秋になって、はじめてタイツを履いた日。脱いだあとのすねに、白い粉のようなものが浮いていた。夜、布団に入って体が温まってくると、背中やお腹がむずむずして、気がつくと掻いている。朝、爪のあとが赤く残っている。

去年までは、こんなことはなかったはずなのに。ボディクリームは塗っている。むしろ前より丁寧に塗っている。それなのに乾く。

40代後半から50代にかけて、「急に乾燥肌になった」と感じる方はとても多いです。しかもこの乾燥は、若い頃の「冬になると少しカサつく」とは質が違います。粉が吹く。ひび割れる。そして、かゆい。

この記事では、まずなぜ保湿しているのに乾くのかを、皮脂・セラミド・汗という3つの層に分けて説明します。ここが分かると、「何を足せばいいのか」ではなく「どこが減っているのか」で対策を選べるようになります。

そしてもうひとつ、この記事が大事にしたいことがあります。体のかゆみは、必ずしも乾燥のせいではありません。腎臓や肝臓、甲状腺、血液の病気が、かゆみという形で最初に現れることがあります。飲んでいる薬が原因のこともあります。「保湿しても治らないかゆみ」は、保湿の量が足りないのではなく、そもそも乾燥ではないのかもしれない——その切り分け方も、具体的にお伝えします。

先に確認|次のどれかがあれば、皮膚科だけでなく内科の相談も
  • 皮膚は乾いていないのに、全身がかゆい(粉も吹いていない・湿疹もない)
  • 2週間以上しっかり保湿しても、かゆみがまったく変わらない
  • かゆみに加えて、体重が減った・強いだるさ・微熱・寝汗・黄疸(白目や肌が黄色い)がある
  • 夜間に激しくかゆく、家族にもかゆい人がいる(疥癬の可能性)
  • 新しい薬・サプリを飲み始めてからかゆみが出た

これらは「乾燥肌の悪化」ではなく、別の原因を探すべきサインです。詳しくは「乾燥じゃないかゆみ」を見分けるで説明します。

乾燥肌とは|「皮脂」「セラミド」「汗」の3つが減っている

かゆみではなく、盛り上がった発疹が出るときは蕁麻疹をご覧ください。

「乾燥肌=水分が足りない肌」と思われがちですが、それだと「化粧水をたっぷりつけているのに乾く」という現象が説明できません。実際に起きているのは、水分を抱えて逃がさない仕組みのほうが壊れているということです。

肌のうるおいは3層で守られている

皮膚のいちばん外側、厚さわずか0.02mmほどの角層(かくそう)が、うるおいを守る現場です。ここには3つの守りがあります。

正体役割減るとどうなるか
①皮脂膜皮脂腺から出る脂と汗が混ざった薄い膜肌の表面にフタをして、水分の蒸発を防ぐ水分がどんどん逃げる。冬に悪化
②細胞間脂質(セラミド)角層の細胞と細胞のすき間を埋める脂の層水分をサンドイッチのように挟んで抱え込むすき間ができ、外の刺激が入りやすくなる
③天然保湿因子(NMF)アミノ酸・尿素などの水を抱える成分角層の細胞の中に水を保持する角層がもろくなり、粉を吹く

この3つがそろって初めて、肌は「うるおっている」状態になります。化粧水で足しているのは水分だけで、それを抱える②と、逃がさない①がなければ、塗った水分は数十分で蒸発してしまいます。これが「化粧水だけでは乾く」の正体です。

たとえるなら、肌はレンガの壁
  • レンガ=角層の細胞。中に水(③NMF)を抱えている
  • モルタル=②セラミドなどの細胞間脂質。レンガをすき間なくつなぐ
  • 外壁の塗装=①皮脂膜。雨風から守る

乾燥肌では、モルタルが痩せてレンガがぐらつき、塗装もはげている状態です。そこに水をかけても、流れ落ちるだけ——保湿がうまくいかない理由は、ここにあります。

かゆくなるのはなぜか|神経が角層まで伸びてくる

乾燥するとかゆくなる。当たり前のようですが、そこにははっきりした仕組みがあります。

本来、かゆみを感じる神経の末端は、皮膚の奥のほう(表皮と真皮の境目あたり)で止まっています。ところが皮膚のバリアが壊れた状態が続くと、この神経の末端が角層の近くまで伸びてくることが知られています。

神経が表面近くまで来ているということは、これまで何とも感じなかった刺激が、かゆみとして届いてしまうということです。

  • 衣類がこすれるだけでかゆい
  • 汗が流れるだけでかゆい
  • お湯が当たるだけでかゆい
  • 布団に入って温まるだけでかゆい

そして、かゆいから掻く。掻くと角層がさらに削れて、バリアがもっと壊れる。壊れるから神経がさらに伸びる。これが「かゆみの悪循環(イッチ・スクラッチ・サイクル)」です。

この悪循環を止めることが、乾燥肌対策のいちばんの目的です
  • 「かゆいのを我慢する」ではなく、「かゆくならない状態に戻す」が目標
  • 掻き壊してしまうと、湿疹(皮脂欠乏性湿疹)になり、保湿だけでは戻らなくなる
  • そこまで進んだら、皮膚科で炎症を抑える治療を受けたほうが早く落ち着きます
  • 掻いた跡が茶色く残る(炎症後色素沈着)ことがあり、消えるまでに数か月かかります

乾皮症・皮脂欠乏性湿疹という正式な名前

「乾燥肌」は日常の言葉です。皮膚科では、段階によって次のように呼び分けます。

段階名前状態
1乾燥肌・ドライスキンカサつく。つっぱる。かゆみは軽いか、ない
2乾皮症(かんぴしょう)粉を吹く。皮膚がひび割れて、細かい網目模様(亀甲状)になる。かゆい
3皮脂欠乏性湿疹(乾燥性湿疹・貨幣状湿疹)赤み・ブツブツ・ジクジクが出る。掻き壊した状態。強くかゆい

この呼び分けが大事なのは、「どこから先は保湿だけでは戻らないか」の線引きだからです。段階1〜2であれば、お風呂の見直しと保湿で改善が期待できます。段階3、つまり赤みやブツブツが出ている状態は「炎症」なので、保湿剤を塗り重ねてもなかなか落ち着きません。

「保湿しているのに良くならない」とおっしゃる方の多くが、実はすでに段階3に入っています。赤くなっているかどうかを、明るいところで一度確かめてみてください。

セルフチェック|あなたの乾燥はどの段階か(12項目)

