「ピルを使ってみたいけど、種類が多すぎて何が何だかわからない」——そんな声をよく耳にします。

友人が「ピルを飲んでいる」と言っても、それが避妊目的なのか生理痛の治療なのか、どの種類のピルなのかはわからない。さらに「アフターピル」「ミニピル」「LEP」など、聞き慣れない言葉も次々と出てきて混乱してしまう方も多いようです。

この記事では、日本で使用されるピルの種類を大分類から整理し、それぞれの特徴・目的・代表的な製品名・費用目安を一覧でわかりやすくまとめます。「自分の状況にはどのピルが向いているのか」の判断の助けになれば幸いです。

そもそも「ピル」とは何か

「ピル(pill)」は本来「錠剤」を意味する英語ですが、医療の文脈では女性ホルモン(エストロゲンとプロゲスチン)を含む経口避妊薬・治療薬の総称として使われています。

ピルに含まれるホルモンの種類と量によって、用途や効果・副作用が大きく異なります。大きく分けると「エストロゲン+プロゲスチン配合」のものと、「プロゲスチン単剤(エストロゲンなし)」のものに分類されます。

ピルは処方薬です 日本ではすべてのピルが医師の処方が必要な処方薬です。薬局では購入できません。婦人科またはオンライン診療で医師の診察・処方を受けてから使用してください。

【一覧表】ピルの種類と特徴まとめ

まずは全体像を一覧表で確認しましょう。

種類 含まれるホルモン 主な目的 保険適用 月額費用目安
低用量ピル エストロゲン+プロゲスチン 避妊・月経管理 なし(自費) 1,500〜3,500円
超低用量ピル・LEP エストロゲン+プロゲスチン 月経困難症・子宮内膜症の治療 あり(3割負担) 500〜1,500円(保険)
中用量ピル エストロゲン+プロゲスチン 生理日移動・過多月経治療 治療目的は一部あり 1,000〜3,000円
アフターピル(緊急避妊薬) レボノルゲストレル(プロゲスチン高用量) 緊急避妊(72時間以内) なし(自費) 6,000〜15,000円(1回)
ミニピル プロゲスチン単剤(エストロゲンなし) 避妊(エストロゲンを避けたい場合) なし(自費) 3,000〜4,000円
白い背景にコルク栓の透明ガラス瓶5本がカモミールの花と白い小石に囲まれて並ぶ。ピルの成分・種類の違いを象徴するフラットレイ

低用量ピル——避妊・治療に最も広く使われるタイプ

低用量ピルは、エストロゲン(EE:エチニルエストラジオール)30〜35μgとプロゲスチンを組み合わせた薬です。日本で「ピル」と言ったときに最もよくイメージされるタイプで、主に避妊目的で自費処方されます。

正しく服用した場合の避妊効果は99.7%以上とされており、性行為のたびに準備する必要がなく、計画的に使えることが利点です。

一相性と三相性の違い

低用量ピルはホルモン量のパターンによって「一相性」と「三相性」に分かれます。

  • 一相性:21錠すべてが同じホルモン量。飲み方がシンプルで、初めての方に選ばれやすい。
  • 三相性:3段階でホルモン量が変化する設計。自然な周期に近い状態を意識した構造だが、飲み忘れ時の対処がやや複雑。

詳しい製品ごとの比較は「低用量ピルの種類と選び方」をご覧ください。

代表的な製品名と費用目安

製品名 タイプ 先発/後発 月額費用目安(自費)
マーベロン28 一相性 先発品 約2,500〜3,500円
ファボワール28 一相性 後発品(ジェネリック) 約1,500〜2,500円
トリキュラー28 三相性 先発品 約2,500〜3,500円
アンジュ28 三相性 後発品 約1,500〜2,500円

副作用(吐き気・不正出血・頭痛など)については「低用量ピルの副作用」でくわしく解説しています。飲み忘れた場合の対処法は「ピルを飲み忘れたときの対処法」をご覧ください。

超低用量ピル・LEP——月経困難症・子宮内膜症の治療に

超低用量ピルは、エストロゲン量がEE 20μg以下に抑えられたピルです。「LEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)」という医学的な分類に含まれ、月経困難症・子宮内膜症の治療薬として保険適用があります

低用量ピルと比べてエストロゲン量が少ないため、吐き気・頭痛などのエストロゲン関連副作用が出にくいとされますが、不正出血(消退出血)が起こりやすい傾向があります。

保険適用になるケースとは

「月経困難症」または「子宮内膜症」と婦人科で診断された場合、LEPは保険適用(3割負担)になります。月額自費の約5分の1〜3分の1程度まで費用が下がることもあります。

