「デリケートゾーンに小さなブツブツができている」「鶏のとさかみたいなイボが見つかって不安」——気になる隆起を見つけて、はじめて尖圭コンジローマ(せんけいコンジローマ)という病名を知った方も多いと思います。性感染症のなかでもとくに患者数が多く、近年は男女ともに増加傾向にある身近な病気です。
大切な前提として、尖圭コンジローマは決して恥ずかしい病気ではなく、正しく治療すれば多くの場合コントロールできる感染症です。一方で、自然に治るケースもある反面、放置すると数が増えたり、パートナーに感染を広げたりするリスクもあります。「気のせいかも」と先延ばしにせず、早めに正しい情報を得ることが回復への近道です。
この記事では、産婦人科で2,000件以上の分娩に立ち会ってきた助産師の立場から、尖圭コンジローマの基本知識・症状・感染経路・治療・予防までを、誤情報を排しながらやさしく解説します。読み終わるころには、「いま自分がどう動けばいいか」がはっきり見えてくるはずです。
尖圭コンジローマとは|HPVが原因の性感染症
まず、尖圭コンジローマがどんな病気なのかを正しく知るところから始めましょう。「コンジローマ」という言葉に独特の響きがあるため、必要以上に怖く感じてしまうかもしれませんが、医学的には対処法が確立した感染症のひとつです。
尖圭コンジローマの基本データ
尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papillomavirus)の感染によって、外陰部・膣・肛門周辺などに小さなイボ状の隆起ができる性感染症です。日本では年間およそ数万人が新規に診断されており、性感染症のなかでも淋菌・クラミジアと並んで頻度の高い疾患として知られています。
原因となるHPVには100種類以上の型(タイプ)があり、そのうち尖圭コンジローマを引き起こすのは主に「6型」と「11型」というローリスク型です。一方、子宮頸がんの原因として知られている「16型」「18型」はハイリスク型と呼ばれ、両者は同じHPVファミリーですが性質も病気の現れ方も異なります。
HPV(ヒトパピローマウイルス)との関係
HPVは性的接触のある人なら生涯で約8割が一度は感染するといわれるほど、ありふれたウイルスです。多くの場合は自覚症状なく自然に体外へ排出されますが、一部の人では感染が定着して、皮膚や粘膜にイボや異形成といった変化を引き起こします。
HPVは皮膚と皮膚、粘膜と粘膜の接触で簡単に伝播するため、コンドームを正しく使っていても完全には防ぎきれません。これが尖圭コンジローマが世界中で広く存在する理由です。
子宮頸がんとは原因ウイルスのタイプが違う
「コンジローマになると、子宮頸がんになるのでは?」と不安に感じる方も多いのですが、結論から言うと尖圭コンジローマの原因となるHPV6型・11型は子宮頸がんを引き起こす型ではありません。子宮頸がんと同じウイルスファミリーに属するというだけで、悪性化につながる型とは医学的に区別されます。
ただし、HPVには「複数の型に同時感染することもある」という性質があります。コンジローマを発症した人では、別のハイリスク型にも感染している可能性があるため、診断と並行して子宮頸がん検診を受けることが推奨されています。両者は別の病気ですが、検査の入り口としては重なる部分があるのです。
・子宮頸がん=HPV16型・18型などハイリスク型が主な原因
・別の病気だが、同じHPV感染なので両方を意識した検査が安心
尖圭コンジローマの症状|女性の初期症状とできる場所
尖圭コンジローマでもっとも気になるのが「どんな見た目のイボなのか」「自分のものがそうかもしれない」という点だと思います。女性の場合、できやすい場所と症状の進み方には一定のパターンがあります。
初期に現れる症状
初期は、1〜3mm程度の小さなピンク色〜肌色〜茶褐色の隆起として現れます。最初は1個だけ、あるいはニキビのような小さなブツブツに見えるため、「擦れただけかな」「埋没毛かな」と見過ごされやすいのが特徴です。
