妊活がうまくいかないとき、「私の体に何か問題があるのでは」と、まず自分を疑ってしまう女性は少なくありません。基礎体温を記録し、排卵日に合わせてタイミングを取り、サプリメントも試してみる——それでも結果が出ないと、「自分の体のどこかがおかしいのかもしれない」という不安ばかりが膨らんでいきます。婦人科での検査を先に済ませ、いろいろ試してみても妊娠に至らない——そんなとき、実は見落とされがちなのがパートナーである男性側の要因です。
不妊というと女性側の問題として語られがちですが、実際には男性側の要因が関わっているケースは、女性側だけの原因とほぼ同程度存在するとされています。にもかかわらず、精液検査を受けることへの心理的なハードルから、パートナーの検査が後回しになってしまうカップルも少なくありません。
この記事では、男性不妊とは何か、なりやすい人の特徴、原因の分類、検査の流れ、治療の選択肢、費用面、そしてパートナーに検査を切り出すための伝え方まで、助産師の視点でやさしく整理して解説します。「二人の課題」として向き合うための、最初の一歩にしていただければと思います。
男性不妊とは
男性不妊とは、妊娠を望むカップルにおいて、妊娠が成立しない原因が男性側にある、あるいは男性側にも関わっている状態を指します。特定の病名ではなく、造精機能や精子の通り道、性機能など、妊娠成立に関わる男性側のさまざまな要因の総称です。
「精子の数が少ない」「精子が動いていない」というイメージが強いかもしれませんが、実際にはホルモンの異常や精子の通り道の閉塞、勃起・射精に関する問題など、原因は多岐にわたります。
不妊全体に占める男性因子の割合
WHO(世界保健機関)の報告によると、不妊カップルのうち男性側の要因が単独で関わっているケースが約20〜30%、女性側と男性側の両方に要因があるケースを合わせると、男性因子が関わっている割合は約半数近くにのぼるとされています。つまり、不妊の原因は決して女性側だけにあるわけではなく、男女どちらにも同程度の可能性があるということです。
男性不妊になりやすい人の特徴
男性不妊は誰にでも起こりうるものですが、精子の質や量に影響しやすいとされる要因がいくつか知られています。当てはまるからといって必ず不妊になるわけではありませんが、知っておくことで早めの対策につなげられます。
- 喫煙習慣——喫煙は精子の数・運動率・DNAの質に悪影響を及ぼすことが指摘されています
- 過度の飲酒——アルコールの多量摂取はテストステロン分泌や精子形成に影響することがあります
- 肥満・強いやせ——体脂肪率の極端な増減はホルモンバランスを乱し、精子形成に影響することがあります
- 陰嚢を温める習慣——長時間のサウナ・長風呂・きつい下着・ノートパソコンを膝の上で長時間使うなど、精巣の温度が上がりやすい習慣
- 精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)の既往——男性不妊の原因として最も頻度が高く、治療可能なケースの多い疾患です。立った状態で陰嚢の左側を触れると、こぶ状の血管の膨らみとして自覚できることもあります
- 成人後のおたふく風邪(流行性耳下腺炎)の罹患歴——思春期以降にかかると精巣炎を合併し、造精機能に影響することがあります
- 過去の陰嚢・鼠径部の手術歴——停留精巣の手術歴なども含まれます
- 強いストレス・睡眠不足——自律神経の乱れを介してホルモンバランスに影響することがあります。仕事の繁忙期や妊活そのものへのプレッシャーが重なると、影響が出やすくなることもあります
- 特定の職業・環境要因——高温環境での作業(厨房・工場など)、長時間の運転、化学物質への曝露が多い職種など、日常的に精巣周辺の温度が上がりやすい環境で働いている場合
複数の要因が当てはまる場合でも、すべてを一度に完璧に見直す必要はありません。生活習慣は「これならできそう」と思えるものから、少しずつ整えていくくらいの気持ちで十分です。
これらはあくまで「精子の質・量に影響しうる要因」であり、当てはまる項目があっても妊娠できないと決まるわけではありません。生活習慣に関わる項目は、見直すことで改善が期待できるものも多くあります。
男性不妊の主な原因
男性不妊の原因は、大きく「造精機能障害」「精路通過障害」「性機能障害」の3つに分類されます。同じ「男性不妊」という言葉でくくられていても、原因のタイプによって検査内容や治療方針、見通しは大きく異なります。それぞれ順に見ていきましょう。
