棚の上のものが取れない。シャンプーのとき腕が上がらない。ブラのホックに手が回らない。そして何より、夜中に肩がズキズキして目が覚める——。

「四十肩かな」「五十肩だね」と言われて、なんとなく納得しつつも、実際どうすればいいのかはよくわからない。「動かさないと固まるよ」と言われた翌日に、別の人から「無理に動かすと悪化する」と言われる。どちらが正しいのか判断できないまま、痛い肩を抱えて家事も仕事も続けている——そんな方は本当に多いと思います。

この記事でいちばんお伝えしたいのは、その2つの助言は、どちらも正しいということです。四十肩・五十肩には時期があり、時期によってやるべきことが正反対になります。いま自分がどの時期なのかがわかれば、やることは自然に決まります。

そしてもうひとつ。整形外科の解説には「洗濯物を干せない」「高いところに手が届かない」とは書かれていても、ブラのホックが留められない、髪をひとつに結べない、ストッキングが上げられない、といった困りごとは、ほとんど書かれていません。けれど実際に生活を止めるのは、そういう動作のほうです。この記事では、そこにも踏み込みます。

いま肩が痛くて、長い記事を読む余裕がない方へ
  • まず確認:転んだ・ぶつけたあとから急に上がらなくなった、腕にしびれや力が入らない、胸の痛みや息苦しさを伴う——このいずれかがあれば読むのを止めてすぐ受診してほしいサイン
  • 今夜やること:痛むほうの肩を下にして寝ないこと。あお向けで、脇の下から肘の下にかけてクッションやたたんだバスタオルを入れると、夜中の痛みが変わることがあります → 夜、肩が痛くて眠れないとき
  • 今週やること:セルフチェックでいまの時期を確かめ、整形外科の予約を取る。「動かすべきか、休ませるべきか」は時期で変わるので、自己判断で決めないでください

四十肩・五十肩とは? 2つの呼び名に違いはありません

まず、いちばんよく聞かれることから。四十肩と五十肩に、医学的な違いはありません。どちらも同じ状態を指す言い方で、40代で起これば四十肩、50代で起これば五十肩と呼ばれてきただけです。医療機関では「肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)」という名前が使われます。

肩は、体の中でもっとも大きく動く関節です。腕の骨の先端(丸い形をしています)が、肩甲骨の浅い受け皿にはまっていて、そのまわりを関節包という袋と、いくつもの腱や筋肉が支えています。この構造のおかげで腕はぐるりと回せるのですが、そのぶん、まわりの組織に負担がかかりやすく、炎症が起きやすいという弱点もあります。

四十肩・五十肩は、この関節包や周囲の組織に炎症が起き、やがて袋が縮んで硬くなり、腕が動かせる範囲そのものが狭くなっていく状態です。英語では「凍った肩(frozen shoulder)」と呼ばれます。肩が文字どおり凍りついたように動かなくなる、という感覚をよく表した言葉だと思います。

「肩こり」とは別のものです

確認すること四十肩・五十肩肩こり
痛む場所肩の関節そのもの。二の腕の外側まで広がることも首から肩の上、肩甲骨のあいだ
動く範囲腕が上がらない・後ろに回らない動く範囲は保たれている
左右片側のことが多い両側のことが多い
夜間の痛み特徴的にある。眠れないことも基本的にない
もむと変わらない、または痛みが増す一時的に楽になることが多い

「腕が上がらない」「夜中に痛い」の2つがあれば、それは肩こりではありません。更年期の肩こりについては更年期の関節痛・筋肉痛で扱っています。

3つの時期|炎症期・拘縮期・回復期

ここがこの記事の中心です。四十肩・五十肩は、おおまかに3つの時期をたどります。そして、時期によってやることが正反対になります。

時期状態この時期の方針
炎症期
(急性期)
とにかく痛い。じっとしていても痛む。夜中に痛みで目が覚める。動かすと激痛。まだ動く範囲はそこまで狭くない痛みを抑えることが最優先。この時期に無理に動かすのは逆効果。「固まるから動かせ」は、まだ早い
拘縮期
(凍結期)
じっとしているときの痛みは落ち着いてくる。かわりに動く範囲が明らかに狭くなる。ある角度でピタッと止まるここからは動かす時期。痛みが引いたからと放置すると、固まったまま残ることがある
回復期少しずつ動く範囲が戻ってくる。日常動作ができるようになっていく動かし続ける。無理をしない範囲で、生活動作に戻していく
「動かせ」と「動かすな」の分かれ目

周囲からもらう助言が食い違うのは、言っている人が思い浮かべている時期が違うからです。

  • 炎症期に「固まるから動かせ」——炎症を強め、痛みが長引くことがあります
  • 拘縮期に「痛いから安静に」——動く範囲が戻りにくくなることがあります

目安は「じっとしていても痛いかどうか」。安静にしていても痛む、夜中に目が覚めるという状態なら炎症期です。動かしたときだけ痛い、ある角度で止まる、という状態なら拘縮期に入っています。

ただし、この3つの時期はきれいに区切れるものではなく、重なりながら移っていきます。いま自分がどこにいるのかは、自己判断より受診して確かめたほうが確実です。とくに、動かす運動をいつから始めるかは、この見極めにかかっています。

セルフチェック|いま自分はどの時期?

