トイレの紙に、赤い色がついた。おしりに、今までなかったふくらみがある。座ると痛い。──気づいた瞬間、頭に浮かぶのはたぶん「え、まさか私が?」という戸惑いだと思います。

痔には、なんとなく「おじさんの病気」というイメージがついています。テレビCMも、どこか笑いを含んだトーンで流れます。だから多くの女性が、自分の体に起きたことを誰にも言えないまま、検索窓に小さく打ち込むことになります。「いぼ痔 女性 写真」「産後 痔 いつまで」と。

でも、実際に婦人科や助産師の現場にいると、痔はまったく珍しくありません。むしろ、妊娠と出産を経験した人にとっては、経験するほうが自然といっていいくらいのできごとです。理由ははっきりしていて、女性の体には痔ができやすい条件が、いくつも重なって存在するからです。

この記事では、痔という病気そのものの説明に加えて、「女性の体で何が起きて痔になるのか」を中心に整理していきます。ひとりで検索している時間が、少しでも短くなりますように。

痔とは?肛門にできる最も多いトラブル

痔とは、肛門とその周辺に起こる病気の総称です。ひとつの病気の名前ではなく、いくつかの異なる状態をまとめて「痔」と呼んでいます。

いぼ痔・切れ痔・痔ろうの3タイプ

痔は大きく3つに分けられ、まとめて「三大痔疾患」と呼ばれます。原因も、症状も、対処のしかたも異なります。

タイプ 正式名称 主な症状 特徴
いぼ痔 痔核(じかく) 出血・脱出・腫れ・違和感 最も多いタイプ。できる場所で内痔核と外痔核に分かれる
切れ痔 裂肛(れっこう) 排便時の鋭い痛み・少量の出血 便秘との関係が深く、女性に多いとされる
痔ろう 痔瘻(じろう) 腫れ・強い痛み・発熱・膿が出る 下痢が引き金になりやすく、手術が基本になる

このうち、女性が経験しやすいのはいぼ痔と切れ痔です。痔ろうは比較的男性に多いといわれています。

「日本人の3人に1人」といわれる理由

痔は「日本人の3人に1人が持っている」とよく紹介されます。この数字はさまざまな調査に由来していて、統一された全国統計があるわけではありません。ただ、肛門科の診療現場では「症状のない軽い痔核まで含めれば、成人の多くが何らかの痔を持っている」と考えられています。

つまり痔は、特別な人がなる病気ではなく、二足歩行をして、座って生活して、便をする人間なら誰にでも起こりうる状態です。人間が立って歩くようになったことで、肛門周辺の血管には常に重力がかかるようになりました。この構造上の宿命が、痔のいちばん根っこにあります。

「男性の病気」というイメージは正しくない

痔の患者さんに男性が多いというイメージは、実際の受診者の性別比というより、「女性が受診をためらいやすい」ことの影響が大きいと考えられています。

痔の外用薬をドラッグストアのレジに持っていくのが恥ずかしい。肛門科に行くのが怖い。産婦人科の先生に「おしりのことなんですが」と切り出しにくい。──こうしたためらいが積み重なると、症状が進んでからようやく受診する、ということが起こります。

切れ痔は女性のほうが多いとされています 痔の3タイプのうち、切れ痔(裂肛)は女性に多いことが知られています。背景にあるのはやはり便秘です。若い女性ほど便秘の頻度が高く、硬い便が肛門の皮膚を傷つける機会が多くなります。「痔は男性の病気」という思い込みは、事実とはズレています。

なぜ女性に痔が起こりやすいのか|4つの理由

ここがこの記事の中心です。痔の解説はたくさんありますが、そのほとんどは「便秘」「長時間の座位」「飲酒」「加齢」といった、男女に共通する一般的な要因の説明で終わります。

けれど女性の場合、それに加えて女性の体だからこそ起こる原因が、少なくとも4つ重なっています。

① プロゲステロンによる、周期的な便秘

排卵後から生理が始まるまでの約2週間、体内ではプロゲステロン(黄体ホルモン)が多く分泌されます。このホルモンには、子宮の収縮をおさえて妊娠を維持しようとする働きがあります。

ところがプロゲステロンは、子宮だけを狙って作用してくれるわけではありません。同じ平滑筋でできている腸の動き(ぜん動運動)まで一緒にゆるめてしまうのです。さらに体に水分をため込む方向にも働くため、腸の中の便から水分が抜けて硬くなります。

結果として、生理前になると便が硬くなり、出しにくくなる人が多くなります。硬い便を無理に出そうといきめば、肛門の皮膚は切れやすくなり、肛門周辺の血管には強い圧力がかかります。詳しいしくみは生理前の便秘で解説しています。

逆に生理が始まると、今度はプロスタグランジンの影響で下痢気味になる人もいます。生理中の下痢と生理前の便秘を毎月くり返している人は、肛門にとってかなり負担の大きいサイクルを送っていることになります。

② 妊娠中の、骨盤内のうっ血

妊娠すると、子宮は少しずつ大きくなり、臨月には非妊娠時の数百倍の容積になります。この大きくなった子宮が、骨盤の中を通る太い静脈を圧迫します。

肛門のまわりには「痔静脈叢(じじょうみゃくそう)」というクッションのような血管の集まりがあります。心臓に戻る血流が子宮に堰き止められると、この血管に血液がたまってふくらみます。これが、妊娠中期以降にいぼ痔が増える最大の理由です。

