「低用量ピルを始めようと思って調べたら、種類が多すぎて何が違うのかわからない」——そんな声をよく耳にします。

婦人科で「どれにしますか?」と聞かれてもピンとこなかったり、友人が飲んでいるものと違うものを処方されて不安になったり。ピルを取り巻く情報は多いようで、「種類ごとの違い」をわかりやすくまとめた情報は意外と少ないのが現状です。

この記事では、日本で処方される低用量ピルの全種類を一覧で整理しながら、一相性・三相性の違い、超低用量ピルとの比較、ジェネリックと先発品の費用差、そして目的別の選び方まで、助産師の立場からわかりやすく解説します。

低用量ピルの「種類の違い」はどこを見ればいい?

低用量ピルは「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲスチン(合成黄体ホルモン)」の2種類の女性ホルモンを含む薬です。種類の違いを読み解くポイントは主に3つあります。

① エストロゲン量(低用量 vs 超低用量)

含まれるエストロゲン(エチニルエストラジオール=EE)の量で分類されます。

  • 低用量ピル:EE 30〜35μg(マイクログラム)
  • 超低用量ピル:EE 20μg以下

EE量が少ないほど吐き気や頭痛などの副作用が出にくいとされますが、不正出血(消退出血)が起きやすくなる傾向があります。

② プロゲスチン(合成黄体ホルモン)の種類

プロゲスチンの種類によって、PMSへの影響やニキビへの作用、副作用の出やすさが異なります。主なプロゲスチンは以下の3系統です。

  • レボノルゲストレル:三相性ピルに多い。歴史が長く安定した効果。
  • デソゲストレル:一相性ピルに多い。男性ホルモン作用が弱く、ニキビへの影響が出にくいとされる。
  • ドロスピレノン:抗アンドロゲン作用・抗アルドステロン作用を持ち、PMS症状(むくみ・情緒不安定)への対応が期待される。

③ ホルモン量の変動パターン(一相性 vs 三相性)

服用期間中にホルモン量が一定かどうかでも分類されます。

  • 一相性:21錠すべて同じホルモン量。飲み忘れ時のリカバリーがシンプル。
  • 三相性:3段階でホルモン量が変化し、自然な月経周期に近い設計。
白い背景の上にコルク栓の透明ガラス瓶6本とカモミールの花・白い小石が散らばった清潔感あるフラットレイ。低用量ピルの種類・成分の多様性を表すイメージ

【一覧表】日本で処方される低用量ピルの全種類

一相性ピル(ホルモン量一定タイプ)

21錠または28錠(うち7錠が偽薬)で構成され、飲み方がシンプルです。初めてピルを使う方や、飲み忘れが心配な方に向いています。

製品名 プロゲスチン EE量 先発/後発 月額費用目安(自費)
マーベロン28 デソゲストレル 30μg 先発品 約2,500〜3,500円
ファボワール28 デソゲストレル 30μg 後発品(ジェネリック) 約1,500〜2,500円

三相性ピル(ホルモン量が3段階変化するタイプ)

服用週によってホルモン量が変わる設計で、自然な周期に近い状態を目指したタイプです。三相性では中間の週にエストロゲン量が最大になります。

製品名 プロゲスチン EE量(低/中/高相) 先発/後発 月額費用目安(自費)
トリキュラー28 レボノルゲストレル 30/40/30μg 先発品 約2,500〜3,500円
アンジュ28 レボノルゲストレル 30/40/30μg 後発品 約1,500〜2,500円
ラベルフィーユ28 レボノルゲストレル 30/40/30μg 後発品 約1,500〜2,500円
費用はクリニックによって異なります 上記はあくまで目安です。処方料・診察料が加わるため、実際の負担額はクリニックによって異なります。オンライン処方では費用が変わる場合もあります。

治療目的ピル(LEP)とは?超低用量ピルと低用量ピルの違い

月経困難症・子宮内膜症の治療に使われるピルは「LEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)」と呼ばれ、保険適用があります。中でもEE 20μg以下のものを「超低用量ピル」と呼ぶことが多く、エストロゲン関連の副作用(吐き気・頭痛・むくみなど)が出にくいというメリットがある一方、不正出血(消退出血)が起こりやすいという特徴があります。