診断ではなく、いまの状態を言葉にして受診に持っていくためのチェックです。

まず、動く範囲を確かめます

動作試すことできないと困ること
結髪動作両手を頭の後ろに回して、髪を結ぶ姿勢がとれるか髪を結ぶ、シャンプー、ドライヤー
結帯動作手を背中側に回して、腰の高さまで上げられるかブラのホック、エプロンの紐、後ろポケット
前方挙上腕を前からまっすぐ上に、耳の横まで上げられるか棚の上のもの、洗濯物を干す、つり革
外転腕を横に開いて、水平より上まで上げられるか服の袖を通す、上着を羽織る
外旋肘を体につけたまま、前腕を外側に開けるかドアノブ、シートベルト、後ろの席のものを取る

痛みが走る手前で止めてください。無理に上げて確かめる必要はありません。「どこまでいくと痛むか」がわかれば十分です。

いまの時期を見立てるチェック

No.項目
1じっとしていても肩がズキズキ痛む
2夜中や明け方に、肩の痛みで目が覚める
3痛むほうを下にして寝られない
4服を着替えるとき、袖を通す動作で激痛が走る
5じっとしていれば痛くないが、ある角度でピタッと止まる
6ブラのホックが留められない、髪が結べない
7反対の手で持ち上げてもらっても、その角度から先には上がらない
8症状が出てから2か月以上たっている
結果いまの時期と、次にやること
1〜4に多く
あてはまる
炎症期の可能性。まずは痛みを抑えることが優先です。無理に動かす運動は始めず、整形外科へ。夜の姿勢の工夫から
5〜8に多く
あてはまる
拘縮期の可能性。動かしていく時期です。ただし自己流ではなく、受診してやり方を教わってください
1〜8が
混ざっている
移行の途中かもしれません。「じっとしていても痛いか」を目安に。判断がつかないときこそ受診を
7にチェック他人に支えてもらっても上がらない場合は、拘縮が進んでいるサインです。受診時に必ず伝えてください

すぐ受診してほしいサイン

救急を含め、急いで受診が必要なサイン
  • 胸の痛み・締めつけ感、息苦しさ、冷や汗を伴う左肩の痛み——心臓の病気が肩に痛みとして出ることがあります。すぐに救急要請を
  • 転倒・打撲のあとから急に腕が上がらなくなった——骨折や腱の断裂の可能性
  • 腕にしびれがある、力が入らない、手指が動かしにくい——首の神経や別の原因を考えます
  • 肩が赤く腫れて熱をもち、発熱している——感染の可能性
  • 夜間の激痛が数日続き、まったく眠れない
  • がんの治療歴がある、体重が意図せず減っている

とくにいちばん上は覚えておいてください。女性の心臓の病気は、胸の痛みという典型的な出方をしないことがあります。肩・あご・背中・みぞおちの痛みや、吐き気として現れることがあるためです。「肩こりかと思っていた」という経過は実際にあります。

また、次の場合は緊急ではありませんが、四十肩ではない可能性を確かめる価値があります。

  • 重いものを持ち上げた瞬間から痛くなった(腱板断裂の可能性)
  • ある日突然、耐えがたいほどの激痛が出た(石灰沈着性腱炎の可能性)
  • 糖尿病がある、または血糖値を指摘されたことがある
  • 甲状腺の病気を指摘されたことがある
  • 両肩に同時に、または続けて症状が出ている

なぜ40〜60代の女性に多いのか

四十肩・五十肩は、その名のとおり40代から60代に集中します。そして女性にやや多いとされています。整形外科の解説では「加齢による組織の変化」で説明が終わることが多いのですが、女性の体で何が重なっているのかを分解してみます。

① 年齢による組織の変化

関節を包む袋(関節包)や腱は、年齢とともに水分量や弾力が変わっていきます。柔軟性が下がると、ちょっとした負担でも小さな傷や炎症が起こりやすくなり、それが治る過程で組織が硬く縮んでいきます。これが土台にあります。

② エストロゲンの低下

エストロゲンは、関節を包む組織やコラーゲンの状態に関わっていると考えられています。閉経前後の数年でエストロゲンが大きく減る時期に、肩をはじめとした関節の不調を訴える方が増えることは、以前から知られてきました。

ただし、ここは正直に書きます。「エストロゲンの低下が四十肩・五十肩を起こす」と断定できる段階ではありません。関連を示す報告はありますが、原因として確立しているわけではないのです。ですから「更年期だから仕方ない」で終わらせるのではなく、更年期に起きる変化のひとつとして位置づけると、できることの幅が広がる——そのくらいの受け止め方が正確です。この考え方は、ヘバーデン結節手根管症候群でも同じです。

③ 手のトラブルと同じ時期に重なる

この年代は、指の第1関節が腫れるヘバーデン結節、手のひら側がしびれる手根管症候群、ばね指といった手のトラブルが同時に起こりやすい時期でもあります。「あちこち痛くなってきた」という感覚は、気のせいではありません。肩だけを見るのではなく、体全体で何が起きているかを一度整理しておくと、受診先の選び方も変わってきます。

④ 動かさない時間が増える

肩は、日常でどこまで大きく動かしているかによって、可動域が保たれたり失われたりします。デスクワーク中心の生活、家事の動作が決まったパターンになっている、痛いから使わない——こうした「動かさない時間」が積み重なると、動く範囲は静かに狭くなっていきます。

背景何が起きているかできること
年齢による変化関節包や腱の柔軟性が下がる避けられないが、動かす習慣で影響を減らせる
エストロゲンの低下関節まわりの組織に影響している可能性断定はできない。ほかの更年期症状があるなら婦人科で全体を相談
糖尿病・甲状腺起こりやすくなり、治りにくくなることがある血液検査で確かめられる。次の項目へ
動かさない生活可動域が少しずつ狭くなる痛くない範囲で大きく動かす習慣を
片側だけ使う癖負担が偏るバッグを持つ側、寝る向きを意識して変える