同じしくみで、妊娠中は足のむくみや静脈瘤も起こりやすくなります。おしりの痔と足のむくみは、じつは「骨盤内でせき止められた血流」という同じ根っこから出てきた別の症状です。足のむくみの記事でも、この骨盤内うっ血について触れています。

さらに妊娠中は、妊娠を維持するためにプロゲステロンが高い状態が続きます。①で書いた便秘が、妊娠期間を通してずっと続くということです。加えて、大きくなった子宮に腸そのものが押されて動きにくくなります。

③ 出産のときの、いきみ

分娩の第2期、いわゆる「いきむ」時間には、腹圧が一気に高まります。この圧力は肛門にもそのままかかります。

そのため、お産のあとに初めていぼ痔ができた、あるいはもともとあった痔が一気に脱出したという経験は、決して珍しくありません。分娩直後の内診で、産後のおしりに大きくふくらんだ外痔核ができているのを確認することは、助産師にとって日常的な光景です。

会陰の傷とおしりの痛みが一緒にやってくるため、産後数日は座ることそのものがつらくなります。会陰切開の記事で紹介している円座クッションの使い方は、痔の痛みにもそのまま役立ちます。

④ 冷え・長時間の座位・食事量の少なさ

4つめは、生活のなかにある要因です。ただしこれも、女性のほうが影響を受けやすい条件がそろっています。

  • 冷え:体が冷えると血管が収縮し、肛門周辺の血流が悪くなります。筋肉量が少ないほど熱をつくりにくく、冷えやすくなります
  • 長時間の座位:デスクワークで同じ姿勢が続くと、肛門に圧力がかかり続けます。トイレに行きにくい職場環境も、便意をがまんする習慣につながります
  • 食事量の少なさ:ダイエットなどで食事量を減らすと、食物繊維の摂取量も一緒に減ります。便のかさが足りないと、腸は動く合図を受け取れません
  • 骨盤底のゆるみ:出産や加齢で骨盤底筋がゆるむと、排便のときの姿勢や力の入れ方が変わり、いきみが強くなることがあります

骨盤底の問題は、頻尿・尿もれ子宮脱(骨盤臓器脱)とも地続きです。出産を経た体では、骨盤底というひとつの土台の上に、排尿・排便・子宮の位置が全部乗っています。

明るい窓辺のデスクでノートパソコンに向かい、頬杖をついて長時間座って働く日本人女性
女性が痔になりやすい条件は、こんなに重なっています
  • 毎月の生理周期で、便秘と下痢をくり返す
  • 妊娠中は骨盤内がうっ血し、便秘が数か月続く
  • 出産のいきみで、肛門に強い圧力がかかる
  • 産後は授乳による水分不足と、トイレに行く余裕のなさが重なる
  • 冷え・座りっぱなし・食事量の少なさが背景にある

「なぜ自分が」ではなく、「これだけ条件がそろえば、なっても不思議はない」。まずそう受け止めていただいて大丈夫です。

いぼ痔(痔核)とは|内痔核と外痔核の違い

痔のなかで最も多いのが、いぼ痔(痔核)です。肛門のクッション組織にある血管がうっ血してふくらみ、いぼのようになった状態を指します。

いぼ痔は、できる場所によって「内痔核」と「外痔核」に分かれます。この2つは症状がまったく違うので、まずここを押さえると全体が理解しやすくなります。

境目になる「歯状線」

肛門の内側には、腸の粘膜と皮膚が入れ替わる境目があります。これを歯状線(しじょうせん)といいます。この線より内側にできたものが内痔核、外側にできたものが外痔核です。

この境目が決定的に重要なのは、歯状線より内側には痛みを感じる神経がほとんど通っていないからです。

内痔核 外痔核
できる場所 歯状線より内側(直腸側) 歯状線より外側(皮膚側)
痛み ほとんど感じない はっきり痛い
気づき方 出血・脱出して気づく 痛みとふくらみで気づく
出血 多い(勢いよく出ることも) 少ないか、ないことも
見た目 脱出しなければ見えない 指で触れる・鏡で見える

内痔核|痛くないのに、血が出る

内痔核の代表的な症状は出血です。排便のときにポタポタと、あるいは便器の水が赤く染まるほど勢いよく出ることがあります。それでいて痛みはほとんどありません。

「痛くないのにこんなに血が出るなんて、何か重い病気では」と不安になる人が多いのですが、内痔核ではこれがごく典型的な出方です。血の色は鮮やかな赤(鮮血)で、便の表面に付着したり、拭いた紙につきます。

内痔核の進行度|1度から4度まで

内痔核は、脱出(肛門から出てくること)の程度によって4段階に分けられます。治療方針を決めるときの基準になる分類です。

進行度 状態 主な対応の方向性
1度 排便時に出血するが、脱出はしない 生活改善と外用薬による保存的な対応が中心
2度 排便時に脱出するが、自然に戻る 保存的な対応が中心。改善しなければ他の選択肢も
3度 脱出し、指で押し込まないと戻らない 注射療法や手術が検討されることが多い
4度 常に脱出したままで、戻せない 手術が検討されることが多い

