「娘に無料クーポンが届いたけれど、副反応のニュースが気になって迷っている」「自分はキャッチアップ接種の対象らしいけど、いつまでに打てばいい?」「男性でもHPVワクチンって打てるの?」——そんな疑問を抱えたまま、接種を先送りにしていませんか?

HPVワクチンは、子宮頸がんや尖圭コンジローマなど、ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因になる病気を幅広く予防できるワクチンです。2022年に積極的勧奨が再開され、2023年4月には9価ワクチン(シルガード9)が定期接種に追加されたことで、無料で受けられる選択肢が一気に広がりました。

この記事では、ワクチンの種類・副反応・無料接種の条件・男性の接種まで、助産師の視点で必要な情報をまとめて解説します。正しい情報を知ることが、あなた自身や大切な家族の体を守る最初の一歩になります。

HPVワクチンはどんなワクチン?

HPVワクチンは、ヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus)の感染を予防するためのワクチンです。HPVは性交渉を通じて感染する非常にありふれたウイルスで、性経験のある女性の約8割が一生に一度は感染すると言われています。多くは数年以内に自然排除されますが、一部の型が長期間感染し続けると、子宮頸がんをはじめとする複数のがんや病気の原因になります。

HPV(ヒトパピローマウイルス)は200種類以上

HPVには200種類以上の型がありますが、そのうち約40種が性感染に関わり、がんのリスクが高い「高リスク型」は約15種類です。中でも16型・18型の2種類だけで、子宮頸がんの原因の約7割を占めると報告されています。HPVワクチンは、この16型・18型をはじめとした高リスク型への感染を防ぐ仕組みになっています。

HPVワクチンが予防できる病気

HPVは「子宮頸がんの原因になるウイルス」として知られていますが、実際にはもっと幅広い病気に関わっています。HPVワクチンで予防できる主な病気は以下のとおりです。

  • 子宮頸がん(最も大きなターゲット。9価ワクチンで約9割を予防可能とされる)
  • 膣がん・外陰がん(女性のHPV関連がん)
  • 肛門がん(男女ともにHPVが主な原因)
  • 中咽頭がん(舌の付け根や扁桃腺の奥にできるがん。近年男性で急増)
  • 尖圭コンジローマ(性器や肛門にできるイボ状の病変。6型・11型が原因)

9価ワクチン(シルガード9)はこのうち、子宮頸がん・肛門がん・尖圭コンジローマなどに関わる主要9型をカバーしています。

ワクチンの有効性|世界で最も検証が進んだワクチン

HPVワクチンは、世界100か国以上で承認されている極めて実績のあるワクチンです。スウェーデンで実施された大規模調査では、17歳未満で接種した女性の子宮頸がん発症リスクが約88%低下したと報告されています(New England Journal of Medicine, 2020)。また、オーストラリアでは接種開始から15年でHPV感染率が9割以上低下し、「子宮頸がんを消滅させる最初の国」を目指す取り組みが進んでいます。

日本の状況|罹患率は先進国で最多クラス

日本では現在、子宮頸がんで年間約11,000人が新たに診断され、約2,900人が命を落としています。罹患率は主要先進国と比べて高い水準にあり、特に20〜40代の若い世代の死亡率が減っていないのが深刻な課題です。背景には、2013年から2022年まで9年間続いた積極的勧奨の差し控えによる「ワクチン空白世代」の存在があります。現在、この世代を救済するためのキャッチアップ接種が進められていますが、接種率の回復は道半ばというのが現状です。

WHOが掲げる「子宮頸がん撲滅」の3つの目標 世界保健機関(WHO)は2030年までに、①15歳までの女子の9割がHPVワクチンを接種、②35歳までの女性の7割が高精度検診を受診、③がんまたは前がん病変と診断された女性の9割が治療を受ける——の3本柱で子宮頸がんの撲滅を目指しています。日本の接種率は依然低水準のため、キャッチアップが鍵になっています。
診察デスクの上に置かれたワクチンのバイアル・注射器・予診票・カレンダーの俯瞰。HPVワクチン接種準備のイメージ

日本で打てるHPVワクチンは3種類

2026年4月現在、日本で承認されているHPVワクチンは2価(サーバリックス)・4価(ガーダシル)・9価(シルガード9)の3種類です。カバーする型数が多いほど予防範囲が広くなり、現在は9価が主流になっています。