糖尿病・甲状腺との関係|見落とされやすい背景

ここは、整形外科の解説ではさらっと一行で触れられることが多いのですが、女性にとってはとても大事な話なので、独立して書きます。

糖尿病があると、四十肩・五十肩が起こりやすくなります

糖尿病のある方では、肩関節周囲炎の頻度が高いことが知られています。しかも両肩に起こりやすく、経過が長引きやすいという特徴も報告されています。血糖の高い状態が続くと、コラーゲンの性質が変わり、関節まわりの組織が硬くなりやすいためと考えられています。

ここで、女性に特有の事情がひとつあります。

妊娠糖尿病を経験した方へ

妊娠中に血糖の異常を指摘された方は、将来的に2型糖尿病を発症するリスクが高いことがわかっています。そして産後の再検査を受けたきり、その後は健診で血糖を意識していない——という方が少なくありません。

いま40〜50代で肩の症状が出ている方で、過去に妊娠糖尿病を指摘されたことがあるなら、それは受診時に伝える価値のある情報です。「20年前のことだから関係ない」ということはありません。詳しくは妊娠糖尿病の記事をご覧ください。

甲状腺の病気も背景になります

甲状腺のはたらきが落ちている状態(甲状腺機能低下症)でも、肩関節周囲炎が起こりやすいことが知られています。甲状腺の病気は女性に圧倒的に多く、だるさ・寒がり・体重の増加・むくみといった症状が、更年期の症状と見分けづらいという特徴もあります。

詳しくは橋本病(慢性甲状腺炎)バセドウ病で扱っています。どちらも血液検査でわかります。

受診時に、そのまま言える一文
  • 「肩が上がらないのですが、糖尿病と甲状腺の検査もお願いできますか。関係することがあると聞きました」
  • 「以前、妊娠糖尿病を指摘されたことがあります。血糖の検査を受けたほうがいいでしょうか」
  • 「だるさと寒がりも一緒にあるので、甲状腺も調べていただけますか」

整形外科では、肩の症状だけを診て終わることもあります。背景の病気は、自分から伝えないと調べられないことがあります。そして、どちらも1回の採血で確かめられます。

四十肩と間違えやすいもの

「肩が痛くて上がらない」という症状は、四十肩以外でも起こります。対処がまったく変わるものが含まれます。

状態紛らわしい点見分けのヒント
腱板断裂腕が上がらない他人に持ち上げてもらえば上がる(四十肩は他動でも上がらない)。重いものを持ち上げた瞬間などのきっかけがあることも
石灰沈着性腱炎激しい肩の痛みある日突然、耐えがたい激痛。夜間に発症することが多い。レントゲンで石灰が写る
頸椎症肩から腕の痛み首を動かすと変わる。腕や指にしびれを伴う
胸郭出口症候群腕を上げるとつらい腕全体のだるさやしびれ。なで肩の女性に多いとされる
肩こり肩の痛み動く範囲は保たれている。夜間痛はない
関節リウマチ関節の痛み朝のこわばりが1時間以上、左右対称、手指の関節にも症状
心臓の病気左肩の痛み胸の痛み・息苦しさ・冷や汗を伴う。すぐ救急へ
胆のうの病気右肩の痛みみぞおちや右上腹部の痛み、脂っこい食事のあとに悪化
いちばん実用的な見分け方

「反対の手で支えて持ち上げたら、上がりますか?」

四十肩・五十肩では、関節を包む袋そのものが縮んでいるので、他人が持ち上げてもある角度から先には上がりません。一方、腱板が切れている場合は、自分の力では上げられなくても、支えてもらえば上がることがあります。この違いは、診察でも重視されます。受診前に一度確かめて、結果を伝えてください(痛みが強い日は無理をしないでください)。

できなくなって初めて困る動作と、その工夫

「洗濯物が干せない」「高いところのものが取れない」——四十肩の解説で挙がるのは、たいていこの2つです。けれど実際に生活を止めるのは、もっと細かくて、もっと言いにくい動作のほうだと思います。

ここでは、相談されることの多い動作を、工夫とセットで並べます。

身支度まわり

困る動作工夫
ブラのホックが
留められない
前で留めてから、後ろに回す。これがいちばん確実です。フロントホック、ノンワイヤー、カップ付きインナー、スポーツブラなど、後ろに手を回さずに着られるものへ一時的に切り替えるのも現実的な選択です
髪が結べない低い位置でひとつに結ぶ、シュシュやクリップを使う、思い切って短くする。ドライヤーは腕を上げ続ける動作なので、時期によっては最もつらい家事のひとつです。座って、肘を台に置いて行う
服の袖が通せない着るときは痛いほうの腕から、脱ぐときは痛くないほうの腕から。これだけで痛みがかなり違います。前開きの服、伸びる素材、ゆったりした袖ぐりを選ぶ
下着や
ストッキング
座って行う。ストッキングやタイツは腰をひねる動作が入るので、パンツスタイルに切り替える時期があってもいいと思います
シャンプー前かがみで洗う、シャワーヘッドを手元に近づける、洗面台で洗う。美容院でのシャンプー台は仰向けで楽なことが多いので、つらい時期は頻度を上げてもいいと思います
背中を洗う柄の長いボディブラシ、タオルを斜めではなく縦に持つ

家事まわり

困る動作工夫
洗濯物を干す物干しの高さを下げる。かごを台の上に置いて、かがむ回数を減らす。部屋干しに切り替える
高い棚のものよく使うものを、腰から肩の高さに移す。これは今日できて、しかも効果が続く対策です
布団の上げ下ろし片側ずつ、体全体を使って。ベッドに変えられるなら選択肢に
掃除機・モップ腕だけで動かさず、体ごと移動する。軽いスティック型に替える
買い物袋痛むほうに持たない。リュック、カート、宅配を使う
車の運転シートベルトを引く動作、後ろを振り向く動作がつらい。肩の可動域が狭いときは、無理に振り向かず、ミラーと目視を使い分ける
明るいキッチンで、よく使う食器を腰の高さの棚に移し替えている50代前後の日本人女性
「できない自分」を責めないでください

