妊娠検査薬で陽性が出て、妊娠初期症状にも慣れてきたころ、次に気になるのが「いつから休めるんだろう」ではないでしょうか。
調べると日数の説明はたくさん出てきます。けれど実際にいちばん多く聞かれるのは、「制度どおりに休めなかった」という話です。切迫早産で予定より1か月早く休職になった方、つわりがひどくて産休を待たずに休んだ方——めずらしくありません。
この記事では、制度上の日付を正確に押さえたうえで、実際にはそこからどうずれるのかまで書きます。ずれることを知っておくと、備え方が変わります。
産休はいつから|出産予定日の6週間前から
産休は産前休業と産後休業の2つに分かれています。それぞれ根拠になる法律も、性質も違います。
| 産前休業 | 産後休業 | |
|---|---|---|
| 期間 | 出産予定日を含めて6週間前から(42日) | 出産の翌日から8週間(56日) |
| 双子以上のとき | 14週間前から(98日) | 同じく8週間 |
| 取り方 | 本人が請求して取るもの。希望すれば直前まで働けます | 請求は不要。会社は働かせてはいけません |
| 例外 | —— | 産後6週間を過ぎて、本人が希望し医師が認めれば就業可 |
産前休業は「権利」であって「義務」ではありません。請求しなければ始まらず、本人が働きたいなら出産直前まで働けます。
いっぽう産後8週間は法律上の就業禁止で、こちらは本人が希望しても原則として働けません。産後6週間を過ぎたあとだけ、本人の希望+医師の許可があれば例外的に働けます。
日数の早見表
出産予定日を基準にした目安です。予定日そのものを1日目として数えます。
| 時期 | 状態 |
|---|---|
| 妊娠33週まで | 通常勤務(体調に問題がなければ)妊娠8ヶ月・9ヶ月の過ごし方も参考に |
| 妊娠34週0日ごろ | 産前休業に入れる時期。予定日の42日前にあたります |
| 妊娠40週0日 | 出産予定日 |
| 出産の翌日から8週間 | 産後休業 |
| その後 | 育児休業へ |
週数の数え方があいまいな方は妊娠週数の数え方もあわせてご覧ください。
自分の産休開始日の数え方
手順は3つです
- ① 出産予定日をカレンダーに書く
- ② 予定日を1日目として、さかのぼって42日目を探す
- ③ その日から産前休業に入れます
ざっくり言えば「予定日の約6週間前」=妊娠34週ごろです。厚生労働省のサイトに自動計算のツールもあります。
| 出産予定日 | 産前休業に入れる日(目安) |
|---|---|
| 4月1日 | 2月19日ごろ |
| 7月1日 | 5月21日ごろ |
| 10月1日 | 8月21日ごろ |
予定日がずれたらどうなるか
実際に予定日ちょうどに生まれる方はごくわずかです。ずれたときの扱いは、次のようになります。
| ずれ方 | どうなるか |
|---|---|
| 予定日より早く生まれた | 産前休業はその日で終わり、翌日から産後休業。産前が短くなります |
| 予定日より遅れた | 遅れた分も産前休業として扱われます。産後8週間は変わりません |
予定日を過ぎると「産休を使い切ってしまうのでは」と心配される方が多いのですが、産後の8週間は出産日を起点に数えるので、そこは削られません。
むしろ早く生まれたときのほうが、産前の休みは短くなります。「予定日まで働いてから休もう」と考えていると、休めないまま出産を迎えることがあります。
制度上の日付と、実際に休み始める日は違います
ここがこの記事でいちばん書きたかったところです。
産休の説明は、どこを見ても「予定日の6週間前から」で終わっています。けれど実際には、その日まで働けるとはかぎりません。
体調で前倒しになることがあります
| 起こりうること | 働き方への影響 |
|---|---|
| 切迫早産 | 自宅安静や入院になることがあります。産休より早く働けなくなります |
| 重いつわり | 妊娠初期に働けない時期が出ることがあります(つわり) |
| 妊娠高血圧症候群 | 安静や入院が必要になることがあります(妊娠高血圧症候群) |
| 貧血・強い疲労 | 通勤や立ち仕事がつらくなることがあります |
| 前置胎盤など | 早い段階から就業制限になることがあります |
切迫早産で早く休むことになった方から、「産休までのつもりで計算していたので、収入の見込みが崩れた」という話をよく聞きます。
妊娠中に働けなくなる可能性は、誰にでもあります。その前提で、下に書く制度を先に知っておいてください。
産休より前に休むときに使えるもの
