生理になると、おなかが痛い、体が重だるい、無性に甘いものが食べたくなる――。「こんなとき、何を食べたらいいんだろう?」「食べたい気持ちを我慢できないのは私だけ?」と感じたことはありませんか。じつは生理中の体は、ふだんとは違う栄養を必要としていて、食べるものを少し意識するだけで過ごしやすさが変わってきます。
この記事では、助産師の視点から、生理中に積極的に摂りたい食べ物と控えたい食べ物、そして「食欲が止まらない」「だるくて動けない」といったお悩みを食事でやわらげる工夫を、忙しい人でも実践できる形で丁寧に解説します。我慢ではなく「選んで補う」食べ方を、いっしょに見つけていきましょう。
生理中、食べ物で体調は変わるの?
結論からお伝えすると、生理中の食事は、体調のつらさを「治す」ものではありませんが、症状をやわらげたり、悪化させないようサポートしたりする手助けになります。薬のように劇的に効くわけではないものの、毎月くり返す不調と上手につき合ううえで、食べ物が果たす役割は決して小さくありません。
生理中に起こりやすい不調と栄養の関係
生理中は、子宮内膜がはがれて経血として体の外に出ていきます。このとき、血液とともに鉄分が失われるため、貧血気味になったり、だるさや疲れを感じやすくなったりします。また、生理の前後は女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)が大きく変動し、その影響で気分の波・むくみ・頭痛・食欲の変化などが起こりやすくなります。
こうした変化に対して、失われた栄養を食事で補ったり、症状を強めやすい食べ物を控えたりすることで、体への負担をやわらげることができます。つまり生理中の食事は、「足りなくなるものを補い、刺激になるものを減らす」のが基本の考え方です。
「食べたいのに罪悪感」――生理中の食欲は自然な反応
「生理前から生理中にかけて、どうしても食べすぎてしまう」「甘いものがやめられない自分が嫌になる」という声をよく聞きます。けれど、生理周期にともなう食欲の増加はホルモンの働きによる自然な体の反応であって、あなたの意志が弱いからではありません。
大切なのは、食欲をゼロにしようと無理に我慢することではなく、「何を・どう食べるか」を少し工夫すること。罪悪感を手放して、体の声に寄り添いながら食べ方を整えていきましょう。具体的な工夫は後半のセクションでくわしく紹介します。
生理中に積極的に摂りたい栄養素と食べ物
生理中は、失われやすい栄養を補い、巡りや気分を整える食べ物を意識して取り入れたい時期です。ここでは、特に意識したい6つの栄養素と、それを多く含むおすすめの食べ物を紹介します。
① 鉄分|経血で失われる鉄を補う
生理中に最も意識したいのが鉄分です。経血とともに鉄が失われるため、生理のある女性は鉄が不足しやすく、だるさ・疲れやすさ・立ちくらみなどにつながることがあります。
鉄分には、肉や魚に多い「ヘム鉄」と、野菜や豆に多い「非ヘム鉄」の2種類があり、ヘム鉄のほうが体に吸収されやすいのが特徴です。
- ヘム鉄(吸収されやすい):レバー、赤身の肉、かつお・まぐろ、あさり・しじみ
- 非ヘム鉄:小松菜、ほうれん草、ひじき、納豆・大豆製品、切り干し大根
非ヘム鉄は、後述するビタミンCやたんぱく質といっしょに摂ると吸収率が高まります。「小松菜のおひたしに鶏肉を添える」「納豆にしらすをのせる」といった組み合わせがおすすめです。
② たんぱく質|鉄の吸収を助け、だるさ対策に
たんぱく質は、筋肉や血液の材料になる大切な栄養素です。鉄の吸収を助ける働きもあるため、鉄分とセットで摂りたい栄養素です。肉・魚・卵・大豆製品・乳製品をバランスよく取り入れましょう。とくに生理中は、消化にやさしい鶏肉・白身魚・豆腐・卵などが取り入れやすくおすすめです。
③ マグネシウム|筋肉の収縮をやわらげる
マグネシウムは、筋肉の緊張をゆるめる働きがあるミネラルで、生理痛の原因となる子宮の過剰な収縮をやわらげるサポートが期待されます。ナッツ類(アーモンド・カシューナッツ)、海藻(わかめ・ひじき)、大豆製品、玄米などに多く含まれます。間食をナッツに置きかえるのも手軽な方法です。
④ ビタミンB6|気分の波・むくみケアに
