎたりすると、血液中の尿酸が増えていきます。この状態が高尿酸血症です。

尿酸は水に溶けにくい性質があり、濃度が高い状態が続くと関節の中で針のような結晶になって沈着します。その結晶を体が「異物」とみなして攻撃を始めると、激しい炎症が起こります。これが痛風発作です。

覚えておきたい順番

高尿酸血症(数値が高い状態)→ 結晶がたまる → ある日、発作が起きる

この順番が大事です。発作は「突然」起きたように見えますが、体の中では何年も前から準備が進んでいます。逆に言えば、健診で数値を知った時点というのは、まだ何も起きていない「準備期間」の途中だということです。

尿酸が増える2つの道すじ

タイプ何が起きているか関わる要因
産生過剰型尿酸が作られすぎているプリン体の多い食事、激しい運動、細胞が大量に壊れる状態
排泄低下型尿酸が体から出ていきにくいエストロゲンの低下、腎機能の低下、脱水、一部の薬(利尿薬など)、アルコール
混合型両方が重なっている肥満、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム

女性にとって重要なのは、真ん中の「排泄低下型」です。エストロゲンは尿酸を尿へ出しやすくする方向にはたらいていると考えられており、その低下は「出ていく量が減る」という形で数値に現れます。食べる量が増えたわけではないのに数値が上がるのは、このためです。

発作はどこが、どう痛むのか

痛風発作には、かなりはっきりした特徴があります。

特徴内容
場所足の親指のつけ根がもっとも多い。ほかに足首、足の甲、膝、手首、指
ひとつの関節に起こることが多い(複数同時は別の病気も考える)
痛みの強さ「風が当たっても痛い」と表現されるほど。歩けない、靴が履けない、布団が触れるだけで痛い
見た目赤く腫れて、熱をもつ。皮膚がテカテカ光って見えることも
始まり方夜間から明け方に突然始まることが多い
経過24時間ほどでピークに達し、その後1〜2週間で自然に治まる
前兆数時間前から「ピリピリする」「違和感がある」「なんとなく重い」と感じる人がいる
「自然に治まる」がいちばんの落とし穴です

痛風発作は、治療をしなくても1〜2週間で治まります。だから、「痛かったけど治ったから、もういいや」と受診しないまま終わる方が非常に多いのです。

けれど、治まったのは炎症であって、原因である高尿酸血症は何も変わっていません。関節の中の結晶もそのまま残っています。放っておくと、次の発作までの間隔は短くなり、痛む関節は増えていきます。発作は「治った」ではなく「いったん引いた」と受け止めてください。

女性の場合、典型的でないこともあります

女性では、足の親指以外の関節から始まることや、複数の関節に症状が出ることが、男性に比べてやや多いとされています。また、年齢が上がってからの発症では、手指の関節に起こることもあります。

この年代の女性の手指の痛みは、ヘバーデン結節や関節リウマチ、更年期の関節痛と紛らわしく、そもそも痛風が候補に挙がらないまま経過してしまうことがあります。健診で尿酸値が高めだったことがあるなら、それは受診時に伝える価値のある情報です。

「痛風は男性の病気」は本当か

この通説を、正面から検証します。

結論から言えば、「男性に圧倒的に多い」は事実です。痛風の患者さんは男性が大多数を占めます。ここを否定するつもりはありません。

問題は、その事実から「だから女性は気にしなくていい」と結論してしまうことです。ここには2つの落とし穴があります。

落とし穴①|「なりにくい」のではなく「守られていた」

閉経前の女性の尿酸値が低いのは、体質でも生活習慣でもなく、エストロゲンが尿酸の排泄を助けているからだと考えられています。ですから、閉経してエストロゲンが減れば、その前提は変わります。

実際、女性の尿酸値は閉経を境に上がる傾向があり、痛風の発症年齢も男性より高い年代に寄ります。「女性の痛風は、更年期以降の病気」と考えたほうが実態に合っています。

落とし穴②|女性の痛風は、見つかるまでに時間がかかることがある

「痛風=男性」という思い込みは、患者側だけでなく周囲にもあります。その結果、こういうことが起こります。

  • 足が腫れて痛くても「捻挫かな」「外反母趾かな」と考える
  • 家族に「痛風じゃない?」と言われても「私は女だから違う」と否定する
  • 受診しても、まず別の原因から検討される
  • 健診の尿酸値が高めでも、「女性だから大丈夫でしょう」と流される

この記事でお伝えしたいのは、「女性も痛風になる」という脅しではありません。そうではなく、「女性だから違う」という理由だけで候補から外さないでほしいということです。判断材料は性別ではなく、症状と数値です。

この構図には、既視感があるかもしれません

「痛風は男性の病気」という思い込みは、「女性は心筋梗塞になりにくい」という思い込みとまったく同じ構造をしています。どちらも、閉経前の女性がエストロゲンに守られていたことの裏返しであり、守りが外れたあとの年代には当てはまりません。