入浴後、明るい照明の下で、すね・太もも・二の腕・脇腹・背中を見ながら答えてください。3分で終わります。

#質問はい/いいえ
1すねや太ももに白い粉が浮く/爪でなぞると白い線が残る 
2皮膚に細かいひび割れ(網目模様)が見える 
3お風呂上がりや布団の中でむずむずする 
4気づくと掻いている/朝、掻いた跡がある 
5下着やタイツのゴムが当たる場所がとくにかゆい 
6赤みが出ている(粉だけでなく、赤い) 
7ブツブツ・ジクジク・かさぶたがある 
8掻いた跡が茶色く残っている 
9かゆくて目が覚める/眠りにつけない日がある 
102週間以上しっかり保湿しても変わらない 
11皮膚は乾いていないのにかゆい(粉も赤みもない) 
12かゆみのほかにだるさ・体重減少・微熱・寝汗・白目の黄ばみがある 

段階別の読み方

当てはまった項目いまの段階やること
1〜5のみ乾燥肌〜乾皮症お風呂の見直し+保湿で対応できる段階。この記事のお風呂保湿を2週間試してみてください
6〜8のどれか皮脂欠乏性湿疹(炎症あり)皮膚科へ。炎症が起きているので、保湿だけでは落ち着きにくい段階です。早めに受診したほうが結果的に短く済みます
9・10生活に影響が出ている皮膚科へ。睡眠が削られている状態は、我慢の問題ではありません
11・12のどれか乾燥以外の原因を探す段階皮膚科に加えて、内科(またはかかりつけ医)へ。血液検査で確認したほうがよい病気があります
「たかが乾燥で皮膚科に行っていいのか」と思う方へ
  • 皮膚科にとって、乾皮症・皮脂欠乏性湿疹は秋冬にもっとも多い相談のひとつです
  • 保険診療で、保湿剤も炎症を抑える塗り薬も処方されます(市販品より広い面積に使えることが多いです)
  • 「乾燥かと思っていたら別の病気だった」を確認できるのも、受診の価値です
  • かゆみで眠れない状態が続けば、睡眠の質にも影響します。単独の悩みとして扱わないでください

40代・50代で急に乾き始める理由

「去年までは平気だったのに」という感覚は、気のせいではありません。この年代では、うるおいを守る3つの層が、そろって変化するからです。

皮脂の量が減る

皮脂は、毛穴に付属する皮脂腺から出ています。皮脂の分泌量は思春期から20代がピークで、そこから加齢とともに減っていきます。とくに女性では、男性より早い時期から、そして大きく減ることが知られています。

皮脂が減ると、①の皮脂膜が薄くなります。すると、せっかく角層に水分があっても、フタがないので蒸発していく。「洗顔後すぐにつっぱる」「化粧水をつけても30分で乾く」という感覚は、この蒸発の速さです。

もうひとつ、皮脂腺の分布には偏りがあります。顔・胸・背中の中心には多く、すね・腕・脇腹には少ない。だから乾燥は、皮脂腺の少ない場所から始まります。「顔は脂っぽいのに、すねはカサカサ」という一見矛盾した状態が、同じ人に同時に起こるのはこのためです。

セラミドと角層の水分保持力が落ちる

②のセラミドなどの細胞間脂質も、加齢とともに減ります。さらに、角層の細胞が新しく作られて剥がれ落ちるまでの周期(ターンオーバー)が長くなり、古くなった角層が肌の上に留まりやすくなります。

古い角層は水分を抱える力が落ちているので、その分だけ肌はもろくなります。粉を吹いて見えるのは、この剥がれ損ねた角層です。

ここで大事なのは、「粉が吹いているから、こすって落とそう」としないことです。ナイロンタオルで擦ったり、角質ケアを頑張ったりすると、バリアはさらに壊れます。粉は「汚れ」ではなく「壊れた壁の破片」だと考えてください。

発汗の変化|ほてるのに乾く、という矛盾

ここは、この年代に特有のややこしさです。

汗は、皮脂と混ざって①の皮脂膜を作る材料であり、角層に水分を供給する役割も持っています。汗をかかない肌は乾きます。

ところが40代後半以降は、「汗のかき方」そのものが不安定になることがあります。ホットフラッシュのように顔や上半身がカーッと熱くなって大量に汗をかく一方で、手足やすねは冷えていて、じんわりした汗はかいていない。

「ほてって汗をかくのに、肌は乾く」が同時に起こる理由
  • ホットフラッシュの汗は短時間に大量に出て、すぐ蒸発する。蒸発するときに肌の熱と水分を奪っていく
  • そのあと汗を拭く・シャワーを浴びることで、残っていた皮脂膜まで落ちる
  • 一方で、乾燥しやすいすね・腕はもともと汗腺が少なく、ほてりの汗の恩恵を受けない
  • 冷房・扇風機で汗を冷ますと、気化熱でさらに乾く

つまり「汗をかいているのに乾く」のは矛盾ではなく、汗の出方が場所と時間で偏っているということです。

ほてりと汗が強い方は、寝汗の記事もあわせて読んでみてください。寝汗をかいたあと、そのままにしておくと、朝までのあいだに肌の水分が奪われます。これも夜のかゆみの一因になります。

エストロゲンと皮膚|分かっていること・分かっていないこと

女性ホルモンのひとつであるエストロゲンは、皮膚に対しても働きかけていることが知られています。よく挙げられるのは次の点です。

  • 真皮のコラーゲンの量に関わっている(閉経後の数年でコラーゲンが大きく減るという報告があります)
  • 真皮のヒアルロン酸や、皮膚の厚みに関わっている
  • 皮脂の分泌や、皮膚の水分量に関わっている
  • 皮膚の創傷治癒(傷の治り)に関わっている
ただし、次の点は区別してください
  • 「閉経の前後に皮膚が変化する」という観察と、「エストロゲンの低下が乾燥やかゆみの原因である」という断定は別のものです
  • この年代には、加齢そのもの・長年の紫外線・生活習慣・冷暖房環境など、ホルモン以外の要因も同時に重なっています。それぞれの寄与を切り分けることは容易ではありません
  • したがって「乾燥肌やかゆみを治すためにホルモン補充療法(HRT)を行う」という使い方は、現時点ではすすめられません。HRTは、ほてり・発汗・不眠・骨密度など、効果が確認されている症状に対して検討するものです
  • 皮膚の症状は、まず皮膚科で診てもらうのが筋道です