造精機能障害(精子を作る機能の問題)
男性不妊の原因のうちもっとも多くを占めるのが、精巣で精子をつくる機能そのものに問題がある「造精機能障害」です。
- 精索静脈瘤——陰嚢内の静脈が拡張し、血流のうっ滞によって精巣の温度が上がり、造精機能に影響する状態。男性不妊の原因の中でも頻度が高く、手術によって精液所見の改善が期待できるケースが多いことが知られています。重症度は触診でグレード分類され、症状がわかりにくい軽度のものから、視診でも血管の膨らみがはっきりわかる高度のものまで幅があります
- 特発性(原因不明)の造精機能障害——検査をしても明らかな原因が特定できないケース。一定の割合で存在します
- ホルモンの異常——脳から精巣への指令を担うホルモン(ゴナドトロピン)の分泌が低下し、精子形成が十分に進まない状態
- 染色体・遺伝子の異常——クラインフェルター症候群など、生まれつきの染色体の数的異常が背景にあることもあります
- 無精子症——射出された精液の中に精子が全く見られない状態。造精機能自体に問題があるタイプと、後述する精路の閉塞によるタイプがあります
精路通過障害(精子の通り道の問題)
精巣で精子が正常につくられていても、精子の通り道(精路)のどこかが詰まっていると、精液の中に精子が出てこられません。
- 精管の閉塞——過去の性感染症(クラミジアなど)による炎症の瘢痕、鼠径ヘルニアの手術歷などが原因となることがあります
- パイプカット(精管結紮術)の既往——避妊目的の手術後、再度妊娠を希望する場合は精路再建術が選択肢になります
- 先天性精管欠損——生まれつき精管がない状態。まれな疾患です
このタイプは、造精機能自体は保たれていることが多く、後述する精巣内から直接精子を回収する方法と組み合わせることで、妊娠につながる可能性があります。
性機能障害(勃起・射精障害)
精子や精路に問題がなくても、性生活自体が難しい場合も男性不妊の一因となります。
- 勃起障害(ED)——加齢・生活習慣病・血流の問題に加え、妊活そのものへのプレッシャーが心理的な要因となることも少なくありません
- 射精障害——射精ができない、あるいは精液が膀胱側へ逆流してしまう逆行性射精など
特に、「妊活のタイミングに合わせなければ」というプレッシャーが、かえって性機能に影響してしまうケースは珍しくありません。妊活が長引くほど、二人の心と体の余裕がすり減っていくという悪循環にも注意が必要です。
この悪循環は「セックスレス妊活」とも呼ばれ、決して珍しい状況ではありません。「排卵日にあわせて」というプレッシャーそのものが性機能に影響することもあるため、うまくいかない時期が続く場合は、無理にタイミングを合わせようとせず、まずは医師に相談し、「シリンジ法の基本ガイド」で紹介しているような選択肢も含めて対応を検討することをおすすめします。
セルフチェック|こんなサインはありませんか
次の項目に心当たりがある場合、早めに泌尿器科への相談を検討してもよいでしょう。あくまで目安であり、診断ではありません。
- 陰嚢の左側を中心に、立ったときにコブのような血管の膨らみを触れる(精索静脈瘤の可能性)
- 成人してからおたふく風邪にかかったことがある
- 過去に鼠径ヘルニアの手術や、精巣・陰嚢の手術を受けたことがある
- 過去に性感染症(クラミジアなど)にかかったことがある
- 長時間のサウナ・長風呂・きつい下着が習慣になっている
- 喫煙している、または多量に飲酒する習慣がある
- 勃起や射精に関して悩みがある
- パートナーの妊活・不妊検査は進んでいるが、自分はまだ検査を受けていない
検査はどこで受けられる?何をする?
男性不妊の検査は、女性側の検査に比べて負担が少なく、比較的短時間で完了するのが特徴です。
精液検査の流れ
- 採取方法——医療機関の専用の部屋で採取するほか、自宅で採取して一定時間内に持参する方法も選べる施設があります
- 禁欲期間の目安——正確な結果を得るため、採取前におよそ2〜7日程度の禁欲期間を設けることがすすめられます
- 調べる項目——精液量・精子濃度・運動率・正常形態率などをWHOの基準値と照らし合わせて評価します
- 複数回の検査——精液の状態は体調や採取条件によって変動しやすいため、1回の結果だけで判断せず、複数回検査を行うことがすすめられます
何科を受診する?