閉経後の体は、それまでとは違う条件に置かれます。コレステロールが上がるのも、血圧が上がりやすくなるのも、尿酸値が上がるのも、根っこは同じところにあります。

なぜ閉経後に尿酸値が上がるのか

エストロゲンと尿酸の関係

尿酸は腎臓でいったんろ過されたあと、その大部分が再び体内に取り込まれ(再吸収)、残りが尿として出ていきます。エストロゲンには、この再吸収を抑えて、尿酸を外に出しやすくする方向のはたらきがあると考えられています。

閉経でエストロゲンが減ると、この後押しがなくなります。作られる尿酸の量が同じでも、出ていく量が減れば、血液中の濃度は上がります。これが「生活を変えていないのに数値が上がる」しくみです。

閉経の前後で、何が重なるのか

要因尿酸への影響この年代で起こりやすい理由
エストロゲンの低下排泄が減り、数値が上がる閉経そのもの
体重・内臓脂肪の増加インスリン抵抗性を介して排泄が減る基礎代謝の低下、筋肉量の減少(更年期の体重増加
血圧の薬(利尿薬)尿酸値が上がることがあるこの年代から高血圧の治療が始まることが多い
腎機能の変化排泄能力が下がる加齢に伴う変化
脱水濃縮されて数値が上がるホットフラッシュや寝汗で失う水分が増える
急なダイエット一時的に急上昇することがある体重が気になり、極端な糖質制限や断食を試す人が増える

この表のうち、下の3つは女性側の事情が強く関わります。とくに「ホットフラッシュで汗をかくのに水分を控えている」「体重を落とそうと食事を極端に減らしている」というのは、この年代で本当によく聞く組み合わせです。見落とされやすい誘因で詳しく扱います。

健診の尿酸値の読み方|女性はここを見る

健診の紙では「尿酸」「UA」と書かれています。単位は mg/dL です。

数値意味
7.0を超える高尿酸血症と定義されます。この基準は男女共通です
6.0〜7.0基準内ですが、女性にとっては「かなり上のほう」。上昇の途中かもしれません
〜6.0閉経前の女性で多い範囲
ここが女性にとっていちばん大事な話です

高尿酸血症の基準(7.0を超える)は、男女共通で決められています。けれど、閉経前の女性の尿酸値はもともと男性より低く、4〜5mg/dL台の方が多くいます。

つまり、去年4.8だった人が今年6.5になっていても、基準内なので「異常なし」と印刷されます。けれど、これは1年で大きく動いているということです。

女性の尿酸値は、絶対値だけでなく「去年と比べてどう動いたか」で見てください。数値が基準内であっても、上がり続けているなら意味があります。健診結果は過去数年分を並べて見るのがいちばんです。

数値が動きやすいことも知っておく

  • 脱水で上がります。採血前に汗をかいた、水分を控えていた、下痢をしていた——こうした状況で高めに出ることがあります
  • 激しい運動のあとに上がります。健診の前日にジムで追い込んだ、というのは影響します
  • 絶食・急なダイエット中に上がります。体脂肪が分解されるときにできる物質が、尿酸の排泄を邪魔します
  • 1回の数値で決めない。高かったら、時期を変えてもう一度測るのが基本です

セルフチェック

診断ではなく、受診時に伝える材料を整えるためのチェックです。

No.項目
1健診で尿酸値が7.0を超えたことがある
2基準内だが、去年より1.0以上上がっている
3閉経している、または生理が不規則になってきた
4足の親指のつけ根や足首が、突然赤く腫れて激しく痛んだことがある
5その痛みは1〜2週間で自然に治まった
6血圧の薬(とくに利尿薬)を飲んでいる
7お酒を週に4日以上飲む
8甘い飲み物(ジュース・清涼飲料)をよく飲む
9水分をあまり摂らない。トイレが近くなるのが嫌で控えている
10短期間で体重を落とそうとしている(糖質制限・断食など)
11腎機能・尿たんぱくを指摘されたことがある、尿路結石になったことがある
12血圧・血糖・コレステロールのいずれかも指摘されている
13親やきょうだいに、痛風や尿路結石になった人がいる
結果次にやること
4・5にチェック痛風発作だった可能性があります。治まっていても受診してください。「治ったから」で終わらせないこと
1にチェック内科(またはかかりつけ)へ。発作がなくても、数値が高いこと自体に意味があります
2・3にチェック閉経に伴う上昇かもしれません。生活の見直しを始めつつ、次の健診で推移を確認
6にチェック薬の影響の可能性があります。自己判断でやめず、処方元に「尿酸値が高いのですが」と伝えてください
9・10にチェック今日から変えられる要因です。見落とされやすい誘因
11・12にチェック腎臓や血管のリスクが重なっています。「痛くないから」では済まない段階です
13にチェック体質が関わっている可能性があります。「家族に痛風の人がいます」は、受診時に必ず伝えてください

「痛くないのに受診していいのか」と迷う方へ

これは本当によく聞く迷いです。足も痛くないのに、健診の数字ひとつで内科に行くのは大げさではないか、と。

けれど、健診で指摘された数値を確認しに行くというのは、内科でもっとも一般的な受診理由のひとつです。「まだ何も起きていないうちに来た」というのは、医療の側から見ればむしろ望ましい受診の形です。