この記事で「更年期の乾燥肌」という言い方をするのは、原因をホルモンに帰するためではありません。「この年代に、多くの女性が同時に経験している変化だ」とお伝えするためです。白内障飛蚊症関節の痛みと同じで、「自分だけがおかしくなった」わけではない、ということです。

ソファに腰かけ、ひざ下のすねに白い保湿クリームをのせて手のひらで広げている50代前後の女性の手元

かゆい場所でわかること|すね・背中・腕・頭皮

どこがかゆいかは、原因を絞り込む手がかりになります。

すねが最初に出る理由

乾燥肌のほとんどは、すね(向こうずね)から始まります。理由は3つあります。

  • 皮脂腺がとても少ない——脂のフタが作れない場所です
  • 皮下脂肪が薄く、骨のすぐ上に皮膚がある——外気の影響を受けやすい
  • タイツ・ストッキング・ズボンで一日中こすられている——摩擦が続く

加えて、すねは自分の目に入りやすい場所でもあります。腕や背中の乾燥は見えなくても、すねの粉吹きは座ったときに目に入る。「気づいたのがすねだった」という方が多いのは、そのためでもあります。

すねのかゆみで特徴的なのが、ひび割れが網目状に見えることです。乾いた田んぼの土のように、細かい線が入ります。これが乾皮症の典型的な見た目で、この段階なら保湿で戻せることが多いです。

背中がかゆいとき

背中は少しやっかいです。皮脂腺が多い場所なので本来は乾きにくいのに、かゆみの訴えは多い。理由を分けて考えます。

背中がかゆい原因特徴対応
乾燥(背中の下部・脇腹寄り)粉を吹く。冬に悪化保湿。手が届かないので道具を使う
洗いすぎナイロンタオルでゴシゴシ洗っている洗い方を変えるだけで改善することが多い
汗・衣類のムレブラのライン、汗をかいた後にかゆい汗を拭く、通気のよい素材に
脂漏性皮膚炎赤み・黄色っぽいフケ状のものを伴う皮膚科。保湿だけでは落ち着きにくい
マラセチア毛包炎(カビ)ニキビに似た小さなブツブツが多発皮膚科。抗菌薬では良くならない
神経由来(感覚異常性背痛)肩甲骨の内側の決まった一点。皮膚に異常なし整形外科・皮膚科で相談

背中の保湿は、手が届かないという物理的な問題があります。ローションを塗るための柄付きの道具(ボディローションアプリケーター)を使うか、ラップの芯にタオルを巻いて代用する方法があります。「届かないから塗らない」で放置されている面積は、想像以上に広いです。

腕・脇腹・お腹・お尻

二の腕の外側は、ざらつき(毛孔性苔癬)と乾燥が重なりやすい場所です。ぶつぶつを爪でつぶしたくなりますが、炎症と色素沈着が残るのでおすすめしません。

脇腹とお腹は、下着やズボンのゴムの位置と一致してかゆくなることがあります。この場合は乾燥だけでなく、摩擦と圧迫による刺激が加わっています。ゴムの締めつけが弱いものに替えるだけで変わることがあります。

お尻は、座っている時間が長い方でムレと乾燥が同時に起きる場所です。冬に暖房便座を長く使うと乾燥が進みます。

顔・首・デリケートゾーン・頭皮は別に考える

同じ「乾燥」でも、次の場所は別の扱いが必要です。

場所注意点
皮脂腺が多く、乾燥と皮脂トラブルが同居する(インナードライ)。体用の保湿剤をそのまま使わない
首・デコルテ皮膚が薄く、紫外線をよく浴びている場所。刺激の強いものは避ける
頭皮フケ・かゆみは乾燥だけでなく脂漏性皮膚炎のことが多い。シャンプーの選び方が変わる
デリケートゾーン粘膜に近く、体用の保湿剤は不向き。かゆみの原因も異なる(デリケートゾーンの保湿かゆみの原因を参照)
目のまわり皮膚がもっとも薄い。こすると色素沈着が残りやすい

とくにデリケートゾーンのかゆみを「乾燥肌の一部」として同じケアで済ませないでください。カンジダなどの感染症、接触皮膚炎、萎縮性膣炎など、原因がまったく違うことがあります。

「乾燥じゃないかゆみ」を見分ける

ここが、この記事のいちばん大事な部分です。体のかゆみは、皮膚の病気だけで起こるものではありません。

まず「皮膚に何かあるか」を見る

切り分けの第一歩は単純です。かゆい場所の皮膚に、目に見える変化があるかどうか。

皮膚の状態考えられること
粉を吹く・ひび割れ・カサつきがある乾燥(乾皮症)。この記事の対策が当てはまります
赤み・ブツブツ・ジクジクがある湿疹(皮脂欠乏性湿疹・接触皮膚炎など)。皮膚科へ
膨れた赤い盛り上がりが出て、数時間で消えるじんましん。原因は多様。繰り返すなら受診
見た目はまったく正常なのにかゆい皮膚以外の原因を考える段階

いちばん注意したいのが最後の行です。「掻いた跡はあるけれど、掻く前の皮膚はきれいだった」というかゆみを、皮膚掻痒症(ひふそうようしょう)と呼びます。

内臓の病気が背景にあるとき

皮膚に異常がないのに全身がかゆいとき、次のような病気が背景にあることがあります。

背景かゆみの特徴ほかに出やすいこと
腎機能の低下全身、とくに背中。夜に強い。保湿が効きにくいむくみ・尿の変化・だるさ
肝臓・胆道の病気手のひら・足の裏を含む全身。強い白目や肌の黄ばみ・尿の色が濃い・便が白っぽい
甲状腺の病気皮膚が乾いて厚ぼったい(機能低下)/汗が多く痒い(機能亢進)だるさ・体重変化・動悸・むくみ(橋本病バセドウ病
糖尿病全身の乾燥・カンジダなどの感染を繰り返すのどの渇き・多尿・体重減少
鉄欠乏性貧血全身のかゆみ。乾燥を伴うこともだるさ・動悸・息切れ・氷が食べたくなる
血液の病気(悪性リンパ腫など)頑固な全身のかゆみ説明のつかない体重減少・寝汗・発熱・リンパ節の腫れ
この表を読んで不安になった方へ
  • 皮膚のかゆみのほとんどは、乾燥か湿疹です。上の病気は頻度としては多くありません
  • ただし、「皮膚がきれいなのにかゆい」+「体重減少・寝汗・黄疸・強いだるさ」の組み合わせは、確認しておいたほうがよいサインです
  • 確認は難しくありません。血液検査で、腎機能・肝機能・甲状腺・血糖・貧血はまとめて調べられます
  • 健診を毎年受けている方は、直近の結果を持って皮膚科に行くと、話が早く進みます

