夜中にお腹が硬くなって目が覚めた。痛みの間隔を計ってみたけれど、15分だったり40分だったり、ばらばらで分からない。病院に電話していいのか、まだ様子を見るべきなのか——臨月のこの時間帯に、スマホで「前駆陣痛」と検索している方はとても多いです。

前駆陣痛のやっかいなところは、「これがそうです」と教えてくれる決定的なサインがないことです。本陣痛かもしれないし、違うかもしれない。その曖昧さのまま、痛みだけが夜通し続きます。

この記事では、前駆陣痛で体に何が起きているのか、どこがどう痛むのかを部位ごとに、本陣痛と見分ける5つのポイント、「夜だけ来る」と感じる理由、何日も続くときにどう考えればいいか、そして前駆陣痛だと思ってはいけないサインまでを順番に整理します。今まさに痛みの中にいる方は、本陣痛との見分け方すぐ連絡すべきサインから読んでください。もう何日も痛みが続いている方は、ずっと痛い・一日中続くときへ先に進んでください。

前駆陣痛とは?読み方と、体の中で起きていること

読み方は「ぜんくじんつう」。医学的には「偽陣痛」

前駆陣痛は「ぜんくじんつう」と読みます。「ぜんくうじんつう」ではありません。

医学的には偽陣痛(ぎじんつう)と呼ばれます。英語では Braxton Hicks contractions(ブラクストン・ヒックス収縮)といい、19世紀にこの現象を報告した医師の名前がついています。「偽」という字がついていますが、体が何か間違ったことをしているわけではありません。お産に向かう正常な過程の一部です。

子宮が本番に向けて練習している状態

子宮は筋肉でできた袋です。出産のときには、この筋肉が強く収縮して赤ちゃんを押し出します。前駆陣痛は、その筋肉が本番の前に不規則に収縮している状態です。

この収縮には意味があります。繰り返し収縮することで、子宮の入口(子宮頸管)が少しずつやわらかくなり、短くなっていきます。お産が始まるための準備が、痛みという形で表に出ているということです。

ただし、前駆陣痛では子宮口はほとんど開きません。ここが本陣痛との決定的な違いです。本陣痛は子宮口を開かせながら進みますが、前駆陣痛はやわらかくするところで止まります。「昨日あんなに痛かったのに、健診で『まだ開いてませんね』と言われた」ということが起こるのは、このためです。

前駆陣痛は「無駄な痛み」ではありません
  • 子宮の入口をやわらかく・短くする働きがある
  • 赤ちゃんの頭が骨盤の中へ下りるのを助ける
  • 子宮への血流を促す

「何日も痛かったのに進んでいない」と感じるときでも、体は本番に向けた準備を進めています。痛みが報われていないわけではありません。

「お腹の張り」との違い|痛みを伴うかどうか

妊娠中期から、多くの方が「お腹の張り」を経験します。お腹が硬くなる感じで、痛みはないか、あってもごく軽いものです。

前駆陣痛も同じ子宮の収縮ですが、臨月が近づくと収縮が強くなり、「張り」ではなく「痛み」として感じられるようになります。張りと前駆陣痛のあいだに明確な境目があるわけではなく、連続したものの強さの違いだと考えてください。

お腹の張り前駆陣痛本陣痛
時期妊娠中期〜妊娠後期〜臨月お産のとき
感じ方お腹が硬くなる硬くなる+痛み強い痛みの波
規則性不規則不規則規則的
休むと治まる治まることが多い治まらない
子宮口変化なしやわらかくなる開いていく

いつから始まる?初産婦・経産婦の違い

多くは妊娠36週以降。早い人は34〜35週から

前駆陣痛をはっきり自覚し始めるのは、妊娠36週前後からという方が多くなります。正期産(37週0日〜)に入るころに頻度が増え、出産直前がピークになります。

ただし個人差がとても大きく、34〜35週ごろから「これは張りではなく痛みだ」と感じる方もいます。妊娠後期の体の変化については妊娠9ヶ月(32〜35週)妊娠10ヶ月(36〜39週)もあわせてご覧ください。

【重要】37週より前の規則的な張りは、前駆陣痛として扱わない

ここがこの記事でいちばん大事な部分です。

妊娠37週0日より前に、規則的な張りや痛みがあるとき
  • 「前駆陣痛だろう」と自己判断しないでください。早産の兆候(切迫早産)である可能性があります
  • 目安として、1時間に6回以上(10分おき程度)の規則的な張りが続くとき
  • 張りとあわせて出血・破水したような水っぽい流れ・持続する痛みがあるとき
  • 上記のいずれかがあれば、時間帯を問わず施設に連絡してください