予約のとき、受付でそのまま言える一文
  • 健康診断で尿酸値を指摘されたので、相談したいのですが」——これだけで通じます
  • 「症状はありませんが、数値の再検査をお願いしたいです」
  • 「以前、足が急に腫れて痛くなったことがあります。そのときは受診しませんでした」

そして、健診の結果は「異常なし」の年の分も含めて持っていってください。推移が見えることが、この項目ではいちばんの情報になります。

もうひとつ、遠慮の理由になりがちなのが「女性で尿酸値の相談なんて」という気持ちです。閉経後の女性の尿酸値上昇は、珍しいことではありません。説明が必要なら、この記事の内容をそのまま伝えていただいて構いません。

痛風ではないかもしれないサイン

関節が急に赤く腫れて痛む病気は、痛風だけではありません。対応がまったく変わるものが含まれるので、次のような場合は自己判断せず受診してください。

その日のうちに受診してほしいサイン
  • 38度以上の発熱を伴う
  • 関節だけでなく、皮膚が広い範囲で赤く腫れて熱をもっている
  • 傷やけがのあとから急に腫れてきた
  • 複数の関節が同時に腫れている
  • 糖尿病がある、免疫を抑える薬を使っている

これらは化膿性関節炎や蜂窩織炎(ほうかしきえん)など、感染が関わる状態の可能性があります。抗菌薬による治療や、場合によっては処置が必要になるため、時間が結果を左右します。

状態紛らわしい点見分けのヒント
偽痛風急に関節が腫れて痛む膝や手首に多い。高齢者に多く、尿酸値は高くないことが多い。別の結晶が原因
化膿性関節炎関節が赤く腫れる発熱を伴う。急ぐ
蜂窩織炎足が赤く腫れる関節ではなく皮膚と皮下が広く赤くなる。発熱
関節リウマチ関節の痛みと腫れ朝のこわばりが1時間以上、左右対称、複数の関節。女性に多い
外反母趾足の親指のつけ根が痛い変形が徐々に進む。突然の激烈な痛みではない
疲労骨折足の痛み運動量が増えたあと。腫れは軽い
深部静脈血栓症片脚の腫れと痛みふくらはぎ全体の腫れ・熱感。息苦しさを伴えば救急

見落とされやすい誘因|利尿薬・脱水・ダイエット

「暴飲暴食していないのに」という方こそ、ここを読んでください。尿酸値を押し上げる要因は、食べ物だけではありません。

① 薬の影響

いくつかの薬は、尿酸値を上げる方向にはたらくことが知られています。代表的なのが利尿薬です。血圧の治療やむくみに対して処方されることがあり、この年代の女性が飲み始める機会は少なくありません。

絶対に、自己判断で薬をやめないでください

「この薬のせいかも」と思っても、勝手に中止すると血圧が上がるなど別の問題が起きます。「尿酸値が高いと言われました。いま飲んでいる薬の影響はありますか」と処方元に伝えてください。必要なら種類を変える、という判断は医師がします。

② 脱水|この年代に特有の事情があります

体の水分が減れば、血液中の尿酸は濃くなります。単純な話ですが、更年期の女性には脱水になりやすい事情が重なります。

  • ホットフラッシュや寝汗で、失う水分が増える
  • 頻尿や尿もれが気になって、意識的に水分を控えている頻尿・尿もれ
  • 外出時にトイレの心配をして飲まない
  • サウナ・岩盤浴・ホットヨガを習慣にしている

「トイレが近いから水を飲まない」は、尿酸値の面では逆効果です。水分を控えると尿量が減り、尿酸を出す経路そのものが細くなります。頻尿が気になるなら、水分を減らすのではなく頻尿そのものを相談するほうが、体にとっては合理的です。

③ 急なダイエット・絶食

体重を落とすことは、長い目で見れば尿酸値にプラスにはたらきます。ところが「急激に落とすこと」は、短期的に尿酸値を上げます。

絶食や極端な糖質制限で体脂肪が急に分解されると、その過程でできる物質(ケトン体)が腎臓での尿酸の排泄を邪魔します。「健康のために始めた食事制限で、痛風発作が起きる」ということが実際に起こります。

体重を落とすなら、ゆっくり、月に1〜2kg程度までを目安に。更年期のダイエットについては更年期ダイエットで扱っています。

④ 激しい運動

息が上がるような無酸素運動(短距離ダッシュ、重い負荷の筋トレなど)は、一時的に尿酸値を上げます。加えて、汗で脱水にもなります。尿酸値が気になる方に向くのは、早歩きなどの有酸素運動です。運動をやめる必要はまったくなく、種類と強度の問題です。

⑤ 女性ホルモンに関わる状態

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)ではインスリン抵抗性を背景に尿酸値が高めになることがあります。若い年代で尿酸値が高いと言われた場合は、この可能性も含めて相談してみてください。

