コーヒーカップを持つ手が細かく震える。人前で字を書こうとするとペンが揺れる。気づけば、以前より頻繁になっている気がする——。

「手の震え」を調べると、出てくるのは高齢者向けの情報ばかりです。パーキンソン病、加齢による振戦——けれど20代・30代・40代で震えを感じている方には、当てはまらないことが多いと思います。

この記事では、まず「いつ震えるか」で分けるところから始めます。そのうえで若い〜中年の女性に多い原因を書いていきます。心当たりのある方がいちばん多いのは、おそらく甲状腺と低血糖です。

まず「いつ震えるか」で分ける

震えは、出るタイミングで分類できます。これが原因を絞り込むいちばんの手がかりです。

いつ震えるか 呼び方 考えられること
手を前に伸ばしたとき・何かを持ったとき 姿勢時の震え 本態性振戦・甲状腺・緊張・カフェイン。いちばん多いタイプです
コップを口に運ぶ・字を書くなど動かしているとき 動作時の震え 同上。目的の動作でだけ強くなることもあります
何もせず、じっと置いているとき 安静時の震え パーキンソン病を考えます。受診してください
空腹のとき・食事を抜いたあと —— 低血糖。冷や汗・動悸を伴うことが多い
人前・緊張する場面だけ —— 緊張によるもの。誰にでも起こります
「何もないのに手が震える」への答え
いちばん大事な分かれ道は、手を膝の上に置いて力を抜いたときに震えるかどうかです。
力を抜いているときに震える(安静時の震え)なら、受診の対象です。逆に手を伸ばしたときや動かしたときだけ震えて、力を抜くと止まるのであれば、緊急性の高いものではないことがほとんどです。
確かめ方
  1. 椅子に座り、両手を太ももの上に置いて完全に力を抜く——ここで震えるか
  2. 両手をまっすぐ前に伸ばす——ここで震えるか
  3. 紙を1枚、伸ばした手の甲にのせる——細かい震えが見えやすくなります
  4. コップの水を口まで運ぶ——途中で強くなるか

この4つを試して、どれで震えたかをメモしておいてください。診察でそのまま使えます。

すぐ受診してほしいサイン

サイン 理由
片側の手や足に、急に力が入らなくなった すぐ救急を。時間との勝負になります
ろれつが回らない・言葉が出ない 同上
顔の片側が下がる・口元がゆがむ 同上
じっとしているときに震える 早めに脳神経内科へ
震え+動悸・汗・体重減少 甲状腺の検査を受けてください
震え+冷や汗・意識がもうろうとする 低血糖の可能性。すぐ糖分をとってください
字が急に書きにくくなった・歩きにくい 神経の病気を考えます
「手の震えは脳梗塞の前兆ですか?」への答え
脳梗塞の症状として典型的なのは「震え」ではありません。多いのは片側の脱力・しびれ・ろれつが回らない・視野が欠けるといった症状で、突然起こるのが特徴です。
つまり「前から少しずつ続いている両手の震え」は、脳梗塞とは考えにくいということになります。逆に、片側だけに急に起きた症状はためらわず救急へ。

若い〜中年の女性に多い原因

ここがこの記事でいちばん書きたかった部分です。

「手の震え」を調べて出てくるのは高齢者向けの情報が中心です。けれど20〜40代で震えを感じる方には、その年代に多い別の原因があります。

甲状腺の病気|まず疑ってほしいもの

甲状腺ホルモンが出すぎる状態(バセドウ病など)では、細かい手の震えが起こります。そしてこの病気は20〜40代の女性に圧倒的に多いものです。

震えの特徴 いっしょに出やすいこと
手を伸ばすと出る、細かく速い震え 動悸・脈が速い
両手に出る 食べているのに体重が減る
疲れているときに強くなる 汗をかきやすい・暑がりになる
—— イライラ・落ち着かない・眠れない
—— のどの腫れ・目が出てきた感じ
PMSや更年期、パニック障害と間違われやすい病気です

動悸・イライラ・汗・眠れない——これらはPMSや更年期の症状と重なります。そのため「気のせい」「ホルモンのせい」で何年も過ごしてしまう方がいます。

血液検査でわかります。内科で「甲状腺も調べてほしい」と伝えてください。くわしくはバセドウ病にまとめています。

低血糖|食事を抜いた日に震える

空腹のときに手が震え、冷や汗が出て、なんとなく落ち着かない——これは血糖値が下がったサインです。

起こりやすい場面
  • 朝食を抜いた日の午前中
  • 食事制限をしている時期——糖質を極端に減らしているとき
  • 忙しくて昼食が夕方になった
  • 甘いものだけで済ませたあと——急に上がって急に下がります
  • お酒を飲んだあと