早産は、早く気づいて対処できるかどうかが大きく効いてくるものです。「前駆陣痛」という言葉を知っているために受診が遅れるのが、このテーマでいちばん避けたいことです。37週を過ぎているかどうかを、まず確認してください。

経産婦のほうが早く・強く出やすい理由

一度お産を経験している方は、前駆陣痛を早い時期から、強く感じる傾向があります。子宮がすでに一度大きく伸び縮みした経験があり、収縮に反応しやすくなっているためです。

また、経産婦は「これは前駆陣痛だ」と自分で分かることが多い一方で、お産全体の進みが速いため、本陣痛に切り替わってから分娩までの時間が短くなります。「前回と同じだから大丈夫」と様子を見すぎないことも大切です。

まったく感じないまま出産する人もいます

逆に、前駆陣痛をほとんど自覚しないまま本陣痛を迎える方もいます。これも異常ではありません。

お腹の張りに気づきにくい体質の方、痛みの感じ方が穏やかな方、日中忙しくて気づかないうちに終わっている方など、理由はさまざまです。「前駆陣痛がないとお産が進まない」ということはありません。ないことを心配する必要はありません。

どんな痛み?どこが痛い?部位別に解説

明るいリビングのソファに腰かけ、くすみピンクの部屋着姿でお腹に両手をそえ、視線を落としてつらそうな表情をしている20代後半から30代前半の日本人の妊婦

「どんな痛みですか」と聞かれても、答えが人によってまったく違うのが前駆陣痛です。痛む場所も、痛みの質も、強さも共通していません。ここでは検索されることの多い部位ごとに分けて説明します。

お腹全体が硬くなる(板のように張る)

いちばん多いのが、お腹全体がぎゅっと硬くなる感じです。手で触ると、ふだんのやわらかさがなくなり、板や風船のようにぴんと張っているのが分かります。

この硬さは30秒〜2分ほど続き、そのあとふっとゆるみます。「硬い時間」と「やわらかい時間」がはっきり分かれるのが、子宮の収縮の特徴です。ずっと硬いままの場合は別の状態が考えられるため、受診の目安を確認してください。

下腹部の、生理痛のような痛み

下腹部がずーんと重くなる、生理痛によく似た痛みを感じる方も多くいます。「臨月になって生理痛のような痛みがある」と検索する方が多いのは、この感覚を言葉にしようとしたときに、いちばん近い経験が生理痛だからです。

生理痛と似ているのには理由があります。どちらも子宮の筋肉が収縮することで起きる痛みで、プロスタグランジンという同じ物質が関わっています。生理痛の感じ方については月経困難症とはでも説明しています。

腰が砕けそうな痛み|腰に来る人が多い理由

「腰が砕けそう」という表現で検索する方が一定数います。お腹より腰のほうが強く痛むケースは珍しくありません。

子宮とその周りの神経は、腰やお尻の感覚と同じ経路を通って脳に届きます。そのため子宮の収縮が「腰の痛み」として感じられることがあります。加えて臨月は、大きくなった子宮の重みと、ゆるんだ骨盤まわりの靭帯によって、もともと腰に負担がかかっています。この2つが重なって、腰の痛みとして出やすくなります。

恥骨・足の付け根・お尻に響く

赤ちゃんの頭が骨盤の中へ下りてくると、恥骨のあたり、足の付け根、お尻の奥に痛みが響くようになります。歩くときに足の付け根がずきっとする、座っていて立ち上がるときに恥骨が痛む、といった形で出ます。

これは前駆陣痛そのものというより、赤ちゃんが下りてきたことによる圧迫が主な原因です。前駆陣痛と同じ時期に重なって起きるため、まとめてつらく感じられます。

痛みの強さは人によってまったく違う

「どのくらい痛いですか」という問いには、正直に言って目安を示せません。「生理痛の何倍」といった数字を書いている情報を見かけることがありますが、生理痛の強さ自体が人によって大きく違うため、比較の基準になりません。

実際には、「言われてみれば張っているかな」という程度の方から、痛みで眠れず涙が出る方まで幅があります。どちらも前駆陣痛です。軽いから準備ができていないわけでも、強いからお産が近いわけでもありません。