痛みやかゆみがほとんどない場合が多く、入浴時や下着の着脱でなんとなく違和感に気づいて発見するケースが多く見られます。
進行したときの見た目(鶏のとさか・カリフラワー状)
放置するとイボは少しずつ数が増え、また個々のイボも大きくなっていきます。
- 初期:1〜3mm前後の小さな粒々
- 中期:5mm前後のイボが複数に増える
- 進行期:イボ同士が癒合して「鶏のとさか状」「カリフラワー状」に塊化する
進行期になると、形状の特徴から見ただけで医師が診断できるほどわかりやすくなります。逆にいうと、初期の小さな段階では患者さん自身が他の皮膚トラブル(フォアダイス・脂漏性角化症・粉瘤など)と区別するのは難しいため、自己判断せず受診することが大切です。
女性でできやすい場所
女性のコンジローマは、外陰部周辺の複数の場所に同時に発生することがあります。代表的な発生部位は次のとおりです。
- 大陰唇・小陰唇:もっとも頻度が高い部位。下着で見えにくく、自分では気づきにくいことも多い
- 会陰部・肛門周辺:性的接触の経路に関わらずできることがある
- 膣口・膣内:外から見えないため婦人科の内診で発見されることが多い
- 子宮頸部:頻度は低いものの、子宮頸がん検診時に併発として見つかることがある
- 尿道口周辺:排尿時の違和感で気づくこともある
痛み・かゆみ・出血はあるのか
尖圭コンジローマは基本的に痛み・かゆみが弱いか、ほとんどないのが特徴です。これは早期発見を難しくする一因でもあります。ただし、次のような場合は症状を伴うことがあります。
- イボが大きくなり下着でこすれるようになると、痛みや出血が出ることがある
- 性交時にイボが刺激されて出血したり違和感が生じる
- 感染部位が炎症を起こしてかゆみが出る
- 肛門周辺にできた場合、排便時の刺激で出血や違和感が生じる
「症状が軽いから大丈夫」と判断せず、見た目の違和感だけでも受診のサインと捉えてください。
感染経路と潜伏期間|どうやってうつる?
「自分はどうしてかかったんだろう」「最近、特別なことはしていないのに」——感染経路に対する不安は、患者さんからもよくお聞きします。HPVは思っている以上に身近で、感染までのタイムラグも長いため、必ずしも直近の行動と結びつかないことがあります。
感染の9割以上は性的接触によるもの
尖圭コンジローマの感染経路は、ほとんどが性的接触(膣性交・肛門性交・口腔性交・粘膜同士の接触)です。HPVは皮膚と粘膜にいるウイルスなので、ペニスの挿入を伴わなくても、皮膚同士の接触だけで感染することがあります。
とくに、感染している人はイボが見えなくてもウイルスを保有していることがあるため、「相手にイボがなかったから安全」とはいえません。
性行為以外でうつる可能性は?
HPVは比較的環境抵抗性のあるウイルスのため、理論上はタオルの共用・浴室の床・温泉などからうつる可能性はゼロではないとされています。ただし、これらの「性行為以外の経路」での感染はきわめてまれと考えられており、臨床現場で実際に該当するケースはほとんどありません。
不安になる必要はありませんが、家族・パートナーとはタオルの使い回しを避け、入浴後はしっかり乾かす——この基本的な衛生習慣だけ意識しておけば十分です。
潜伏期間は3週間〜8か月と長い
HPVに感染してからイボが現れるまでの潜伏期間は、平均で3か月、短い人で3週間、長い人では8か月以上かかります。この潜伏期間の長さがコンジローマ特有の悩みを生みます。
- 「最近のパートナー」だけが感染源とは限らない
- 感染しても自覚症状がないため、知らないうちに広めてしまうことがある
- 一度治療しても、潜在しているウイルスが再活性化して再発することがある
つまり、誰が感染源かを特定することは医学的にもほぼ不可能です。「誰のせい」ではなく、「これからどう対処するか」に意識を切り替えることが、患者さん自身を守る最大のポイントになります。
検査と診断|何科を受診すればいい?