ただし、避妊目的での使用には保険は適用されません。「治療と避妊を兼ねたい」という場合は医師に相談しましょう。

製品名 EE量 主な適応症 先発/後発
ルナベルULD 20μg(超低用量) 月経困難症 先発品
フリウェルULD 20μg(超低用量) 月経困難症 後発品
ジェミーナ 20μg(超低用量) 月経困難症 先発品
ヤーズ 20μg(超低用量) 月経困難症・子宮内膜症 先発品
ドロエチ 20μg(超低用量) 月経困難症・子宮内膜症 後発品

中用量ピル——生理日移動・緊急対応に限定的に使われるタイプ

中用量ピルは、エストロゲン量がEE 50μgと低用量ピルの約1.5倍含まれるピルです。「プラノバール」が代表的な製品で、主に生理日をずらす(遅らせる・早める)目的で使われます。

低用量ピルと比べてホルモン量が多いため、吐き気などの副作用が出やすい傾向があります。旅行・試験・イベントの前に婦人科で処方してもらうのが一般的な使い方です。

生理日の移動方法と中用量・低用量ピルの違いについては「生理を遅らせる・早める方法」で詳しく解説しています。

中用量ピルは継続服用には向いていません 中用量ピルは生理日移動や過多月経など、限定的な目的のために短期間だけ使用するものです。毎月の避妊目的では使用しません。
白い大理石の上にラベンダーの束・白磁の小皿に入った丸い石・カモミールの花が散らばるフラットレイ。婦人科ケアとナチュラルウェルネスのイメージ

アフターピル——性行為後72時間以内の緊急避妊に

アフターピル(緊急避妊薬)は、避妊に失敗した・または避妊しなかった性行為の後に、妊娠を防ぐ目的で使用する緊急避妊薬です。「モーニングアフターピル」とも呼ばれます。

主成分はレボノルゲストレル(プロゲスチンの高用量)で、排卵を抑制・遅延させることで妊娠を防ぐとされています。

製品名 服用タイミング 避妊成功率の目安 費用目安(1回)
ノルレボ(先発) 性行為後72時間以内(早いほど高効果) 72時間以内で約58〜95% 6,000〜15,000円
エラワン(ウリプリスタル酢酸塩) 性行為後120時間(5日)以内 ノルレボより若干高い 10,000〜20,000円
アフターピルは定期的な避妊手段ではありません アフターピルはあくまで緊急時の選択肢です。定期的な避妊には低用量ピルやコンドームなど、継続的な手段を選びましょう。アフターピルは副作用(吐き気・不正出血・頭痛など)が強く出やすく、毎月使うことは推奨されません。

アフターピルの効果・時間帯別の成功率・飲んだ後の過ごし方については「アフターピルの効果と確率」でくわしく解説しています。

ミニピル——エストロゲンを含まない選択肢

ミニピルは、エストロゲンを含まずプロゲスチン(合成黄体ホルモン)のみからなる経口避妊薬です。日本では「セラゼッタ」(成分:デソゲストレル75μg)が唯一処方可能な製品です。

エストロゲンによる副作用が心配な方、授乳中でエストロゲン製剤が使いにくい方などに選択肢として挙がります。

比較項目 低用量ピル ミニピル(セラゼッタ)
ホルモン エストロゲン+プロゲスチン プロゲスチンのみ
避妊効果 99.7%以上 99%以上
服用タイミング 12時間以内 3時間以内(厳格)
不正出血 比較的少ない 起こりやすい
月額費用(自費) 約1,500〜3,500円 約3,000〜4,000円

ミニピルは服用タイミングが3時間以内と低用量ピルより厳格なため、生活リズムが一定でない方には不向きな面があります。「エストロゲンを避けたい明確な理由がある」場合に、医師と相談しながら検討する選択肢です。

目的・状況別:どのピルが向いているか

「自分にはどのピルが向いているのか」は、最終的には医師が診察・問診をもとに判断します。以下は判断の参考として整理したものです。

目的・状況 向いているタイプ 相談先
毎日の避妊に使いたい 低用量ピル 婦人科・オンライン診療
生理痛・月経困難症がつらい 超低用量ピル・LEP(保険適用) 婦人科
子宮内膜症の治療と避妊を兼ねたい ヤーズ・ドロエチ(LEP) 婦人科
旅行・試験に合わせて生理日をずらしたい 中用量ピル(短期使用) 婦人科(2週間前までに)
避妊に失敗した・避妊しなかった(緊急時) アフターピル 婦人科・オンライン診療(72時間以内に)
エストロゲンを避けたい(授乳中など) ミニピル(セラゼッタ) 婦人科
費用をできるだけ抑えたい ジェネリック低用量ピル or 保険適用LEP 婦人科(ジェネリック希望と伝える)
「どれがいいかわからない」は婦人科に全部話してOK 「避妊もしたいし、生理痛もなんとかしたい」「費用を抑えたい」「副作用が怖い」——そのまま伝えてください。医師があなたの優先事項と体質に合ったピルを提案してくれます。

よくある質問

Q 低用量ピルとアフターピルは別物ですか?