ブラが留められない、髪が結べないというのは、身だしなみの根っこにかかわる部分です。人に言いにくく、「こんなことで」と自分を責めてしまう方も多くいます。

けれど、これは意欲や体力の問題ではなく、関節を包む袋が縮んでいるという物理的な理由で起きています。着るものを変えるのも、髪型を変えるのも、道具に頼るのも、すべて回復までの期間をしのぐための、まっとうな工夫です。

夜、肩が痛くて眠れないとき

四十肩・五十肩でいちばんつらいのは、多くの場合夜間痛です。昼はなんとかごまかせても、夜中に痛みで目が覚める日が続くと、体力も気力も削られていきます。

なぜ夜に痛むのか

横になると肩まわりの血流や圧力の状態が変わること、日中の動作による炎症が夜にかけて強まること、体を支える筋肉がゆるんで関節に負担がかかることなどが関わっていると考えられています。炎症期にとくに強く出る症状で、これがあるうちは「動かして治す」時期ではありません。

間接照明だけの薄暗い寝室で、夜中に肩の痛みで目を覚まし、肩のあたりに手を添えている50代前後の日本人女性

寝る姿勢のつくり方

  • 痛むほうを下にしない。これが第一です
  • あお向けで、痛むほうの腕の下にクッションやたたんだバスタオルを入れる。脇の下から肘、手首までを支えると、肩が後ろに落ち込まずに済みます
  • 横向きなら、痛むほうを上にして、抱き枕やクッションを抱える。腕が体の前で支えられる形をつくります
  • 腕を頭の上に上げた姿勢(バンザイ寝)は避ける
  • 寝返りで痛みが出る場合は、背中側にもクッションを置いて、寝返りの幅を減らす

クッションは専用のものでなくてかまいません。座布団、たたんだバスタオル、抱き枕で十分です。大切なのは「腕が宙に浮いていない」状態をつくることです。

それでも眠れない日が続くときは

痛みで眠れない状態が続いているなら、それは受診して痛みを抑える治療を相談する段階です。「我慢するもの」ではありません。夜眠れないことは、日中の痛みの感じ方をさらに強めます。眠れない状態全般については眠れないときに知っておきたいこともご覧ください。

また、更年期の時期はもともと不眠寝汗が重なりやすい時期でもあります。肩の痛みだけが原因とは限らないので、眠れない要因が複数ある場合は、それも含めて相談してください。

何科に行けばいい?

受診先こんなときにできること
整形外科まずはここ。肩の痛み全般診察、レントゲン・超音波・MRI、注射、薬、リハビリの指示
リハビリテーション科
(理学療法士のいる施設)
拘縮期に入り、動かしていく段階自分の状態に合った動かし方を教われる。自己流との差が大きい部分
内科だるさ・体重変化・のどの腫れ・血糖の指摘がある糖尿病・甲状腺の確認
婦人科ほかの更年期症状もある更年期全体としての相談(更年期の治療
救急胸の痛み・息苦しさを伴う左肩の痛み心臓の病気の評価。急ぐ場面

整骨院・整体・マッサージをどう位置づけるか

正直に書きます。整骨院・接骨院、整体、マッサージは診断を行う場所ではありません。レントゲンも撮れませんし、注射も薬の処方もできません。

四十肩でとくに注意したいのは、腱板断裂や石灰沈着性腱炎と区別されないまま施術を受けると、対応が遅れることがあるという点です。そして炎症期に強い手技を受けると、痛みが強まることがあります。

一方で、拘縮期以降に、動かし方を確認しながら継続的にケアを受けるのは、支えになることがあります。まず医療機関で状態と時期を確かめる。そのうえで補助的に使う。この順番を守ってください。

検査では何をするの? 費用の目安

四十肩・五十肩の見立ては、問診と診察でかなりのところまでつきます。どの方向にどこまで動くかを医師が実際に動かして確かめ、自分で上げた場合と他人が上げた場合の差を見ます。着衣のままか、肩を出せる服装で行われます。

検査わかること実際のところ
問診・診察可動域、痛みの出る角度、他動での動き数分。ここでの情報がいちばん役に立つ
レントゲン骨の変形、石灰沈着四十肩そのものは写らないが、ほかの原因を除外できる
超音波検査腱の状態、炎症、腱板断裂痛みなし。その場で動かしながら見られる
MRI腱板断裂、関節包の状態必要な場合に。費用と時間がかかる
血液検査血糖、甲状腺、リウマチ、炎症背景の病気の確認。自分から依頼してよい
内容3割負担の目安
初診+診察のみ約1,500〜3,000円
初診+レントゲン約2,500〜4,500円
超音波検査を追加+約500〜1,500円
MRI約5,000〜9,000円
関節内注射(1回)約1,000〜3,000円
リハビリ(1回)約500〜1,500円
血液検査を追加+約1,000〜3,000円

初回は5,000円程度あると安心です。リハビリに通う場合は、週1〜2回×数か月という通い方になることがあるので、通院のしやすさも施設選びの要素になります。

治療の選択肢|時期ごとに変わります

何をするかは主治医と相談して決めてください。ここでは全体像を示します。

時期治療の中心内容
炎症期痛みを抑える消炎鎮痛薬、外用薬、関節内注射、夜間の姿勢の工夫。強い運動はしない
拘縮期動く範囲を戻す理学療法士による運動療法、温めてから動かす、自宅での運動。必要に応じて注射
回復期生活に戻す運動を続けながら、日常動作に戻していく
改善しない
場合
専門的な処置麻酔下で関節を動かす処置や、関節鏡による手術が検討されることがある