「どこに行けばいいかわからない」「内診が怖い」と受診をためらっているうちに症状が進行することは、よくあります。受診先と検査の流れを知っておくと、行動のハードルが大きく下がります。
受診すべき診療科(婦人科・皮膚科・性感染症内科)
女性の場合、もっとも適しているのは婦人科です。膣内・子宮頸部の確認も同時に行えるため、見落としが少なく済みます。性感染症外来や性感染症内科を標榜しているクリニックでも対応可能です。外陰部の表面だけが心配な場合は皮膚科でも診察できます。
- 婦人科:女性のコンジローマでもっとも一般的な受診先。膣内・子宮頸部の評価も含め包括的に診察可能
- 性感染症内科・性病科:同時に他の性感染症(クラミジア・淋菌・梅毒・HIVなど)も調べたい場合に便利
- 皮膚科:外陰部表面のイボのみが気になる場合や、肛門周辺のみの場合
- 泌尿器科:男性パートナーの場合の受診先
診察と検査の流れ
診察は次のような流れで進みます。所要時間はおおむね15〜30分です。
- 問診:症状に気づいた時期・性行為の有無・パートナーの状況などを確認
- 視診:外陰部・会陰部・肛門周辺のイボの形状・分布を確認。多くの場合、視診だけで臨床診断が可能
- 内診:膣内・子宮頸部にイボがないか、クスコ(膣鏡)で観察
- 組織検査(必要時):診断が難しい場合や、悪性の鑑別が必要な場合に小さな組織片を採取し顕微鏡で確認
- HPV-DNA検査・他の性感染症検査:必要に応じて併施
検査費用と保険適用
尖圭コンジローマの診断・治療は原則として健康保険が適用されます。3割負担の場合、初診の自己負担額はおおむね3,000〜6,000円程度。組織検査や同時に行う性感染症検査の項目数によって変動します。
「自費だと高そう」と心配される方も多いのですが、実際にはピル外来などより負担が軽いケースもあるため、費用面で受診をためらう必要はほぼありません。
治療法|外用薬・凍結療法・切除術
尖圭コンジローマの治療は、イボを物理的に取り除く方法と、外用薬で免疫反応を促してウイルスを抑える方法に大きく分かれます。どの治療を選ぶかは、イボの大きさ・数・部位・本人の希望を踏まえて医師と相談しながら決めます。
イミキモド(ベセルナクリーム)外用薬
もっとも代表的な薬物療法が、有効成分イミキモドを含む外用クリーム(商品名:ベセルナクリーム5%)です。患者さん自身が自宅でイボの部分に塗布する形で、週3回・就寝前に塗って朝に洗い流すというスケジュールで使用します。
イミキモドは皮膚の免疫反応を高めることでHPV感染細胞を排除する作用があります。最大16週間(約4か月)の継続が認められており、約半数の患者でイボが消失するというデータが報告されています。
- メリット:自宅で治療できる/傷あとが残りにくい/粘膜近くにも比較的使いやすい
- デメリット:治療期間が長い/赤み・ヒリヒリ感などの局所反応が出ることがある/妊娠中は使用できない
凍結療法(液体窒素)
液体窒素(マイナス196℃)でイボを瞬間的に凍結させて壊死させる方法です。婦人科・皮膚科のクリニックで一般的に行われている処置で、1〜2週間ごとに通院し、複数回繰り返して取り除きます。
- メリット:処置時間が短い(1回数分)/麻酔不要/費用が比較的安価
- デメリット:施術時にチクッとした痛みがある/水ぶくれ・色素沈着が一時的に残ることがある/大きなイボには適さない
電気焼灼・レーザー治療・切除術
イボが大きい・数が多い・他の治療で効果が不十分な場合は、外科的にイボを除去する選択肢があります。局所麻酔のうえで行うため痛みはコントロール可能です。
- 電気焼灼:高周波電流でイボを焼き取る方法
- 炭酸ガスレーザー:レーザーで蒸散させる方法。出血が少なく整容性が高い
- 切除術:大きなイボや密集している場合、メスで切除する方法
外科的処置は1回でイボを取りきれることが多い反面、ウイルスそのものを排除する治療ではないため、再発予防のために術後に外用薬を併用するケースもあります。
治療期間とよくある経過
治療期間は治療法とイボの数・大きさによって幅があります。一般的な目安は次のとおりです。