A.まったくの別物です。低用量ピルは毎日飲む継続的な避妊薬で、正しく飲み続けることで高い避妊効果を発揮します。アフターピルは避妊に失敗した後に服用する緊急避妊薬で、1回限りの使用を前提としています。アフターピルは副作用も強く、毎日の避妊手段として使うことはできません。

Q ピルは婦人科に行かないと処方してもらえませんか?

A.低用量ピルやアフターピルは、オンライン診療でも処方が可能です。スマートフォンで予約・診察・処方まで完結し、自宅に郵送されるサービスも増えています。ただし、治療目的(保険適用)のLEPは対面診察が必要なケースが多く、オンライン処方の範囲はサービスによって異なります。

Q 低用量ピルと超低用量ピルはどちらが体に優しいですか?

A.一概に「どちらが体に優しい」とは言えません。超低用量ピルはエストロゲン量が少なく吐き気・頭痛などが出にくいとされますが、不正出血が起こりやすい傾向があります。副作用の出方は個人差が大きく、どちらが合うかは試してみないとわからない部分もあります。気になる症状があれば、遠慮なく医師に相談しましょう。

Q ピルを飲んでいると生理はどうなりますか?

A.低用量ピルや超低用量ピルを服用中は、「消退出血(薬の休薬期間中に起こる出血)」が生理の代わりに起こります。消退出血は本来の生理より量が少なく・期間が短くなることが多いとされています。ピル服用中は本来の意味での「排卵・月経」は起こらないため、生理痛の改善が期待されます。

Q ピルを飲むと太りますか?

A.現代の低用量ピルでは、「ピルによる体重増加」の科学的なエビデンスは限られています。服用初期にむくみ・胸の張りを感じる方がいますが、これは一時的なものが多く、継続服用で落ち着くケースがほとんどです。体重の変化は個人差が大きく、気になる場合は医師に相談してください。

まとめ:ピルの種類を知って、自分に合った選択を

この記事のポイントまとめ
  • ピルには低用量・超低用量(LEP)・中用量・アフターピル・ミニピルの5種類がある
  • 低用量ピルは毎日服用する継続的な避妊薬(月額約1,500〜3,500円・自費)
  • 超低用量ピル・LEPは月経困難症・子宮内膜症に保険適用あり(月額500〜1,500円程度)
  • 中用量ピルは生理日移動など短期限定で使用するタイプ
  • アフターピルは緊急時のみ使用する緊急避妊薬(定期的な避妊手段ではない)
  • ミニピルはエストロゲンなしの選択肢だが服用タイミングが厳格(3時間以内)
  • どのピルが向いているかは婦人科で目的・体質を伝えて相談するのがベスト

ピルは「一種類しかない薬」ではなく、目的・体質・状況によって使い分けるものです。「この薬は自分に合うのかな?」と不安な気持ちがある方も、まずは婦人科で正直に話してみてください。あなたの状況に合った選択肢を、一緒に見つけてもらえます。

この記事を書いた人

白石まい(助産師・フェムテックエキスパート)

産婦人科病院で13年間、助産師として延べ2,000件以上の分娩に立ち会う。生理・妊活・更年期など、女性のライフステージに寄り添った健康相談を得意とする。現在はフリーランス助産師として活動しながら、フェムテックエキスパートとして「女性が自分の体をもっと好きになれる社会」を目指してfemnoteで情報を発信中。

参考文献

  • 日本産科婦人科学会・日本女性医学学会「OC・LEPガイドライン2020年度版」
  • 厚生労働省「低用量経口避妊薬の適正使用に関するガイドライン」
  • Trussell J. Contraceptive failure in the United States. Contraception. 2011;83(5):397-404.
  • WHO「Medical Eligibility Criteria for Contraceptive Use」5th edition, 2015.
  • 各製品添付文書:ノルレボ錠・プラノバール・セラゼッタ・ヤーズ・ルナベルULD(各製薬会社)