吐き気・下痢・便意をともなうことがある

前駆陣痛と前後して、吐き気、下痢、便意を感じることがあります。子宮の収縮に関わるプロスタグランジンは腸にも作用するため、腸の動きが活発になるからです。

また、下りてきた赤ちゃんの頭が直腸を圧迫することで、「便が出そう」という感覚が起きることもあります。この感覚は本陣痛が進んだときにも強く出るため、便意そのものでお産が近いかを判断するのは難しいと考えてください。

本陣痛との見分け方|5つのチェックポイント

いま痛みの中にいる方は、ここだけ読んでも構いません。5つを順番に確認してください。

① 間隔は規則的か

いちばん大事なポイントです。前駆陣痛はばらばら(15分・40分・20分…)、本陣痛は規則的(10分・10分・9分…)です。そして本陣痛は、時間がたつにつれて間隔が縮まっていきます。

② 痛みは強くなっていくか

前駆陣痛は強くなったり弱くなったりし、いつのまにか消えます。本陣痛は、後戻りせずに一貫して強くなっていきます。

③ 休むと治まるか

横になる、お風呂に入る、水を飲む、体勢を変える——これで楽になるなら前駆陣痛の可能性が高いです。本陣痛は、何をしても止まりません。

④ 痛む場所が広がるか

前駆陣痛はお腹か腰など、限られた場所にとどまることが多くなります。本陣痛は進むにつれてお腹から腰、お尻へと痛みが広がっていきます。

⑤ 時間帯に左右されるか

前駆陣痛は夜に強く、日中は落ち着くという波があります。本陣痛は時間帯に関係なく進みます。

チェック項目前駆陣痛本陣痛すぐ連絡すべき張り
① 間隔不規則・ばらばら規則的・縮まっていく37週未満で規則的
② 強さの変化強くなったり弱くなったり一貫して強くなる休みなく強い痛みが続く
③ 休んだとき治まることが多い治まらない治まらず出血をともなう
④ 痛む場所お腹か腰など限定的腰・お尻へ広がるお腹が硬いまま戻らない
⑤ 時間帯夜に多い・日中は落ち着く時間帯に関係なく進む時間帯に関係なく持続
子宮口やわらかくなる(開かない)開いていく
対応休んで様子をみる間隔を計って連絡すぐ連絡

間隔の正しい計り方|「痛み始め」から次の「痛み始め」まで

間隔の計り方を間違えている方が少なくありません。

陣痛の間隔とは
  • 正:痛みが始まった時刻から、次の痛みが始まった時刻まで
  • 誤:痛みが終わった時刻から、次の痛みが始まるまで(=痛みのない時間)

痛みが1分続いて9分休む場合、間隔は「9分」ではなく「10分」です。誤った計り方をすると実際より短く出て、まだ早い段階で連絡することになります。あわせて1回の痛みが何秒続くか(持続時間)もメモしておくと、電話で状況が伝わりやすくなります。

スマホの陣痛アプリを使うと、ボタンを押すだけで間隔と持続時間を記録できます。紙とペンでも構いません。痛みのさなかに計算しようとしないことが大切です。

【連絡の目安】初産10分・経産15分

施設に連絡する間隔の目安
  • 初産婦:痛みの間隔が10分おきになり、それが1時間ほど続いたら連絡
  • 経産婦:お産の進みが速いため、15分おきを目安に早めに連絡
  • 間隔にかかわらず連絡:破水したとき/出血が多いとき/痛みが休みなく続くとき/胎動が減ったとき/37週未満のとき

これは一般的な目安です。施設から個別の指示が出ている場合は、そちらを優先してください。病院まで遠い方、上の子がいて移動に時間がかかる方は、早めに動いて構いません。

なぜ夜だけ痛むのか|「夜になると来る」の理由

「前駆陣痛 夜だけ なぜ」という検索が多くあります。夜に強くなるのは、多くの方が実際に経験していることです。気のせいではありません。理由はいくつか重なっています。

① 日中の活動の負担が、夕方以降に出る

日中、立ったり歩いたりしていると、赤ちゃんの重みが骨盤にかかり続けます。その蓄積が、体を休める夕方から夜にかけて張りとして出てきます。「今日はよく動いた日ほど夜が痛い」と感じるのは、この面があるためです。

② 夜はオキシトシンが出やすい時間帯

子宮を収縮させるホルモンであるオキシトシンは、夜間から明け方にかけて分泌が増えやすいことが知られています。本陣痛も夜中から明け方に始まることが多いのは、同じ理由だと考えられています。