いますぐ楽にするなら、糖分をとってください。ジュースやあめで数分〜十数分で落ち着きます。

くり返すなら、食べ方の問題かもしれません

欠食と極端な糖質制限は、震え・だるさ・集中力の低下を招きます。ダイエット中の方に多いパターンです。

ただし食事と関係なく低血糖の症状が出る、意識がもうろうとするほど強いという場合は別です。糖尿病の治療中の方も含め、受診してください。

貧血・鉄不足

震えそのものより、力が入らない・手元がおぼつかない・動悸がするという形で気づかれることが多いものです。

生理のある方は毎月鉄を失っています。経血量が多い方はとくに起こりやすく、だるさ・立ちくらみ・息切れが重なっているなら調べる価値があります(生理と貧血)。

緊張・不安で震える

人前で話す、字を書く、注目される——その場面だけ震えるなら、緊張によるものです。これ自体は誰にでも起こる自然な反応です。

状況 考え方
大事な場面で震える ふつうのことです。心配いりません
人前で字を書くときだけ極端に震える 書痙と呼ばれる状態のことがあります。相談する価値あり
震えを気にして、その場面を避けるようになった 生活に影響が出ています。受診を不安障害
動悸・息苦しさの発作を伴う パニック障害にまとめています

生理前・更年期の自律神経

周期に連動して出る方がいます。生理前は自律神経が揺れやすく、動悸やほてりと一緒に手の震えを感じることがあります(PMS)。

更年期も同様で、動悸・発汗・不安と重なって現れることがあります(更年期の動悸自律神経失調症)。

ただし「ホルモンのせい」で止めないでください

この年代の症状は、甲状腺の病気とほぼ完全に重なります。PMSや更年期のせいにして数年過ごしてしまう例が実際にあります。

血液検査を一度受けてから、ホルモンの話に進んでください。順番が逆になると見逃します。

そのほかの原因

年代を問わず起こるものを整理します。

原因 震えの特徴 手がかり
本態性振戦 手を伸ばしたとき・動かすときに震える 家族にも同じ人がいることが多い。少量のお酒で軽くなることがあります
パーキンソン病 じっとしているときに震える。片側から始まることが多い 動作が遅くなる・歩幅が狭くなる・表情が乏しくなる
カフェイン 飲んだあと数時間 コーヒー・エナジードリンク・栄養ドリンクの量を数えてみる
薬の影響 飲み始めた時期と一致 喘息の吸入薬・一部の胃腸薬や精神科の薬など。自己判断でやめない
アルコール 翌朝に強い 飲む量が増えていないか
睡眠不足・疲労 その日だけ強い 寝た日に軽くなるかどうか睡眠の問題
本態性振戦は「病気ではない震え」と言われることがあります
命に関わるものではなく、進み方もゆっくりです。ただし字が書きにくい、食事のときにこぼす、人前で困るという実害があるなら、治療の対象になります。
「年のせい」「体質だから」と言われて終わりにしなくて大丈夫です。薬で軽くできることがあります。
パーキンソン病を心配している方へ

手の震えを調べると必ず出てくるので、不安になった方も多いと思います。見分けの目安は「じっとしているときに震えるか」です。

力を抜いて膝に置いた手が震え、あわせて動作が遅くなった・歩幅が狭くなった・声が小さくなったという変化があるなら、脳神経内科で相談してください。これらがなく、手を伸ばしたときだけ震えるのであれば、可能性は高くありません。

「何が不足しているの?」への答え

よく検索される問いなので、正直に書きます。

「これが足りないから震える」という単純な図式ではありません
サプリメントで解決する話として語られがちですが、手の震えの原因でいちばん多いのは、栄養不足ではなく甲状腺・本態性振戦・緊張です。
ただし関わることがある栄養素はあります。下にまとめます。
関わるもの どう関わるか
糖(血糖) いちばん関係が深い。空腹時の震えはこれです
不足するとだるさ・動悸・力が入らない感じが出ます
マグネシウム・カルシウム 極端に不足すると筋肉のけいれんに関わりますが、まれです
ビタミンB群 神経の働きに関わります。偏った食事が続いているとき
水分 脱水は動悸やふらつきを招きます
サプリメントを増やす前に、血液検査を受けてください