保険適用で処方される場合は3割負担になるため、自費の低用量ピルと比べて費用を大きく抑えられます。

製品名 プロゲスチン EE量 区分 主な適応症 先発/後発
ルナベルLD ノルエチステロン 35μg(低用量) LEP 月経困難症 先発品
フリウェルLD ノルエチステロン 35μg(低用量) LEP 月経困難症 後発品
ルナベルULD ノルエチステロン 20μg(超低用量) LEP 月経困難症 先発品
フリウェルULD ノルエチステロン 20μg(超低用量) LEP 月経困難症 後発品
ジェミーナ レボノルゲストレル 20μg(超低用量) LEP 月経困難症 先発品
ヤーズ ドロスピレノン 20μg(超低用量) LEP 月経困難症・子宮内膜症 先発品
ヤーズフレックス ドロスピレノン 20μg(超低用量) LEP 子宮内膜症(連続投与型) 先発品
ドロエチ ドロスピレノン 20μg(超低用量) LEP 月経困難症・子宮内膜症 後発品

※LEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)は月経困難症・子宮内膜症の治療目的で保険適用になる製剤の総称です。ルナベルLDのようにEE35μgでも治療目的で処方されるものが含まれます。

超低用量ピルは「避妊目的には向かないの?」と思う方もいますが、避妊効果は低用量ピルとほぼ同等です(ただし日本では避妊目的の保険適用はありません)。「生理痛や月経困難症がつらいけれど、避妊もしたい」という場合は超低用量ピルが選択肢になることがあります。詳しくは婦人科で相談しましょう。

なお、低用量ピルの副作用(吐き気・不正出血・頭痛など)については「低用量ピルの副作用」の記事でくわしく解説しています。

淡いリネン地の上に白い小皿に並べた丸い白い石・ラベンダーの穂・ピンクのバラの花びら。婦人科ケアとナチュラルウェルネスのイメージ

ジェネリック(後発品)は先発品と何が違う?費用比較

ジェネリック医薬品(後発品)は、先発品の特許が切れた後に製造・販売される薬で、有効成分・含有量・投与経路・効能・用法用量が同一であることが承認要件として定められています。

つまり、ピルにおいてもジェネリックは先発品と「同じ成分・同じ量」です。ただし、添加物(コーティング剤・着色料など)は異なることがあります。

比較項目 先発品 ジェネリック(後発品)
有効成分・含有量 基準 同一
避妊・治療効果 基準 同等
添加物・コーティング 独自処方 異なる場合あり
月額費用目安(自費) 約2,500〜3,500円 約1,500〜2,500円

「先発品を飲んでいたのにジェネリックに変えたら体調が変わった」という声が稀にありますが、これは主に添加物の違いによる可能性や、プラセボ効果の関与が考えられます。医学的には同等と判断されていますが、体質的に合わないと感じる場合は医師・薬剤師に相談してみましょう。

保険適用時のジェネリックはさらに安い 月経困難症などで保険適用になっている場合、ジェネリックを選ぶと3割負担の金額がさらに下がります。継続服用を予定している場合は、ジェネリックへの変更を医師に相談する価値があります。

目的・体質別:自分に向いているピルの選び方

「どのピルを選ぶか」は最終的には医師が診察・問診をもとに判断します。以下はあくまで参考情報として整理したものです。

主に避妊目的で使いたい

避妊効果は低用量ピルの種類によってほとんど差はありません。正しく服用した場合の有効率は99.7%以上とされています。費用を抑えたい場合は、ジェネリックがある一相性・三相性ピルが選択肢になります。

初めての方には、飲み方がシンプルな一相性ピルが選ばれやすい傾向があります。飲み忘れた場合の対処法については「ピルを飲み忘れたときの対処法」も参考にしてください。

生理痛・月経困難症をなんとかしたい

生理痛が強い・月経困難症と診断されている場合は、超低用量ピルが保険適用になるため費用面で有利です。ルナベルULD・フリウェルULD・ジェミーナなどが選択肢として挙がります。

