朝、目が覚めて手を握ろうとしたら、指がうまく曲がらない。ペットボトルの蓋が開けられない——そんな朝が続くようになった。

40代後半から50代にかけて、関節の痛みやこわばりを感じ始める方はとても多いです。それまで何ともなかったのに、ある時期から急に始まる。そして多くの方が、こう考えます。「使いすぎかな」「年のせいかな」と。

ですが、この時期の関節の不調にはエストロゲンの減少が関わっていることがわかっています。つまり「使いすぎ」でも「気のせい」でもないということです。

同時に、大事なことがもうひとつあります。更年期の関節痛と、関節リウマチの初期は、症状がとてもよく似ています。そして関節リウマチは、早く見つけて対応することに大きな意味がある病気です。

この記事では、まず「これは更年期のものか、別の病気か」を切り分けることから始めます。そのうえで、どの部位が痛いかで考えること、何科に行けばいいか、治療の選択肢、自分でできることまで整理していきます。

先に|この特徴があるなら、様子を見ずに受診してください
  • 朝のこわばりが1時間以上続く——更年期によるものは、多くが15〜30分ほどで和らぎます
  • 関節が腫れて、押すと痛い・熱をもっている
  • 左右対称に、同じ関節が痛む(両手の同じ指など)
  • 指の付け根(手のひら側の関節)が腫れている
  • 微熱・強い倦怠感・体重減少を伴う
  • 症状が数週間で悪化してきている

これらは関節リウマチや膠原病を含めて確認する必要があるサインです。「更年期だから仕方ない」で片づけないでください。

まず切り分ける|更年期のものか、別の病気か

切り分けの手がかりは、大きく3つあります。朝のこわばりの長さ・腫れの有無・左右対称かどうかです。

手がかり更年期によるものに多い別の病気を考える
朝のこわばり15〜30分ほどで和らぐ1時間以上続く
腫れ目立たないことが多いはっきり腫れる・熱をもつ
左右差片側だけ・日によって場所が変わる左右対称に同じ関節
痛む場所指の第1・第2関節、手首、肩、膝などあちこち指の付け根や手首に集中
経過日や時期によって波があるだんだん悪化していく
全身症状ほてり・発汗・不眠など更年期の症状を伴う微熱・強い倦怠感・体重減少
いちばん見るべきは「朝のこわばりの長さ」
  • 時計で測ってください。体感ではなく、目が覚めてから「普通に動く」までの実時間を
  • 15分程度——更年期による変化として説明がつくことが多い範囲です
  • 30分〜1時間——経過を見ながら、続くようなら相談を
  • 1時間以上——関節リウマチを含めて確認したほうがよい範囲です
  • これは何日か記録すると精度が上がります。受診したときにそのまま伝えられる情報になります

ただし、この表だけで結論は出ません。更年期の関節痛と関節リウマチが同時に起こることもありますし、血液検査をしないとわからないことがあります。迷ったら「両方の可能性を確認してほしい」と伝えて受診してください。

紙に描かれた人体の線画に、腰と膝の位置へ淡いピンクの丸で痛む場所の印がつけられ、横にペンが置かれている

部位別|どこが痛いかで考えること

「関節が痛い」といっても、どこが痛いかによって考えることが変わります。

部位この時期に多いこと詳しく
指の第1関節(爪に近いほう)ヘバーデン結節。腫れて曲がってくることがありますヘバーデン結節
指の第2関節(真ん中)ブシャール結節。第1関節と同じ性質のものです下で説明
指の付け根ここが腫れる場合は関節リウマチを考えますリウマチとの見分け方
親指の付け根母指CM関節症。物をつまむと痛いヘバーデン結節
手首・手のしびれ手根管症候群。しびれを伴うのが特徴手根管症候群
肩(腕が上がらない)四十肩・五十肩四十肩・五十肩
腰から脚坐骨神経痛。しびれや電気が走る感じ坐骨神経痛
変形性膝関節症。体重の影響を受けやすい部位です下で説明
あちこちが日替わり更年期の関節痛に多いパターンこの記事で