足りないかどうかは、飲んでみて判断するものではありません。鉄もビタミンも、検査で分かります。

そして甲状腺の病気だった場合、サプリメントでは何も変わりません。時間とお金をかけたあとに受診することになるので、順番を逆にしないでください。

窓辺の木のテーブルに置かれた、ふた付きのカップ・重みのあるマグ・太いペンとノート

「異常なし」と言われたあとに考えること

血液検査を受けて、何も出なかった。安心する一方で、震えは続いているのだから話は終わっていません。

まず、検査の中身を確かめてください

健診の「異常なし」には、甲状腺が入っていないことがあります

会社の健診や自治体の健診で、甲状腺の項目は標準では含まれていないことが多いものです。「血液検査は異常なしでした」と言われても、甲状腺を測っていないだけという場合があります。

結果の紙を見て、甲状腺の項目があるかどうかを確かめてください。なければ、それは「異常なし」ではなく「調べていない」です。

それでも何も出なかったとき

考えられること 確かめ方
本態性振戦 検査では何も出ません。診察で診断します。家族に同じ人がいないか
カフェイン・薬 1〜2週間減らしてみて、変わるかどうか
睡眠不足・疲労 よく眠れた日に軽くなるか
緊張・不安 特定の場面だけかどうか。ひとりのときは出ないか
血糖の変動 食後や空腹時との関係。1日3食にしてみて変わるか
「検査で出ない=気のせい」ではありません
本態性振戦は血液検査でも画像検査でも何も出ないのが普通です。それでも実在する状態で、薬で軽くできることがあります。
「異常なしなので様子を見ましょう」で終わってしまったなら、脳神経内科で改めて相談するという道があります。診断のつく場所が違うだけです。

今日からできること

やること ねらい
食事を抜かない 空腹時の震えは、これだけでなくなることがあります
カフェインの量を数える コーヒー・お茶・エナジードリンク。1日3杯以上なら減らしてみる
睡眠を確保する 疲労で強くなるタイプかどうかが分かります
震えた場面をメモする いつ・何をしていたか。診察でそのまま使えます
動画を撮っておく 診察室で震えないことがよくあります。10秒でも十分
持ち方を工夫する 両手で持つ・重さのある食器にすると、こぼしにくくなります
動画は、いちばん強い材料です
震えは診察室では出ないことがよくあります。「家では震えるんです」と言葉で伝えるより、スマホで10秒撮っておくほうが確実です。
手を膝に置いた状態と、前に伸ばした状態の2つを撮っておくと、医師が知りたいことがほぼそろいます。

震えたまま暮らす工夫

原因を調べているあいだも、日常は続きます。困りやすい場面ごとに、実際に効くものを挙げます。

困る場面 できること
飲み物をこぼす ふた付きの容器にする。少なめに注ぐ。両手で持つ
スープや汁物 器を持ち上げず、テーブルに置いたままスプーンで
字を書く 太めで重さのあるペンにする。紙を手で押さえる。ひじをテーブルにつける
スマホの操作 両手で持つ。音声入力を使う
細かい作業 ひじや手首をどこかに固定すると、震えは小さくなります
人前で困る場面 その日はカフェインを控える。睡眠を優先する
共通するコツは「支点を作る」ことです
ひじ・手首・小指の側面をテーブルにつけて固定するだけで、震えは目に見えて小さくなります。宙に浮いた状態がいちばん震えます。
両手で持つ・重いものを使うのも同じ理屈です。軽い紙コップより、重さのあるマグのほうが安定します。
お酒で楽になるからといって、飲む習慣にしないでください

本態性振戦では少量のお酒で一時的に震えが軽くなることが知られています。それ自体は診断の手がかりにもなります。

ただし効果は一時的で、切れたあとにかえって強くなることがあります。対処として続けるのは勧められません。震えのためにお酒を飲むようになっているなら、そのことこそ受診で伝えてください。

柔らかい光が入る、人のいない静かな診察室の採血用の椅子とサイドテーブル

何科に行く・検査で何をするか

状況 受診先
動悸・汗・体重減少を伴う 内科(甲状腺の血液検査)。まずここです
じっとしているときに震える・動作が遅くなった 脳神経内科
空腹時だけ・食事と関係している 内科
特定の場面だけ・不安を伴う 心療内科・精神科。内科で相談してからでも構いません
生理周期と連動している 婦人科でも相談できますホルモン検査
どこか分からない 内科でかまいません。必要なら紹介してもらえます
検査は、まず血液検査から
甲状腺の値・血糖・貧血の有無——ここで分かることがかなりあります。特別な準備はいりません。
そのうえで神経の病気が疑われるときに、脳神経内科で診察と画像検査に進みます。いきなり大がかりな検査をするわけではありません。

よくある質問

Q 何もしていないのに手が震えるのは、なぜですか?

A.ここは大事な分かれ道です。椅子に座って両手を太ももの上に置き、完全に力を抜いてください。それでも震えるなら安静時の震えといい、脳神経内科で相談する対象になります。逆に、力を抜くと止まり、手を伸ばしたときや動かしたときだけ震えるのであれば、緊急性の高いものではないことがほとんどです。

Q 手が震えるのは、何が不足しているからですか?