③ 日中は気が紛れているだけ、という面もある

身もふたもない話ですが、これは大きい要素です。日中は家事や仕事、上の子の世話に気を取られていて、同じ強さの張りでも意識に上りません。横になって静かになった夜、初めて「痛い」と認識されます。

つまり「夜だけ来る」のではなく、「夜だけ気づいている」場合がかなりあります。日中に一度、意識して自分のお腹に手を当ててみると、実は昼も張っていることに気づくかもしれません。

夜つらくて眠れないときにできること

夜の前駆陣痛をやり過ごす方法
  • 横向きで、膝のあいだにクッションをはさむ。左を下にすると子宮への血流が保たれやすくなります
  • 体勢を変えてみる。仰向けがつらければ横向き、それでもつらければ座って前かがみに
  • 腰やお尻を温める。痛む場所に蒸しタオルや湯たんぽを当てます(低温やけどに注意)
  • 水分をとる。脱水は子宮の収縮を起こしやすくします
  • 時間を計るのをいったんやめる。不規則だと確認できたら、アプリを閉じて休むほうが体が休まります
  • 「眠らなければ」と思わない。横になって目を閉じているだけでも体は休まります

ずっと痛い・一日中続く・何日も終わらないとき

ベッドの上に置かれた木のトレイに、湯気の立つ飲み物のマグカップ、スマートフォン、たたんだ白いブランケット、ユーカリを挿した小さな花瓶が並び、朝の光が差している

前駆陣痛は数日から2週間ほど続くことがあります

「もう3日も痛いのに生まれない」「一日中ずっと痛い」——このつらさは、実際に多くの方が経験しています。

前駆陣痛が始まってから本陣痛が来るまでの期間に、決まった長さはありません。その日のうちに本陣痛になる方もいれば、1〜2週間にわたって前駆陣痛と付き合う方もいます。「あと何日」と言える目安は、残念ながら存在しません。

「長い=お産が近い」とは限りません

前駆陣痛が強く長く続くと、「いよいよだ」と身構えます。そして来ないと、がっかりします。これを何度も繰り返すのは、想像以上に消耗することです。

正直に書くと、前駆陣痛の長さや強さから、出産までの日数を予測することはできません。何日も前駆陣痛があった方がその後すぐに出産することもあれば、ほとんど前駆陣痛がないまま本陣痛に入る方もいます。

予測できないものを予測しようとするのをやめるのが、この時期をいちばん楽に過ごす方法かもしれません。「今日来たら今日、来なかったら明日」くらいの構えでいるほうが、消耗しません。

眠れない・食べられないほどのときは、相談していい

「まだ本陣痛じゃないから」と我慢しなくていい状況
  • 痛みで何日も眠れていない
  • 痛みで食事がとれない
  • 不安が強くて、日常生活が成り立たない
  • 自分ではもう前駆陣痛か本陣痛か判断できなくなっている

これらは、健診を待たずに連絡していい状況です。「本陣痛ではないのに電話したら迷惑では」と考える必要はありません。お産が近い時期に体力を消耗しきってしまうことのほうが、問題になります。施設としても、状態を把握できたほうが安心です。

実際に受診して「まだですね」と言われて帰ることになっても、それは無駄足ではありません。赤ちゃんの状態と子宮口を確認できたという結果が残ります。

本陣痛に「つなげる方法」はあるのか

「前駆陣痛から本陣痛につなげる方法」という検索があります。散歩、スクワット、階段の上り下り、乳頭の刺激などがよく挙げられます。

正直に書きます。これらがお産を早めると、はっきり証明されているわけではありません。「歩いたら陣痛が来た」という体験談は多くありますが、歩かなくてもいずれ陣痛は来るため、効果を切り分けるのが難しいのです。

自己判断でやらないほうがいいこと
  • 乳頭の刺激:オキシトシンの分泌を促すため、子宮の収縮が強くなりすぎることがあります。施設から勧められた場合以外は、自己判断で行わないでください
  • 無理な運動:臨月の体はバランスを崩しやすく、転倒のリスクがあります
  • 体を冷やす行動・脱水になるまでの活動

体を動かすこと自体は悪いことではありません。ただ、動けない日に「やらなかったから来ないんだ」と自分を責める必要はまったくないということです。

前駆陣痛が来たときの過ごし方

まず休む・温める・水分をとる

前駆陣痛だと分かったら、対応はシンプルです。休む、温める、水分をとる。この3つで多くは落ち着きます。

逆に、緊張して体に力を入れていると痛みを強く感じます。息をゆっくり吐くことを意識してください。吸うほうではなく吐くほうに意識を向けると、体の力が抜けやすくなります。