| 使えるもの | 内容 |
|---|---|
| 有給休暇 | いちばん使いやすい。ただし日数に限りがあります |
| 母性健康管理指導事項連絡カード | 医師の指導内容を会社に伝える公的な書式。時差通勤・作業の制限・休業などを求められます |
| 傷病手当金 | 病気やけがで働けないときの健康保険の給付。切迫早産などで休むときに対象になることがあります |
| 時短勤務・在宅勤務 | 会社の制度によります。まず相談を |
正式名称を「母性健康管理指導事項連絡カード」といいます。医師や助産師が記入し、会社はその内容にそって対応する義務があります。
「つらいけれど自分から言い出しにくい」というときに、いちばん確実な方法です。母子健康手帳に様式が載っていることが多く、厚生労働省のサイトからも入手できます。健診のときに「カードを書いてほしい」と伝えてください。
逆に、ぎりぎりまで働きたい場合
産前休業は請求して取るものなので、体調に問題がなければ直前まで働くこともできます。ただし2点だけ確認しておいてください。
- 通勤そのものが負担になっていないか——満員電車は妊娠後期にはかなりこたえます(妊娠10ヶ月)
- 急に入院になったときの引き継ぎができているか——予定どおりに休めるとはかぎりません
育休はいつから、いつまで
産後休業が終わった翌日から、育児休業(育休)に切り替わります。
| 内容 | |
|---|---|
| いつから | 産後休業の翌日(出産の翌日から57日目) |
| いつまで | 原則として子どもが1歳になる誕生日の前日まで |
| 延長できる場合 | 保育所に入れないなどの事情があれば、1歳6か月・最長2歳まで |
| 分割 | 2回に分けて取れます(2022年10月から) |
| 父親の場合 | 産後8週間以内に、別枠で最大4週間取れる制度があります |
産後8週間以内に取れる産後パパ育休(出生時育児休業)が2022年10月に始まり、通常の育休とは別枠で最大4週間、2回に分けて取れるようになりました。
産後の8週間は、母体がもっとも回復を必要とする時期です(悪露・産後うつ)。ここに人手があるかどうかで、その後の回復がかなり変わります。パートナーと早めに話しておいてください。
お金|産休・育休中に受け取れるもの
給料は止まりますが、代わりに受け取れるものがあります。4つに整理します。
| 名前 | 時期 | おおよその金額 | どこから |
|---|---|---|---|
| 出産育児一時金 | 出産したとき | 子ども1人あたり50万円 | 健康保険 |
| 出産手当金 | 産休中 | 給料のおよそ3分の2 | 健康保険 |
| 育児休業給付金 | 育休中 | はじめの半年は約67%、その後は約50% | 雇用保険(ハローワーク) |
| 社会保険料の免除 | 産休・育休中 | 厚生年金・健康保険料が免除 | 申し出により |
給付金には所得税がかからず、さらに社会保険料も免除になるためです。額面の67%でも、手取りで比べると8割前後になることがあります。
なお2025年4月からは両親がともに育休を取る場合に給付が上乗せされる制度も始まりました。条件が細かいので、必ず勤務先か最新の公的情報で確認してください。
いちばんの落とし穴は「振り込まれる時期」です
出産手当金も育児休業給付金も、申請してから振り込まれるまでに時間がかかります。産休に入ってすぐ入金される、というものではありません。
目安として出産手当金は産後の申請から1〜2か月、育児休業給付金は初回が育休開始から2〜3か月後になることが多く、その間は収入がない状態になります。
数か月分の生活費を先に確保しておいてください。ここを知らずに家計が苦しくなる方が本当に多い部分です。
対象にならないことがある人
| 立場 | 考え方 |
|---|---|
| 自営業・フリーランス | 出産手当金・育児休業給付金は対象外です。出産育児一時金は受け取れます。国民年金保険料の産前産後免除もあります |
| パート・契約社員 | 加入している保険や勤務期間の条件によります。まず勤務先に確認を |
| 扶養に入っている | 出産手当金は対象外のことがあります。出産育児一時金は受け取れます |
| 退職する場合 | 条件によっては受け取れることがあります。辞める前に確認してください |
金額や条件は改正されることがあります。この記事は考え方の地図として使い、最終的な金額・条件は勤務先の担当部署、健康保険組合、ハローワーク、厚生労働省のサイトで確認してください。