指のどの関節が痛いかで、意味が変わります

ここは、自分で確かめられて、しかも情報量が大きいポイントです。痛いのが指のどこかを、ひとつずつ確認してみてください。

場所考えられること特徴
第1関節(爪のすぐ下)ヘバーデン結節片側から始まることが多い。骨のふくらみができる
第2関節(指の真ん中)ブシャール結節ヘバーデン結節と同じ性質。数は少なめ
付け根の関節(手のひら側)関節リウマチを考えます左右対称に腫れることが多い
親指の付け根母指CM関節症つまむ・ひねる動作で痛い
指全体がこわばる更年期によるこわばり動かしているうちにほぐれる
ヘバーデン結節・ブシャール結節はリウマチではありません
  • どちらも関節の軟骨がすり減って起こる変化で、関節リウマチとは別のものです
  • 40代後半以降の女性に多いことがわかっており、エストロゲンの減少が関わっているとされます
  • 「リウマチですか」と心配して受診する方が多いのですが、痛む場所が違います。リウマチは指の付け根、これらは指の先のほう
  • ただし自分で区別しきる必要はありません。血液検査と診察で確かめられます
  • 詳しくはヘバーデン結節

関節リウマチとの見分け方

ここがこの記事でいちばん大事な部分です。更年期の関節痛と関節リウマチの初期は、症状が似ています。そして関節リウマチは、早い段階で対応することに大きな意味がある病気です。

更年期による関節痛関節リウマチ
朝のこわばり15〜30分ほど1時間以上続くことが多い
痛む場所指の先のほう・肩・膝などあちこち指の付け根・手首に集中しやすい
左右対称か片側だけのことが多い左右対称に出やすい
腫れ目立たないぷよぷよと腫れ、熱をもつ
経過波がある。良い日もあるだんだん悪化する
全身症状ほてり・発汗・不眠など微熱・強い倦怠感・体重減少
血液検査炎症の値は上がらないことが多い炎症の値やリウマチ関連の項目に変化が出ることがあります
受診先婦人科・整形外科リウマチ科・膠原病内科

血液検査でわかること

  • リウマトイド因子(RF)——関節リウマチで陽性になることがありますが、健康な方でも陽性になることがあります
  • 抗CCP抗体——関節リウマチにより特徴的とされる項目です
  • CRP・赤沈——体の中に炎症があるかを見ます
  • 甲状腺の項目——甲状腺の病気でも関節の症状が出ることがあります(橋本病
  • これらは1回の結果だけで決まるものではありません。診察所見や画像とあわせて判断されます
「検査は陰性でした」と言われても、症状が続くなら
  • 関節リウマチでも、検査が陰性のことがあります。陰性だから違う、とは言い切れません
  • 初期は数値に出ないこともあります。時間をおいて再検査することがあります
  • 症状が続く・悪化するなら、もう一度伝えてください。「前回は問題なしと言われました」も含めて
  • 婦人科で「更年期でしょう」と言われても、朝のこわばりが長いならリウマチ科への相談を検討してください

そのほか、確認されることのある病気

病気特徴
変形性関節症動かし始めに痛い。膝・指に多く、年齢とともに増えます
膠原病関節症状に加え、皮疹・口の乾き・目の乾き・レイノー現象などを伴うことがあります
甲状腺の病気関節症状のほか、だるさ・体重の変化・むくみなど。更年期と間違われやすい
リウマチ性多発筋痛症肩や腰まわりの強い痛みとこわばり。50代以降に起こります
腱鞘炎関節そのものではなく腱の炎症。特定の動きで痛みます
痛風・偽痛風急に激しく痛み、赤く腫れる。1か所に起こることが多い

なぜ更年期に関節が痛くなるのか

「ホルモンと関節に何の関係が」と思われるかもしれません。実際にはいくつかの経路が関わっているとされています。

しくみ説明
①エストロゲンの働きが減るエストロゲンには関節の炎症を抑える方向に働く面があるとされます。減ることで、その支えが弱まります(エストロゲン
②軟骨とコラーゲンの変化関節のクッションになる組織の状態が変わり、負担がかかりやすくなります
③腱・靭帯がこわばる関節そのものより、周りの組織がこわばって動かしにくくなる——朝のこわばりはこれが関わります
④筋肉量の低下筋肉が関節を支えきれなくなり、関節への負担が増えます
⑤血流の低下自律神経の乱れで血流が落ち、老廃物が滞りやすくなります
⑥睡眠が浅くなる痛みは眠れないと強く感じられます。悪循環になりやすい(不眠
だから「使いすぎ」でも「気のせい」でもありません
  • 急に始まったのに、心当たりがない——それがこの時期の関節痛の典型です
  • 片手だけ痛いのに、利き手とは限らない。使用量と一致しないことがよくあります
  • 「重いものを持ったから」と原因を探しても見つからないのは、原因が体の外にないからです
  • ほてり・発汗・不眠など、ほかの更年期の症状と一緒に始まっているなら、それは大きな手がかりです(更年期の症状
  • 「年のせい」で済ませてしまうと、対応できることを逃します

何科に行けばいい?