男性不妊の検査・治療は、主に泌尿器科、その中でも男性不妊を専門とするメンズヘルス外来・生殖医療専門の泌尿器科で行われます。婦人科・不妊治療専門クリニックの中には、男性側の検査にも対応している施設や、提携する泌尿器科を紹介してくれる施設もあります。
精索静脈瘤が疑われる場合は、視診・触診に加えて陰嚢の超音波検査が行われることもあります。パートナーと同じクリニックで検査を進められると、通院の負担も軽減できます。
初診では、問診でこれまでの病歴・生活習慣を確認したうえで、精液検査の説明と予約が行われるのが一般的な流れです。「いきなり体に触れる検査をされるのでは」と身構える必要はなく、初回はカウンセリングに近い内容であることも多いため、過度に緊張しなくても大丈夫です。
男性不妊は治療できる?
男性不妊の対応は、原因や状態に応じて、生活習慣の見直しから医療的な治療まで段階的に検討されます。
生活習慣の改善でできること
- 禁煙する——精子の質の改善が期待できる、もっとも取り組みやすい対策のひとつです
- 飲酒量を見直す——過度な飲酒を控えることで、ホルモンバランスへの影響を減らせます
- 適正体重を維持する——極端な肥満・やせは避け、無理のない範囲で体重を整えます
- 陰嚢を温めすぎない——長時間のサウナ・長風呂・きつい下着を避け、精巣の温度を上げすぎない工夫をします
- 十分な睡眠とストレスケア——ホルモンバランスを整えるうえで基本となる生活習慣です
亜鉛や抗酸化サプリメントなどが精子の質に良い影響を与える可能性を示す研究もありますが、効果の程度についてはまだ研究段階のものも多く、過度な期待はせず、医師に相談しながら取り入れることをおすすめします。食事から摂る場合は、亜鉛を多く含む牡蠣・赤身肉・レバーや、抗酸化作用が期待される緑黄色野菜・青魚などを、特定の栄養素に偏らずバランスよく取り入れる意識が基本になります。
医療的治療
| 原因 | 主な治療 |
|---|---|
| 精索静脈瘤 | 手術により静脈のうっ滞を解消。精液所見の改善が期待できるケースが多い |
| ホルモンの異常 | ホルモン補充療法などの薬物療法 |
| 精路の閉塞 | 精路再建術、または精巣内から直接精子を回収する手術(TESEなど) |
| 造精機能障害(原因不明含む)・軽度〜中等度の異常 | タイミング法・人工授精などの一般不妊治療 |
| 重度の造精機能障害・無精子症など | 顕微授精(ICSI)を含む体外受精へのステップアップ |
原因によっては、女性側の治療(タイミング法・人工授精・体外受精など)と組み合わせて進めていくことになります。人工授精については「人工授精とは」でも詳しく解説しています。どの段階から始めるかは、年齢・検査結果・費用面などを踏まえ、二人で医師と相談しながら決めていきましょう。
検査・治療にかかる費用と保険適用
2022年4月から、人工授精・体外受精・顕微授精などの一般不妊治療・生殖補助医療が公的医療保険の対象となり、あわせて男性不妊の手術(精索静脈瘤手術、精巣内精子回収術など)も保険適用の対象に含まれるようになりました。以前に比べて経済的な負担は軽減されていますが、年齢制限や回数制限などの条件があるため、事前に医療機関で確認しておくと安心です。
| 検査・治療の内容 | 費用の目安・保険適用の考え方 |
|---|---|
| 精液検査(初回) | 保険適用の対象。数千円程度が目安 |
| ホルモン検査・超音波検査 | 保険適用の対象。原因精査の一環として行われる |
| 精索静脈瘤の手術 | 保険適用の対象。施設・術式によって自己負担額は異なる |
| 精巣内精子回収術(TESEなど)+顕微授精 | 保険適用の対象(回数・年齢等の条件あり)。高額療養費制度の対象になる場合もある |
保険適用の範囲や条件は制度改正によって変わることがあるため、最新の情報は受診する医療機関や自治体の窓口で確認するようにしましょう。
パートナーに検査を受けてもらうには
男性不妊の検査は身体的な負担が少ない一方で、「自分の体に問題があるかもしれない」という不安や、検査を受けること自体への心理的なハードルから、なかなか一歩を踏み出せない男性も少なくありません。
- 「あなたのせいだと決めつけているわけではない」ことを伝える——検査は原因を特定するためのものであり、責任を問うものではないという前提を共有しましょう
- 「一緒に受けよう」というスタンスで誘う——女性側の検査と並行して、二人そろって取り組む姿勢を見せることが、心理的なハードルを下げます