種類位置づけ注意
消炎鎮痛薬
(NSAIDs)
炎症期の痛みに用いられる胃腸への負担。長期に漫然と使わない
アセトアミノフェン比較的使いやすい鎮痛薬用量を守る
外用薬
(湿布・塗り薬)
局所の痛みにかぶれに注意。肩は貼りにくいのでスプレーやローションも選択肢
関節内注射炎症を抑える目的。痛みが強く動かせないときに効果の持続には個人差。回数には限度がある
市販の鎮痛薬で「しのぎ続ける」ことの落とし穴

痛みが抑えられている間に拘縮が進み、薬が効かなくなった頃には動く範囲がかなり狭くなっていた——という経過は珍しくありません。市販薬を1〜2週間使っても変わらない場合は、薬を足すのではなく受診してください。四十肩は「痛みを我慢するかどうか」ではなく「動く範囲を守れるかどうか」の勝負です。

運動療法

拘縮期以降の中心になるのが、動く範囲を戻していく運動です。振り子のように腕を揺らす運動や、棒やタオルを使って反対の手で補助しながら動かす方法などがありますが、いつから、どこまで、どの方向に動かすかは状態によって違います。

ここは、動画を見て自己流でやるのと、理学療法士に教わるのとで差が出やすい部分です。「教わって、家でやる」が最も効率のいい形だと思います。

明るいリハビリ室で、白衣を着た女性の理学療法士が患者の肩に手を添えて動く範囲を確認している様子

家でできる動きの、代表的なもの

受診までに数日あく場合もあるので、代表的な動きを挙げておきます。ただし、これはあくまで「拘縮期に入っている方」向けです。じっとしていても痛い、夜中に目が覚めるという段階では、まだ始めないでください。

動きやり方気をつけること
振り子運動テーブルに健康なほうの手をついて前かがみになり、痛むほうの腕を力を抜いてぶら下げる。体をゆらして、腕が自然に振れるにまかせる(前後・左右・小さな円)腕の力で振らない。体の動きで腕が揺れる状態が正解。1回1〜2分程度から
タオル体操
(前から)
両手でタオルの端を持ち、健康なほうの腕で引き上げるようにして、痛むほうの腕を少しずつ上げる痛みが出る手前で止める。上げきる必要はない
タオル体操
(背中側)
タオルを背中で斜めに持ち、上の手で軽く引いて、下の手を少しずつ上へブラのホックにつながる動き。いちばん戻りにくいので焦らない
壁を指で登る壁に向かって立ち、指先で壁を少しずつ上へ歩かせる。届いた高さでひと呼吸置いて下ろす体を反らせてごまかさない。届いた位置に印をつけると変化が見える
肩甲骨を動かす肩をすくめてストンと下ろす/肩甲骨を寄せて開く関節への負担が少なく、どの時期でも行いやすい
共通のルール
  • お風呂上がりなど、温まっているときに行う
  • 反動をつけない。呼吸を止めない
  • その場の痛みは軽くてよいが、翌朝に響いていたら、やりすぎです
  • 回数を増やすより、毎日少しずつのほうが結果につながります
  • 受診したら、この中のどれをどのくらいやってよいか必ず確認してください。状態によっては控えたほうがよい動きもあります

リハビリに通えないときは

「週1〜2回×数か月」と言われても、フルタイムで働いていたら現実的でない——これは本当によく聞く声です。通えないから何もしない、が最悪の選択なので、間を埋める形を考えます。

状況現実的な形
平日に通えない土曜診療のある整形外科を探す。リハビリを土曜も行っているかは、電話で先に確認できます
頻度が保てない「最初の数回だけ集中して通い、やり方を覚えて家でやる」という形を相談する。医師・理学療法士に「通える頻度は月2回程度です」と正直に伝えれば、それに合わせた計画を立ててもらえます
近くに施設がないまず診断と時期の見極めだけ受け、自宅でできる運動を教わる。数か月後に再評価してもらう
時間が取れない1回10分を1セットではなく、「朝の歯みがき後」「入浴後」に3分ずつのように生活動作にくっつける

大切なのは、「通えないので行きません」ではなく「通える頻度はこのくらいです」と先に伝えることです。医療者は、その前提で組み立て直すことができます。

時期別セルフケア|やることが正反対になる

この記事でいちばん覚えて帰っていただきたいのが、この表です。

項目炎症期(じっとしていても痛い)拘縮期(動かすと止まる)
基本方針痛みを抑える。休ませる動かす。範囲を戻す
運動強い運動はしない。痛みのない範囲で日常動作は続ける教わった運動を毎日少しずつ。継続が要
温冷熱感が強ければ冷やす。楽なほうを選んでよい温めてから動かす(入浴後がやりやすい)
腕の下にクッション。痛むほうを下にしない同じ工夫を続けてよい
やってはいけないこと痛みを我慢して大きく回す。無理なストレッチ。強い手技痛いからと何もしない。固まったまま残ることがある

どちらの時期にも共通すること

  • 完全に動かさない日をつくらない。炎症期でも、日常の範囲で腕は使ってかまいません。「三角巾で吊る」ような固定は、指示がない限り不要です
  • 痛みが翌日まで残る動きは、やりすぎです。その場で少し痛いのは許容範囲でも、翌朝に響くなら量を減らします
  • 反動をつけない。勢いで動かすと、かえって炎症を起こします
  • 肩だけでなく、肩甲骨も動かす。肩をすくめて下ろす、肩甲骨を寄せて開く、という動きは肩の関節そのものへの負担が少なく、どの時期でも行いやすい動きです
  • 反対側の肩も動かしておく。四十肩は、しばらくしてから反対側にも起こることがあります
「痛いけど頑張って上げる」はしないでください