妊娠と尿酸値

妊娠中の尿酸値には、知っておく価値のある動きがあります。

妊娠すると、尿酸値はいったん下がります

妊娠初期から中期にかけては、腎臓の血流が増えることなどにより、尿酸値はむしろ下がるのが一般的です。ですから、この時期に「尿酸値が低め」と出ても心配は要りません。

ところが、妊娠高血圧症候群では上がります

妊娠高血圧症候群では、腎臓の機能が影響を受けることで尿酸値が上昇することが知られています。そのため、産科では血圧やタンパク尿と合わせて、尿酸値も経過を見る指標のひとつとして扱われます。

そして、ここが本題です

妊娠高血圧症候群を経験した方は、その後の人生で高血圧・心血管の病気を発症するリスクが高いことがわかっています。妊娠期は、その人の腎臓や血管に負荷がかかる「ストレステスト」のような側面を持っています。

いま40〜50代で尿酸値・血圧・コレステロールを指摘されている方で、妊娠中にこうした合併症を経験したことがあるなら、それは20年前のことでも受診時に伝える価値があります。医師の側は、聞かなければ知りようがありません。

発作が起きていなくても、放置してはいけない理由

「痛くないなら、まだいいのでは」——これがいちばん多い受け止め方だと思います。けれど、尿酸値が高い状態が続くことの影響は、関節だけではありません。

影響何が起こるか
尿路結石尿の中の尿酸が結晶化して石になる。背中や脇腹の激痛、血尿
腎障害
(痛風腎)
腎臓に尿酸が沈着し、機能が低下していく。自覚症状が出にくい
高血圧尿酸値の高さと血圧の高さは関連が指摘されている
メタボリック
シンドローム
肥満・脂質異常・高血糖と重なりやすい。単独の問題ではないことが多い
痛風結節長期間放置すると、関節や耳などに尿酸の塊ができる
関節の変形発作を繰り返すと関節そのものが傷んでいく

尿酸値の指摘は、「関節の話」ではなく「腎臓と血管の話」として受け取ってください。とくに、血圧・血糖・コレステロールのどれかも指摘されている方は、それぞれ別々の問題ではなく、ひとつながりの状態として見る必要があります。

発作が起きたときの対処|やってはいけないこと

ここは、いま痛い方に向けた項目です。やることより、やってはいけないことのほうが重要です。

やることやってはいけないこと
冷やす(タオル越しに保冷剤)温める(入浴で長く温める、カイロ、湯たんぽ)
安静にして、患部を心臓より高くする揉む・マッサージする・動かして治そうとする
水分をしっかり摂るお酒を飲む(「痛みを紛らわす」は最悪です)
受診して、痛みを抑える薬を処方してもらう尿酸を下げる薬を自己判断で飲み始める
履きやすい靴・サンダルにする痛みを我慢して普段どおり歩き回る
もっとも大事な注意|発作中に尿酸を下げる薬を始めない

これは、痛風でいちばん誤解されやすい点です。

発作が起きている最中に、尿酸を下げる薬を新しく飲み始めると、かえって発作が強くなったり長引いたりすることがあります。血液中の尿酸値が急に動くことで、関節にたまっていた結晶の状態が変わるためと考えられています。

ですから、家族が飲んでいる薬をもらう、以前処方された残りを飲む、というのは絶対にやめてください。まず発作の炎症を抑える治療をして、落ち着いてから尿酸を下げる治療を始める——これが基本の順番です。

逆に、すでに尿酸を下げる薬を飲んでいる人が発作を起こした場合は、自己判断で中断しないでください。始めるときと続けるときで、判断が違います。必ず主治医に確認を。

ソファのクッションの上に置かれた、たたんだ白いタオルと青い保冷剤、そばのサイドテーブルには水の入ったグラス

市販の痛み止めについて

市販の消炎鎮痛薬で一時的に痛みを抑えることはありますが、アスピリン(アセチルサリチル酸)は、少量では尿酸の排泄を妨げる方向にはたらくことがあるため、この場面では適していません。市販薬の成分表示を確認するか、迷ったら薬剤師に「痛風発作かもしれない」と伝えて選んでください。

また、持病がある方、ほかの薬を飲んでいる方、妊娠の可能性がある方は、市販薬で対応せず受診してください。

発作が起きた日を、どう乗り切るか

「安静に」と言われても、仕事も家のことも止まってくれません。実際に困る場面を並べます。

場面できること
靴が履けない甲の部分が開くサンダル、面ファスナーで調整できる靴。患部に触れないことが最優先です。ストッキングもやめてよい日です
通勤・移動可能なら休む。行くなら、混雑を避けて座れる時間帯に。踏まれるリスクを減らすため、人混みを避ける
仕事座って足を上げられる場所を確保する。「関節の炎症で歩行が困難です」で十分伝わります。病名を言う義務はありません
立ち仕事1〜2日は代わってもらう相談を。我慢して立ち続けると回復が遅れます
家事立って行う家事(調理・洗い物)は数日だけ手放す。宅配・総菜・食洗機に頼る
入浴長時間の入浴は避ける。シャワーで済ませ、患部は温めない
足元の布団が触れると痛いので、クッションで布団を持ち上げる。足を心臓より高くして寝る
受診のとき歩けないほどなら、無理に歩かず家族の送迎やタクシーを。「痛みで歩けない」と電話で伝えれば配慮されます

そして、周囲への説明でひとつだけ。「痛風なんて贅沢病でしょ」と言われることがあります。そのときは「体質と、閉経してからのホルモンの変化が大きいらしいです」と返してください。事実ですし、それ以上の説明は要りません。

何科に行けばいい?