薬の副作用によるかゆみ

飲み始めたタイミングとかゆみの始まりが重なるなら、薬の影響を考えます。皮膚に発疹が出るタイプと、見た目は変わらずかゆみだけが出るタイプの両方があります。

降圧薬、コレステロールの薬、鎮痛薬、抗菌薬、胃薬など、幅広い薬で起こりえます。サプリメントや漢方薬も例外ではありません。

自己判断で薬をやめないでください
  • 降圧薬や糖尿病の薬を勝手に中止すると、かゆみより大きな問題が起こります
  • やることは「いつから何を飲み始めたか」をメモして、処方した医師か薬剤師に相談すること
  • お薬手帳をそのまま持っていけば十分です
  • 市販薬・サプリ・健康食品も忘れずに伝えてください

疥癬・カビ・虫刺されを見逃さない

頻度は高くありませんが、保湿を続けても悪化し続けるかゆみのときに考えます。

原因見分けるポイント
疥癬(かいせん)夜間に激烈なかゆみ。指の間・手首・脇・下腹部・お尻。家族や同居者にも同じかゆみが出る。介護施設・病院での集団発生もあります
白癬(水虫)足の指の間・足裏。爪が白く濁る。体にうつって輪状に広がる(たむし)ことも
カンジダ脇の下・胸の下・そけい部など、こすれて湿った場所の赤み
トコジラミ・ダニ朝起きたら増えている。複数個所がまとまって刺されている

とくに疥癬は、市販のステロイド外用薬を使うと悪化します。「家族にもかゆい人がいる」「夜のかゆみが尋常でない」ときは、必ず皮膚科で伝えてください。

受診の目安

いつ・どこへ状況
皮膚科へ(早めに)赤み・ブツブツ・ジクジクがある/かゆくて眠れない/2週間の保湿で変わらない
皮膚科へ(すぐ)夜間に激しいかゆみ+同居者も同様/急に広がる/水ぶくれ・膿を伴う
内科も皮膚は正常なのに全身がかゆい/体重減少・寝汗・黄疸・強いだるさを伴う
処方元の医師・薬剤師へ新しい薬・サプリの開始後にかゆみが出た
婦人科へデリケートゾーンのかゆみ・おりものの変化を伴う

お風呂の見直し|いちばん効くのはここ

保湿剤を高いものに替えるより先に、やることがあります。お風呂です。

理由は単純で、入浴は一日のうちで肌からもっとも脂と水分が奪われる時間だからです。ここで失う量を減らせば、あとから足す量も少なくて済みます。

お湯の温度と時間

項目目安理由
湯温38〜40℃42℃を超えると皮脂が急速に溶け出します。「気持ちいい」と感じる熱さは、肌にとっては熱すぎることが多いです
入浴時間10〜15分程度長く浸かるほど角層がふやけ、そこから水分が抜けやすくなります
シャワーの温度同じく38〜40℃かゆいところに熱いシャワーを当てると、その瞬間は気持ちよくてもあとで強くかゆくなります
入浴剤保湿タイプを選ぶ。硫黄・炭酸水素・清涼タイプは乾燥を招くことがある「さっぱりする」ものほど脂を落とします
「熱いシャワーをかゆいところに当てる」をやめる
  • 熱い刺激は、かゆみの神経を一時的に麻痺させます。だからその瞬間は「効いた」と感じます
  • ところが熱で皮脂が溶け、ヒスタミンなどのかゆみ物質が放出されるため、湯上がり30分〜1時間後にかゆみが強く返ってきます
  • これは、乾燥肌のかゆみでもっとも多い「悪化させている習慣」です
  • やめるだけで、夜のかゆみが軽くなる方がいます

洗い方とタオル

ここが二番目に大きいポイントです。

  • ナイロンタオル・ボディブラシは使わない。手か、やわらかい綿のタオルで洗います
  • 石けんをよく泡立てて、泡で洗う。泡が汚れを吸着するので、こする必要はありません
  • ゴシゴシしていい場所はない。とくにすね・腕・脇腹は、泡をのせて手のひらでなでるだけで十分です
  • 石けんを使う場所を減らす。脇・足・そけい部・首など、においやすい場所以外は、お湯で流すだけでよい日があってもかまいません
  • すすぎ残しをしない。とくに背中と膝の裏
  • 拭くときは押さえるだけ。バスタオルでこすらず、水分を吸わせるように

「毎日全身を石けんで洗わないと不潔なのでは」と心配される方がいますが、皮脂が減っている肌にとって、毎日の全身洗浄は過剰になりがちです。汗をかいた日はしっかり、そうでない日は控えめに、と調整してみてください。

石けん・ボディソープの選び方

選ぶポイント説明
洗浄力が穏やかなもの「弱酸性」「敏感肌向け」「低刺激」と表示されたものが選びやすい
泡で出るタイプ泡立てる手間がなく、こすりにくい
香料・着色料が少ないもの刺激になることがあります
スクラブ・角質ケア入りは避けるバリアを削ります
「さっぱり」「すっきり」表示は要注意メントールなどの清涼成分は、かゆみを一時的に紛らわせても乾燥を助けます

お風呂上がりのかゆみが強い人へ

湯上がりのかゆみには、いくつかの型があります。

  • 乾燥型:湯上がり30分〜1時間後にじわじわ来る。粉を吹いている。→ 温度を下げ、すぐ保湿
  • 温熱じんましん型:温まった直後に、赤い膨らみが出てかゆい。→ 皮膚科で相談を
  • コリン性じんましん型:汗をかき始めるときに、チクチクした細かいかゆみ。運動時にも出る。→ 同上

いずれの型でも共通してできるのは、湯温を下げる・長湯をしない・湯上がりに体を急激に冷やさないことです。

保湿の実際|「塗っているのに乾く」を解く

「ちゃんと保湿しています」とおっしゃる方の話を伺うと、量が足りないか、タイミングが遅いか、そのどちらかであることがほとんどです。

塗る量の目安(FTU)