可動域を戻す運動と、痛みを我慢して無理やり上げる動作は、まったく別のものです。後者は炎症を強め、結果として拘縮を長引かせることがあります。「早く治したいから頑張る」が裏目に出やすいのが、この病気の難しいところです。運動の量と強さは、必ず受診して確認してください。

反対側の肩を守るためにできること

四十肩は、しばらくしてから反対側にも起こることがあります。片方が痛いあいだ、無意識にもう片方ばかり使うことになるので、負担も偏ります。いま痛くないほうの肩に、いまのうちにしておけることを挙げておきます。

  • 1日1回、痛くないほうの腕を大きく上げ下ろしする。棚の上に手を伸ばす、腕を回すなど、動く範囲を使いきる動作を意識して入れます。10秒で終わります
  • 肩甲骨を動かす習慣をつける。肩をすくめて下ろす、肩甲骨を寄せて開く。デスクワークの合間にできます
  • バッグをいつも同じ側で持たない。痛いほうをかばうと、反対側に全部の負担が乗ります。リュックにする、こまめに持ち替える
  • 寝る向きを固定しない。痛むほうを下にできない分、いつも同じ向きになりがちです
  • 血糖と甲状腺を確かめておく。背景があるなら、反対側の予防にもつながります

「片方が治ってから考える」ではなく、いま同時にやっておくほうが楽です。どれも数十秒で終わることばかりです。

通説の検証|よく聞くけれど本当?

「放っておけば、そのうち治る」

四十肩・五十肩は、時間の経過とともに軽くなっていくことが多いとされています。その意味では、この言葉は完全な間違いではありません。

ただし、「治る」までに1年以上かかることも珍しくなく、その間ずっと夜眠れず、家事も仕事も制限されるという現実があります。さらに、放置した結果、動く範囲が完全には戻らないまま落ち着いてしまうことがあります。「いずれ治るから何もしない」ではなく、「かかる時間を短くし、戻る範囲を大きくするために手を打つ」と考えてください。

「動かさないと固まるから、痛くても動かせ」

拘縮期以降なら正しく、炎症期には当てはまりません。じっとしていても痛い時期に無理に動かすと、炎症が強まって経過が長引くことがあります。時期を確かめてから判断してください。

「五十肩は50歳になったらなるもの」

40代でも60代でも起こりますし、ならない人のほうが多い状態です。年齢だけで説明できるものではなく、糖尿病や甲状腺の病気といった背景があると起こりやすくなります。「年だから」で片づけると、その背景を確かめる機会を失います。

「両肩同時にはならない」

両肩に起こることはあります。とくに糖尿病がある方では両側性が多いとされています。両肩に症状が出ている場合は、そのこと自体を受診時に伝えてください。背景を確かめる手がかりになります。

「一度なったら、もうならない」

同じ肩に繰り返すことは多くないとされていますが、反対側の肩に起こることはあります。片方が治ったあとも、反対側を含めて肩を大きく動かす習慣を続けておくことに意味があります。

「マッサージでほぐせば治る」

四十肩は筋肉のこりではなく、関節を包む袋が縮んでいる状態です。もんでほぐせるものではありません。とくに炎症期に強い手技を受けると痛みが増すことがあります。ほぐして楽になるなら、それは肩こりのほうかもしれません。

経過の見通し|どのくらいかかる?

これがいちばん知りたいところだと思います。正直に書くと、四十肩・五十肩は「早く治る病気」ではありません。だからこそ、見通しを持っておくことに意味があります。

時期期間の目安この時期に見るポイント
炎症期数週間〜数か月夜間痛の回数。減ってきたら次の時期へ移りつつあるサイン
拘縮期数か月動く範囲。「先週より少し上がる」を目安に
回復期数か月日常動作が戻ってくるか(ブラ・髪・洗濯物)
全体1〜2年かかることもある個人差が大きい。糖尿病があると長引きやすいとされる
時間はかかるけれど、放置とは違います

「どうせ時間がかかるなら、何をしても同じ」ではありません。痛みを抑えて眠れる夜を増やすこと、拘縮期に動かして戻る範囲を大きくすること——この2つは、手を打った分だけ結果が変わる部分です。

そして、2〜4週間やってみて何も変わらないときは、やり方ではなく見立てのほうを確かめる場面です。「四十肩だと思っていたら腱板が切れていた」というケースもあります。

仕事・家事との折り合いのつけかた

肩は見た目にわかりません。しかも「四十肩でしょ」と言われると、そこで話が終わってしまいがちです。

職場に伝えるときの言い方

伝わりにくい言い方伝わりやすい言い方
「肩が痛くてつらいんです」「右腕が肩の高さより上に上がりません。高い場所への収納だけ代わっていただけますか」
「重いものは無理です」「肩から上に持ち上げる動作ができません。台車と踏み台を使わせてください」
「通院したいので休みます」「週1回リハビリに通うことになりました。◯曜の午後だけ調整をお願いできますか」
「最近眠れなくて」「夜間痛で睡眠が分断されています。午前中の集中力が落ちるので、細かい確認作業は午後に回させてください」

コツは、つらさではなく「できない動作」と「必要な調整」で伝えること。そして代替案をセットにすること。なお、病名を職場に伝える義務はありません。

「四十肩でしょ」と言われたときに

更年期の症状全般と同じで、この一言で会話が終わってしまうことがあります。言い返す必要はありません。事実に戻す返し方をいくつか。

言われたこと会話を先に進める返し方
「四十肩でしょ、そのうち治るよ」「そうかもしれないけど、腱が切れている場合もあるらしくて。一度確かめてくる」
「動かさないから固まるんだよ」「時期によって逆になるらしいの。いまは動かさない時期だって言われた」
「もんであげようか」「関節の袋が縮んでるタイプだから、もんでも変わらないんだって。ありがとう」
「年だからね」「糖尿病とか甲状腺が背景にあることもあるらしいから、検査だけしてくるね」