- 自尊心への配慮を忘れない——結果を過度に心配する様子を見せず、淡々と「必要なステップのひとつ」として扱うことが大切です
- 情報を一緒に調べる——この記事のような客観的な情報を一緒に読むことで、「特別なことではない」という理解を共有しやすくなります
- 専門クリニックの選択肢を伝える——自宅採取に対応した施設や、男性専門の外来があることを伝えると、抵抗感が和らぐこともあります
妊活は女性だけが担うものではなく、パートナーと二人で取り組むプロジェクトです。検査や治療の負担、費用、今後の方針について、定期的に話し合う時間を持つことが、長期的にはお互いの負担を軽くすることにつながります。
検査結果を二人でどう受け止めるか
実際に検査を受けた結果、男性側に原因が見つかった場合、パートナーが大きなショックを受けることがあります。精子の数や運動率といった結果は、本人の努力ではどうにもできない生まれ持った要素も大きく関わるにもかかわらず、「男としての自信」や「妻を妊娠させられなかった」という自責の感情と結びつきやすいためです。
- 結果を「価値」と結びつけない——精液の数値は健康状態のひとつの指標であり、パートナーとしての価値や愛情の深さとは無関係であることを、言葉にして伝えましょう
- 比較や急かす言動を避ける——「友人の夫はすぐに検査を受けてくれた」といった比較は、相手をさらに追い詰めてしまうことがあります
- 女性側も感情を一人で抱え込まない——原因が男性側にあるとわかると、今度は女性側が「言い出しにくい」「気を遣ってしまう」というストレスを抱えることもあります。夫婦カウンセリングや不妊治療専門の心理士など、第三者のサポートを利用する選択肢も検討しましょう
- 「結果が出た」ことをポジティブに捉える——原因が特定できれば、次に何をすべきかが明確になります。原因不明のまま模索を続けるよりも、対応の見通しが立てやすくなるという側面もあります
- 周囲への伝え方も二人で決める——家族や友人にどこまで共有するかは、パートナーの気持ちを最優先に、事前に二人で話し合っておくとトラブルを避けやすくなります
不妊の原因がどちらにあっても、それは二人の関係の価値を左右するものではありません。検査結果はあくまで「次の一歩を考えるための情報」として、なるべくフラットに受け止められるとよいでしょう。
男性不妊にまつわる誤解
男性不妊については、正しく知られていないために誤解されやすいポイントもあります。特に注意しておきたい2つを紹介します。
- 「男性は何歳でも元気」という誤解——女性の卵子に比べて変化がゆるやかなため見過ごされがちですが、精子の質も加齢とともに緩やかに低下していきます。「男性側は年齢を気にしなくていい」というわけではありません
- 市販のテストステロン系サプリ・筋トレ用ホルモン剤の使用——「男性ホルモンを補えば精力や妊娠させる力が上がる」というイメージから、テストステロン注射やそれに類する製品を自己判断で使う人がいますが、外部からテストステロンを補うと、脳が「体内で十分足りている」と誤認し、精子をつくるための指令ホルモンの分泌がかえって抑制されてしまうことがあります。結果として精子の数が大きく減少するケースが報告されており、妊活中は特に注意が必要です。気になる場合は自己判断で使用せず、必ず医師に相談しましょう
よくある質問
Q 男性不妊は治りますか?
A.原因によって見通しは異なります。精索静脈瘤やホルモンの異常など、手術や薬物療法によって改善が期待できるケースがある一方、根本的な原因の改善が難しいケースもあります。原因を検査で明らかにし、生活習慣の改善や医療的治療、生殖補助医療を組み合わせて対応していくことが基本になります。
Q 精液検査だけで男性不妊かどうかわかりますか?
A.精液検査は基本となる重要な検査ですが、それだけですべてが判断できるわけではありません。精液の状態は体調によって変動しやすいため、複数回の検査や、必要に応じたホルモン検査・超音波検査などを組み合わせて総合的に評価します。1回の結果だけで一喜一憂しすぎないようにしましょう。
Q 精液検査の結果が悪かったらどうすればいいですか?
A.すぐに深刻に捉えすぎず、まずは泌尿器科で再検査や追加の検査を受け、原因を確認しましょう。精索静脈瘤など治療可能な原因が見つかることもありますし、原因が特定できなくても、生活習慣の改善や生殖補助医療によって妊娠に至るケースは数多くあります。
Q サウナや長風呂は本当に精子に影響しますか?