同じ低用量ピルでも、継続服用で生理痛の改善が期待されることが多いですが、詳しい効果は医師に確認しましょう。

PMSやニキビにも対応したい

PMSの症状(むくみ・情緒不安定・乳房痛など)に悩む方は、ドロスピレノン系のピル(ヤーズ・ドロエチなど)が選択肢として挙がることがあります。ドロスピレノンは抗アンドロゲン・抗アルドステロン作用を持つとされ、皮脂分泌への関与も報告されています。ただし、血栓リスクや個人差があるため、必ず医師と相談してください。

費用をできるだけ抑えたい

月経困難症や子宮内膜症が診断されていれば、超低用量ピル(保険適用)+ジェネリックの組み合わせが最もコストを抑えられます。避妊のみを目的とする場合は保険適用がないため、ジェネリックの低用量ピルを選ぶのが現実的です。

目的・状況 向いているタイプ 主な選択肢(例)
避妊メイン 低用量ピル一相性(ジェネリック) ファボワール28
生理痛・月経困難症 超低用量ピル(保険適用) フリウェルULD、ジェミーナ
PMSへの対応 ドロスピレノン系 ヤーズ、ドロエチ
費用を抑えたい ジェネリック後発品 アンジュ28、フリウェル系
自己判断で選ばず必ず婦人科で処方を ピルは処方薬であり、既往歴・体質・服用中の薬によって使えない種類があります。血栓症リスクがある方や喫煙者、35歳以上の方は特に注意が必要です。上記の情報は参考情報であり、最終的には必ず医師の診察・処方のもとで使用してください。

ミニピル(プロゲスチン単剤)との違いも知っておこう

「ミニピル」は、エストロゲンを含まずプロゲスチン(合成黄体ホルモン)のみからなるピルです。日本では「セラゼッタ」(成分:デソゲストレル75μg)が代表的な製品です。

エストロゲンによる副作用(吐き気・血栓リスクなど)を避けたい方や、授乳中でエストロゲン製剤が使いにくい方などに選択肢として挙がります。

比較項目 低用量ピル ミニピル(セラゼッタ)
含まれるホルモン エストロゲン+プロゲスチン プロゲスチンのみ
避妊効果 高い(99.7%以上) 高い(99%以上)
吐き気・頭痛 出る場合あり 比較的少ない
不正出血 少ない 起こりやすい
服用タイミングの厳密さ 12時間以内 3時間以内(厳格)
保険適用 条件あり(超低用量) なし

ミニピルは服用タイミングが3時間以内と厳格なため、生活リズムが不規則な方には不向きな面もあります。「エストロゲンを避けたい理由がある」場合など、特定の条件下で婦人科医と相談しながら検討する選択肢です。

婦人科での処方の流れ|何を相談すればいい?

初めて低用量ピルを処方してもらう場合の一般的な流れは以下のとおりです。

  1. 問診・血圧測定:既往歴・服用中の薬・喫煙習慣・家族歴などを確認。血圧が高い場合はピルが使えないことがあります。
  2. 血液検査(初回のみ、施設により異なる):血液凝固機能や肝機能を確認するクリニックもあります。
  3. 医師との相談:目的(避妊・生理痛改善・PMSなど)と希望を伝えます。「費用を抑えたい」「ジェネリックにしてほしい」も伝えてOKです。
  4. 処方・服用開始:生理開始日から飲み始めるのが一般的です(Sunday Start法の場合は異なります)。
  5. 定期受診:3〜6か月に1回を目安に受診し、血圧確認・継続処方を受けます。
「どのピルがいいか」は医師に相談するのがベスト 「生理痛がつらい」「PMSが気になる」「費用をなるべく抑えたい」など、困っていることをそのまま伝えれば大丈夫です。医師があなたの状況に合ったピルを提案してくれます。自分で種類を決めようとしなくて構いません。

よくある質問

Q 低用量ピルと超低用量ピル、副作用はどちらが少ないですか?