ビタミンB6は、気分の安定に関わる神経伝達物質の合成に関わる栄養素で、生理前後のイライラや落ち込み、むくみのケアに役立つといわれています。まぐろ・かつお・鮭などの魚、鶏むね肉、バナナ、さつまいもなどに多く含まれます。バナナは手軽に摂れて間食にも向いています。
⑤ ビタミンC|植物性の鉄の吸収率を高める
ビタミンCは、吸収されにくい非ヘム鉄を吸収しやすい形に変えてくれる、鉄分の「サポート役」です。野菜や豆から鉄を摂るときは、ビタミンCを多く含む食材を組み合わせましょう。ブロッコリー、パプリカ、キウイ、いちご、柑橘類などがおすすめです。食後にフルーツを少し添えるだけでも効果的です。
⑥ オメガ3脂肪酸|青魚やえごま油で巡りをサポート
青魚(さば・いわし・さんま)に多く含まれるオメガ3脂肪酸(EPA・DHA)は、体内の炎症や巡りに関わる成分で、生理中の不快感をやわらげるサポートが期待されています。えごま油・あまに油などにも含まれます。サバ缶を常備しておくと、忙しい日でも手軽に取り入れられます。
温かい食べ物・飲み物で体を冷やさない
栄養素とあわせて意識したいのが「温度」です。体が冷えると血行が悪くなり、生理痛が強くなりやすいといわれています。温かいスープや味噌汁、生姜入りの飲み物、ハーブティーなどで体の中から温めましょう。冷たい飲み物をがぶ飲みするより、常温〜温かいものを選ぶのがおすすめです。生理痛そのものの和らげ方は生理痛を和らげる方法でくわしく解説しています。
「生理中に何を飲めばいい?」と迷ったときは、次を目安にしてみてください。
- おすすめ:白湯、生姜湯、ルイボスティー、たんぽぽ茶、麦茶(ノンカフェイン)、ココア(無糖〜微糖)、ハーブティー(カモミールなど)
- 控えたい:濃いコーヒー・エナジードリンク(カフェイン)、キンキンに冷えた清涼飲料水(冷え・糖分)、アルコール
カフェインが好きな方も、ノンカフェインのお茶を1〜2種類常備しておくと、生理中の切りかえがぐっとラクになります。温かい飲み物は、痛みやだるさで気持ちがふさいだときの心のケアにもなります。
生理中に控えたい・摂りすぎ注意の食べ物
生理中は、症状を強めやすい食べ物や飲み物を「摂りすぎない」ことも大切です。完全に断つ必要はありませんが、つらい日は少し控えると過ごしやすくなります。
カフェイン(コーヒー・濃い緑茶・エナジードリンク)
カフェインには血管を収縮させる作用があり、摂りすぎると血行が悪くなって生理痛が強くなることがあります。また、鉄分の吸収をさまたげるともいわれています。コーヒーが好きな方は、生理中は1日1〜2杯程度にとどめ、食事の直後は避けてカフェインレスのものに切りかえるのもおすすめです。
砂糖・甘いもの(血糖値の乱高下に注意)
甘いものを一気にたくさん食べると血糖値が急上昇し、その後急降下することで、かえって食欲やだるさ、気分の波が強まることがあります。甘いものを完全に我慢する必要はありませんが、「少量を、ゆっくり」が基本。チョコレートなら、砂糖の少ない高カカオタイプを選ぶとマグネシウムも摂れて一石二鳥です。
塩分の多い食べ物(むくみ対策)
生理前後はただでさえむくみやすい時期です。スナック菓子・インスタント食品・濃い味つけの料理など塩分の多いものを摂りすぎると、むくみが悪化しやすくなります。だしや酸味、香味野菜を活用して、薄味でも満足できる工夫をしてみましょう。
冷たい食べ物・飲み物
アイスや冷たいドリンク、生野菜ばかりの食事は体を冷やし、血行を悪くして生理痛につながることがあります。サラダを食べるなら温野菜にする、飲み物は常温にするなど、できる範囲で「冷やさない」を意識しましょう。
アルコール
生理中はアルコールの分解能力が落ちやすく、いつもより酔いやすかったり、むくみや経血量に影響したりすることがあります。飲む場合は量をひかえめにし、水分もしっかり摂りましょう。
ここで挙げた食べ物も、少量を楽しむぶんには問題ありません。大切なのは「我慢」ではなく「摂りすぎない・つらい日は控える」というバランスです。ストイックになりすぎてストレスをためるほうが、かえって体には負担になります。
「生理中の食欲が止まらない」ときの食べ方の工夫