記録のつけ方|何をメモすれば医療者に伝わるか

電話で状況を伝えるとき、次の項目がそろっていると話が早く進みます。

メモしておく項目
  • 今日が妊娠何週何日か(最初に必ず聞かれます)
  • 痛みが始まった時刻
  • 間隔(痛み始めから次の痛み始めまで)と、その規則性
  • 1回の痛みが続く秒数
  • 痛む場所(お腹・腰・恥骨など)
  • 休んだときに治まるかどうか
  • 出血・破水・胎動の有無
  • 初産か経産か、前回のお産にかかった時間

入院の準備と連絡先の最終確認

前駆陣痛が始まったら、本番が近いサインとして準備を見直すタイミングです。入院バッグ、母子健康手帳と保険証と診察券、夜間の連絡先、移動手段(陣痛タクシーの登録)、家族への連絡手順、上の子の預け先——このあたりを一度そろえておくと、実際に始まったときに落ち着いて動けます。

やらなくていいこと

前駆陣痛のたびに完璧に時間を計る、痛むたびに家族に報告する、来るか分からない本陣痛に備えて起きて待つ——これらは全部やらなくて構いません。

不規則だと分かった時点で、いったん記録をやめて休むほうが体力が残ります。本陣痛になれば、記録していなくても分かります。

これは前駆陣痛ではない|すぐ連絡すべきサイン

時間帯を問わず、すぐに施設へ連絡してください
  • 妊娠37週未満で、規則的な張りが続く(1時間に6回以上が目安)
  • 破水したかもしれない。水っぽい流れが自分で止められない、生あたたかい感じがする
  • 出血がある。特に鮮やかな赤い出血、生理の多い日のような量
  • お腹が硬いまま、やわらかく戻らない
  • 休みなく強い痛みが続く。波がなく、ずっと痛い状態
  • 胎動がいつもより明らかに少ない、感じない
  • 発熱がある
  • 頭痛・目のちらつき・強いむくみ(妊娠高血圧症候群のサイン)

迷ったら連絡してください。「大したことなかった」で終わるのがいちばんいい結果です。産科の施設は夜間も連絡を受ける体制になっています。

お腹が硬いまま戻らない、強い痛みが休みなく続く、出血をともなう——これらは常位胎盤早期剥離など、緊急の対応が必要な状態のサインでもあります。前駆陣痛の「波がある」という特徴に当てはまらない痛みは、前駆陣痛として扱わないでください。妊娠中の出血については妊娠初期の出血でも考え方を説明しています。

よくある質問

Q 前駆陣痛が来てから、どのくらいで出産になりますか?

A.決まった長さはありません。その日のうちに本陣痛になる方もいれば、1〜2週間にわたって前駆陣痛が続く方もいます。前駆陣痛の強さや長さから出産までの日数を予測することはできません。「平均◯日」という数字を見かけても、ご自身に当てはまるとは限らないため、予定を立てる材料にはしないでください。

Q 前駆陣痛は1日に何回くらい起きますか?

A.回数も人によって大きく違い、1日に数回の方もいれば、断続的に何度も感じる方もいます。回数そのものより「規則的かどうか」が大事です。ただし妊娠37週未満で1時間に6回以上の規則的な張りがあるときは、回数が判断材料になります。この場合は前駆陣痛と考えず、施設に連絡してください。

Q 前駆陣痛と胎動は関係がありますか?

A.赤ちゃんが強く動いたあとにお腹が張ることはありますが、胎動そのものと子宮の収縮は別のものです。見分け方は、お腹全体が均一に硬くなるのが張り(前駆陣痛)、一部がぼこっと動くのが胎動です。なお臨月に入っても胎動はなくなりません。「いつもより明らかに少ない」と感じたときは、前駆陣痛の有無にかかわらず連絡してください。

Q 前駆陣痛がないまま出産することはありますか?

A.あります。前駆陣痛をほとんど自覚しないまま本陣痛を迎える方は珍しくありません。お腹の張りに気づきにくい、日中忙しくて意識に上らない、痛みの感じ方が穏やかなど理由はさまざまです。「前駆陣痛がないとお産が進まない」ということはありません。ないことを心配する必要はありません。

Q 前駆陣痛のとき、お風呂に入っても大丈夫ですか?