A.精巣は体温よりやや低い温度で機能する臓器のため、長時間サウナや長風呂で陰嚢を温め続ける習慣は、造精機能に影響する可能性が指摘されています。趣味として楽しむこと自体を否定するものではありませんが、妊活中で精液所見が気になる場合は、頻度や時間を見直してみるのもひとつの方法です。
Q 何歳から男性の妊娠させる力は低下しますか?
A.女性の卵子ほど急激ではありませんが、男性の精子の質も加齢とともに緩やかに低下していくとされています。年齢が高くなるほど精子のDNAの質の低下や、妊娠までにかかる期間が長くなる傾向が報告されています。一般的には40代以降で影響が目立ちやすくなるとされますが、個人差も大きい要素です。年齢だけで一律に判断はできませんが、「男性は年齢を気にしなくてよい」というわけではないことを知っておきましょう。
Q パートナーが検査を嫌がる場合はどうすればいいですか?
A.責めるような伝え方は避け、「原因を知ることは二人にとってプラスになる」という前提を共有することが大切です。自宅で採取できるキットに対応した施設や、男性専門の外来があることを伝えると抵抗感が和らぐこともあります。それでも難しい場合は、不妊治療専門クリニックのカウンセラーに間に入ってもらう方法もあります。
Q 検査や治療の費用はどのくらいかかりますか?
A.2022年4月以降、精液検査や精索静脈瘤の手術、精巣内精子回収術などの男性不妊治療の多くが公的医療保険の対象となっています。ただし年齢や回数の条件があるほか、施設によって自己負担額は異なるため、初診時に医療機関へ確認しておくと安心です。
Q 精液検査は何回くらい受ければいいですか?
A.精液の状態は体調や採取条件によって変動しやすいため、1回の結果だけで判断せず、間隔を空けて2〜3回程度検査を行うことがすすめられます。初回の結果が思わしくなくても、体調を整えて再検査すると数値が改善していることもあります。
まとめ|男性不妊は「二人の課題」
男性不妊とは、妊娠が成立しない原因が男性側にある、あるいは関わっている状態を指し、不妊全体のうち男性因子が関わる割合は女性側だけの原因とほぼ同程度とされています。原因は造精機能障害・精路通過障害・性機能障害の3つに分類され、精索静脈瘤のように治療によって改善が期待できるものも少なくありません。
検査の中心となる精液検査は身体的な負担が少ない一方、心理的なハードルから後回しにされがちです。だからこそ、「あなたのせいではない」という前提を共有し、二人そろって早めに検査を受けることが、原因の特定と適切な対応への近道になります。2022年からは治療費の多くが公的医療保険の対象となり、経済的なハードルも以前より下がっています。
「まずは自分(女性側)から」と検査を進めがちですが、原因が女性側・男性側のどちらにあるかは検査をしてみなければわかりません。パートナーと早い段階から情報を共有し、二人そろって専門医に相談することが、遠回りのように見えて実は一番の近道になることも少なくありません。年齢が上がるほど妊娠しやすさの選択肢は少しずつ狭まっていくため、「様子を見る」時間もできるだけ有効に使いたいところです。
- 男性不妊が関わる割合は、女性側だけの原因とほぼ同程度存在するとされる
- 喫煙・過度の飲酒・陰嚢を温める習慣・精索静脈瘤の既往などが精子の質に影響しうる
- 原因は「造精機能障害」「精路通過障害」「性機能障害」の3つに大別される
- 精索静脈瘤は男性不妊の原因として頻度が高く、手術で改善が期待できるケースが多い
- 検査の中心は精液検査。身体的負担は少なく、泌尿器科・メンズヘルス外来で受けられる
- 生活習慣の見直しに加え、手術・ホルモン療法・生殖補助医療など段階的な選択肢がある
- 「あなたのせいではない」という前提を共有し、二人そろって早めに検査を受けることが大切
妊活で悩んだとき、つい自分の体だけを責めてしまいがちですが、原因は女性側・男性側のどちらにもあり得ます。どちらが原因であっても、それは二人でこれから先を考えていくための材料のひとつにすぎません。この記事が、パートナーと一緒に一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。
参考文献
- 日本泌尿器科学会・日本生殖医学会「男性不妊症診療ガイドライン」
- 日本産科婦人科学会「不妊症Q&A」
- World Health Organization. "WHO laboratory manual for the examination and processing of human semen."
- American Society for Reproductive Medicine (ASRM). "Male Infertility: An Overview." Patient FAQ.
- 厚生労働省「不妊治療に関する取組」