皮膚科でよく使われるFTU(フィンガー・チップ・ユニット)という単位があります。

1FTU=大人の人差し指の先から第一関節までに出した量(約0.5g)
  • この量で塗れる面積は、大人の手のひら2枚分
  • チューブから出す場合の目安です。ローションのポンプなら1プッシュがおよそ1FTUに相当することが多いです(製品により異なります)
  • 塗ったあと、ティッシュが軽くくっつくくらいが適量の目安。すぐサラサラになるなら足りていません
部位1回あたりの目安
顔と首約2.5FTU
片腕(手を含む)約4FTU
片脚(足を含む)約8FTU
体の前面(胸・お腹)約7FTU
背中とお尻約7FTU
全身1回約30FTU=約15g

ここでよく驚かれます。全身に1回塗るだけで、約15g。1日2回なら30g。200gの市販ボディクリームなら、1週間ほどでなくなる計算です。

「1本を3か月使っている」という方は、必要量のおよそ10分の1しか塗れていないことになります。良いものを少量ではなく、惜しみなく使える価格帯のものを、たっぷりのほうが結果につながります。

塗るタイミング

入浴後5分以内。これが最大のポイントです。

湯上がりの肌は、角層に水分をたっぷり含んだ状態です。しかしその水分は、何もしなければ数分から十数分で蒸発し、入浴前より乾いた状態になります(過乾燥)。フタをするのが早いほど、抱え込める水分が多くなります。

「5分以内」を実現するための段取り
  • 保湿剤を脱衣所に置いておく(寝室に置いていると、そこまでの数分で乾きます)
  • 浴室を出る前に、体をタオルで押さえて水気を取る(こすらない)
  • 服を着る前に塗る。先に着てしまうと、脱ぐのが面倒になって省略されます
  • 冬は脱衣所を暖めておく。寒いと急いで服を着てしまいます
  • ポンプ式にすると、片手で出せるぶん続けやすくなります

もうひとつ大事なのが朝も塗ることです。乾燥がひどい時期は、1日2回(朝と入浴後)が基本になります。夜だけでは、日中の暖房と衣類の摩擦に耐えられません。

塗る順番と方向

  • 広い面に点々と置いてから、手のひらで広げる。1か所に出して伸ばすとムラになります
  • 皮膚のしわに沿って、やさしく。すり込まない・こすらない
  • 毛の流れに沿って塗る。逆方向に塗ると毛穴に刺激が入ることがあります
  • 乾きやすい場所から:すね → 腕の外側 → 脇腹 → 背中 → その他
  • 手は最後。先に手を塗ると、そのあと滑って作業しにくくなります
  • 足の裏・かかとは入浴後だけでなく、就寝前にもう一度

保湿剤の種類|使い分け

タイプ質感向いている場面
ローションさらっと。伸びがよい広い面積・夏・背中・毛の多い場所。忙しい朝
乳液・ミルク中間全身の基本。1年を通して使いやすい
クリームこっくり冬・すね・ひじひざ・かかと。夜の重ね塗り
軟膏・ワセリンべたつく。水をはじくひび割れ・傷んだ部分・唇。水分は与えないので、濡れた肌に塗るか、他の保湿の上から重ねる
オイル油分のみ入浴中の濡れた肌に。単独では水分を補えない

重ね方の基本は「水分 → 油分」。ローションや乳液で水分を入れてから、乾燥のひどい場所にクリームやワセリンを重ねます。逆にすると、油が壁になって水分が入りません。

市販の保湿剤に書かれている成分の話

店頭でよく目にする成分について、何をするものなのかだけ整理しておきます。

成分どんなはたらきの成分か
セラミド角層の細胞間脂質と同じ種類の脂質。配合された製品が数多くあります
ヘパリン類似物質医薬品・医薬部外品として保湿の目的で用いられる成分。市販薬にも配合されています
尿素水分を保持する性質があり、かかとなど硬い部分の製品に使われます。ひび割れや傷があるとしみることがあります
ワセリン油分で表面を覆う目的で使われます。刺激が少ないとされ、広く使われています
グリセリン・ヒアルロン酸水分を抱える性質を持つ成分。多くの化粧品に配合されています
成分よりも、まず「量」と「タイミング」
  • どの成分が入っていても、塗る量が足りなければ結果は出にくいです
  • 効果の感じ方には個人差があり、合う・合わないもあります。しみる・赤くなる場合は使用を中止してください
  • 新しい製品は、まず腕の内側など狭い範囲で数日試してから全身に使うと安心です
  • 「高い=よく効く」ではありません。続けられる価格で、たっぷり使えるものを選んでください

時間がない朝の、最短の塗り方

「1日2回」と書きましたが、朝に全身へ8分かけるのは現実的ではありません。朝は面積を絞ってかまいません。優先順位をつけておきます。

優先度塗る場所理由所要時間
1すね・ひざ下皮脂腺が少なく、タイツ・ズボンで一日中こすられる。乾燥がいちばん早く出る30秒
2腕の外側・手首袖口の摩擦と手洗いで、日中に何度も脂を落とす場所20秒
3脇腹・下着のゴムが当たる線圧迫と摩擦が続き、夜のかゆみの起点になりやすい20秒
4背中・お腹余裕がある日に。背中は夜に回してよい1分
朝1分でも、やらないよりずっと違います
  • ポンプ式のローションを1本、洗面所に置く。顔を洗ったあとの流れでそのまま塗れます
  • すねは、椅子や便座に座って塗ると速い。立ったまま前かがみになるより楽で、塗り残しも減ります
  • 手を洗うたびにハンドクリーム——これも「朝の保湿」の一部です
  • 夜にしっかり塗った日は、朝は簡略でよい。毎日完璧を目指すと続きません
  • 冬の水仕事が多い日は、ゴム手袋の下に綿手袋をすると手荒れがかなり変わります

皮膚科で処方されるもの

受診すると、状態に応じて塗り薬が処方されます。何をどう使うかの判断は医師が行いますので、ここでは種類の枠組みだけお伝えします。

  • 保湿剤:広い面積に継続して使えるよう処方されることがあります
  • 炎症を抑える塗り薬:赤み・ブツブツがある部分に、部位と強さを選んで処方されます
  • かゆみに対する内服薬:夜のかゆみが強いときなどに検討されます
診察で伝えると、話が早くなる5項目
  • ①いつから:「去年の11月ごろから、今年は9月に入って早めに出た」
  • ②どこが:「すねと二の腕の外側。最近は背中も」(体のどこか、指でさせるように
  • ③どう変化したか:「粉が吹くだけだったのが、今年は赤くなってブツブツが出た」
  • ④何をどれだけ試したか「〇〇のクリームを1日1回、2週間。200gを1か月で使い切りました」——量まで言えると、足りているかどうかが即座に分かります
  • ⑤困っていること:「かゆくて夜中に2回起きる」「掻いた跡が消えない」