受診先こんなときにできること
内科
(かかりつけ)
健診で尿酸値を指摘された全ての場合再検査、背景の確認、生活指導、薬の処方、長期の管理
整形外科いま関節が腫れて痛い関節の診察、ほかの関節の病気との鑑別、痛みの治療
リウマチ科複数の関節が痛む、朝のこわばりがある関節リウマチなどとの鑑別
泌尿器科尿路結石になったことがある、背中や脇腹の激痛結石の評価と治療
婦人科ほかの更年期症状もある更年期全体としての相談(更年期の治療
その日のうちに発熱を伴う、皮膚が広く腫れている感染の評価。急ぐ場面
受診のとき、持っていくもの・伝えること
  • 健診の結果(できれば過去数年分)。尿酸値の推移がいちばんの情報です
  • 飲んでいる薬・サプリメントをすべて(お薬手帳)。とくに血圧の薬
  • 閉経したかどうか、生理の状況
  • 過去に足や関節が急に腫れて痛んだことがあるか。治まっていても伝える
  • 妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病の既往
  • お酒の量、水分の量、ダイエットをしているか

下の4つは、こちらから言わないと出てこない情報です。とくに「以前に足が腫れて、放っておいたら治った」という話は、診断を大きく左右します。

診察室で机をはさんで向かい合い、白衣の女性医師が話を聞き、私服の50代前後の女性が健診結果について相談している様子

検査では何をするの? 費用の目安

検査わかること実際のところ
血液検査尿酸値、腎機能、炎症、血糖、脂質基本。尿酸値だけでなく腎機能を一緒に見ることに意味があります
尿検査尿たんぱく、尿のpH、尿中の尿酸排泄が減っているタイプか、作りすぎのタイプかの手がかりになる
関節の超音波結晶の沈着、炎症の程度痛みなし。その場で見られる
レントゲン骨や関節の変化初期には写らないことも。ほかの病気の除外に
関節液の検査結晶を直接確認できる(確定的)腫れている関節に針を刺して液を採る。行われないこともある
腹部の超音波腎臓の結石結石の既往がある場合に
内容3割負担の目安
初診+血液・尿検査約2,000〜4,000円
発作時の受診+鎮痛薬約2,000〜4,500円
再診+処方(1か月)約1,500〜3,500円
関節の超音波を追加+約500〜1,500円
年間(2〜3か月ごと受診+服薬)おおよそ2万〜4万円

初回は5,000円程度あると安心です。通院は安定していれば2〜3か月に1回程度。年間の医療費が一定額を超える場合は医療費控除の対象になるので、領収書は残しておいてください。

治療|発作のときと、そのあとで薬が違う

痛風の治療は、「いま痛い炎症を抑える治療」と「尿酸値そのものを下げる治療」の2段階に分かれます。この2つを混同しないことが、いちばん大事です。

段階目的使われるもの
発作のとき炎症と痛みを抑える消炎鎮痛薬、コルヒチン、ステロイドなど。尿酸値を下げる薬はここでは新しく始めない
発作の前兆発作に至るのを抑えるあらかじめ処方されている場合、指示どおりに使う
落ち着いてから尿酸値を下げて結晶を減らす尿酸の産生を抑える薬、排泄を促す薬。少量から始めてゆっくり下げる
生活の面再発を防ぐ水分、お酒、体重、食事、運動の調整

「一度飲んだら一生ですか?」

コレステロールの薬と同じく、よく聞かれる質問です。答えは「体質と状態によりますが、簡単にやめられるものではありません」です。

薬をやめれば、尿酸値は多くの場合また上がります。閉経でエストロゲンの後押しがなくなったという前提は、薬では変えられないからです。一方で、体重が減った、お酒が減った、原因だった薬が変更された——といった変化があれば、量を調整できることもあります。

いちばん避けたいのは、「発作が起きないから、もういいだろう」と自己判断でやめることです。結晶は関節の中に残っていて、数値が上がれば再びたまり始めます。やめたいと思ったら、その気持ちをそのまま主治医に伝えてください。

治療を始めたばかりの時期に、発作が起きることがあります

尿酸値を下げ始めた時期に、一時的に発作が起きることがあります。これは治療が失敗したのではなく、血液中の尿酸が下がることで、関節にたまっていた結晶の状態が変わるために起こると考えられています。

だからこそ、薬は少量から、ゆっくり始められます。この時期に「薬のせいで悪くなった」と自己中断してしまう方がいますが、それがいちばんもったいない展開です。あらかじめ知っておくだけで、続けられます。

食事|プリン体だけの話ではありません

「痛風=プリン体を減らす」と思われがちですが、食事から入るプリン体が尿酸値に与える影響は、想像されているほど大きくありません。体内の尿酸の多くは、自分の細胞の入れ替わりから作られています。