| 治療法 | 通院頻度 | 治療期間の目安 | 3割負担の費用感 |
|---|---|---|---|
| イミキモド外用 | 2〜4週ごと | 最長16週間 | 1か月3,000〜6,000円 |
| 凍結療法 | 1〜2週ごと | 1〜3か月 | 1回1,500〜3,000円 |
| 電気焼灼・レーザー | 必要時 | 1〜2回で完了することが多い | 1回5,000〜15,000円 |
| 切除術 | 必要時 | 1回で完了 | 5,000〜20,000円 |
「すぐ消える人」と「時間がかかる人」がいるのは、HPVが免疫の働きで排除されるまでの個人差によるものです。治療途中で「効果が出ていない」と感じても、自己判断で中止せず医師と相談しながら進めましょう。
自然治癒する?再発する?
「病院に行かずに様子を見ても大丈夫?」「治療が終わっても再発するの?」は、患者さんからもっとも多い質問のひとつです。自然経過と再発のデータを正しく理解しておきましょう。
自然治癒の可能性は約20〜30%
尖圭コンジローマは、免疫がウイルスを排除して1年以内に20〜30%程度の患者で自然に消失すると報告されています。一方で、残りの70%以上では症状が継続するか、徐々に悪化する経過をたどります。
自然治癒に期待して放置するリスクとしては次のような点が挙げられます。
- イボが拡大・増加してから治療すると、治療期間が長くなり費用も増える
- パートナーへの感染リスクが期間中ずっと続く
- 悪性病変との鑑別を行わないまま放置すると、ごくまれに別の疾患を見落とすことがある
「自然に治るかも」という期待は半分正しく、半分はリスクを伴います。原則は早期受診・早期治療がもっとも安全と覚えておいてください。
再発率は3か月以内で約25%
残念ながら、尖圭コンジローマは再発しやすい疾患です。治療終了後3か月以内に約25%の患者で再発するという報告があり、半年以内では再発率はさらに上がります。再発の理由は、治療で目に見えるイボを除去しても、ウイルス自体が周囲の皮膚に潜んでいるためです。
そのため、治療後も3か月後・6か月後の経過観察を医師から指示されることが一般的です。経過観察を完走することで、新しいイボを早期に見つけてすぐに対処でき、結果として再発の影響を最小限に抑えられます。
再発を防ぐためにできること
- 治療終了後も指示された経過観察を必ず受ける
- 免疫力を下げる生活習慣(睡眠不足・過度なストレス・喫煙)を見直す
- パートナーも同時に検査・治療を受ける
- HPVワクチンを未接種の場合は接種を検討する(後述)
- 気になる隆起ができたらすぐに受診する
パートナーへの感染を防ぐために
尖圭コンジローマで悩むのは、自分の症状だけでなくパートナーへの伝え方も大きな課題になります。性感染症全般にいえることですが、二人の関係を守るためには「正しい情報」と「責めない対話」がカギになります。
パートナーへの感染リスク
HPVは粘膜と粘膜の接触で感染するため、性的接触のあるパートナーには感染している(あるいはこれからする)可能性が常にあります。ただし、感染しても発症するかどうかは個人の免疫状態によるため、パートナーが必ずしも症状を発症するとは限りません。
男性のコンジローマは陰茎・陰のう・肛門周辺にできることが多く、女性同様に痛みが少ないため気づかれにくい傾向があります。
コンドームの予防効果
コンドームは尖圭コンジローマに対して感染リスクを下げる効果はあるものの、完全には防げません。これは、HPVが粘膜だけでなくコンドームでカバーできない外陰部・陰のう・会陰部などの皮膚にも存在するためです。
とはいえ、コンドームを使うことで感染確率を下げられることは確かなので、治療中・経過観察中は必ず使用しましょう。完全に予防できない代わりに、コンドームは他の性感染症(クラミジア・淋菌・HIVなど)の予防にも有効です。
パートナーも一緒に検査・治療を受ける
カップルでの治療は、感染症対策の基本です。片方だけが治療しても、パートナーが未治療のままだと「ピンポン感染」が起きて再発を繰り返してしまいます。次の点を意識してください。