加えて、お薬手帳と、あれば直近の健診結果を持っていってください。飲んでいる薬や、腎機能・肝機能・血糖・甲状腺の数値が分かると、「乾燥以外の原因」の確認が一度で進みます。使っている保湿剤の容器をそのまま持参するのも有効です。

受診したときに聞いておくとよいこと
  • どの薬を、体のどこに、1日何回塗ればよいですか」
  • どのくらいで良くなってきたら、やめてよいですか
  • 「保湿剤と塗り薬は、どちらを先に塗りますか」
  • 次はいつ来ればよいですか
  • 「1か月にどのくらいの量が必要ですか」(量が足りないまま通院を続ける方が多いためです)
脱衣所の木の棚に並んだポンプ式の保湿ローション、ガラスの小瓶、たたまれた綿のタオルと手袋

費用はどのくらいかかるか|市販と処方、どちらが安いか

全身に毎日2回塗ると、単純計算で1か月に約900g。これは、市販のボディクリーム(200g前後)なら4〜5本分にあたります。ここが現実的な悩みになるので、目安を書いておきます。

内容費用の目安
市販のボディローション・クリーム200g前後で500〜2,000円程度。全身に毎日使うと月2,000〜1万円の幅になります
皮膚科の初診(3割負担)おおむね1,000〜2,000円前後(検査を行わない場合)
皮膚科の再診(3割負担)おおむね500〜1,500円前後
処方された塗り薬の薬代(3割負担)薬の種類と量によりますが、数百円〜2,000円程度のことが多いです
血液検査を行った場合項目数により1,500〜4,000円程度の追加
費用を考えるときの3つのポイント
  • 処方が受けられるかどうかは、診断によって決まります。「安いから処方してほしい」という理由で出るものではなく、症状を診たうえで医師が判断します
  • 広い面積に必要な量を確保しやすいのは受診したほうです。市販品を「もったいないから薄く」使って結果が出ないより、必要量を確保するほうが結局は近道になります
  • 市販品を選ぶなら、大容量・詰め替え・ポンプ式が続けやすい。500g前後の大容量タイプは、1gあたりの価格がぐっと下がります

秋から冬にかけて毎年繰り返している方は、症状が出てから買い集めるより、シーズン前に一度受診して方針を決めておくほうが、金額も手間も抑えられることが多いです。

かゆくて眠れない夜のこと

乾燥肌のつらさは、日中よりも夜に出ます。ここを軽く扱わないでください。眠りが削られることは、それだけで体調全体に影響します。

夜にかゆくなる理由

理由説明
体温が上がる布団に入ると皮膚の血流が増え、かゆみの神経が刺激されやすくなります
気を紛らわすものがない日中は仕事や家事に注意が向いていますが、夜はかゆみだけに意識が集中します
入浴後で肌が乾く時間帯湯上がりの過乾燥が、ちょうど就寝時刻に重なります
寝汗汗が乾くときに肌の水分を奪い、汗そのものも刺激になります(寝汗
眠っている間の無意識の掻き壊し朝に爪あとがある方は、これが起きています

掻かずに済ませる方法

「掻かないでください」と言われても難しいので、掻く代わりにできることを並べます。

かゆいときの、掻く以外の選択肢
  • 冷やす:保冷剤をタオルで包んで10〜20秒当てる。かゆみの神経は冷たさで鎮まりやすい(凍傷を避けるため直接当てない・長く当てない
  • 手のひらで押さえる:爪を立てずに、圧をかけるだけ。皮膚を傷つけずに刺激を上書きできます
  • 保湿剤を塗る:かゆいときこそ塗る。冷蔵庫で少し冷やしたローションはより落ち着きます
  • 爪を短く、やすりで丸く:無意識に掻いてもダメージが小さくなります
  • 綿の手袋をして寝る:寝ている間の掻き壊し対策としては、いちばん確実です
  • 掻きたくなったら、その場所を保湿剤で覆う:物理的に「触れる理由」を作り替えます

やってはいけないのは、熱いシャワーを当てる・爪でかきむしる・かゆみ止めと称して清涼成分の強いものを塗り重ねることです。どれも一時的には楽になり、そのあと確実に悪化します。

寝具・パジャマ・室内環境

項目おすすめ理由
パジャマの素材綿・シルク・柔らかいガーゼ化学繊維やウールは、直接肌に当たると刺激になることがあります
縫い目・タグタグは切る。縫い目が肌に当たらないもの一晩中こすれる場所は、翌朝いちばんかゆくなります
寝具敷きパッドやシーツも綿にマイクロファイバーは静電気が起きやすい
室温・湿度湿度50〜60%エアコンの暖房は湿度を大きく下げます
暖房の風体に直接当てない風が当たる面だけ乾きます
電気毛布寝る前に温めて、寝るときは切るつけたまま眠ると乾燥と寝汗が進みます
洗濯すすぎをしっかり。柔軟剤は控えめに洗剤残りと香料が刺激になることがあります

湿度計を1つ置くと、体感と実際のずれが分かります。冬の暖房中の室内は、何もしなければ湿度20〜30%まで下がることも珍しくありません。

生活の中でできること

暖房と加湿

  • 加湿器を使う。置き場所は部屋の中央寄り、壁や家電から離す
  • 加湿器がなければ、洗濯物の部屋干し・浴室のドアを開けておく・お湯を張った洗面器でも上がります
  • こたつ・ホットカーペット・床暖房は、当たっている面のすねが乾きます。直接当たらないよう間に何か敷く
  • ファンヒーターの温風は体に向けない

衣類の素材と摩擦

  • 肌に直接触れる一枚目は綿かシルク。ウールやヒートテック系の化繊は、その上に着る
  • タイツ・ストッキングを長時間履く日は、履く前に保湿しておく
  • 下着のゴムがきついものは避ける。ゴム跡が長く残るなら締めすぎです
  • 新しい衣類は一度洗ってから着る

食事と水分

食事だけで乾燥肌が解決することはありませんが、極端に不足すると肌に影響が出る栄養素はあります。

栄養素多く含む食品関わり
たんぱく質肉・魚・卵・大豆・乳製品皮膚の材料。ダイエット中は不足しがち
必須脂肪酸青魚・えごま油・アマニ油・ナッツ細胞間脂質の材料になります
ビタミンAレバー・うなぎ・にんじん・かぼちゃ皮膚や粘膜の健康維持に関わります
ビタミンB群豚肉・レバー・卵・納豆皮膚の代謝に関わります
亜鉛牡蠣・赤身肉・ナッツ不足すると皮膚炎が起こることがあります
赤身肉・レバー・あさり・小松菜不足はかゆみと関わることがあります