手続きの流れとスケジュール
手続きの多くは会社がやってくれます。自分でやることは、それほど多くありません。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 妊娠がわかったら | まず直属の上司へ報告。体調が不安定な時期こそ早めに |
| 妊娠4〜5か月ごろ | 会社の担当部署に、産休・育休の希望を伝える |
| 妊娠6〜7か月ごろ | 産休・育休の申請書を出す。引き継ぎの計画を立てる |
| 妊娠8〜9か月ごろ | 引き継ぎを進める。急に入院しても困らない形にしておく |
| 産前休業(34週ごろ) | 産休開始 |
| 出産後 | 出産の報告。出産手当金・一時金の手続き(帝王切開だった場合は高額療養費も確認) |
| 産後8週間経過後 | 育休開始。育児休業給付金の申請(この時期の体の回復は会陰切開の記事も参考に) |
| 復職の3〜4か月前 | 保育所の申し込み。復職日の相談 |
産休の直前に急に入院になる方は、決してめずらしくありません。「産休までに終わらせよう」だと間に合わないことがあります。
早めに形にしておけば、体調を優先しやすくなります。これは仕事のためというより、自分のためです。
職場への伝え方
いつ、誰に言うか
順番は「直属の上司が先」です。同僚から伝わると、あとで気まずくなることがあります。
「安定期に入ってから」と言われることもありますが、つわりや通勤で無理をしている人ほど、早く伝えたほうが守られます。
妊娠初期こそ配慮が必要な時期です。体調に影響が出ているなら、早い段階で伝えてよいことです。
伝えるときに言うこと
- 出産予定日——ここから全部の日程が決まります
- 産休に入りたいおおよその時期
- 育休を取る予定があるか、どのくらいか
- いま体調で困っていること——通勤・立ち仕事・においなど
- 復職の希望(この時点では「未定」で構いません)
体調のつらさを自分の言葉で説明するのは、意外に難しいものです。そのときに使うのが母性健康管理指導事項連絡カードです。
医師や助産師が書いた指導内容を、そのまま会社に渡せます。「甘えている」と思われないか心配な方にこそ向いています。
復職まで|保活と、戻り方の選択肢
産休・育休の説明は「休みに入るまで」で終わっているものがほとんどです。けれど不安がいちばん大きいのは、戻るときのほうかもしれません。
保育所の申し込みは、育休中の大きな山場です
| 時期 | やること |
|---|---|
| 妊娠中〜産後すぐ | 自治体の窓口で申し込み時期と必要書類を確認しておく |
| 子どもが生まれたら | 見学に行ける園を回っておく |
| 4月入園を狙うなら前年の秋ごろ | 申し込みの締め切りが自治体ごとに決まっています。ここを逃すと1年待つことも |
| 結果が出たら | 会社に復職日を伝える。入れなかった場合は育休延長の手続き |
産後数か月は、睡眠も食事もままならない時期です(産後うつ)。その真っただ中に書類の締め切りが来ます。
だからこそ、妊娠中のうちに「いつ・どこに・何を出すか」だけ調べておいてください。やるのは産後でも、調べるのは今のほうが確実にできます。
慣らし保育の期間は、まだ働けません
入園直後は1〜2週間ほどかけて少しずつ保育時間を延ばす「慣らし保育」があります。最初は2時間程度からということも珍しくありません。
この期間をどう扱うかは会社によって違います。育休を少し長めに取る、時短にする、有給を使う——復職日を決める前に確認しておいてください。
あわせて、入園直後は子どもがよく発熱します。最初の数か月は「休むことが前提」くらいに考えておくほうが、気持ちが楽になります。
戻り方には幅があります
| 選択肢 | 考え方 |
|---|---|
| 時短勤務 | 子どもが3歳になるまでは、会社に制度を用意する義務があります |
| 残業の免除 | 小学校に上がるまで、請求すれば免除されます |
| 子の看護等休暇 | 子どもの病気やけがのときに取れる休暇。年に一定日数あります |
| 在宅勤務・フレックス | 会社の制度によります |
| 育休を延ばす | 保育所に入れないなどの事情があれば最長2歳まで |
睡眠が細切れのまま働き始めるので、当然といえば当然です。だるさ・気分の落ち込み・生理の乱れが出ることがあります(産後の生理・適応障害)。
「産後だから当たり前」と我慢しないでください。甲状腺の病気が産後に見つかることもあります(橋本病)。続くようなら受診してください。
よくある質問
Q 産休は妊娠何ヶ月から取れますか?