2価ワクチン(サーバリックス)

HPVの高リスク型である16型・18型の2種類をカバーするワクチンです。日本で最も早く2009年に承認されました。子宮頸がんの原因の約7割を防ぐとされますが、尖圭コンジローマには対応していません。現在は9価への移行が進んでおり、新規接種者が選ぶケースは少なくなっています。

4価ワクチン(ガーダシル)

16型・18型に加え、尖圭コンジローマの原因となる6型・11型をカバーする4種類対応のワクチンです。2011年に日本で承認。男性の接種が認められているのは現時点で4価のみで、男性接種の標準となっています。

9価ワクチン(シルガード9)

4価の4種類に加え、さらに5種類(31型・33型・45型・52型・58型)をカバーする9種類対応のワクチンです。子宮頸がんの原因となるHPV型の約9割を予防できるとされており、現在最も広い予防効果を持ちます。2020年に日本で承認、2023年4月から定期接種の対象になりました。現在、小6〜高1相当の女子や、キャッチアップ接種の対象者は、無料でシルガード9を接種できます。

3種類の比較表

ワクチン カバーする型 予防できる病気 定期接種 男性接種
2価(サーバリックス) 16・18型 子宮頸がん約7割 ×
4価(ガーダシル) 6・11・16・18型 子宮頸がん約7割+尖圭コンジローマ ◯(自費)
9価(シルガード9) 6・11・16・18・31・33・45・52・58型 子宮頸がん約9割+尖圭コンジローマ ◯(2023年4月〜) △(適応外使用)
これから打つなら9価がスタンダード 予防できる型数・カバー範囲から、これから初めて接種する人・キャッチアップ接種の対象者は、原則として9価(シルガード9)を選択するのがスタンダードです。定期接種・キャッチアップ接種では、9価を選んでも自己負担なしで接種できます。

無料で打てる対象者(定期接種・キャッチアップ接種)

HPVワクチンは、条件を満たせば無料(公費負担)で接種できます。無料で接種できるのは、①定期接種の対象年齢、②キャッチアップ接種の対象者、の2パターンです。

定期接種の対象|小6〜高1相当の女子

HPVワクチンの定期接種の対象は、小学6年生から高校1年生相当の女子(12〜16歳)です。この年齢の間に、お住まいの市区町村が発行する予診票・受診券を使って接種すれば、費用は全額公費負担で無料です。最も効果的なのは中学1年生で1回目を打つタイミングとされており、厚生労働省もこの学年の接種を推奨しています。

定期接種では、2価・4価・9価のいずれを選んでも無料です。特別な理由がない限り、カバー範囲の広い9価(シルガード9)を選ぶのが一般的です。初回接種は性交渉を経験する前の年齢が最も予防効果を発揮しやすく、この点でも中学生のうちの接種がすすめられています。

キャッチアップ接種の対象と期限

2013年から2022年までの約9年間、日本ではHPVワクチンの積極的勧奨が差し控えられていました。この間に定期接種の機会を逃した世代を救済するため、「キャッチアップ接種」という制度が設けられています。

対象 内容
生年月日 平成9年度〜平成19年度生まれ(1997年4月2日〜2008年4月1日生まれ)の女性
接種期間 2022年4月〜2025年3月末(原則)
※2024年度末までに1回以上接種していれば、2026年3月末まで延長可能
費用 公費負担(無料)
ワクチン 2価・4価・9価のいずれも選択可能

現在30歳前後までの女性は、ほぼ全員がキャッチアップ接種の対象に該当します。「ニュースで聞いたことはあるけど、自分が対象か分からない」という方は、市区町村の健康課やHPで生年月日を確認してください。

キャッチアップ接種の期限が迫っています キャッチアップ接種は原則2025年3月末で終了の予定ですが、2024年度末までに1回以上接種している場合に限り2026年3月末まで延長されています。3回接種には約6か月かかるため、「まだ1回も打っていない」方はお早めに医療機関へ相談を。自治体によって取り扱いが異なる場合があるため、詳細は居住地の公式情報をご確認ください。