「生理前から生理中にかけて食欲が止まらない」というのは、とても多いお悩みです。ここでは、その理由と、我慢に頼らない食べ方の工夫を紹介します。
なぜ生理前~生理中は食欲が増すのか
生理前は、女性ホルモンの一種であるプロゲステロンが増える時期です。このホルモンには食欲を高めたり、血糖値を不安定にさせたりする働きがあり、その影響で「甘いものや炭水化物が無性に食べたくなる」という変化が起こります。これは体の自然な仕組みであり、意志の弱さではありません。生理前のこうした変化についてはPMS(月経前症候群)でもくわしく解説しています。
我慢より「選び方」――間食におすすめの食べ物
食欲を無理に抑えこむと、反動でドカ食いにつながりがちです。食べたい気持ちは受け止めたうえで、「何を食べるか」を選びましょう。
- 素焼きナッツ:マグネシウムや良質な脂質が摂れ、少量で満足感がある
- 高カカオチョコレート:甘いものが欲しいときに。マグネシウムも補える
- ヨーグルト・チーズ:たんぱく質とカルシウムが摂れる
- バナナ・ドライフルーツ:ビタミンB6やミネラル、自然な甘み
- 温かい飲み物:白湯やハーブティーで気持ちを落ち着ける
血糖値をゆるやかにする食べ方のコツ
食欲やだるさの波には、血糖値の急変動が関わっています。次のような食べ方で血糖値をゆるやかに保つと、ドカ食いや食後の眠気を防ぎやすくなります。
- 食べる順番を意識する:野菜・汁物 → たんぱく質 → 主食(ごはん・パン)の順で食べる
- よく噛んでゆっくり食べる:満腹を感じやすくなり、食べすぎを防げる
- 空腹を作りすぎない:3食を抜かず、間食もうまく使って血糖値の急降下を避ける
- 主食を完全に抜かない:極端な糖質制限はかえって甘いものへの渇望を強めることがある
PMS時期の食事の整え方はPMSを食事で和らげる方法でさらにくわしく紹介しています。あわせて読むと、生理前から生理中まで通した食事の工夫がわかります。
「生理中のだるさ・眠気」を食事でやわらげるには
「生理中はとにかく体が重い」「日中も眠くてつらい」――このだるさにも、食事でアプローチできる部分があります。
鉄不足によるだるさをチェック
生理中のだるさの背景には、鉄分の不足が隠れていることがあります。次のような症状が思い当たる場合は、鉄が不足している可能性があります。
- 立ちくらみ・めまいがする
- 少し動いただけで息切れ・動悸がする
- 顔色が悪い、まぶたの裏が白っぽい
- 疲れやすく、日中も強い眠気がある
- 氷をガリガリ食べたくなる(氷食症)
こうした症状が毎月強く出る、経血量が多くてだるさがつらいという場合は、鉄欠乏性貧血が隠れていることもあります。食事だけで改善しないときは、自己判断でサプリに頼りきらず、一度婦人科や内科で相談してみましょう。生理中のだるさや眠気のメカニズムは生理前の眠気・だるさでもくわしく解説しています。
だるい日の簡単メニュー例(作り置き・コンビニ活用)
だるくて料理をする気力がない日は、無理をせず、手軽に栄養を摂れる選択肢を活用しましょう。「ちゃんと作らなきゃ」と気負わなくて大丈夫です。
- コンビニ:サラダチキン+おにぎり+具だくさん味噌汁、ゆで卵、ほうれん草のおひたし、サバの塩焼きパック
- 作り置き:ひじきの煮物、小松菜と油揚げの煮びたし、ゆで卵をまとめて作る
- あたためるだけ:レトルトの豆スープ、冷凍のほうれん草を味噌汁に追加
- のせるだけ:納豆+しらす、卵かけごはん+のり
ポイントは「鉄分・たんぱく質・温かさ」をどれか一つでも意識すること。完璧を目指さず、できることから取り入れれば十分です。
生理中の1日の食事メニュー例
「結局、何をどう組み合わせればいいの?」という方のために、ここまで紹介した栄養素を取り入れた1日のメニュー例を紹介します。あくまで一例なので、無理のない範囲で参考にしてください。
- 朝:納豆ごはん+しらす+わかめの味噌汁+バナナ(鉄分・たんぱく質・ビタミンB6)
- 昼:鮭おにぎり+ほうれん草の和え物+具だくさんスープ+キウイ(鉄分・ビタミンC)
- 間食:素焼きナッツ+高カカオチョコ+温かいルイボスティー(マグネシウム・気分転換)