これがいちばん迷うところだと思います。どこから始めても構いませんが、症状によって行きやすい順番があります。

こういう場合まず行く先
朝のこわばりが1時間以上/関節が腫れる/左右対称リウマチ科・膠原病内科
特定の関節だけが痛い・変形してきた整形外科(レントゲンが撮れます)
ほてり・発汗・不眠など更年期の症状も一緒にある婦人科
しびれを伴う整形外科手根管症候群
だるさ・体重の変化も強い内科(甲状腺の確認)
どこか迷う整形外科でも婦人科でも構いません。必要なら紹介されます
「更年期でしょう」で終わらせないための伝え方
  • 「朝のこわばりが◯分続きます」と時間で伝える——これがいちばん効きます
  • 「リウマチの可能性も確認していただけますか」と言って構いません。失礼にはあたりません
  • 腫れているときの写真があれば見せてください。診察日に引いていることがあります
  • 婦人科で更年期と言われても、症状が続くなら整形外科やリウマチ科へ。両方にかかることは問題ありません
  • 紹介状は頼めば書いてもらえます

診察で伝える6項目と、費用

これを用意していけば十分です
  • ①いつから——「3か月前から」
  • ②どこが——指なら「どの関節か」まで。図に描いてもいい
  • ③朝のこわばりの時間——実測で。ここが最重要
  • ④腫れ・熱感の有無左右対称かどうか
  • ⑤ほかの更年期症状——ほてり・発汗・不眠・月経の状況
  • ⑥飲んでいる薬・持病・家族にリウマチの人がいるか

費用は初診+血液検査でおおむね3,000〜6,000円前後(3割負担)。レントゲンを撮る場合は1,000〜3,000円前後が加わります。

病院で相談できる治療

「更年期の関節痛です」と言われた場合でも、そこで終わりではありません。相談できることがあります。

ホルモン補充療法(HRT)

減ったエストロゲンを補う方法です。関節の症状が軽くなる方がいることが報告されています。ほてりや発汗など、ほかの更年期症状も一緒にあるなら、選択肢として相談する価値があります。

  • 効果の出方には個人差があります。誰にでも同じように働くものではありません
  • 使えない条件があります——一部のがんの既往、血栓症の既往などで制限がかかることがあります
  • 始める時期によって考え方が変わります
  • 詳しくはホルモン補充療法

エクオール

大豆イソフラボンが腸内細菌によって変えられてできる成分で、エストロゲンに似た働きをするとされています。

  • 体内でエクオールをつくれる人は日本人の半数程度とされ、つくれない方はサプリメントで摂る形になります
  • HRTが使えない方・使いたくない方の選択肢のひとつとして相談されることがあります
  • 医薬品ではありません。効果には個人差があり、すべての方に同じ変化が起きるものではありません
  • 他の薬を飲んでいる方は、始める前に医師や薬剤師に伝えてください

漢方

関節の症状やこわばりに対して、漢方が用いられることがあります。体質や症状の出方によって処方されるものが変わるのが特徴です。

  • 「更年期にはこれ」と決まっているわけではありません。冷えの有無、むくみ、体力などを見て選ばれます
  • 市販でも買えますが、自己判断で長く続けるより、一度相談したほうが選びやすいです
  • ほかの薬との組み合わせに注意が必要なものもあります
  • 詳しくは更年期と漢方

痛みへの対応

  • 塗り薬・貼り薬——局所に使うもの。飲み薬より体への負担が小さいとされます
  • 飲み薬——痛みが強いときに。胃への影響があるものがあるため、漫然と続けないでください
  • 装具・テーピング——指や手首の負担を減らします
  • リハビリ——動かし方の指導を受けられることがあります
  • 治療全体の選択肢は更年期の治療にまとめています
やわらかな光の中、生成りの布の上に置かれたクリーム色の平たいケースとチューブ、そばに小さな黄色い花

自分でできること

温める

この時期の関節の不調には、温めるほうが合うことが多いです。冷えると血流が落ち、こわばりが強くなります。

  • 朝、洗面器のお湯に手を浸けてから動かす——こわばりが取れやすくなります
  • 入浴で全身を温める。シャワーだけで済ませない
  • 冷房の風が直接あたらないようにする——夏に悪化する方は、ここが原因のことがあります
  • 手袋・レッグウォーマーを使う——寝るときだけでも変わることがあります
  • ただし腫れて熱をもっているときは温めないでください。その場合は冷やします