「いぼ痔が出てきたらどうすればいいのか」という不安をよく聞きますが、2度〜3度の段階で清潔な手でやさしく押し戻すこと自体は問題ありません。出たままにしておくと、むくんで戻らなくなったり、血流が悪くなって強い痛みが出ることがあるためです。ただし、無理に力を入れて押し込むのは避けてください。

外痔核|ある日突然、激しく痛む

外痔核は皮膚側にできるため、痛みをはっきり感じます。とくに血栓性外痔核は、血管の中で血のかたまり(血栓)ができて急激に腫れるもので、前日まで何もなかったのに朝起きたら激痛で座れない、というかたちで始まります。

硬いしこりのように触れ、色は青紫〜黒っぽく見えることがあります。強く重い便秘のあと、長距離の移動のあと、そして出産の直後に起こりやすいのが特徴です。

血栓性外痔核は多くの場合、数日から数週間かけて痛みのピークを越えて落ち着いていきます。ただし痛みが強い時期の生活への影響は大きいので、我慢せず受診してかまいません。

おしりの「ぷにぷに」の正体は?

検索でとても多いのが、「おしりに、ぷにぷにした柔らかいふくらみがある」「痛くないのに、いぼのようなものが触れる」という悩みです。これは実際、いくつかの異なるものが混同されています。

触れるもの 正体として考えられるもの 特徴
柔らかくてぷにぷに、痛くない 皮垂(スキンタグ) 炎症や外痔核が治まったあとに残った皮膚のたるみ。病気ではない
硬いしこり、強く痛い 血栓性外痔核 突然できる。青紫っぽく見えることも
肛門のふちの小さな盛り上がり 見張りいぼ 切れ痔が慢性化してできる。切れ痔のサインであっていぼ痔ではない
排便時だけ出てくる 内痔核の脱出 戻る/戻らないで進行度が分かれる
赤く腫れて熱をもち、発熱もある 肛門周囲膿瘍 早めの受診が必要。放置すると痔ろうに進むことがある

「写真で確かめたい」気持ちについて

自分のおしりの状態を、ネット上の画像と見比べて確かめたい。この気持ちは、とても自然なものだと思います。誰にも見せられない場所だからこそ、比較できる情報がほしくなります。

ただ正直にお伝えすると、画像で自己判断することには、はっきりした限界があります。上の表を見ていただくと分かるように、見た目が似ていても中身がまったく違うものが並んでいるからです。とくに、皮垂(放っておいて問題ないもの)と見張りいぼ(切れ痔が慢性化しているサイン)と肛門周囲膿瘍(早めの受診が望ましいもの)は、素人目には区別がつきません。

そして、肛門の出血や腫れは痔以外の病気でも起こります(これは後の章で詳しく扱います)。画像検索で安心するために費やしている時間は、5分の診察で終わることの代わりにはなりません。

切れ痔(裂肛)とは|女性に特に多いタイプ

切れ痔は、硬い便が通るときなどに肛門の出口付近の皮膚が裂けてしまう状態です。医学的には裂肛といいます。

症状|「拭いたら紙にうっすら血」と、鋭い痛み

切れ痔の出血は、内痔核と違ってごく少量です。拭いた紙にうっすらつく程度で、便器が赤くなるほどではありません。

そのかわり、痛みははっきりしています。排便の瞬間にピリッと切れるような鋭い痛みが走り、その後もじんじんとした痛みが数分から数時間続くことがあります。この「排便後にも痛みが続く」というのが、内痔核との大きな違いです。

慢性化すると起こる悪循環

切れ痔でいちばん気をつけたいのが、痛みが生む悪循環です。

  1. 硬い便で肛門が切れ、強い痛みが出る
  2. また痛いのが怖くて、トイレに行くのを無意識に避けるようになる
  3. 便が腸にとどまる時間が長くなり、水分が抜けてさらに硬くなる
  4. 次の排便で、もっと大きく切れる

この循環が続くと、傷が治りきらないまま慢性化します。慢性化した裂肛では、傷のそばに見張りいぼという皮膚の盛り上がりや、肛門の内側に肛門ポリープができることがあります。さらに進むと、傷が硬い瘢痕(はんこん)になって肛門そのものが狭くなり(肛門狭窄)、細い便しか出せなくなることもあります。

この悪循環は、痛みを取ることで断ち切れます
  • 「痛いから行かない」は、切れ痔をいちばん悪化させる行動です
  • 便をやわらかくする薬を使えば、排便時の痛みは大きく減らせます
  • 慢性化して肛門が狭くなる前のほうが、対応の選択肢は多く残ります

「たかが切れ痔」と考えて何年も我慢していた結果、手術が必要な段階になって受診される方は少なくありません。

痔ろう(あな痔)とは

痔ろうは、3タイプのなかでは頻度が低く、女性より男性に多いとされています。ただし知っておく価値があるのは、ほかの2つと違って自然に治ることが期待できず、手術が基本になるからです。

肛門の内側には、肛門陰窩(いんか)という小さなくぼみが並んでいます。下痢が続くなどしてここに細菌が入り込むと、肛門のまわりに膿がたまります。これが肛門周囲膿瘍です。