A.施設から制限が出ていなければ問題ないことがほとんどで、温まることで前駆陣痛が落ち着く方も多くいます。ただし破水しているかもしれないときは入浴を控えて、先に連絡してください(感染を防ぐためです)。また臨月は体のバランスが崩れやすいので、浴室での転倒に気をつけ、可能なら家族がいる時間帯に入ってください。長湯とのぼせにも注意します。

Q 痛み止めを飲んでもいいですか?

A.自己判断で市販の痛み止めを飲まないでください。妊娠後期は、使える薬と使えない薬がはっきり分かれる時期です。手がかりとしては、生理痛や頭痛に広く使われている「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」と呼ばれる種類は、妊娠後期には避けるべきものとされています。赤ちゃんの血管や腎臓のはたらきに影響するおそれがあるためで、市販の鎮痛薬の多くがこの種類にあたります。つらいときはまず施設に電話して相談してください。妊娠中に処方された薬が手元にある場合も、この時期に飲んでよいかを確認してからにします。

Q 病院に行って「まだですね」と帰されました。行かないほうがよかったですか?

A.そんなことはありません。受診したことで赤ちゃんの状態と子宮口の様子を確認できたという結果が残っています。産科の施設は、この時期に「まだだった」という受診が一定数あることを前提に動いています。迷って連絡しないまま進んでしまうほうが、施設にとっても困る状況です。次に同じことがあっても、遠慮せず連絡してください。

Q 前駆陣痛と「おしるし」は関係がありますか?

A.どちらも子宮の入口に変化が起きていることのあらわれで、前後して起きることがあります。おしるしは、子宮の入口が開き始めるときに卵膜がはがれて出る、粘り気のある少量の出血です。ただし、おしるしがあってもすぐ本陣痛になるとは限りません。また、臨月の内診や内診グリグリ(卵膜剥離)のあとの出血は、おしるしと見分けがつかないことがあります。量が多いときは、名前を判断しようとせず連絡してください。

まとめ

前駆陣痛のいちばんつらいところは、痛みそのものより「これが何なのか分からないまま、終わりが見えない」という点にあると思います。

この記事で覚えて帰っていただきたいのは、たった2つです。不規則で、休むと治まるなら前駆陣痛。37週より前に規則的な張りがあるなら、前駆陣痛と考えずに連絡する。この2つさえ押さえておけば、残りは「今日じゃなかったな」と眠るだけで構いません。

この記事のポイントまとめ
  • 前駆陣痛は「ぜんくじんつう」、医学的には偽陣痛。子宮の入口をやわらかくする、正常な準備の過程
  • 子宮口はほとんど開かない。だから「あんなに痛かったのに開いていない」ということが起きる
  • 多くは妊娠36週以降。34〜35週から感じる人も、まったく感じない人もいる。どちらも異常ではない
  • 痛む場所はお腹・下腹部・腰・恥骨・足の付け根とさまざま。「腰が砕けそう」も前駆陣痛のことがある
  • 見分けるのは①間隔が規則的か ②強くなるか ③休むと治まるか ④痛む場所が広がるか ⑤時間帯に左右されるかの5つ
  • 間隔は「痛み始め」から次の「痛み始め」まで。連絡の目安は初産10分・経産15分(施設の指示が優先)
  • 夜に強くなるのは気のせいではない。日中の負担・オキシトシン・気が紛れているかどうかが重なっている
  • 長さや強さから出産までの日数は予測できない。眠れない・食べられないときは、本陣痛でなくても相談していい
  • 【最重要】37週未満の規則的な張りは前駆陣痛として扱わない。破水・出血・お腹が硬いまま戻らない・胎動の減少も、時間帯を問わず連絡

臨月は、体もつらいうえに気持ちも張りつめる時期です。分からないことを一人で抱えず、施設に電話してください。「これは前駆陣痛でしょうか」という質問は、聞いてはいけない質問ではありません。

この記事について

femnote 編集部

生理・妊活・フェムケア・更年期など女性の健康に関する情報を、厚生労働省「e-ヘルスネット」や日本産科婦人科学会をはじめとする各学会の診療ガイドラインなど、公的な資料をもとに編集しています。診断や治療の判断については、必ず医療機関にご相談ください。

参考文献

  • 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン ―産科編 2023」
  • 日本産科婦人科学会「産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第4版」
  • 厚生労働省「e-ヘルスネット」
  • 厚生労働省「妊娠中の健康管理(母子健康手帳 省令様式・任意記載事項様式)」
  • National Institute for Health and Care Excellence (NICE). Intrapartum care. NICE guideline [NG235], 2023.
  • World Health Organization. WHO recommendations: intrapartum care for a positive childbirth experience. 2018.