極端な糖質制限や食事量の削減を続けている方は、脂質とたんぱく質が同時に減っていることがあります。体重の変化が気になるこの年代だからこそ、削り方には注意が必要です。

やってはいけないこと

よかれと思ってやりがちな、逆効果の8つ
  • 熱いお湯につかる・熱いシャワーをかゆい場所に当てる
  • ナイロンタオル・ボディブラシでこする
  • ピーリング・角質ケアで粉を落とそうとする
  • 清涼感の強いかゆみ止めを塗り重ねる(一時的に紛れるだけで乾燥は進みます)
  • 消毒液で拭く(皮膚のバリアをさらに壊します)
  • 「保湿剤がベタつくから」と少量しか塗らない
  • 症状がある部位を日光に当てて乾かす
  • 他人に処方された塗り薬を使う(部位ごとに強さの選び方が違います)

通説の検証|水・コラーゲン・体質・冷やす

「水をたくさん飲めば乾燥は治る」は本当か

判定:脱水でなければ、飲む量を増やしても肌の乾燥は変わりにくいと考えられます。

体の水分が足りていない状態(脱水)であれば、当然ながら皮膚も乾きます。ですから普通に水分をとることは大切です。

ただし、すでに足りている人がさらに飲んでも、余分な水は尿として出ていきます。角層の水分量を決めているのは、体内の水の総量ではなく「角層が水を抱える力(セラミド・NMF)」と「逃がさないフタ(皮脂膜)」のほうだからです。

「1日2リットル飲んでいるのに乾く」という方が多いのは、この構造によります。飲む量を増やすより、塗る量を増やすほうが確実です。

「コラーゲンを飲めば肌が潤う」は本当か

判定:飲んだコラーゲンがそのまま肌のコラーゲンになるわけではありません。

コラーゲンはたんぱく質です。口から入ると、消化の過程でアミノ酸やペプチドに分解されて吸収されます。分解されたものが体内でどう使われるかは、体が決めることで、「飲んだ場所」が肌に届くわけではありません。

そして、乾燥肌で問題になっているのは主に角層(表皮のいちばん外側)の話で、コラーゲンがあるのは真皮という、もっと深い層です。層が違います。

「飲んで調子がよくなった気がする」という方の場合、たんぱく質の摂取量が増えたことや、意識が向いて保湿を丁寧にするようになったことが関わっている可能性があります。食品として楽しむぶんには問題ありませんが、乾燥肌の対策としては、お風呂と保湿のほうが先です。

「乾燥肌は体質だから仕方ない」は本当か

判定:体質の影響はありますが、「仕方ない」ではありません。

もともと皮脂の分泌が少ない方、アトピー性皮膚炎の素因がある方など、乾燥しやすさに個人差があるのは確かです。フィラグリンという、角層の保湿成分を作るのに関わるたんぱく質の遺伝的な違いも知られています。

ただ、乾燥肌の程度を決めているのは、体質だけではありません。お湯の温度、洗い方、塗る量とタイミング、室内の湿度、衣類。ここまでに挙げてきたことは、すべて自分で変えられる部分です。

「変えられない部分」があるからこそ、「変えられる部分」を丁寧にする価値があります。同じ体質でも、冬を粉だらけで過ごすか、かゆみなく過ごせるかは変わります。

「かゆいところは冷やすといい」は本当か

判定:短時間ならおすすめできます。ただし、やり方に条件があります。

冷たい刺激は、かゆみを伝える神経の働きを一時的に抑えます。掻き壊す前の「つなぎ」として、これは有効な選択肢です。

冷やすときの条件
  • 保冷剤は必ずタオルで包む。直接当てると凍傷のおそれがあります
  • 10〜20秒程度で離す。長時間当て続けない
  • 冷やしたあとは保湿する。冷やすだけでは乾燥そのものは変わりません
  • 冷えると悪化するタイプのかゆみ(寒冷じんましん)もあります。冷やして赤く膨れる方は中止して受診を
  • 体が冷えやすい方は、全身を冷やすのではなく、かゆい一点だけにしてください
4つの通説まとめ
  • 水を飲む:脱水でなければ肌の乾燥は変わりにくい。飲む量より塗る量
  • コラーゲンを飲む:分解されて吸収されるため、そのまま肌にはならない。層も違う
  • 体質だから仕方ない:個人差はあるが、変えられる部分のほうが大きい
  • 冷やす:短時間なら有効。ただし包む・長く当てない・そのあと保湿
夜の寝室で、間接照明のあかりに照らされたベッドの上に置かれた保湿ローションと綿の手袋、水の入ったグラス

よくある質問

Q 保湿を始めてから、どのくらいで変わりますか?

A.粉吹きやかゆみの軽さは数日〜1週間ほどで変化を感じる方が多いです。ただし、角層が入れ替わるには時間がかかるため、2〜4週間は続けて判断してください。逆にいうと、「量とタイミングを守って2週間続けても、まったく変わらない」なら、それは保湿の問題ではない可能性があります。皮膚科で相談する目安にしてください。

Q ボディクリームは高いものに替えたほうがいいですか?

A.価格より「必要な量を、必要な回数、続けられるか」のほうが結果を左右します。全身1回で約15g、1日2回なら1か月で約900g必要になる計算です。高価な製品を少量ずつ使うより、手頃な価格のものをたっぷり使うほうが理にかなっています。そのうえで、しみる・合わないと感じたら、香料や特定の成分が刺激になっている可能性があるので、シンプルな処方のものに変えてみてください。

Q 更年期の乾燥肌に、ホルモン補充療法(HRT)は効きますか?

A.乾燥肌やかゆみを目的にHRTを行うことは、現時点ですすめられません。エストロゲンが皮膚に関わっていることは知られていますが、「乾燥やかゆみの原因がエストロゲンの低下である」と断定できる段階ではなく、HRTで乾燥肌が改善するという確立した根拠もありません。HRTは、ほてり・発汗・不眠・骨密度など、効果が確認されている症状に対して検討するものです。すでに別の理由でHRTを受けている方が、結果として肌の変化を感じることはありますが、それは目的ではありません。皮膚の症状は、まず皮膚科で診てもらってください。

Q 顔は脂っぽいのに、体はカサカサです。どういうことですか?