肛門周囲膿瘍の症状は、いぼ痔や切れ痔とは明らかに違います。

  • おしりがズキズキと激しく痛み、排便と関係なく痛み続ける
  • 赤く腫れて熱をもつ
  • 38度前後の発熱が出ることがある
  • 膿が出てくると、痛みが急に楽になる

この膿が出た後に、皮膚と肛門の内側をつなぐトンネル(瘻管)が残った状態が痔ろうです。トンネルは自然にふさがらないため、手術で処理することになります。

発熱をともなうおしりの痛みは、早めの受診を いぼ痔や切れ痔で高い熱が出ることは、通常ありません。おしりが激しく痛み、そこに発熱が加わっている場合は、肛門周囲膿瘍の可能性があります。この状態は自然に良くなるのを待つより、早めに肛門科・大腸肛門外科を受診したほうが体への負担が小さくて済みます。

妊娠中・産後の痔|いつから・いつまで・薬は?

ここからは、femnoteの読者にとっていちばん切実な部分だと思います。妊娠・出産という時期の痔について、時間の流れに沿って整理します。

妊娠中|中期以降に増えてくる

妊娠中の痔は、子宮が大きくなってくる妊娠中期(5か月ごろ)から目立ちはじめ、7か月以降に増えてきます。臨月に近づくほど、骨盤内のうっ血も便秘も強くなるためです。

妊娠中は自己判断で市販薬を使わず、まず妊婦健診で相談してください。おしりのことを産科で相談していいのだろうかとためらう方がいますが、妊娠中の痔は産科医・助産師にとって日常的な相談内容です。必要に応じて妊娠中でも使える薬が処方されますし、肛門科への紹介が必要かどうかも判断してもらえます。

出産直後|いちばんつらい時期

分娩のいきみで、痔は一気に悪化することがあります。産後1〜3日は、会陰の傷と痔の痛みが重なって、座ることも歩くこともつらい時期です。

このときに助けになるのは、次のような工夫です。

  • 円座クッションを使う:入院中に貸してもらえることが多いので、遠慮せず頼んでください
  • 横向きで休む:仰向けより、左右どちらかを下にした横向きのほうが圧力が逃げます
  • 排便を怖がりすぎない:産後の初回排便は誰でも怖いものです。多くの産院では便をやわらかくする薬を用意しています
  • 痛み止めを我慢しない:授乳中でも使える鎮痛薬があります。痛みを我慢しても回復は早まりません

産後の体の回復全体については悪露、傷のケアについては会陰切開の記事もあわせてご覧ください。帝王切開だった方も、妊娠中の骨盤内うっ血と便秘は同じように経験しているため、痔ができることはあります。

産後、いつごろ落ち着く?

いちばん知りたいのはここだと思います。

個人差が大きい前提でお伝えすると、出産直後にできた腫れや痛みのピークは、多くの場合、産後数日から数週間で落ち着いていきます。子宮が元の大きさに戻り、骨盤内の血流が正常化していくにつれて、うっ血の条件そのものが消えていくためです。

ただし、次の2つは覚えておいてください。

  • ふくらみだけが残ることがある:腫れが引いたあとに、皮膚のたるみ(皮垂)だけが残ることがあります。痛みも出血もなければ、そのままにしていて差し支えないものです
  • 症状が続くなら、待たずに相談を:出血や痛みが続いている、脱出が戻らないという場合は、うっ血以外の要因が残っています

いつ、誰に言えばいい?|産後の相談タイミング

「もう少し様子を見てから」と考えているうちに、相談する機会を逃してしまうのが産後です。目安をはっきり書いておきます。

タイミング 相談先 言い方の例
入院中(産後すぐ) 助産師・産科医 「おしりが痛くて座れないんですが、見てもらえますか」
退院後〜1か月 出産した産院に電話 「産後の痔のことで相談したいのですが」
1か月健診 産科医・助産師 「痔が残っていて痛みます」と、そのまま伝えて大丈夫です
1か月健診以降も続く 肛門科・大腸肛門外科 産院で紹介してもらうこともできます

とくに1か月健診は、ためらわず言っていい場です。産後健診は赤ちゃんのためだけでなく、お母さんの体の回復を確認するための時間でもあります。悪露の状態や会陰の傷と同じ流れで、痔のことも聞いてもらえます。

「こんなことで受診していいのかな」と思う必要はまったくありません。座るのがつらいまま赤ちゃんを抱いて授乳するのは、想像以上に消耗します。それは十分に相談していい理由です。

また産後は、授乳による水分不足、まとまった時間がとれずトイレを後回しにすること、睡眠不足による自律神経の乱れなどが重なり、便秘そのものが続きやすい時期です。ここを放置すると、せっかく回復に向かっている痔が振り出しに戻ります。

授乳中の薬はどう考える?