動かす

痛いから動かさない、が悪循環をつくります
  • 動かさない → 周りの組織が硬くなる → もっと動かしにくい → さらに動かさない
  • 痛くない範囲で、毎日少しずつ動かすのが基本です
  • 手なら——グーパーをゆっくり10回。指を1本ずつ曲げ伸ばし
  • 肩なら——腕を下げたまま前後にぶらぶら揺らす
  • 朝と入浴後がやりやすい時間帯です
  • 「痛みを我慢して動かす」ではありません。痛みが出る手前まで、が目安です

筋肉を保つ

関節を支えているのは筋肉です。筋肉量が減ると、関節にかかる負担が増えます。

  • 歩く——1日20〜30分程度から。膝が痛いなら平坦な道を
  • スクワットは浅く——深くしゃがむと膝の負担が増えます
  • たんぱく質をとる——筋肉の材料です。この年代は不足しがちです(更年期の食事
  • 体重が増えると膝への負担が大きくなります更年期の体重増加

手を休ませる工夫

場面工夫
ペットボトルが開かないオープナーを使う。力任せにひねらない
包丁を持つと痛い握りの太い柄のものに替える
雑巾を絞る絞らずに押して水気を取る
買い物袋指にかけず、腕全体か肩にかける
スマホ・パソコン長時間続けない。1時間ごとに手を休める
フライパン軽いものに替える。片手で持ち上げない

「痛くても使うしかない」と思っている動作の多くは、道具や持ち方を変えれば減らせます。我慢の量を減らすことが、いちばん現実的な対策になることがあります。

睡眠を整える

眠れないと、痛みは強く感じられます。この時期は不眠も起こりやすく、痛みと睡眠が互いに悪化させ合う関係になりがちです。

眠りが浅い、途中で目が覚めるといったことが続いているなら、痛みと一緒に相談してください更年期の不眠倦怠感)。

やってはいけないこと

よかれと思ってやりがちなこと
  • 痛いから完全に動かさない——固まって、より動かしにくくなります
  • 痛みを我慢して無理に動かす——逆に炎症を強めます。「痛みの手前まで」が目安
  • 腫れて熱をもっているのに温める——このときは冷やします
  • 市販の痛み止めを漫然と飲み続ける——2週間以上続くなら受診を
  • 強くマッサージする・引っぱる——関節を傷めることがあります
  • 「更年期だから」で受診しない——関節リウマチを見逃す最大の理由がこれです
  • サプリメントだけで様子を見続ける——症状が続くなら、まず原因を確かめてください

2週間の試し方

受診するかどうか迷っている段階なら、2週間だけ記録をつけながら試してみてください。そのまま受診の材料になります。

やること内容
毎朝はかるこわばりが取れるまでの時間。いちばん重要な記録です
痛む場所を記録日によって変わるか、同じ場所か。左右対称かも
腫れた日は写真診察日に引いていても伝えられます
温める朝のお湯・入浴・冷房を避ける
動かす痛くない範囲で毎日少しずつ
手の負担を減らす道具を替える・持ち方を変える
2週間後の判断
  • こわばりの時間が短くなってきた——続けてみてよい方向です
  • 変わらない/悪化した——受診してください。記録がそのまま伝える材料になります
  • こわばりが1時間を超える日が続く——2週間を待たずに受診を
  • 腫れ・熱感が出てきた——同じく、待たずに受診

セルフチェック|12項目

#質問はい/いいえ
1朝のこわばりが1時間以上続く 
2関節が腫れている・熱をもっている 
3左右対称に同じ関節が痛む 
4指の付け根が痛い・腫れている 
5微熱・強い倦怠感・体重減少がある 
6症状が数週間で悪化してきている 
7朝のこわばりが15〜30分で和らぐ 
8痛む場所が日によって変わる 
9ほてり・発汗・不眠など更年期の症状も一緒にある 
10指の第1関節・第2関節が腫れて骨が出っぱってきた 
11しびれを伴う 
12市販の痛み止めを2週間以上使っている 