家族に伝えるときの言い方

伝わりにくい伝わりやすい
「肩が痛いから家事できない」「洗濯物を干すのと、布団の上げ下ろしの2つが特に響くの。この2つだけお願いできる?」
「手伝ってほしい」「高いところの収納を、腰の高さに移すのを一緒にやってほしい。そうすれば自分でできる」
「夜眠れてない」「夜中に痛みで2回起きてる。しばらく別の布団で寝るね」

使える制度

  • 時間単位の有給休暇:リハビリ通院に丸一日使わずに済みます
  • 医療費控除:年間の医療費が一定額を超えるとき、通院の交通費も対象になります。リハビリで通院回数が多くなる場合はとくに、領収書を残しておいてください
  • 産業医・保健師への相談:作業内容の調整を、個人のお願いではなく健康管理として通せることがあります

記録のつけかた

四十肩は経過が長いぶん、記録が効きます。「先週より少し上がる」を目に見える形にするのが目的です。

日付夜間に
起きた回数
痛み
0〜3
できるようになった/できない動作
8/12回3髪が結べない。ブラは前で留めて回している
8/82回3変わらず。袖を通すのが特につらい
8/151回2夜が少し楽に。まだ髪は結べない
8/220回2洗濯物が半分干せた。ここから動かす時期と言われた
写真を1枚だけ撮っておく

文字よりも確実なのが、壁の前でまっすぐ立ち、痛むほうの腕を上げられるところまで上げた写真を、週に1回だけ撮っておくことです。同じ場所・同じ角度で撮ると、1か月後に見比べたときに変化がはっきりわかります。

「変わっている実感がない」という時期に、これがいちばんの支えになります。診察でもそのまま見せられます。

2週間の実行プラン

やることが多いので、順番を決めます。1週目は3つだけです。

時期やることねらい
1週目
その1
夜の姿勢を整える(腕の下にクッション、痛むほうを下にしない)睡眠を取り戻す。ここが崩れると何もかもつらくなる
1週目
その2
整形外科の予約を取る。「糖尿病と甲状腺の検査もお願いしたい」と伝える時期の見極めと、背景の確認を一度に
1週目
その3
よく使うものを、腰から肩の高さに移す今日できて、効果がずっと続く
2週目
その1
壁の前で腕を上げた写真を1枚撮る(以後、週1回)変化を可視化する
2週目
その2
着るもの・髪型を、いまの可動域でできる形に一時的に変える毎日の消耗を減らす
2週目
その3
受診結果に沿って、運動を始めるか休ませるかを決めるここで初めて運動の話をする

あえて1週目に入れていないのは、ストレッチや体操を始めることです。時期を確かめる前に動かし始めるのが、この病気でいちばん多い遠回りだからです。

よくある質問

Q 四十肩と五十肩は、何が違うのですか?

A.医学的な違いはありません。どちらも「肩関節周囲炎」を指す呼び名で、起きた年代によって呼び分けられてきただけです。40代でも50代でも、状態も対処も同じです。ですから「まだ40代だから四十肩、まだ軽いはず」といった区別も成り立ちません。年齢よりも、いまどの時期にいるかのほうがはるかに大切です。

Q 四十肩はほっといても治りますか?

A.時間の経過とともに軽くなっていくことが多いとされています。ただし1年以上かかることも珍しくなく、その間ずっと夜眠れない、家事が制限されるという現実があります。さらに、放置すると動く範囲が完全には戻らないまま落ち着いてしまうことがあります。「いずれ治るから何もしない」ではなく、「かかる時間を短くし、戻る範囲を大きくするために手を打つ」と考えてください。また、腱板断裂や石灰沈着性腱炎は経過が違うので、そもそも四十肩なのかを一度確かめる価値があります。

Q 四十肩かどうか確かめる方法はありますか?

A.目安になるのは3つです。①腕が上がらない、後ろに回らないなど動く範囲そのものが狭い ②夜間に痛みで目が覚める ③反対の手で支えて持ち上げても、ある角度から先に上がらない——この3つがそろうと、四十肩らしさが高まります。とくに③は、腱板断裂との見分けで重視される確認方法です。ただし無理に持ち上げないでください。「どこまでいくと痛むか」がわかれば十分です。セルフチェックの項目を使って、受診時に伝える材料を整えるのが実用的な使い方です。

Q 四十肩の最初の症状は何ですか?

A.多くの場合、はっきりしたきっかけがないまま、肩の奥がなんとなく重い・引っかかる感じから始まります。そこから特定の動作でズキッと痛むようになり、やがて夜間の痛みが出てきます。女性の場合、最初に気づくきっかけとして多いのが「ブラのホックが留めにくくなった」「髪を結ぶとき肩が引っかかる」「シートベルトを引く動作が痛い」といった日常動作です。「重いものを持ったわけでもないのに痛い」というのは、この病気らしい始まり方です。

Q 動かしたほうがいいのか、休ませたほうがいいのか、結局どちらですか?

A.時期によって正反対になります。じっとしていても痛い、夜中に目が覚めるという炎症期は「痛みを抑える」時期で、無理に動かすと長引くことがあります。じっとしていれば痛くないが、ある角度で止まるという拘縮期は「動かす」時期で、放置すると固まったまま残ることがあります。目安は「安静にしていても痛いかどうか」。ただし移行期は判断が難しいので、運動を始めるタイミングは受診して確かめてください。時期別セルフケアの表にまとめています。

Q ブラのホックが留められません。どうすればいいですか?

