「妊娠検査薬が陽性だった。でも、まだつわりはない……いつから始まるの?」「もう何週も吐き続けている。いったいいつ終わるの?」

つわりは妊娠中のほとんどの人が経験するものですが、「いつから・いつまで・どんな症状か」は個人差がとても大きく、なかなか見通しが立てにくいものです。

この記事では、つわりの時期・種類・対処法を医学的根拠に基づいてわかりやすく解説します。「今自分が経験していることは正常なの?」という不安を解消するためにも、ぜひ最後まで読んでみてください。

つわりとは何か

つわりとは、妊娠初期に起こる吐き気・嘔吐・食欲不振・特定のにおいへの嫌悪感などの症状の総称です。英語では「Morning Sickness(モーニングシックネス)」とも呼ばれますが、実際には朝だけでなく一日中続くこともあります。

つわりが起こる原因

つわりの正確なメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、主な原因として以下が挙げられています。

  • hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の急増:妊娠が成立すると急激に増えるホルモンで、脳の嘔吐中枢を刺激するとされています。hCGは妊娠8〜10週にピークを迎え、その後減少します。つわりの時期とほぼ一致しています
  • エストロゲンの増加:嗅覚を鋭敏にする作用があり、においつわりの一因と考えられています
  • 消化管の運動が低下:プロゲステロンの影響で胃腸の動きが遅くなり、胃もたれや吐き気が起きやすくなります
  • 心理的・精神的ストレス:不安や緊張がつわりを悪化させることがあります
つわりと赤ちゃんの健康の関係
近年の研究では、適度なつわりがある妊婦のほうが流産率が低い傾向があるというデータがあります。つわりはつらいですが、「赤ちゃんが育っているサイン」ともいえます。

つわりはいつから始まる?

木のデスクに広げられた母子手帳とパステルカラーのカレンダー、ペン。妊娠初期のスケジュール管理イメージ

つわりが始まる時期には個人差がありますが、多くの人は妊娠5〜6週(生理予定日から1〜2週間後)ごろから感じ始めます。

妊娠週数 つわりの状態 体の変化
4週(生理予定日) ほとんどなし〜軽い胃もたれ hCG上昇開始、着床完了
5週 においが気になり始める、軽い吐き気 hCG急上昇、つわり開始の人が多い
6週 吐き気・食欲不振が出てくる 胎嚢・心拍が確認できる時期
7〜8週 症状が強くなるピーク前期 hCGが最高値に向かって上昇中
9〜10週 多くの人がピーク hCGが最高値に達する
11〜12週 徐々に和らいでくる hCGが減少し始める
13〜16週 多くの人が落ち着く 妊娠中期へ移行

「妊娠超初期」のつわりはある?

「妊娠超初期(妊娠4週未満)」からつわりのような症状を感じる人もいます。ただし、この時期はhCGがまだ低いため、本格的なつわりというよりも着床時の微妙な体の変化や、精神的な影響によるものが多いとされています。生理予定日前に「なんとなく気持ち悪い」と感じる人もいますが、個人差が大きいです。

つわりはいつまで続く?

多くの人のつわりは妊娠12〜16週(妊娠4ヶ月ごろ)に落ち着きます。これは「安定期」に入るタイミングとほぼ重なります。

ただし、「いつ終わるか」は人によって大きく異なります。

  • 妊娠10週ごろに自然と消える:早めに終わるタイプ
  • 妊娠14〜16週ごろに落ち着く:最も多いパターン
  • 妊娠後期まで続く:一部の人は妊娠中期・後期にも継続することがある
  • 妊娠中ずっと続く:まれに出産直前まで続く場合もある
「いつ終わるか」の目安は?
hCGが減少し始める妊娠10〜12週以降、多くの人でつわりが軽くなります。「12週を過ぎたら急に楽になった」という声はよく聞かれます。ただし、これはあくまで目安です。「まだ続いている……」と焦らず、医師に相談しながら乗り越えましょう。

つわりが終わるサインは?

つわりが終わりに近づいているサインとして、以下のような変化が報告されています。

  • 吐き気の強さが徐々に弱くなってくる
  • 食べられないものが減り、好きなものを少し食べられるようになる
  • においへの過敏さが和らいでくる
  • 一日の中で「少し楽な時間帯」が出てくる

突然ぱったりとなくなることもあれば、じわじわと軽くなっていくこともあります。「昨日より今日のほうが少し楽かも」という変化を感じ始めたら、終わりが近いサインかもしれません。

つわりの種類と症状

白いテーブルに並ぶシンプルな和食。手つかずのごはんと梅干し、クラッカー。つわり中の食欲不振を表すイメージ

つわりはひとことで言っても、その症状はさまざまです。「つわりといえば吐き気」と思いがちですが、実は多様な形があります。

①吐きつわり(嘔吐型)