「授乳中だから薬は一切使えない」と思い込んで、我慢している方がとても多い領域です。

実際には、痔の治療で使われる外用薬(軟膏や坐薬)は局所に作用するもので、飲み薬に比べて全身に回る量は少なくなります。授乳中の使用について、医師や薬剤師が個別に判断したうえで処方されることは一般的にあります。

大切なのは、自己判断で市販薬を使うのでも、自己判断で我慢するのでもなく、授乳中であることを伝えて相談することです。この考え方は乳腺炎の記事で書いた「受診=断乳ではない」という話とまったく同じです。

相談するときに伝えるとスムーズなこと
  • 授乳中であること(完全母乳か、混合か)
  • 出産からどのくらい経っているか
  • いつから、どんな症状があるか(痛み/出血/ふくらみ)
  • 市販薬を使ったなら、その名前
  • 便秘か下痢か、排便のペース

その出血、本当に痔?見逃したくない病気

この章は、この記事でいちばん大切な部分かもしれません。

おしりからの出血を「たぶん痔だろう」と自己判断してしまうことには、ひとつ大きな落とし穴があります。痔以外の病気でも、まったく同じように血が出るからです。そして、痔があるからといって、同時に別の病気がないという保証にはなりません。

痔の出血の特徴

典型的な痔の出血には、次のような特徴があります。

  • 色は鮮やかな赤(鮮血)
  • 便の表面に付着する、または拭いた紙につく、便器に落ちる
  • 排便のときだけ出て、それ以外のときは出ない
  • 痛みがあるか、あるいは(内痔核なら)まったくないか、パターンが一定している

受診をおすすめしたいサイン

サイン なぜ気にかけたいか
血が便に混ざっている(表面に付くのではなく) より奥のほうからの出血の可能性があります
黒っぽい、タールのような便 胃や小腸など、上部の消化管からの出血が疑われます
便が細くなった、形が変わった 腸の内側が狭くなっている可能性を確認したい所見です
下痢と便秘をくり返す状態が続く 排便パターンの持続的な変化は、確認する価値があります
粘液や膿のようなものが混じる 腸に炎症がある可能性があります
体重が減っている、強い倦怠感がある 全身に影響が出ているサインです
血縁者に大腸の病気の人がいる 年齢にかかわらず、早めの相談が望ましくなります

大腸の病気としては、大腸ポリープ、大腸がん、潰瘍性大腸炎、クローン病、感染性腸炎などが挙げられます。これらは症状だけで痔と区別することはできません。区別できるのは、診察と必要な検査だけです。

出血が続いているなら、貧血にも目を向けて

痔からの出血が長く続くと、鉄が少しずつ失われて貧血になることがあります。女性はもともと毎月の生理で鉄を失っているため、そこに痔の出血が加わると、貧血が進みやすくなります。

立ちくらみ、動悸、息切れ、異常な疲れやすさがある場合は、生理と貧血の記事もあわせてご覧ください。

「痔だと思っていた」で受診が遅れないために
  • 痔があることと、ほかの病気がないことは別の話です
  • いったん痔と診断されていても、出血のしかたが以前と変わったら再受診してください
  • 40歳を過ぎたら、痔の有無にかかわらず大腸がん検診(便潜血検査)の対象になります

受診して「痔でした」と言われることは、無駄ではありません。それは、ほかの可能性を確認できたということです。

今日からできるセルフケア7つ

痔のセルフケアは、要するに「肛門にかかる負担を減らす」という一点に集約されます。特別なことは必要ありません。

① 便をやわらかく保つ

いちばん効果が期待できるのがここです。硬い便は、いぼ痔にも切れ痔にも最大の負担になります。

食物繊維の目標量は、日本人の食事摂取基準で18〜64歳の女性は1日18g以上とされています。実際の平均摂取量はこれを下回っていることが多いので、意識して増やす価値があります。

  • 水溶性の食物繊維:海藻、こんにゃく、オクラ、山いも、果物。便に水分を保たせてやわらかくします
  • 不溶性の食物繊維:豆類、きのこ、根菜、玄米。便のかさを増やして腸を動かします
  • 発酵食品:ヨーグルト、納豆、みそ。腸内環境を整える方向に働きます

ただし、不溶性の食物繊維ばかりを一気に増やすと、かえってお腹が張ったり便が硬くなることがあります。水分と一緒に、水溶性のものも組み合わせるのがポイントです。生理中の食べものの記事もあわせてどうぞ。

② 水分をしっかりとる

食物繊維を増やしても、水分が足りなければ便は硬いままです。とくに授乳中は、母乳として1日に相当量の水分が出ていくため、意識して補う必要があります。

朝起きてすぐにコップ1杯の水を飲むと、胃結腸反射という腸を動かす反応が起こりやすくなります。

③ 排便は3分以内、いきまない

トイレに長く座り続けること自体が、肛門に圧力をかけ続ける行為です。目安として3分たって出なければ、いったん立つと決めておくのがおすすめです。

スマホを持ってトイレに入ると、あっという間に10分15分が過ぎてしまいます。これは痔にとって、かなり分の悪い習慣です。

姿勢では、足元に小さな台を置いて膝を股関節より高くすると、直腸と肛門の角度が開いて便が出やすくなります。台がなければ、かかとを上げるだけでも違います。

④ 便意をがまんしない

便意は、来たときに応えるのがいちばん体に負担がありません。がまんすると直腸の感覚が鈍くなり、便が硬くなります。

職場でトイレに行きにくい、外出先の多目的トイレを探すのに時間がかかる──こうした環境要因は、女性のほうが受けやすいものです。「行きたくなったら行く」を優先順位の上のほうに置いてください。

⑤ 温める

肛門周辺の血流をよくすることは、うっ血をやわらげる方向に働きます。シャワーだけで済ませず、湯船につかるのがシンプルで確実な方法です。

ただし例外があります。赤く腫れて熱をもち、ズキズキ痛むとき(急性の炎症や膿瘍が疑われるとき)は温めないでください。炎症を強めてしまうことがあります。この場合は受診が先です。