接種スケジュールと回数

接種回数と間隔は、ワクチンの種類と接種開始年齢によって異なります。

ワクチン 接種開始年齢 回数 間隔
9価(シルガード9) 1回目を15歳の誕生日前に接種 2回 1回目 → 6〜12か月後に2回目
9価(シルガード9) 1回目を15歳の誕生日以降に接種 3回 1回目 → 2か月後に2回目 → 1回目から6か月後に3回目
4価(ガーダシル) 全年齢 3回 1回目 → 2か月後に2回目 → 1回目から6か月後に3回目
2価(サーバリックス) 全年齢 3回 1回目 → 1か月後に2回目 → 1回目から6か月後に3回目

3回接種の場合、完了までに約6か月かかります。無料期間の終了が近い場合は、1回目を早めに受けることが何より重要です。

気になる副反応・安全性について

HPVワクチンで最も気になるのが副反応の問題でしょう。ここでは、頻度の高い副反応から、まれに報告される重い副反応、そして万が一の場合の救済制度までを順に整理します。情報源は厚生労働省・WHO・日本産科婦人科学会の公式資料です。

よくある副反応|ほとんどが接種部位の症状

HPVワクチンの副反応として頻度が高いのは、他のワクチンと同じく接種部位の痛み・腫れ・赤みです。添付文書では、接種者の5割以上が接種部位の痛みを経験すると報告されています。

  • 接種部位の痛み・腫れ・赤み(50〜80%の人が経験。2〜3日で改善)
  • 発熱(37〜38度台)(10〜20%程度)
  • 頭痛・倦怠感・吐き気(数〜10%程度)
  • 接種後の失神(血管迷走神経反射)(思春期女子に特に多い。接種後30分は座って様子を見る対応で予防)

これらの症状は多くが数日以内に自然に改善します。痛みが強い場合は市販の鎮痛剤(ロキソプロフェン・イブプロフェンなど)で対処できます。

まれな重い副反応

頻度は低いものの、以下の重い副反応が報告されています。

  • アナフィラキシー:約96万回に1回(接種直後〜30分以内に発症)
  • ギラン・バレー症候群:極めてまれ
  • 急性散在性脳脊髄炎(ADEM):極めてまれ

これらは医療機関で適切に対処できる体制が整っており、接種後30分は医療機関内で経過観察するよう定められています。

過去に問題となった「多様な症状」との因果関係

2013年から2022年にかけて、日本でHPVワクチンの積極的勧奨が差し控えられた背景には、接種後の慢性疼痛・記憶障害・運動障害といった「多様な症状」が報告されたことがあります。厚生労働省・WHOをはじめとする各国の調査では、現時点でこれらの症状とHPVワクチンとの明確な因果関係は確認されていないとされています。名古屋市・祖父江班による国内大規模疫学調査でも、接種者と非接種者で症状の頻度に有意な差は見られませんでした。一方で、症状に悩む方への医療支援・救済制度は継続して整備されており、不安がある場合は全国の「協力医療機関」で相談できる体制が用意されています。医療機関リストは厚生労働省のHPに掲載されています。

接種当日・接種後の過ごし方

接種後30分間は必ず医療機関内で座って過ごし、急な体調変化がないか様子を見てください。特に思春期の子どもは接種時・接種直後に失神(血管迷走神経反射)を起こすことがあるため、立ち上がる時はゆっくり、すぐ横になれる状況を作ることが大切です。接種当日は激しい運動を避け、普段どおり過ごして問題ありません。接種部位の痛みは2〜3日で改善しますが、アイスパックで冷やすと楽になります。発熱や強い倦怠感が数日続く場合は、接種した医療機関に相談してください。

副反応が起きたときの救済制度

万が一、ワクチン接種との関連が否定できない健康被害が生じた場合、予防接種健康被害救済制度の対象となる可能性があります。定期接種・キャッチアップ接種で重い副反応が出た場合、医療費・障害年金・死亡一時金などの補償が受けられます。手続きの窓口はお住まいの市区町村です。

接種前に医師に必ず伝えること
  • 過去のワクチン接種で重い副反応が出たことがある
  • 食物・薬物アレルギーがある
  • 発熱中・体調が著しく悪い(37.5度以上は延期が推奨)
  • 妊娠中または妊娠の可能性がある(原則非接種)
  • 免疫抑制剤・抗がん剤を使用している
木製デスクに置かれたカレンダー・スマートフォン・マグカップ・メモ帳の俯瞰。接種スケジュールを管理するイメージ

男性もHPVワクチンを打てる?