最もよく知られているタイプです。吐き気が強く、実際に嘔吐することもあります。食べられなかったり、水を飲んでも吐いてしまったりすることもあります。

  • 朝起きた直後に特に強い(空腹時に悪化しやすい)
  • においが引き金になることが多い
  • 食後に吐いてしまうことも

②食べつわり(食欲亢進型)

「何かを食べていないと気持ち悪い」というタイプで、常に食べ続けたくなります。空腹になると吐き気が強まるのが特徴です。

  • 食べていれば楽、空腹になると吐き気がくる
  • 体重増加に注意が必要
  • 「つわりなのに食欲がある」と自覚しにくいことも

③においつわり(嗅覚過敏型)

特定のにおいに対して強い吐き気や嫌悪感が出ます。料理のにおい・香水・タバコ・柔軟剤など、それまで気にならなかったものが耐えられなくなります。

  • 炊き立てのご飯・炒め物のにおいが苦手になるケースが多い
  • 他人に「においがする」と言えず、職場や家族との関係がつらくなることも
  • マスクの使用が有効なことがある

④よだれつわり(唾液過多型)

唾液が異常に増える、または飲み込めないほどの不快感があるタイプです。「よだれが止まらない」「口の中が常に気持ち悪い」という症状が出ます。

  • 比較的まれだが、非常につらい症状のひとつ
  • 唾液を飲み込むと吐き気が増すという悪循環になることも

⑤頭痛・眠気・だるさ

吐き気だけでなく、強い眠気・頭痛・体のだるさがつわりとして現れることもあります。これらはプロゲステロンや体の変化による影響です。「つわりといえば吐き気」とイメージしている人は、これらの症状をつわりと認識しにくいこともあります。

つわりの対処法

つわりを完全に消す方法はありませんが、「少しでも楽に過ごすための工夫」は数多くあります。自分のつわりのタイプや生活スタイルに合わせて試してみてください。

食事の工夫

  • 少量を頻繁に食べる:空腹になると吐き気が強まるため、3食にこだわらず少量を何度かに分けて食べる。食べつわりの人にも有効
  • 冷たいものを選ぶ:温かい食べ物はにおいが強くなるため、冷えたおにぎり・冷たいうどん・果物などが食べやすいことが多い
  • 食べられるものを食べる:「栄養バランス」よりも「食べられるものを食べる」が優先。梅干し・クラッカー・ゼリー・アイスでも構わない
  • 酸っぱいものを活用:梅干し・レモン・炭酸水など酸味のあるものが吐き気を和らげると感じる人が多い
  • ショウガ(生姜):ショウガには吐き気を抑える成分が含まれており、生姜湯・生姜入りのお茶などが有効なことがある

生活の工夫

  • においの原因から離れる:料理のにおいがつらい場合は換気扇を使う、他の人に料理してもらう、惣菜・デリバリーを活用する
  • マスクの使用:においつわりにはマスクが有効。好きなアロマをつけて臭い対策をする人も
  • 無理をしない:「つわりで動けない自分」を責めないことが大切。家事を最低限にする、仕事は可能な範囲で休む
  • 横になれる環境を:体を横にすると楽になることが多い。ソファや布団で安静にできる環境を整える
  • 歯磨きのタイミングを工夫:歯磨きで嘔吐反射が起きる場合は、食後すぐを避けて時間をずらす。マウスウォッシュで代用することも

ツボ・アロマ

  • 内関(ないかん)のツボ:手首の内側、手首のしわから指3本分ひじ側のくぼみ。ここを押すと吐き気が和らぐという報告がある。市販の「乗り物酔い対策バンド(シーバンドなど)」も同じ原理
  • ペパーミントやレモンのアロマ:吐き気を和らげる効果があるという報告あり。ただし妊娠初期は精油の使用に注意が必要なため、濃度に気をつける

水分補給

つわりで水分も取りにくくなる場合があります。水が飲めない場合は、麦茶・スポーツドリンク・経口補水液・アイスをなめるなどで少しずつ補給しましょう。脱水は危険なため、「まったく水分が取れない」状態が続く場合は必ず受診してください。

「食べられないと赤ちゃんに悪い?」
つわりがひどくてほとんど食べられなくても、妊娠初期の赤ちゃんはまだとても小さく、必要な栄養量も少ないため、短期間の食欲不振が赤ちゃんに直接影響することはほとんどありません。「食べなければ!」と焦る必要はありません。まず自分が楽に過ごすことを優先してください。

妊娠悪阻との違い・受診のサイン

清潔感のある産婦人科の受付カウンターと小さな観葉植物。穏やかな雰囲気の産婦人科クリニックのイメージ

つわりと区別しなければならない状態として、妊娠悪阻(にんしんおそ)があります。

つわりと妊娠悪阻の違い

つわり 妊娠悪阻
頻度 妊婦の50〜80% 妊婦の0.5〜2%
嘔吐の回数 1日数回まで 1日に何度も(5回以上)
体重減少 ほとんどなし 妊娠前の5%以上が目安
水分補給 少量なら可能 水も飲めない
尿の状態 通常 濃い・少ない(脱水のサイン)
日常生活 なんとか送れる ほぼ不可能
対応 自宅でのケア 入院・点滴が必要なことも