結果の読み方

当てはまったもの行動
1〜6のどれかリウマチ科・膠原病内科へ。「更年期だから」で待たない
7・8・9更年期による関節痛として説明がつきやすいパターン。婦人科で相談を
10整形外科へヘバーデン結節
11整形外科へ手根管症候群
12受診してください。痛み止めで抑え続ける状態は長く続けるものではありません
7〜9だけ2週間の記録をつけながら試してみる2週間の試し方

通説の検証

「関節痛は年のせいだから仕方ない」は本当か

判定:仕方なくはありません。

この時期の関節痛にはエストロゲンの減少が関わっていることがわかっており、ホルモン補充療法で症状が軽くなる方がいることも報告されています。「年齢」は原因の説明であって、諦める理由ではありません。

そして何より、「年のせい」で済ませることが、関節リウマチを見逃す最大の理由になっています。

「痛いときは安静にすべき」は本当か

判定:完全に動かさないのは逆効果です。

動かさないと周りの組織が硬くなり、さらに動かしにくくなります。目安は「痛みが出る手前まで」。我慢して動かすのでも、まったく動かさないのでもありません。

ただし、腫れて熱をもっているときは別です。そのときは冷やして、受診してください。

「グルコサミンやコラーゲンを飲めば軟骨が増える」は本当か

判定:そのように働くという明確な根拠は示されていません。

口から摂ったものが、そのまま関節の軟骨になるわけではありません。これらは食品であり、医薬品ではありません。

試すこと自体を否定はしませんが、それだけで様子を見続けないでください。症状が続くなら、まず原因を確かめることのほうが先です。

「手が痛いのはリウマチだ」は本当か

判定:手が痛い=リウマチ、ではありません。

この時期の手の痛みには、ヘバーデン結節・ブシャール結節・母指CM関節症・手根管症候群・更年期によるこわばりなど、いくつもの可能性があります。

ただし、心配なら確かめてください。血液検査と診察で区別できます。「大げさかも」と思う必要はありません。

4つの通説まとめ
  • 年のせいだから仕方ない仕方なくありません。相談できることがあります
  • 痛いときは安静に:完全に動かさないのは逆効果。「痛みの手前まで」
  • サプリで軟骨が増える明確な根拠は示されていません。それだけで様子を見ない
  • 手が痛い=リウマチほかにも可能性があります。ただし確かめる価値はあります

よくある質問

Q 更年期の関節痛か、リウマチか、自分で見分けられますか?

A.完全には見分けられませんが、目安になる手がかりはあります。いちばん重要なのは朝のこわばりの長さです。15〜30分で和らぐなら更年期によるものとして説明がつきやすく、1時間以上続くなら関節リウマチを含めて確認したほうがよい範囲です。ほかに腫れ・熱感・左右対称・指の付け根の症状があれば受診を。最終的には血液検査と診察で判断されます。

Q 何科に行けばいいですか?

A.朝のこわばりが1時間以上・関節が腫れる・左右対称なら、リウマチ科か膠原病内科へ。特定の関節だけが痛い、変形してきたなら整形外科(レントゲンが撮れます)。ほてりや発汗など更年期の症状も一緒にあるなら婦人科です。迷ったら整形外科でも婦人科でも構いません。必要なら紹介されます。

Q 婦人科で「更年期でしょう」と言われましたが、痛みが続いています

A.もう一度、別の視点で診てもらってください。朝のこわばりが長い、腫れる、左右対称——このどれかがあるなら、整形外科かリウマチ科への相談を検討してください。「前回は更年期と言われましたが、こわばりが1時間続きます」と具体的に伝えると話が早いです。複数の科にかかることは問題ありません。紹介状も頼めば書いてもらえます。

Q 血液検査は問題なしでした。でも痛みが続きます

A.検査が陰性でも関節リウマチのことがあります。とくに初期は数値に出ないことがあり、時間をおいて再検査することがあります。また更年期による関節痛なら、そもそも炎症の値は上がらないことが多いです。つまり「異常なし」は「原因がない」という意味ではありません。症状が続く・悪化するなら、そのことをもう一度伝えてください。

Q ホルモン補充療法で関節痛は軽くなりますか?

A.症状が軽くなる方がいることが報告されていますが、個人差があります。誰にでも同じように働くものではありません。ほてりや発汗などほかの更年期症状も一緒にあるなら、相談する価値のある選択肢です。ただし使えない条件がありますので、既往歴を伝えたうえで医師と決めてください(ホルモン補充療法)。

Q 指が変形してきました。もう元に戻らないのでしょうか

A.変形そのものを元に戻すことは難しいとされています。ただし痛みへの対応や、進み方への手当てはできます。また、変形が進んでも痛みは落ち着いていくことがあります。「もう遅い」と受診をやめないでください。装具やテーピングで負担を減らす方法もあります(ヘバーデン結節)。

Q サプリメントは飲んだほうがいいですか?