- 夜:あさりと小松菜の生姜スープ+豆腐+玄米ごはん+温野菜(鉄分・温活・マグネシウム)
すべてをそろえる必要はありません。「味噌汁を一品足す」「間食をナッツに変える」など、できそうなものを一つ取り入れるだけでも、体は応えてくれます。料理がしんどい日は、前のセクションのコンビニ活用例に頼ってくださいね。
生理周期に合わせた食事のヒント
体の状態は生理中だけでなく、周期を通して変化します。周期に合わせて食事を意識すると、生理中をより快適に迎えやすくなります。
- 生理中(月経期):鉄分・たんぱく質を補い、体を温める。冷たいもの・刺激物は控えめに
- 生理後(卵胞期):体調が回復しやすい時期。バランスのよい食事で次の周期に備える
- 排卵期:体調が安定しやすい。新しい食習慣を始めるのに向く
- 生理前(黄体期):食欲・むくみが出やすい。血糖値をゆるやかに保ち、塩分・糖分を摂りすぎない
自分の周期を把握しておくと、「そろそろ食欲が増える時期だな」と心の準備ができ、食事の調整もしやすくなります。周期の数え方や基礎知識は生理周期の基礎知識を参考にしてください。生理が不規則で周期がつかみにくい方は生理不順の原因と改善もあわせてどうぞ。
よくある質問
Q 生理中にチョコレートを食べてもいいですか?
A.食べても問題ありません。むしろ高カカオチョコレートにはマグネシウムが含まれ、生理中に向いた間食といえます。ただし砂糖の多いものを大量に食べると血糖値が乱れやすいので、少量を楽しむのがおすすめです。
Q 生理中に食欲がなくて食べられないときはどうすれば?
A.無理に固形物を食べる必要はありません。味噌汁・スープ・おかゆ・ヨーグルト・バナナなど、消化がよく口にしやすいもので少しずつ栄養を摂りましょう。水分補給も忘れずに。食欲不振が長く続く場合や体重が大きく減る場合は、医療機関に相談してください。
Q 食事だけで足りない栄養は、サプリで補ってもいいですか?
A.食事を基本にしつつ、補助としてサプリを使うのは選択肢のひとつです。ただし鉄分は摂りすぎると不調の原因になることもあるため、とくに貧血が疑われる場合は自己判断で大量に摂らず、医療機関で適切な量を相談するのが安心です。
Q 生理中は太りやすい・痩せやすいって本当ですか?
A.生理前~生理中はむくみで一時的に体重が増えやすいですが、これは水分によるもので脂肪が増えたわけではありません。生理が終わると自然に戻ることが多いので、この時期の体重の増減に一喜一憂しなくて大丈夫です。ダイエットは体調が安定する生理後に取り組むのがおすすめです。
Q 甘いものがどうしてもやめられません。意志が弱いのでしょうか?
A.意志の問題ではありません。生理前後の食欲はホルモンの変化による自然な反応です。我慢ではなく、高カカオチョコやナッツ、フルーツなど質のよいおやつに置きかえる、よく噛んでゆっくり食べるといった工夫で十分つき合っていけます。自分を責めないでくださいね。
まとめ
生理中の食事は、つらい症状を「治す」ものではありませんが、失われた栄養を補い、症状を悪化させない手助けになります。大切なのは、完璧を目指して我慢することではなく、「足りなくなるものを補い、刺激になるものは控えめに」という小さな意識の積み重ねです。
- 生理中は鉄分・たんぱく質・マグネシウム・ビタミンB6/Cを意識して補う
- 体を温める食べ物・飲み物を選び、冷たいもの・刺激物は控えめに
- カフェイン・砂糖・塩分・アルコールは「摂りすぎない」のがコツ
- 生理中の食欲増加はホルモンによる自然な反応。我慢より「選び方」を工夫する
- だるい日はコンビニ・作り置きを活用。だるさが強いときは鉄不足も疑い受診を
毎月の生理を、少しでも心地よく過ごせますように。食べ物は、あなたの体をいたわる身近な味方です。できることから、気負わずに取り入れてみてくださいね。
参考文献
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「鉄・カルシウム」「女性の健康・月経周期」
- 公益社団法人 日本産科婦人科学会「月経困難症・月経前症候群について」
- 公益財団法人 日本鉄バイオサイエンス学会「鉄剤の適正使用による貧血治療指針」