今すぐ病院に行くべきサイン

以下の症状がある場合は、妊娠悪阻の可能性があります。我慢せず産婦人科を受診してください。

  • 24時間以上、水も飲めない状態が続いている
  • 1日に5回以上嘔吐している
  • 体重が急激に減った(妊娠前の5%以上)
  • おしっこが半日以上出ない、または濃い茶色
  • 立ちくらみ・ふらつきがひどい
  • 強い腹痛・出血を伴う
妊娠悪阻は我慢しないで
妊娠悪阻は放置すると脱水・栄養失調・ウェルニッケ脳症(ビタミンB1欠乏による神経障害)を引き起こす可能性があります。「つわりだから仕方ない」と我慢せず、点滴による水分・栄養補給が必要と判断された場合は入院も選択肢です。

つわりがない・軽いのは大丈夫?

「つわりがまったくない」「他の人より症状が軽い」という場合、「赤ちゃんに何かあるのでは?」と不安になる方もいます。

結論から言うと、つわりがないこと・軽いことは多くの場合まったく問題ありません。

つわりの有無・強さは個人差が非常に大きく、「症状が軽い=赤ちゃんが育っていない」とは言えません。つわりがほとんどなく、順調に出産された方は数多くいます。

ただし、つわりがあったのに急にぱったりとなくなった場合は、稽留流産(けいりゅうりゅうざん)の可能性があることも。次の健診を待たずに産婦人科に相談することをおすすめします。

よくある質問

Q つわりはいつ終わるか予測できますか?

A.残念ながら正確に予測することは難しいです。多くの人は妊娠12〜16週ごろに楽になりますが、個人差が大きく、前回の妊娠でいつ終わったかが参考になることもあります。担当医に相談すると、自分の状況に合わせたアドバイスをもらえます。

Q つわり中に葉酸サプリは飲めますか?

A.つわりがひどい時期は飲みにくいこともありますが、食後の比較的楽な時間帯や、少量の水・ゼリーと一緒に飲むなど工夫してみてください。どうしても飲めない場合は担当医に相談を。

Q 二人目はつわりが軽くなりますか?

A.一概には言えません。二人目のほうが軽い人もいれば、重くなる人もいます。一人目でのつわりの強さはある程度遺伝的要因にも左右されるとされており、傾向として似ることもありますが、必ずしも同じではありません。

Q つわり中に仕事はどうすればいいですか?

A.母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)を利用すると、医師の指示に基づいた業務軽減・休業が職場に要請できます。妊娠悪阻と診断された場合は医師から書いてもらえます。無理をせず、産婦人科で相談してみましょう。

Q つわりで体重が減ってしまっています。大丈夫ですか?

A.妊娠初期に数kgの体重減少は比較的よく起こります。妊娠前体重の5%未満の減少であれば多くの場合は経過観察で問題ありませんが、それ以上の減少や、水も飲めない状態が続く場合は妊娠悪阻の可能性があるため受診してください。

まとめ

この記事のポイントまとめ
  • つわりは妊娠5〜6週ごろに始まり、9〜10週にピーク、12〜16週ごろに多くの人が落ち着く
  • 吐きつわり・食べつわり・においつわり・よだれつわりなど種類はさまざまで、複数重なることもある
  • 少量頻回食・冷たいもの・ショウガ・内関のツボなどで症状を和らげる工夫ができる
  • 水も飲めない・1日5回以上嘔吐・体重が急減した場合は妊娠悪阻の可能性。我慢せず受診を
  • つわりがない・軽い場合も基本的には問題なし。ただし急になくなった場合は早めに産婦人科へ

つわりがつらいとき、「いつ終わるの?」という気持ちは誰でも持つものです。でも、それは赤ちゃんが育っているサインでもあります。無理をせず、使えるサポートはどんどん使って、この時期を乗り越えてください。

妊娠初期のほかの変化については妊娠初期・超初期症状チェックリストも参考にしてみてください。また、妊娠週数別の体の変化は妊娠2ヶ月(5〜7週)の完全ガイドで詳しく解説しています。

参考文献

  • 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン産科編 2023」
  • 厚生労働省「妊娠・出産について知っておきたいこと」
  • Fejzo MS, et al. Nausea and vomiting of pregnancy and hyperemesis gravidarum. Nat Rev Dis Primers. 2019.
  • Koren G, et al. Maternal ginger consumption in the first trimester and subsequent risk of birth defects. BJOG. 2014.
  • American College of Obstetricians and Gynecologists. ACOG Practice Bulletin No. 189: Nausea and Vomiting of Pregnancy. 2018.
  • Erick M. Hyperolfaction and hyperemesis gravidarum: what is the relationship? Nutr Rev. 1995.