A.サプリメントは食品であり、医薬品ではありません。グルコサミンやコラーゲンについて、口から摂ったものがそのまま軟骨になるという根拠は示されていません。エクオールはHRTが使えない方の選択肢として相談されることがありますが、こちらも効果には個人差があります。いずれにせよ、サプリメントだけで様子を見続けないでください。他の薬を飲んでいる方は、始める前に医師か薬剤師に伝えてください。

Q 冬になると悪化します。夏は大丈夫なのですが

A.冷えると血流が落ち、こわばりが強くなります。朝に洗面器のお湯へ手を浸けてから動かす、入浴で全身を温める、寝るときに手袋を使う——このあたりで変わる方がいます。なお夏でも冷房の風が直接あたると悪化します。「夏なのにつらい」という方は、冷房が原因のことがあります。

Q 家事で手を使わないわけにいきません

A.使わないようにするのではなく、負担の大きい動作を置き換えてください。ペットボトルはオープナーを使う、雑巾は絞らず押して水気を取る、買い物袋は指にかけず腕や肩にかける、包丁やフライパンは軽くて柄の太いものに替える——「痛くても使うしかない」と思っている動作の多くは、道具や持ち方で減らせます。我慢の量を減らすことが、いちばん現実的な対策になります。

Q 閉経したら関節痛はよくなりますか?

A.落ち着いていく方もいれば、続く方もいます。更年期の症状の多くはホルモンの変動が大きい時期にあらわれ、閉経後に落ち着くことが多いのですが、関節の変化はそれとは別に進むこともあります。「そのうち治るから」と待ち続けるより、いま相談したほうが選べる手立てが多いです(閉経について)。

まとめ

更年期の関節痛でいちばん伝えたいのは、「年のせい」で済ませないでほしいということです。

この時期の関節の不調にはエストロゲンの減少が関わっていて、相談できることがあります。そして同時に、関節リウマチの初期とよく似ている——だから、諦めて受診しないことが、いちばんもったいない選択になります。

迷ったら、朝のこわばりの時間を測ってみてください。15分か、1時間か。この数字ひとつが、次の行き先を決めてくれます。

この記事のポイントまとめ
  • 切り分けの第一手は「朝のこわばりの長さ」。15〜30分か、1時間以上か
  • 腫れ・熱感・左右対称・指の付け根の症状があれば、リウマチ科へ
  • 指の第1・第2関節はヘバーデン結節/ブシャール結節。リウマチとは別のものです
  • リウマチは指の付け根、結節は指の先のほう——痛む場所が違います
  • 検査が陰性でも関節リウマチのことがあります。続くならもう一度伝える
  • 「使いすぎ」でも「気のせい」でもありません。エストロゲンの減少が関わっています
  • HRT・エクオール・漢方が相談の選択肢になります
  • 温める。ただし腫れて熱をもっているときは冷やす
  • 完全に動かさないのは逆効果。「痛みの手前まで」動かす
  • 道具と持ち方を変えて、手の負担そのものを減らす
  • サプリメントだけで様子を見続けない
  • 市販の痛み止めが2週間以上必要なら受診を

部位ごとの詳しい解説は、ヘバーデン結節手根管症候群四十肩・五十肩坐骨神経痛へ。更年期の症状全体は更年期の症状にまとめています。

この記事について

femnote 編集部

生理・妊活・フェムケア・更年期など女性の健康に関する情報を、厚生労働省「e-ヘルスネット」や日本産科婦人科学会をはじめとする各学会の診療ガイドラインなど、公的な資料をもとに編集しています。診断や治療の判断については、必ず医療機関にご相談ください。

参考文献

  • 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編」
  • 日本女性医学学会「女性医学ガイドブック 更年期医療編」
  • 日本リウマチ学会「関節リウマチ診療ガイドライン」
  • 日本リウマチ学会「リウマチ情報」
  • 日本整形外科学会「症状・病気をしらべる」
  • 日本整形外科学会「変形性関節症について」
  • 日本東洋医学会「漢方治療エビデンスレポート」
  • 厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査」
  • 厚生労働省「健康食品の安全性・有効性情報」
  • 日本内分泌学会「甲状腺の病気について」