⑥ 洗いすぎない・拭きすぎない

清潔にしようとするあまり、逆にダメージを与えてしまうケースがとても多い項目です。

  • 温水洗浄便座の使いすぎに注意:強い水圧で長時間洗うと、皮膚を守っている皮脂まで落ちて、かえってかゆみや炎症が起こります。使うなら弱めの水圧で短時間に
  • ゴシゴシ拭かない:紙は押さえるように当てるだけにします
  • 石けんで強く洗わない:肛門周辺の皮膚はデリケートです。デリケートゾーンの洗い方の考え方がそのまま応用できます
  • むれを防ぐ:長時間のナプキンやおりものシートでむれると、皮膚トラブルが起こりやすくなります。ナプキンかぶれもあわせてご覧ください

⑦ 同じ姿勢を続けない・体を冷やさない

デスクワークなら1時間に1回は立ち上がる、立ち仕事なら足踏みをする。それだけでも骨盤内の血流は変わります。座面が硬い椅子なら、クッションを一枚敷くだけでも負担が減ります。

また、骨盤底筋を意識して動かすことは、排便のコントロールにも役立ちます。やり方は骨盤底筋トレーニングの記事で解説しています。

平日をどう乗り切るか|仕事中・通勤中の工夫

セルフケアの多くは家でできることですが、実際にいちばん長く座っているのは職場です。ここを変えないと、夜のケアだけでは追いつきません。

場面 できること
デスクワーク中 低反発や円座タイプのクッションを一枚敷く。1時間に1回、コピーや給湯室を口実に立ち上がる
長い会議中 座り直して体重をかける位置を左右に変える。足を組むのは血流が悪くなるので避ける
通勤電車 硬い座席に長く座るより、立っているほうがラクなこともある。無理に座らなくていい
トイレに行きにくい職場 「行きたくなったら行く」を優先する。がまんは便を硬くし、症状を長引かせます
冷房が強いオフィス ひざ掛け、腹巻き、温かい飲みもの。下半身を冷やさないことが血流に直結します
痛みが強い日 市販の鎮痛薬を使ってもかまいません。痛みを我慢しても治りは早くなりません

クッションは、周囲から見れば「腰痛対策」にしか見えません。理由を説明する必要はありませんし、聞かれたら「腰が」で十分です。おしりのことを職場に説明する義務は、どこにもありません。

白い木のテーブルに並んだ野菜・海藻・豆・きのこの料理と、水とハーブティー

やってはいけないこと

やってはいけないこと 理由
自分で切る・つぶす・針を刺す 感染を起こす危険があります。血栓性外痔核でも、処置が必要かは医師が判断します
刺激性の下剤を毎日使い続ける 腸が慣れて効きにくくなることがあります。長期に使うなら医師に相談を
痛いからトイレに行かない 切れ痔の悪循環をつくる、いちばん避けたい行動です
腫れて熱をもっている部分を温める 炎症を強めることがあります
出血を「どうせ痔」と決めつけて何か月も放置する ほかの病気の見逃しにつながります

何科に行く?診察の実際・費用・治療

受診のハードルを下げるために、実際に何が起こるのかを具体的に書いておきます。

受診先の選び方

受診先 こんなときに
肛門科・大腸肛門外科 痔の診療の専門。症状がはっきりしている、繰り返している場合の第一候補
消化器内科・消化器外科 出血が続く、便通の変化が気になるなど、腸のほうも確認したいとき
産婦人科 妊娠中・産後で、まず相談したいとき。必要なら専門科へ紹介してもらえます
内科(かかりつけ) どこに行けばいいか迷うとき。状況に応じて紹介してもらえます

「女性外来」や「女性医師の診療日」を設けている肛門科もあります。予約前に電話やウェブサイトで確認しておくと、それだけで気持ちがずいぶん軽くなります。

診察は、実際どう進む?

受診をためらういちばんの理由が「診察が恥ずかしい」であることは、よく分かっています。だからこそ、何が起こるかをあらかじめ知っておいてください。

  1. 問診:症状、いつからか、便通の状態、出産歴などを聞かれます
  2. 体位:多くの場合、左を下にした横向きで膝を軽く曲げた姿勢になります。顔は医師と反対を向く形です
  3. タオルがかけられる:診察する部分以外は覆われ、必要な範囲だけを見る形で進みます
  4. 視診・触診:目で見て、指で触れて確認します。ゼリーを使うので痛みは強くありません
  5. 肛門鏡:内側を確認するために、細い筒状の器具を使うことがあります

ここまでで、実際に体を診る時間は数分程度です。この数分のために何か月も悩み続けるのは、率直に言ってもったいないと思います。

受診がラクになる小さな工夫
  • スカートやゆったりしたワンピースだと、着脱の負担が少なくて済みます
  • 生理中でも受診は可能です。気になるなら予約時に伝えておくと配慮してもらえます
  • 症状のメモ(いつから/出血の色と量/痛むタイミング/便通)を持っていくと、話しやすくなります
  • 子連れで行けるかは、予約時に確認しておくと安心です
診察室で白衣の女性医師からタブレットを見せられながら説明を受けている日本人女性