HPVは女性だけの問題ではありません。男性もHPVに感染し、自分自身がんになるリスクだけでなく、パートナーへの感染源にもなります。近年、男性の接種を推進する動きが日本でも広がっています。

男性が打つメリット

男性がHPVワクチンを接種する主なメリットは以下の通りです。

  • 肛門がん・陰茎がん・中咽頭がんの予防(特に中咽頭がんは男性で急増しており、女性の4〜5倍の罹患率)
  • 尖圭コンジローマの予防(男女差なく発症する性感染症)
  • パートナーへの感染を防ぐ(HPV感染を減らすことで、パートナーの子宮頸がんリスク低下にも貢献)
  • 集団免疫の形成(接種率が上がるほど、未接種者も守られる)

すでにHPVワクチンの男性接種を定期接種に組み込んでいる国(オーストラリア・イギリス・カナダなど)では、男性のHPV関連がんも顕著に減少しています。

日本で男性が接種できるワクチンと費用

日本で男性に承認されているHPVワクチンは4価(ガーダシル)です。9歳以上の男性が対象で、原則3回接種(0・2・6か月)です。

項目 内容
承認ワクチン 4価(ガーダシル)
対象年齢 9歳以上
接種回数 3回(0・2・6か月)
1回あたりの費用目安 15,000〜18,000円(自費)
3回合計費用目安 45,000〜55,000円(自費)

現在、日本では男性の定期接種化は議論の段階で、国として無料化はされていません。ただし、接種可能な医療機関は全国の内科・泌尿器科・男性専門クリニックなどで年々増えています。

自治体の独自助成制度

男性のHPVワクチン接種について、一部の自治体では独自の助成制度を設けています。

  • 東京都(中野区・渋谷区・練馬区・港区など):小学6年〜高校1年相当の男子に助成(全額または一部)
  • 神奈川県(横浜市・川崎市・鎌倉市など):学年限定で助成実施
  • 青森県平川市・愛知県名古屋市・北海道旭川市など:全国で助成自治体が増加中

お住まいの自治体名+「HPVワクチン 男性 助成」で検索すると、最新の対象年齢・助成額が確認できます。助成対象年齢を過ぎた成人男性(18歳以上)の場合は現時点で自費接種のみとなりますが、結婚前後や妊活のタイミングで「パートナーのために打つ」という選択をする男性も少しずつ増えています。

海外では男性の定期接種化が進行中

オーストラリア・イギリス・カナダ・アメリカなど多くの国では、男性も公費による定期接種の対象になっています。オーストラリアは2013年から男子への定期接種を開始し、若年世代での尖圭コンジローマ発生率が9割以上低下したと報告されています。日本でも日本産科婦人科学会・日本小児科学会などから男性の定期接種化を求める提言が出されており、今後の動向が注目されます。

接種の流れと自費で打つ費用

接種までの流れ(定期・キャッチアップの場合)

  1. 案内通知の確認:市区町村から対象者に予診票・案内が届く(キャッチアップ世代は自分で申請が必要な自治体もあり)
  2. 医療機関を選ぶ:婦人科・小児科・内科などHPVワクチンを扱う医療機関を自治体リストから選ぶ
  3. 予約:電話またはWebで予約(初回接種から6か月以内に3回完了できるかを確認)
  4. 当日の持ち物:予診票・健康保険証・本人確認書類・母子手帳(未成年)
  5. 接種:肩の三角筋に筋肉注射(ほぼ一瞬)。接種後30分は院内で経過観察
  6. 2回目・3回目の予約:1回目の後、次回の予約を必ず取る

自費で打つ場合の費用相場

定期接種・キャッチアップ接種の対象外の方(例:17歳以降で初めて打つ女性、男性)が自費で接種する場合の目安は以下の通りです。

ワクチン 1回あたりの費用 総費用(3回)
2価(サーバリックス) 約15,000円 約45,000円
4価(ガーダシル) 約16,000〜18,000円 約48,000〜54,000円
9価(シルガード9) 約27,000〜33,000円 約80,000〜99,000円