だからといって「食事は関係ない」ではありません。効く順番が違う、という話です。

優先順位①|アルコールは種類より「飲むこと自体」

アルコールは、尿酸を作る方向にも、排泄を妨げる方向にも作用します。ビールにプリン体が多いのは事実ですが、「プリン体ゼロのお酒なら大丈夫」ではありません。アルコールそのものが尿酸値を上げるからです。

  • 休肝日を週2日つくる
  • 1日の量を減らす
  • 飲むときは、同じ量の水を一緒に飲む

優先順位②|甘い飲み物(果糖)

意外に見落とされるのがここです。果糖(フルクトース)は、体内で尿酸を作る方向にはたらきます。清涼飲料、加糖の缶コーヒー、スポーツドリンク、果汁飲料——これらを日常的に飲む習慣があるなら、そこがいちばんの狙い目かもしれません。

果物そのものは食物繊維やカリウムも摂れるので極端に避ける必要はありませんが、ジュースにして大量に飲むのは別と考えてください。

優先順位③|水分

尿量が増えれば、尿酸は出ていきやすくなります。1日1.5〜2L程度を目安に(心臓や腎臓の病気で水分制限がある方は主治医の指示に従ってください)。水やお茶で構いません。甘い飲み物で水分を摂るのは逆効果です。

木のテーブルに置かれた水差しと水の入ったグラス2つ、緑茶の茶葉を入れた白い小鉢

優先順位④|プリン体の多い食品

控えたいもの具体的に
とくに多いレバー、白子、あん肝、干物(煮干し・かつお節を大量に使うだし)
多め魚卵の一部、えび、いわし、カツオ、肉のスープ・鍋の〆
意外な盲点スープや煮汁。プリン体は水に溶けるので、ラーメンのスープや鍋のつゆを飲み干すと一気に増えます

増やしたいもの

  • 野菜・海藻・きのこ。尿をアルカリ性に傾けることが、尿酸を溶かして出しやすくする面で意味があるとされています
  • 乳製品。低脂肪のものが勧められることが多い項目です
  • 水・お茶。これが最優先
いちばん効率のいい3つ
  • ①甘い飲み物をやめて、水かお茶に替える
  • ②休肝日を週2日つくる
  • ③スープ・煮汁を飲み干さない

レバーを我慢することより、この3つのほうがはるかに効きます。そして続けやすいはずです。

この年代は、脂質や血糖も一緒に指摘されていることが多いものです。幸い、ここで挙げた方針はコレステロールの対策とほとんど重なります。別々に頑張る必要はありません。

通説の検証|贅沢病・ビール・プリン体ゼロ

「痛風は贅沢病」

かつて、美食と飲酒の習慣がある一部の人の病気と考えられていた時代の名残です。いまは食生活だけで説明できるものではないことがわかっています。体質(腎臓での尿酸の処理能力)、薬、腎機能、そして女性ではホルモンの変化が大きく関わります。

この言葉が厄介なのは、「自己管理ができていない人がなる病気」という受け取られ方をして、本人が言い出しにくくなることです。とくに女性の場合、「女性で痛風なんて」と重ねて言われがちで、受診が遅れる理由になります。生活習慣は要因のひとつであって、すべてではありません。

「ビールを避ければ大丈夫」

ビールにプリン体が多いのは事実ですが、アルコールそのものが尿酸値を上げます。焼酎やウイスキーに替えても、量が同じなら影響は残ります。「種類を替える」より「量と頻度を減らす」ほうが確実です。

「プリン体ゼロの飲料なら安心」

プリン体ゼロでも、アルコールが入っていれば尿酸値への影響はあります。また、甘い清涼飲料は果糖によって尿酸値を上げる方向にはたらきます。「ゼロ」の表示だけで安心材料にはなりません。

「発作が治まったから、もう治った」

いちばん多い誤解で、いちばん代償が大きい誤解です。炎症が引いただけで、関節の結晶も、高い尿酸値もそのまま残っています。放置すれば発作の間隔は短くなり、関節は増え、腎臓にも影響が及びます。発作は「終わり」ではなく「知らせ」です。

「女性は痛風にならない」

この記事の中心テーマです。男性に圧倒的に多いのは事実ですが、閉経後の女性では尿酸値が上がり、発症もします。「女性だから違う」という理由だけで、候補から外さないでください。

「尿酸値が高くても、痛くないなら治療は不要」

症状のない高尿酸血症をどう扱うかは、数値の高さや、腎臓・血圧・心臓の状態によって判断が変わります。「一律に薬を飲むべき」でも「一律に放置してよい」でもありません。だからこそ、自己判断ではなく一度受診して、自分の場合はどうかを聞いてくる価値があります。

経過の見通し

取り組み変化を判断する期間見るポイント
発作の痛み1〜2週間治療をすれば数日で軽くなることが多い
水分・お酒・甘い飲み物の見直し1〜3か月次の採血で尿酸値の動きを見る
体重の減量3〜6か月ゆっくり落とすこと。急ぐと逆効果
尿酸を下げる薬数か月〜少量から始めて目標値へ。途中で発作が起きても中断しない
関節の結晶が減る年単位数値を保ち続けることで、少しずつ溶けていくと考えられている
3か月やっても変わらないときは