費用の目安

健康保険が使えます。3割負担の場合、初診料と診察でおおよそ1,500〜3,000円程度が目安です。ここに薬が出れば、その分が加わります。

大腸内視鏡検査を受ける場合は、3割負担で1万円前後(組織を採る検査などが加わればさらに)というのが一般的な目安です。手術になる場合は術式と入院の有無で幅が出ますが、高額療養費制度の対象になります。事前に「限度額適用認定証」を用意しておくと、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えられます。

治療の選択肢

方法 内容 主な対象
保存療法 生活習慣の改善+外用薬(軟膏・坐薬)や便をやわらかくする薬 いぼ痔の1〜2度、切れ痔の多く。まずここから始まります
硬化療法(ALTA・ジオン注) 痔核に薬剤を注射して縮ませる方法。切らずに行えます 内痔核の2〜4度など
輪ゴム結紮法 痔核の根元を専用の輪ゴムで縛り、脱落させる方法 比較的小さめの内痔核
結紮切除術 痔核を切除する手術。確実性が高い方法とされます 進行した内痔核、外痔核を伴うもの
裂肛に対する手術 肛門が狭くなった場合などに行われます 慢性化した切れ痔

大事なのは、いきなり手術になることはまずないということです。多くの痔は保存療法から始まり、生活習慣の改善で落ち着いていきます。「受診したら切られる」という不安から受診を先送りするのは、実態と合っていません。

市販の外用薬は、症状をやわらげる目的で使われるものです。使ってみて数日〜1週間ほどで変化がない、あるいは悪化しているようなら、そこで受診に切り替えてください。市販薬は、診察の代わりにはなりません。

ドラッグストアの棚で迷わないために|剤形の違い

薬局の痔の棚には、いくつもの形の商品が並んでいます。どれを手に取ればいいか分からず、結局買えずに帰ってしまった──という声をよく聞くので、「何がどう違うのか」という形の違いだけを整理しておきます。効果の比較ではなく、使う場所の違いだと考えてください。

剤形 使う場所 主に想定される状態
軟膏(チューブ) 肛門の外側に塗る 外側にふくらみや痛み、かゆみがあるとき
坐薬 肛門の内側に挿入する 内側の症状(出血など)が中心のとき
注入軟膏 細いノズルで内側に注入し、外側にも塗れる 内と外の両方に症状があるとき
内服薬 飲む 血流やうっ血に働きかける目的のもの、漢方など

どの形を選ぶかは「症状が内側にあるか、外側にあるか」で決まります。ただし、自分の症状が内側なのか外側なのかを正確に判断すること自体が、じつはむずかしいのです。内痔核は痛みが出にくいため、「痛いから外側だ」という判断も当てになりません。

迷ったときは、薬剤師さんに声をかけてください。「出血があるのか」「痛みがあるのか」「ふくらみに触れるか」を伝えれば、剤形を選ぶ相談に乗ってもらえます。恥ずかしければ、症状をスマホのメモに書いて見せるだけでも構いません。妊娠中・授乳中の方は、必ずそのことを伝えてください。

よく聞く3つの通説を検証する

痔にまつわる話には、正確でないものも混ざっています。ここでは代表的な3つを、正直に整理します。

通説1「いぼ痔は自然に治る」

半分正しく、半分正しくありません。

妊娠中や出産直後にできたいぼ痔は、原因である骨盤内のうっ血が解消されるにつれて、症状が落ち着いていくことがよくあります。血栓性外痔核も、時間とともに痛みのピークを越えていくのが一般的です。

ただし、脱出するようになった内痔核(3度以上)が自然に元通りになることは期待しにくく、いったんできた皮膚のたるみ(皮垂)も自然には消えません。「症状が落ち着く」ことと「元の状態に戻る」ことは、分けて考える必要があります。

通説2「痔を放っておくと、がんになる」

これは正しくありません。痔が大腸がんに変化することは考えられていません。

ただし、この通説が広まった背景には理由があります。痔だと思って放置していたら、じつは大腸の病気だったというケースが実際にあるからです。危険なのは「痔ががんになること」ではなく、「痔だと思い込んで、別の病気の受診が遅れること」です。この違いは、はっきり分けて理解しておいてください。

通説3「一度なったら、一生つきあうしかない」

これも正確ではありません。

たしかに、痔になりやすい体質や生活条件は簡単には変わりません。妊娠・出産を経験した体では、肛門周辺の血管が以前よりうっ血しやすくなっていることもあります。

けれど、症状が出ている状態と、症状がなく落ち着いている状態は別です。便通が整い、いきまずに排便でき、長時間座り続けない生活ができていれば、痔があっても症状を感じずに過ごしている人はたくさんいます。「治す」ではなく「症状が出ない状態を保つ」というゴール設定のほうが、現実的で達成しやすいのです。

よくある質問

Q いぼ痔は自然によくなりますか?

A.症状の程度によります。妊娠中や出産直後にできたもの、血栓性外痔核などは、原因が解消されるにつれて症状が落ち着いていくことがよくあります。一方で、脱出するようになった内痔核が自然に元に戻ることは期待しにくく、腫れが引いたあとに残る皮膚のたるみも自然には消えません。出血や痛みが2週間以上続くようなら、一度診てもらうことをおすすめします。

Q いぼ痔が出てきたら、どうすればいいですか?