A.「これが足りないから震える」という単純な図式ではありません。もっとも関係が深いのは血糖で、空腹時の震えがこれにあたります。ほかに鉄不足がだるさや動悸として現れることがあります。ただし手の震えでいちばん多い原因は栄養不足ではなく、甲状腺・本態性振戦・緊張です。サプリメントを増やす前に血液検査を受けてください。

Q 手がプルプルするのは、どんな病気ですか?

A.細かく速い震えが手を伸ばしたときに出るなら、まず甲状腺の病気を考えます。20〜40代の女性に多く、動悸・汗・体重減少・イライラを伴うのが特徴です。ほかに本態性振戦、低血糖、カフェインのとりすぎ、緊張などがあります。じっとしているときに震える場合は別で、脳神経内科の対象になります。

Q 手の震えは、脳梗塞の前兆ですか?

A.脳梗塞の症状として典型的なのは震えではありません。多いのは片側の脱力・しびれ・ろれつが回らない・視野が欠けるといった症状で、突然起こるのが特徴です。前から少しずつ続いている両手の震えは、脳梗塞とは考えにくいものです。逆に、片側だけに急に起きた症状があればためらわず救急に連絡してください。

Q 20代ですが、手が震えます。若くても病気のことはありますか?

A.あります。検索すると高齢者向けの情報ばかり出てくるので不安になりますが、20〜40代の女性でまず考えたいのは甲状腺の病気です。バセドウ病はこの年代の女性に多く、細かい手の震えが代表的な症状です。ほかに欠食や糖質制限による低血糖、貧血、緊張もこの年代に多い原因です。いずれも血液検査で確かめられます。

Q 人前で字を書くときだけ震えます。病気でしょうか?

A.大事な場面で手が震えるのは、誰にでも起こる自然な反応です。ただし人前で字を書くときだけ極端に震えるなら、書痙と呼ばれる状態のことがあります。また震えを気にしてその場面を避けるようになっているなら、生活に影響が出ている段階です。どちらも相談する価値があり、対応の方法があります。我慢し続けるものではありません。

Q 生理前になると震える気がします。関係ありますか?

A.生理前は自律神経が揺れやすく、動悸やほてりと一緒に手の震えを感じる方がいます。ただし注意していただきたいのは、この時期の症状が甲状腺の病気とほぼ完全に重なることです。PMSや更年期のせいにして数年過ごしてしまう例が実際にあります。血液検査を一度受けてから、ホルモンの話に進んでください。順番が逆になると見逃します。

まとめ

手の震えは原因の幅が広い症状ですが、切り分けの入り口はひとつです。

この記事のポイントまとめ
  • 膝に手を置いて力を抜き、震えるかどうか——これが最初の分かれ道
  • 力を抜くと止まり、伸ばしたときだけ震えるのはいちばん多いタイプ
  • じっとしているときに震えるなら、脳神経内科で相談を
  • 20〜40代の女性でまず疑いたいのは甲状腺の病気——動悸・汗・体重減少を伴う
  • PMSや更年期と症状が重なるため、血液検査を先に受けてからホルモンの話へ
  • 空腹時の震えは低血糖。欠食と極端な糖質制限を見直す
  • 「何が不足しているか」より、まず血液検査。サプリを増やす前に確かめる
  • カフェインは1日の合計で数える。薬の影響も自己判断でやめずに相談を
  • 片側の急な脱力・ろれつが回らないは救急。震えとは別ものです
  • スマホで10秒の動画——診察室で震えないことがよくあります

今日できるのは、椅子に座って手を膝に置き、力を抜いてみることです。そこで震えるか、伸ばしたときだけ震えるか。それだけで、どこへ相談すればいいかが決まります。

この記事について

femnote 編集部

生理・妊活・フェムケア・更年期など女性の健康に関する情報を、厚生労働省「e-ヘルスネット」や日本産科婦人科学会をはじめとする各学会の診療ガイドラインなど、公的な資料をもとに編集しています。診断や治療の判断については、必ず医療機関にご相談ください。

参考文献

  • 日本神経学会「本態性振戦・その他の振戦診療ガイドライン」
  • 日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン」
  • 日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン」
  • 日本内分泌学会「バセドウ病」
  • 日本糖尿病学会「低血糖症について」
  • 国立長寿医療研究センター「手のふるえ」
  • Louis ED, et al. "How common is the most common adult movement disorder? Update on the worldwide prevalence of essential tremor." Mov Disord. 2010;25(5):534-41.