A.出産予定日を含めて6週間前、つまり妊娠34週ごろからです。月数でいうと妊娠9か月の後半にあたります。双子以上の場合は14週間前(妊娠26週ごろ)からと、かなり早くなります。ただしこれは「取れる時期」であって、体調によってはそれより前に働けなくなることがあります。
Q みんな、いつから産休を取っているのですか?
A.取れる日から取る方と、ぎりぎりまで働く方に分かれます。ただ実際には「予定より早く休むことになった」というケースがかなりあります。切迫早産で自宅安静になった、つわりが長引いた、通勤がつらくなった——理由はさまざまです。人がいつ休んでいるかより、自分の体調と仕事の状況で決めてください。
Q 出産予定日が変わったら、産休の日程も変わりますか?
A.健診で予定日が修正されたら、産前休業の開始日もその予定日を基準に計算し直します。会社にはすぐ伝えてください。なお実際の出産が予定日より遅れた場合、その分も産前休業として扱われ、産後の8週間は出産日を起点に数えるので短くなりません。
Q 産休中の給料はどうなりますか?
A.産休中に給料を払う義務は会社にはないため、無給になることが多くあります。代わりに健康保険から出産手当金が支給され、目安として給料のおよそ3分の2です。あわせて社会保険料も免除になり、給付金には所得税がかからないため、手取りで比べると思ったほど減らないことがあります。ただし振り込みまでに数か月かかる点は注意してください。
Q 産休より前に、切迫早産などで休むことになったらどうなりますか?
A.まず有給休暇を使う方が多いですが、それでも足りないときは傷病手当金の対象になることがあります。あわせて母性健康管理指導事項連絡カードを医師や助産師に書いてもらうと、会社はその内容にそって対応する義務があります。ひとりで抱えず、健診のときに相談してください。
Q パートやフリーランスでも産休は取れますか?
A.雇われて働いている方であれば、パートや契約社員でも産前産後休業は取れます。産後8週間の就業禁止も同じように適用されます。ただし出産手当金や育児休業給付金を受け取れるかは、加入している保険や勤務期間の条件によります。自営業・フリーランスの方はこれらの対象外ですが、出産育児一時金は受け取れ、国民年金保険料の産前産後免除もあります。
Q 産後、早めに職場に戻ることはできますか?
A.産後6週間は法律で就業が禁止されており、本人が希望しても働けません。6週間を過ぎたあとは、本人が希望し医師が認めた場合にかぎり働けます。ただし、産後8週間は体が回復にエネルギーを使っている時期です。悪露が続き、睡眠も細切れになります。急いで職場に戻ったことで、あとから不調が長引くケースも少なくありません。
まとめ
産休の日付は法律で決まっていますが、実際にいつから休むことになるかは、体調しだいで前倒しになります。そこまで含めて準備しておくと、いざというときに慌てずにすみます。
- 産前休業は出産予定日を含めて6週間前(42日)から。双子以上は14週間前から
- 産前は「請求して取るもの」、産後8週間は「就業禁止」——性質が違う
- 予定日が遅れても産後8週間は削られない。早く生まれたときは産前が短くなる
- 切迫早産・つわり・妊娠高血圧症候群で、産休より早く働けなくなることがある
- そのときは有給・傷病手当金・母性健康管理指導事項連絡カードが使える
- お金は出産育児一時金・出産手当金(給料の約3分の2)・育児休業給付金(はじめの半年は約67%)・社会保険料の免除の4つ
- いちばんの落とし穴は振り込みまでの数か月の空白。生活費を先に確保しておく
- 引き継ぎは「予定日の1か月前まで」に終える気持ちで
- 職場へはまず直属の上司へ。安定期を待つ必要はない
- 制度は変わる。最終確認は勤務先・健康保険組合・ハローワーク・厚生労働省で
いま日付を1つだけ計算しておくなら、「産前休業に入れる日」です。出産予定日から42日さかのぼって、カレンダーに印をつけてください。そこを起点に、引き継ぎもお金の準備も逆算できます。
参考文献
- 厚生労働省「女性にやさしい職場づくりナビ」(産前・産後休業、育児休業)
- 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」
- 厚生労働省「母性健康管理指導事項連絡カードについて」
- 労働基準法第65条(産前産後)・第66条(妄産・深夜業務)
- 全国健康保険協会「出産手当金」「出産育児一時金」「傷病手当金」
- 厚生労働省・ハローワーク「育児休業給付について」
- 日本年金機構「産前産後期間の保険料免除」