A.いちばん確実なのは前で留めてから、後ろに回す方法です。それも難しい時期は、フロントホック、ノンワイヤー、カップ付きインナー、スポーツブラなど、後ろに手を回さずに着られるものに一時的に切り替えてください。回復期に入れば元に戻せます。この動作は「結帯動作」といって、肩を後ろに回す可動域を使うため、四十肩でもっとも早くできなくなり、もっとも遅く戻ってくる動作のひとつです。できないことを気に病む必要はまったくありません。

Q 夜、痛くて眠れません。どうしたらいいですか?

A.まず痛むほうを下にしないこと、そしてあお向けで、痛むほうの腕の下にクッションやたたんだバスタオルを入れて、腕が宙に浮かない状態をつくることを試してください。横向きなら痛むほうを上にして、抱き枕を抱えると楽なことがあります。それでも眠れない日が続くなら、それは我慢する場面ではなく受診して痛みを抑える治療を相談する段階です。夜間痛は炎症期に強く出る症状なので、いま無理に動かす時期ではないというサインでもあります。詳しくはこの項目に書いています。

Q 更年期と関係があるのでしょうか?

A.発症する年代が更年期と重なり、女性にやや多いことから、エストロゲンの低下との関連が指摘されています。ただし「エストロゲンの低下が原因」と断定できる段階ではありません。大事なのは、「更年期だから」で説明を終えてしまうと、糖尿病や甲状腺の病気といった、確かめれば対応できる背景を見落とすことがあるという点です。ほかにも更年期らしい症状があるなら婦人科で全体を相談しつつ、肩そのものは整形外科で診てもらう、という併走が現実的です。

Q ホルモン補充療法(HRT)で四十肩はよくなりますか?

A.HRTは更年期の症状に対して行われる治療であって、四十肩・五十肩の治療として行うものではありません。ほかの更年期症状があってHRTを検討する中で、肩の症状についても主治医と相談する、という順番になります。肩の痛みだけを理由にサプリメントやホルモン様の製品を自己判断で試すと、その数か月のあいだに拘縮が進んでしまうことがあります。まず時期を確かめる、が先です。

Q 反対の肩にもなりますか?

A.反対側の肩に起こることはあります。また、両肩に同時に症状が出ることもあり、その場合は糖尿病などの背景を確かめる価値があります。片方が落ち着いたあとも、肩を大きく動かす習慣(肩甲骨を寄せる・回す、腕を上げ下ろしする)を続けておくことに意味があります。そして、反対側に症状が出はじめたときは「またか」と放置せず、早い段階で受診してください。1度目の経験があるぶん、時期の見極めが早くできます。

まとめ

四十肩・五十肩は、肩関節を包む袋に炎症が起き、やがて縮んで硬くなっていく状態です。四十肩と五十肩に違いはなく、どちらも肩関節周囲炎という同じものを指しています。

この病気のいちばんの難しさは、時期によってやることが正反対になることだと思います。「動かさないと固まる」も「無理に動かすと悪化する」も、どちらも正しい。だから周囲の助言が食い違い、何を信じればいいのかわからなくなります。分かれ目は「じっとしていても痛いかどうか」。まずここを確かめてください。

そして、この年代の女性にとって、肩はブラを留め、髪を結び、服の袖を通し、シャンプーをする関節です。できなくなって初めて、それがどれだけ毎日を支えていたかがわかります。着るものを変えるのも、髪型を変えるのも、道具に頼るのも、回復までをしのぐためのまっとうな工夫です。どうか、できない自分を責めないでください。

最後にもうひとつ。「年だから」「更年期だから」で終わらせないでください。糖尿病や甲状腺の病気は、1回の採血で確かめられます。そして、そこに背景があるなら、肩だけを見ていても前に進みません。

この記事のポイントまとめ
  • 四十肩と五十肩に医学的な違いはない。どちらも「肩関節周囲炎」
  • 炎症期・拘縮期・回復期の3つの時期があり、やることが正反対になる
  • 分かれ目は「じっとしていても痛いかどうか」。痛むなら炎症期=抑える時期
  • 夜間痛は炎症期に特徴的。腕の下にクッションを入れ、痛むほうを下にしない
  • 肩こりとは別のもの。「腕が上がらない」「夜中に痛い」があれば肩こりではない
  • 他人に支えてもらっても上がらないのが四十肩。上がるなら腱板断裂の可能性
  • 糖尿病・甲状腺の病気があると起こりやすく、長引きやすい。1回の採血で確かめられる
  • 妊娠糖尿病を経験した方は、20年前のことでも受診時に伝える価値がある
  • 「エストロゲン低下が原因」と断定できる段階ではない。「更年期だから」で終わらせない
  • ブラは前で留めて回す。着るときは痛いほうの腕から、脱ぐときは痛くないほうから
  • 放っておいても軽くなることが多いが、1年以上かかることも。可動域が戻りきらないこともある
  • 胸の痛み・息苦しさを伴う左肩の痛みは、すぐ救急へ

この記事について

femnote 編集部

生理・妊活・フェムケア・更年期など女性の健康に関する情報を、厚生労働省「e-ヘルスネット」や日本産科婦人科学会をはじめとする各学会の診療ガイドラインなど、公的な資料をもとに編集しています。診断や治療の判断については、必ず医療機関にご相談ください。

参考文献

  • 日本整形外科学会「五十肩(肩関節周囲炎)」(症状・病気をしらべる)
  • 日本肩関節学会「肩の病気について」(一般の方へ)
  • MSDマニュアル家庭版「癒着性関節包炎(フローズンショルダー)」「肩の痛み」
  • 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン」(合併症・関連疾患)
  • 日本内分泌学会「甲状腺機能低下症」(一般の方向け)
  • 日本女性医学学会「女性医学ガイドブック 更年期医療編」
  • 日本産科婦人科学会「妊娠糖尿病」(一般の皆さまへ)
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「ロコモティブシンドローム」「女性の健康」関連情報