- パートナーに症状がなくても、視診・問診を受けるよう伝える
- 男性なら泌尿器科・性感染症内科を案内する
- 互いに治療が完了するまでは性行為を控えるか、必ずコンドームを使用する
- 感染源を特定しようとするより、これからの予防に意識を向ける
——「責める」「謝らせる」より、事実を共有して協力を求める伝え方が、関係を壊さずに乗り越えるコツです。
尖圭コンジローマと妊娠・出産への影響
「妊娠中に診断されたらどうなる?」「赤ちゃんに影響は?」——妊娠と性感染症が重なると不安は何倍にもなります。尖圭コンジローマと妊娠出産の関係は、知っておくと過剰な恐れを避けられます。
妊娠中に感染した場合のリスク
妊娠中はホルモン環境と免疫の変化により、もともと感染していたHPVが活性化してイボが急速に増大することがあります。妊娠後期になるほどイボが大きくなりやすく、産道の閉塞や出血リスクが問題になることもあります。
妊娠中の治療では、安全性が確認されている方法(凍結療法・レーザー・切除術)を中心に、産婦人科医と相談しながら選択します。イミキモド外用は妊娠中の使用が推奨されておらず、原則として処方されません。
出産時に新生児へ感染する可能性
母体にコンジローマがある状態で経膣分娩を行うと、まれに新生児が産道でHPVに感染し、新生児喉頭乳頭腫症(声帯にイボができる病気)を発症することがあります。発症率は0.04〜0.7%と非常に低いとされていますが、ゼロではありません。
そのため、出産時にイボが大きく残っている場合は、医師の判断で帝王切開が選択されることがあります。妊娠初期〜中期にコンジローマが見つかった段階で計画的に治療を行えば、経膣分娩を維持できるケースが多いため、早めの相談が大切です。
治療のタイミング
妊娠中に発症・診断された場合のおおまかな流れは次のとおりです。
- 妊娠初期(〜15週):胎児への影響が最小限となる時期に、必要に応じて凍結療法やレーザー治療を行う
- 妊娠中期(16〜27週):イボの状態を確認しながら、必要なら治療を継続
- 妊娠後期(28週〜):分娩方法(経膣 or 帝王切開)を医師と相談して決定
- 産後:産後の経過を見て、必要なら通常の治療プロトコルへ移行
予防|HPVワクチンとコンドーム
尖圭コンジローマは「治療すれば終わり」の病気ではなく、予防まで含めて考えることで初めて健康がコントロールできます。とくにHPVワクチンの恩恵は大きく、できるだけ若い世代に正しい情報が届くことを願っています。
9価HPVワクチン(シルガード9)の予防効果
HPV9価ワクチン(シルガード9)は、尖圭コンジローマの原因となるHPV6型・11型をカバーしており、約90%の予防効果が報告されています。同時に、子宮頸がんの主な原因であるHPV16型・18型・31型・33型・45型・52型・58型もカバーしているため、子宮頸がんの予防にもつながります。
日本では2013年に定期接種化されましたが、副反応報告を巡る一時的な積極的勧奨の差し控えがありました。2022年4月から積極的勧奨が再開され、対象年齢の女性は無料で接種できます。また、勧奨差し控え期間に対象だった方を救済する「キャッチアップ接種」も実施されています。
定期接種・キャッチアップ接種の対象
- 定期接種:小学校6年生〜高校1年生相当(公費・無料)
- キャッチアップ接種:1997年4月2日〜2008年4月1日生まれの女性で、定期接種の機会を逃した方(公費)
- 任意接種:上記対象外の女性(自費。1回約3万円×3回など)
キャッチアップ接種の期限はその時点での厚生労働省の発表に従いますので、最新情報は自治体・かかりつけ医に確認してください。
コンドーム使用と定期検診
HPVワクチン未接種の方や、ワクチン接種前にすでに感染している可能性がある方にとっては、次の3つが日常の予防策になります。
- 性行為時はコンドームを正しく使用する(完全予防はできないが感染リスクを下げる)
- 20歳以上の女性は2年に1回の子宮頸がん検診を受ける
- 外陰部に違和感(小さな隆起・色の変化など)があったら早めに婦人科を受診
よくある質問
Q 尖圭コンジローマは恥ずかしい病気ですか?