努力が足りないのではなく、排泄が減るタイプで生活だけでは届かないか、薬の影響など別の要因があるのかもしれません。「もう少し頑張ります」ではなく、「3か月続けましたが変わりませんでした。ほかに調べることはありますか」と伝えてください。とくに飲んでいる薬の見直しは、自分では判断できない部分です。

2週間の実行プラン

やることを絞ります。1週目は3つだけです。

時期やることねらい
1週目
その1
甘い飲み物を、水かお茶に替える果糖はいちばん見落とされていて、いちばん替えやすい
1週目
その2
水分を1日1.5L程度に。「トイレが近いから飲まない」をやめる尿酸の出口を広げる
1週目
その3
健診結果を過去数年分そろえ、尿酸値の推移を書き出す基準内でも上がり続けているかを見る
2週目
その1
休肝日を週2日決める種類を替えるより量を減らす
2週目
その2
お薬手帳を確認し、血圧の薬(利尿薬)を飲んでいないか調べる該当すれば受診時に必ず伝える
2週目
その3
内科を受診。尿酸値と腎機能をあわせて確認してもらう関節ではなく腎臓と血管の話として相談する

あえて1週目に入れていないのは、レバーや魚卵を我慢すること、急いで体重を落とすことです。前者は効率が悪く、後者は短期的にはむしろ尿酸値を上げます。

よくある質問

Q 痛風になりかけの初期症状はありますか?

A.発作の数時間前から、足の親指のつけ根などに「ピリピリする」「違和感がある」「なんとなく重い・熱っぽい」という前兆を感じる方がいます。ただし、多くの場合はっきりした前触れなく、夜間から明け方に突然始まります。本当の意味での「なりかけ」は、症状ではなく健診の数値です。尿酸値が基準を超えている、あるいは基準内でも年々上がっている——その段階が、痛みが出る前に手を打てるタイミングです。

Q 痛風の一番の原因は何ですか?

A.ひとつに絞れるものではありませんが、日本人では「尿酸が体から出ていきにくいこと(排泄低下)」が大きな割合を占めるとされています。食事から入るプリン体の影響は、想像されているほど大きくありません。女性の場合はここに閉経によるエストロゲンの低下が加わります。ほかに、アルコール、甘い飲み物(果糖)、脱水、肥満、腎機能の低下、一部の薬(利尿薬など)が関わります。「食べすぎ・飲みすぎ」だけの話ではないと考えてください。

Q 痛風はどこが痛むのですか?

A.もっとも多いのは足の親指のつけ根です。ほかに足首、足の甲、膝、手首、指の関節にも起こります。特徴は、ひとつの関節が赤く腫れて熱をもち、触れるだけで痛いほど強く痛むこと。夜間から明け方に突然始まり、24時間ほどでピークを迎え、1〜2週間で自然に治まります。女性では足の親指以外から始まることや、手指に出ることも、男性に比べてやや多いとされています。

Q 女性でも痛風になりますか?

A.なります。男性に圧倒的に多いのは事実ですが、それは閉経前の女性がエストロゲンによって尿酸を排泄しやすい状態に保たれているからです。閉経でその後押しがなくなると、女性の尿酸値は上がる傾向があります。ですから、女性の痛風は「更年期以降の病気」と考えたほうが実態に合っています。「女性だから違う」という理由で候補から外すと、受診が遅れます。判断材料は性別ではなく、症状と数値です。

Q 尿酸値が高いけれど痛くありません。受診は必要ですか?

A.一度は受診をおすすめします。症状のない高尿酸血症に薬を使うかどうかは、数値の高さや、腎臓・血圧・心臓の状態によって判断が変わるためです。「一律に薬」でも「一律に放置」でもありません。大切なのは、尿酸値の問題が関節だけでなく腎臓(尿路結石・腎機能の低下)や血管とつながっていることです。とくに血圧・血糖・コレステロールのどれかも指摘されているなら、それぞれ別の問題ではなく、ひとつながりの状態として見てもらう価値があります。

Q 発作が起きています。家にある痛み止めを飲んでもいいですか?

A.市販の消炎鎮痛薬で一時的に痛みが和らぐことはありますが、アスピリン(アセチルサリチル酸)は少量では尿酸の排泄を妨げる方向にはたらくことがあるため、この場面には適していません。成分表示を確認するか、薬剤師に「痛風発作かもしれない」と伝えて選んでください。そして絶対にやってはいけないのが、尿酸を下げる薬を自己判断で飲み始めることです。家族の薬をもらう、以前の残りを飲む——これは発作を悪化させることがあります。持病がある方、妊娠の可能性がある方は市販薬で対応せず受診してください。

Q ビールをやめれば大丈夫ですか?

A.ビールにプリン体が多いのは事実ですが、アルコールそのものが尿酸値を上げます。焼酎やハイボールに替えても、量が同じなら影響は残りますし、「プリン体ゼロ」の表示があっても同じです。種類を替えるより、量と頻度を減らすほうが確実です。目安として、休肝日を週2日つくること、飲むときは同量の水を一緒に飲むこと。あわせて、甘い清涼飲料も果糖によって尿酸値を上げるので、お酒だけに注目しないでください。

Q ダイエットをしたら尿酸値が上がりました。なぜですか?