A.皮脂腺の数が、体の場所によって大きく違うからです。顔(とくにTゾーン)・胸・背中の中心には皮脂腺が多く、すね・腕・脇腹には少ない。同じ人の体でも、場所によって「脂っぽい」と「カサカサ」が同時に成立します。ですからケアも場所ごとに変えてください。顔には顔用のもの、体には体用のものを。顔の脂が気になるからといって全身をさっぱり系の洗浄料で洗うと、すねの乾燥が進みます。

Q 夏なのにかゆいです。乾燥は冬のものではないのですか?

A.夏の乾燥は珍しくありません。冷房で室内の湿度が下がること、汗をかくたびにシャワーを浴びて皮脂を落とすこと、紫外線のダメージが重なります。また、汗そのものが刺激になってかゆくなる方もいます。夏はべたつかないローションタイプに替えて、回数はそのまま続けてください。「夏だから保湿はいらない」と中断すると、秋に一気に悪化します。

Q 掻いた跡が茶色く残ってしまいました。消えますか?

A.掻いた刺激による炎症のあとに色素が沈着したもので、時間とともに薄くなっていくことが多いですが、数か月から年単位かかることがあります。大事なのは、まず掻くのをやめること——炎症が続いているあいだは、色も濃くなり続けます。また、この部分は紫外線を浴びると濃くなりやすいので、露出する季節は衣類や日焼け止めで守ってください。皮膚が厚くごわごわに変化している(苔癬化)場合は、皮膚科で相談したほうが早く落ち着きます。

Q 家族に「そんなに掻いて」と言われるのがつらいです。

A.かゆみは、痛みと違って「我慢が足りない」と受け取られやすい症状です。伝え方としては、「気持ちの問題ではなく、皮膚のバリアが壊れて神経が表面近くまで伸びている状態」と、仕組みで説明するのが伝わりやすいと思います。そのうえで、「夜、背中に保湿剤を塗るのを手伝ってほしい」という具体的な頼みごとにすると、責める・責められるの構図から離れられます。手が届かない背中は、実際にいちばん塗り残されている場所でもあります。

Q 皮膚科では、どのくらいの間隔で通うことになりますか?

A.状態によりますが、炎症がある時期は1〜2週間後に再診して効き方を確認し、落ち着いてきたら間隔を空けていくという流れが一般的です。「良くなったから」と自己判断で中断すると、繰り返しやすくなります。とくに秋から冬にかけては、症状が出る前から保湿を始めておくほうが軽く済みます。受診のときは、1か月にどのくらいの量を使ったかを伝えると、量が足りているかどうかの判断材料になります。

まとめ

「保湿しているのに乾く」の答えは、たいてい量とタイミングにあります。全身1回で約15g。入浴後5分以内。この2つを守るだけで、変わる方はたくさんいます。

そして、この年代で急に乾き始めるのは、皮脂・セラミド・汗という3つの守りが、同じ時期にそろって変わるからです。あなたの手入れが足りなくなったわけではありません。肌のほうが、これまでと同じ手入れでは足りない状態になったのです。だから、やり方を変える必要があります。

もうひとつ。かゆみは、必ずしも乾燥のサインではありません。皮膚がきれいなのにかゆい。保湿しても変わらない。だるさや体重の変化を伴う。そのときは、保湿の量を増やすのではなく、原因のほうを確かめに行ってください。

この記事のポイントまとめ
  • 肌のうるおいは①皮脂膜 ②セラミド ③天然保湿因子の3層で守られ、40代以降は3つが同時に減る
  • 乾くとかゆくなるのは、かゆみの神経が角層の近くまで伸びてくるから。掻くとさらに伸びる悪循環になる
  • 赤み・ブツブツが出たら「皮脂欠乏性湿疹」。ここから先は保湿だけでは戻りにくいので皮膚科へ
  • すねから始まるのは、皮脂腺が少なく・脂肪が薄く・一日中こすられているから
  • 「ほてって汗をかくのに乾く」のは矛盾ではなく、汗の出方が場所と時間で偏っているから
  • エストロゲンは皮膚に関わるが、乾燥やかゆみの原因だと断定できる段階ではなく、HRTで治すという使い方はしない
  • 皮膚がきれいなのに全身がかゆいときは、腎臓・肝臓・甲状腺・血液・薬を確認する。血液検査でまとめて調べられる
  • 夜間に激烈なかゆみ+同居者にも同じ症状なら疥癬を疑う。市販のステロイドで悪化する
  • いちばん効くのはお風呂の見直し——湯温38〜40℃・10〜15分・ナイロンタオルをやめる
  • 熱いシャワーをかゆい場所に当てるのは、その場しのぎで確実に悪化する
  • 塗る量は全身1回で約15g(30FTU)。1本を3か月使っているなら10分の1しか塗れていない
  • 塗るタイミングは入浴後5分以内。保湿剤は脱衣所に置く
  • 重ねる順番は水分 → 油分。ワセリンだけでは水分は入らない
  • 夜のかゆみには包んだ保冷剤を10〜20秒・手のひらで押さえる・綿の手袋で寝る
  • 水を飲む量・コラーゲンを飲むことで角層の乾燥が変わるという根拠は乏しい

今夜のお風呂を1℃下げて、保湿剤を脱衣所に移してみてください。この2つは今日からできて、お金がかかりません。変化を感じられなければ、そのときは皮膚科の出番です。

この記事について

femnote 編集部

生理・妊活・フェムケア・更年期など女性の健康に関する情報を、厚生労働省「e-ヘルスネット」や日本産科婦人科学会をはじめとする各学会の診療ガイドラインなど、公的な資料をもとに編集しています。診断や治療の判断については、必ず医療機関にご相談ください。

参考文献

  • 公益社団法人 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A|乾皮症・皮脂欠乏性湿疹/皮膚瘙痒症/疥癬」
  • 日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」
  • 日本皮膚科学会「疥癬診療ガイドライン」
  • 日本皮膚科学会「蕁麻疹診療ガイドライン」
  • 日本産科婦人科学会・日本女性医学学会「ホルモン補充療法ガイドライン」
  • 日本女性医学学会「女性医学ガイドブック 更年期医療編」
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「皮膚の構造と働き」「生活習慣と皮膚」
  • 日本臨床皮膚科医会「皮膚の日常ケアについて」
  • American Academy of Dermatology「Dry skin: Diagnosis and treatment」「Itchy skin」
  • National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases (NIH)「Itching and Chronic Kidney Disease」