自費でもどのワクチンを打つか医療機関によって取り扱いが異なります。費用と予防範囲のバランスから、自費でも9価を選ぶ方が主流です。

医療機関の選び方

  • 婦人科・レディースクリニック:女性医師が多く、内診や検診とまとめて相談しやすい
  • 小児科:中学生・高校生の接種に慣れており、親子で通いやすい
  • 内科・クリニック:大人の接種に対応。自費接種も受けやすい
  • 男性専門クリニック・泌尿器科:男性接種に対応した医療機関が増加

自治体のHPには、定期接種・キャッチアップ接種の指定医療機関リストが掲載されています。迷ったら「(市町村名) HPVワクチン 指定医療機関」で検索しましょう。

ワクチンを打っても子宮頸がん検診は必要

「ワクチンを打てば子宮頸がんの心配はしなくていいのでは?」——そう思う方もいるかもしれませんが、答えはNOです。HPVワクチンと子宮頸がん検診は、どちらが欠けても不十分な「両輪」の関係にあります。

ワクチンと検診の役割の違い

HPVワクチン 子宮頸がん検診
目的 HPV感染そのものを防ぐ 感染後の細胞変化・がんの早期発見
対象 主に感染前(性経験前)の人 20歳以上のすべての女性
予防できる範囲 9価でも子宮頸がんの約9割 見つかったものはすべて対象
頻度 生涯で2〜3回 2年に1回

ワクチンを打った人も20歳から検診を

9価ワクチンを接種していても、カバーされない型(約1割)によるがんは発生し得ます。また、接種前にすでに感染していた型についてはワクチンで予防できません。このため、ワクチン接種者も20歳からは2年に1回の子宮頸がん検診を続けることが世界共通の推奨です。職場の健診・自治体の無料クーポン・婦人科クリニックのいずれの方法でも構わないので、20歳の誕生日を迎えたら「自分の体の定期点検」として検診を始めましょう。

子宮頸がん検診の具体的な内容・費用・結果の見方については、子宮頸がん検診の完全ガイドの記事でまとめています。「ワクチン+検診」の両輪で、確実に自分の体を守っていきましょう。親子で接種したご家庭は、娘さんが20歳になった時点でクーポンを一緒に使って検診デビューすると、自然に受診習慣が根づきます。

よくある質問Q&A

Q 自分がキャッチアップ接種の対象かどうか、どうやって確認すればいいですか?

A.まずは生年月日を確認してください。1997年4月2日〜2008年4月1日生まれの女性(平成9年度〜19年度生まれ)が対象です。該当するかどうかの境界が微妙な場合や、過去の接種歴が不明な場合は、お住まいの市区町村の健康課・保健センターに電話すれば個別に確認してもらえます。自治体によっては対象者に案内を送付しているケースもあるため、「(市町村名) HPVワクチン キャッチアップ」で検索して公式ページをチェックするのも近道です。

Q 妊娠中や授乳中でもHPVワクチンは打てますか?

A.妊娠中の接種は原則として推奨されていません。妊娠していると気づかず接種してしまった場合も、胎児への悪影響が増えたという報告はありませんが、残りの接種は出産後に延期するのが一般的です。授乳中の接種は差し支えないとされていますが、安心して受けるために医師と相談の上で判断してください。

Q 過去に2価や4価を接種済みですが、9価に切り替えできますか?

A.原則として同じ種類のワクチンで3回完了するのが推奨ですが、やむを得ず途中から9価に切り替える「交差接種」も認められています。例えば2回目まで4価を接種し、3回目を9価に切り替えるケースです。既に2価または4価を3回完了した後、追加で9価を打ちたい場合は自費となり、医療機関で個別に相談してください。

Q 接種当日の入浴・飲酒は大丈夫ですか?

A.入浴は、接種部位をゴシゴシこすらなければ当日でも問題ありません。ただし、長風呂や激しい運動は避けて早めに休みましょう。飲酒については、アルコール自体はワクチンの効果に影響しませんが、副反応による体調変化と見分けがつきにくくなるため、接種当日は控えるのが安心です。

Q すでに性経験があるけれど、今からHPVワクチンを打つ意味はありますか?