A.絶食や極端な糖質制限で体脂肪が急に分解されると、その過程でできる物質(ケトン体)が腎臓での尿酸の排泄を妨げます。そのため、「健康のために始めた食事制限で、かえって尿酸値が上がる」「痛風発作が起きる」ということが実際に起こります。長い目で見れば減量は尿酸値にプラスですが、落とし方はゆっくり、月に1〜2kg程度までを目安にしてください。あわせて水分をしっかり摂ることも忘れずに。

Q 血圧の薬を飲んでいます。尿酸値と関係ありますか?

A.血圧の薬のうち利尿薬は、尿酸値を上げる方向にはたらくことが知られています。この年代の女性が飲み始める機会も少なくありません。ただし、自己判断で中止するのは絶対に避けてください。血圧が上がるほうが問題になります。「尿酸値が高いと言われました。いま飲んでいる薬の影響はありますか」と処方元に伝えてください。必要であれば、薬の種類を変えるという選択肢を医師が検討します。お薬手帳を持参すると話が早く進みます。

Q 水分はどのくらい飲めばいいですか?

A.目安は1日1.5〜2L程度です(心臓や腎臓の病気で水分制限を指示されている方は、必ず主治医の指示に従ってください)。水やお茶で構いません。甘い飲み物で水分を摂るのは、果糖の分だけ逆効果です。この年代で気をつけたいのは、頻尿や尿もれが気になって水分を控えているケース。尿量が減ると尿酸の出口が細くなるので、水を減らすのではなく頻尿そのものを相談するほうが合理的です。ホットフラッシュや寝汗で汗をかく方は、失っている分を意識して足してください。

まとめ

痛風は、血液中に増えた尿酸が関節で結晶になり、それを体が攻撃することで起こる激しい炎症です。そして高尿酸血症は、その何年も前から静かに進んでいます。

「痛風は男性の病気」という言葉は、半分は正しく、半分は危うい思い込みです。閉経前の女性の尿酸値が低いのは、体質ではなくエストロゲンに守られていたから。その守りは、閉経とともに外れます。コレステロールが上がるのも、血圧が上がりやすくなるのも、根っこは同じところにあります。

そして、この記事でいちばん覚えて帰っていただきたいのは、発作が起きたときに「やってはいけないこと」です。温めない、揉まない、そして尿酸を下げる薬を自己判断で飲み始めない。逆に、すでに飲んでいる人は自己判断でやめない。始めるときと続けるときで、判断が違います。

健診の尿酸値は、多くの女性が読み飛ばしてきた欄だと思います。けれど、基準内であっても、去年より上がっているなら意味があります。次に結果が届いたら、その欄も見てみてください。

この記事のポイントまとめ
  • 痛風は、尿酸の結晶が関節で炎症を起こす病気。数値の上昇は何年も前から始まっている
  • 「女性は痛風になりにくい」のではなく「閉経前の女性は守られていた」
  • エストロゲンには尿酸の排泄を助けるはたらきがあり、閉経後は上がる
  • 基準(7.0超)は男女共通。女性は基準内でも「去年より上がったか」で見る
  • 発作は足の親指のつけ根に多く、24時間でピーク、1〜2週間で自然に治まる
  • 自然に治まるからこそ受診されない。治ったのは炎症だけで、原因は残っている
  • 発作中に尿酸を下げる薬を新しく飲み始めない。すでに飲んでいるならやめない
  • 冷やす・安静・水分。温める・揉むは逆効果
  • 利尿薬・脱水・急なダイエット・激しい運動という、女性に起こりやすい誘因がある
  • 「トイレが近いから水を飲まない」は、尿酸値の面では逆効果
  • 食事はプリン体よりアルコール・甘い飲み物・スープの飲み干しのほうが効率がよい
  • 発作がなくても、腎臓・尿路結石・血圧・血管とつながっている
  • 妊娠高血圧症候群の既往は、20年前のことでも伝える価値がある

この記事について

femnote 編集部

生理・妊活・フェムケア・更年期など女性の健康に関する情報を、厚生労働省「e-ヘルスネット」や日本産科婦人科学会をはじめとする各学会の診療ガイドラインなど、公的な資料をもとに編集しています。診断や治療の判断については、必ず医療機関にご相談ください。

参考文献

  • 日本痛風・尿酸核酸学会「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」
  • 日本整形外科学会「痛風」(症状・病気をしらべる)
  • 公益財団法人 痛風・尿酸財団「痛風と高尿酸血症」
  • MSDマニュアル家庭版「痛風」「ピロリン酸カルシウム関節炎(偽痛風)」
  • 日本生活習慣病予防協会「高尿酸血症/痛風」
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「高尿酸血症」「アルコールと健康」関連情報
  • 日本女性医学学会「女性医学ガイドブック 更年期医療編」
  • 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン ─産科編」(妊娠高血圧症候群)