A.エストロゲン関連の副作用(吐き気・頭痛・むくみ)は、EE量が少ない超低用量ピルの方が出にくいとされています。一方、不正出血(消退出血)は超低用量ピルの方が起こりやすい傾向があります。どちらの副作用が自分にとって気になるかを医師と相談して選ぶのがよいでしょう。

Q ジェネリックピルは先発品と効果が変わりますか?

A.有効成分と含有量は先発品と同一であるため、避妊・治療効果は同等です。添加物や錠剤のコーティングが異なる場合があり、稀に体質的な合う合わないを感じる方がいます。不安な場合は薬剤師や医師に相談しましょう。

Q 一相性と三相性、どちらを選べばいいですか?

A.避妊効果に大きな差はありません。一相性はすべての錠剤のホルモン量が同じため、飲み忘れ時のリカバリーがシンプルです。初めてピルを使う方や飲み忘れが心配な方は一相性が選ばれやすい傾向があります。三相性は自然な月経周期に近い設計ですが、飲み忘れ時の対処がやや複雑です。医師に自分のライフスタイルを伝えて相談するのがベストです。

Q 処方されたピルを別の種類に変えてもらうことはできますか?

A.可能です。「副作用が気になる」「費用を抑えたい」「ジェネリックに変えたい」などの理由であれば、受診時に医師に伝えましょう。種類を変える際は次のシートが始まるタイミングで切り替えることが多いため、変更希望があれば早めに相談するのがスムーズです。

Q ピルを飲むと生理痛は改善されますか?

A.ピルを継続服用することで、生理量の減少・生理痛の軽減が期待できるとされています。特に月経困難症・子宮内膜症の治療目的で処方される超低用量ピルは、保険適用の範囲内で治療効果が認められています。ただし個人差があり、服用開始後数か月は不正出血や体調変化が起こることもあります。気になる症状があれば医師に相談しましょう。

まとめ:自分に合う一本を婦人科で見つけよう

この記事のポイントまとめ
  • 低用量ピルは「プロゲスチンの種類」「エストロゲン量(低用量 vs 超低用量)」「一相性 vs 三相性」で分類される
  • 避妊目的なら低用量ピル(一相性・三相性)、月経困難症・子宮内膜症なら治療目的ピル(LEP・保険適用あり)が選択肢
  • ジェネリックは先発品と同一成分・同等効果で、月額1,000〜1,500円程度安くなる傾向がある
  • ドロスピレノン系(ヤーズ等)はPMS症状への対応が期待されるが、血栓リスクや個人差あり
  • ミニピル(セラゼッタ)はエストロゲンを含まない選択肢だが、服用タイミングが3時間以内と厳格
  • 最終的な選択は必ず婦人科医の診察・問診をもとに行う。目的・困りごとを医師に正直に伝えることが大切

低用量ピルは「一種類しかない」わけではなく、それぞれに特徴があります。「費用を抑えたい」「生理痛も何とかしたい」「PMSもつらい」——そのような複数の希望がある場合こそ、婦人科で率直に話してみてください。あなたのライフスタイルと体質に合ったピルを、一緒に見つけてもらえます。

この記事を書いた人

白石まい(助産師・フェムテックエキスパート)

産婦人科病院で13年間、助産師として延べ2,000件以上の分娩に立ち会う。生理・妊活・更年期など、女性のライフステージに寄り添った健康相談を得意とする。現在はフリーランス助産師として活動しながら、フェムテックエキスパートとして「女性が自分の体をもっと好きになれる社会」を目指してfemnoteで情報を発信中。

参考文献

  • 日本産科婦人科学会・日本女性医学学会「OC・LEPガイドライン2020年度版」
  • 厚生労働省「低用量経口避妊薬の適正使用に関するガイドライン」
  • Trussell J. Contraceptive failure in the United States. Contraception. 2011;83(5):397-404.
  • 各製品添付文書:マーベロン28・トリキュラー28・ヤーズ・ルナベルULD・ジェミーナ・セラゼッタ(各製薬会社)
  • 日本産科婦人科学会「子宮内膜症取扱い規約 第3部 治療編」2022年