A.はい、十分にあります。HPVには200種類以上の型があり、性経験があってもすべての型に感染している可能性は極めて低いです。感染していない型への予防効果は保たれるため、これまで複数のパートナーがいた方でもワクチンを打つ意味は十分あります。特に9価ワクチンはカバー範囲が広く、今後の感染予防に役立ちます。

Q HPV検査や子宮頸がん検診で異常が出た人でも接種できますか?

A.すでに子宮頸がんや高度異形成(CIN3)と診断されている場合も、ワクチン接種は可能です。感染していない型への予防効果や、治療後の再発リスク低下に寄与する可能性が報告されています。治療中・治療後の接種については、必ず主治医に相談の上で判断してください。

Q 接種後すぐに子宮頸がん検診を受けてもよいですか?

A.はい、接種と検診はそれぞれ独立した処置なので、タイミングを気にせず受けられます。20歳以上の方は、ワクチン接種と並行して2年に1回の子宮頸がん検診を継続してください。ワクチン接種で予防できない高リスク型もあるため、「ワクチンを打ったから検診は不要」という考え方は誤りです。

Q 3回の接種を途中でやめてしまった場合、最初からやり直しですか?

A.いいえ、最初からやり直す必要はありません。接種間隔が空いてしまっても、残りの回数を打ち切ればOKです。できるだけ早めに残りの接種を完了させましょう。ただし、キャッチアップ接種の期限内に3回完了できない場合は、途中から自費扱いになる可能性があるため、自治体の担当窓口に確認を。

まとめ|情報を正しく知って、自分の体を守る

HPVワクチンは、ニュースや噂で「怖いもの」というイメージがつきやすいワクチンです。でも、世界100か国以上で長期にわたって使われ続け、効果・安全性の両面で最も検証が進んだワクチンのひとつでもあります。子宮頸がんを「早期発見するがん」から「そもそも防ぐがん」にしつつあるのが、HPVワクチンが開いた新しい選択肢です。

大切なのは、ネットの断片的な情報ではなく、厚生労働省・WHO・学会など信頼できる情報源に基づいた事実を理解すること。そのうえで、自分や家族が対象世代なら、無料期間のうちに接種を検討してみてください。接種を迷っているときは、婦人科や小児科の医師に話を聞くだけでも大きな一歩になります。キャッチアップ接種の期限が迫っている方は、まずは1回目の予約を入れるところから始めてみませんか。

この記事のポイントまとめ
  • HPVワクチンは子宮頸がん・肛門がん・中咽頭がん・尖圭コンジローマなど幅広い病気を予防する
  • 日本では2価・4価・9価の3種類が承認済み。現在は9価(シルガード9)が主流
  • 小6〜高1相当の女子は定期接種で無料。2008年度までに生まれた女性もキャッチアップ接種の対象
  • キャッチアップ接種は原則2025年3月末、1回接種済みなら2026年3月末まで延長可能
  • 副反応の多くは接種部位の痛み・腫れで、数日以内に改善。まれな重い副反応は救済制度の対象
  • 男性も4価を自費接種可能。一部自治体では独自助成が始まっている
  • ワクチン接種後も20歳からは2年に1回の子宮頸がん検診を続けることが必須

この記事を書いた人

白石まい(助産師・フェムテックエキスパート)

産婦人科病院で13年間、助産師として延べ2,000件以上の分娩に立ち会う。生理・妊活・更年期など、女性のライフステージに寄り添った健康相談を得意とする。現在はフリーランス助産師として活動しながら、フェムテックエキスパートとして「女性が自分の体をもっと好きになれる社会」を目指してfemnoteで情報を発信中。

参考文献

  • 厚生労働省「HPVワクチンに関するQ&A」
  • 厚生労働省「ヒトパピローマウイルス感染症の定期接種(キャッチアップ接種含む)」
  • 日本産科婦人科学会「HPVワクチンについて」
  • 国立感染症研究所「ヒトパピローマウイルスワクチンに関するファクトシート」
  • Lei J, et al. HPV Vaccination and the Risk of Invasive Cervical Cancer. N Engl J Med. 2020;383:1340-1348.
  • World Health Organization. Global strategy to accelerate the elimination of cervical cancer.