A.清潔な手で、やさしく押し戻して差し支えありません。出たままにしておくと、むくんで戻らなくなったり、血流が悪くなって強い痛みが出ることがあるためです。ただし、無理に強い力で押し込むのは避けてください。押しても戻らない、押すと激しく痛む、色が黒っぽく変わっているという場合は、その日のうちに受診してください。

Q いぼ痔は、ほっといていいですか?

A.痛みも出血もなく、日常生活に支障がないのであれば、急いで何かをする必要はありません。ただし「ほっといていい」と判断するには、それが本当にいぼ痔なのかを確認できていることが前提になります。出血がある場合はとくに、ほかの病気の可能性を確認しておく価値があります。また、出血が続けば貧血につながることもあります。

Q 痔と大腸の病気は、どう見分けますか?

A.症状だけで確実に見分けることはできません。目安として、痔の出血は鮮やかな赤で便の表面に付着し、排便のときだけ出るという特徴があります。一方、血が便に混ざっている、黒っぽい便が出る、便が細くなった、体重が減っているといった場合は、大腸のほうを確認する必要があります。判断できるのは診察と検査だけなので、迷ったら受診してください。

Q 妊娠中や授乳中に、痔の薬は使えますか?

A.自己判断で市販薬を使うのは避け、まず産婦人科や薬剤師に相談してください。妊娠中・授乳中の使用について個別に判断したうえで処方される薬はあります。「授乳中だから何も使えない」と思い込んで我慢し続ける必要はありません。相談するときは、授乳中であること、出産からの期間、症状の内容を伝えるとスムーズです。

Q 産後にできたおしりのふくらみが、なかなか消えません

A.腫れが引いたあとに、皮膚のたるみ(皮垂)だけが残ることはよくあります。痛みも出血もなければ、そのままにしていて差し支えないものです。ただし、痛みや出血が続いている、押しても戻らないという場合は、うっ血以外の要因が残っている可能性があります。産後半年たっても症状が続くようなら、一度受診してください。見た目が気になる場合の対応も相談できます。

Q 生理のたびに、おしりの調子が悪くなります

A.不思議なことではありません。生理前はプロゲステロンの影響で便が硬くなりやすく、生理中はプロスタグランジンの影響で下痢気味になる人もいます。硬い便も、頻回の下痢も、どちらも肛門には負担になります。周期に合わせて、生理前は水分と食物繊維を意識する、生理中は洗いすぎ・拭きすぎに気をつけるなど、備え方を変えておくと違ってきます。

まとめ

痔は、恥ずかしい病気ではありません。二足歩行をして、座って働いて、妊娠して、出産する。その積み重ねの結果として、女性の体にはごく自然に起こりうるものです。

それでも受診をためらってしまうのは、痔そのもののせいというより、痔にまとわりついてきたイメージのせいだと思います。おしりのことを口に出すのは気恥ずかしい。診察が怖い。そう感じるのは当然です。

けれど、実際の診察は数分で終わります。そして多くの場合、最初に提案されるのは手術ではなく、便通を整えることと薬による対応です。何より、「これは痔ですね」と言ってもらえることには、それ自体に大きな価値があります。ひとりで抱えていた不安に、名前がつくからです。

この記事のポイントまとめ
  • 痔はいぼ痔(痔核)・切れ痔(裂肛)・痔ろうの3タイプ。女性に多いのは前の2つ
  • 女性が痔になりやすいのは、生理周期の便秘・妊娠中の骨盤内うっ血・出産のいきみ・冷えや座位という条件が重なるため
  • 内痔核は痛みが出にくく出血で気づく。外痔核は突然の激痛で気づくことが多い
  • おしりの「ぷにぷに」は、皮垂・血栓性外痔核・見張りいぼなど別のものが混同されている。画像での自己判断には限界がある
  • 妊娠中の痔は中期以降に増え、産後は数日〜数週間で症状が落ち着いていくことが多い。ふくらみだけ残ることもある
  • 授乳中でも、相談したうえで使える薬はある。自己判断で我慢しない
  • 血が便に混ざる・黒い便・便が細くなる・体重減少は、痔以外の可能性を確認したいサイン
  • セルフケアの中心は「便をやわらかく保つ」「いきまない」「温める」「洗いすぎない」
  • 受診しても、いきなり手術になることはまずない。診察そのものは数分で終わる

もし今、トイレのなかでこの記事を読んでいるなら。今日は3分でトイレを出て、湯船にお湯をためて、コップ1杯の水を飲むところから始めてみてください。そして、その症状が2週間続いているなら、来週の予定にひとつだけ、受診を書き込んでみてください。

この記事について

femnote 編集部

生理・妊活・フェムケア・更年期など女性の健康に関する情報を、厚生労働省「e-ヘルスネット」や日本産科婦人科学会をはじめとする各学会の診療ガイドラインなど、公的な資料をもとに編集しています。診断や治療の判断については、必ず医療機関にご相談ください。

参考文献

  • 日本大腸肛門病学会「肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱 診療ガイドライン」
  • 日本消化器病学会「患者さんとご家族のためのガイド」
  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」(食物繊維の目標量)
  • 厚生労働省「がん検診(大腸がん検診)について」
  • 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン 産科編」
  • 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」