A.恥ずかしい病気ではありません。HPVは性的接触のある人なら一生のうち約8割が感染するといわれるありふれたウイルスです。「経験人数が多いから」「不潔だから」かかるという誤解がありますが、医学的根拠はありません。誰がかかってもおかしくない病気だと知っておくことが、まずは前向きな一歩になります。
Q お風呂やトイレ、温泉でうつりますか?
A.理論上の可能性はゼロではありませんが、実際の臨床現場では「お風呂・トイレ・温泉でうつった」と確実に証明できる事例はほぼありません。HPVは性的接触で感染するのが大半です。家族内の感染が心配な場合は、タオルを共有しないなどの基本的な衛生習慣だけ守れば十分です。
Q 自分でできるしこりやイボが、尖圭コンジローマか他の病気か区別できますか?
A.自己判断は難しいです。デリケートゾーンには、フォアダイス(皮脂腺)・脂漏性角化症・粉瘤・毛嚢炎・伝染性軟属腫(水いぼ)など、見た目が似た良性のできものがいくつもあります。鑑別には医師の視診や、場合によっては組織検査が必要です。「気になる隆起がある」段階で受診するのがいちばん安全です。
Q 尖圭コンジローマは完治できますか?
A.「目に見えるイボを取り除く」という意味では多くの方が治療によって改善します。ただし、HPV自体を体から完全に排除する治療法は現時点ではなく、ウイルスは免疫の働きでゆっくり減っていく形になります。そのため再発する可能性があり、医師の指示する経過観察を完走することが「実質的な治癒」につながります。
Q 治療中はお酒・運動・性行為など、生活で制限はありますか?
A.飲酒や運動そのものに大きな制限はありません。ただし、外用薬の塗布部位を強く擦る運動や、患部に負担がかかる長時間の自転車などは控えたほうが無難です。性行為についてはイボの治癒・経過観察期間中は控えるか、必ずコンドームを使用してください。パートナーへの感染リスクと再発リスクの両方を下げる意味があります。
Q HPVワクチンを大人になってから打っても意味はありますか?
A.初回性交渉前の接種が最大の効果ですが、性経験のある成人であっても、まだ感染していない型への予防効果が期待できるため、医学的にメリットがあります。日本でも45歳までの女性への接種が選択肢として案内されることがあります。すでにコンジローマを発症している方も、別の型への予防のために接種を検討する価値があるため、主治医と相談してください。
Q パートナーに感染を伝えるのが怖いです。伝えなくてもいいでしょうか?
A.伝えるのは勇気がいることですが、医療上はパートナーにも検査・治療を受けてもらうことが「ピンポン感染による再発」を防ぐうえで重要です。「責める」のではなく「一緒に治そう」というスタンスで、HPVは性的接触のある人なら誰でもかかる可能性があるという事実を共有してみてください。どうしても自分から切り出せない場合は、医療機関で相談すれば伝え方のアドバイスをもらえることもあります。
まとめ|尖圭コンジローマは早期発見・早期治療と予防の両輪で向き合う
尖圭コンジローマは、HPVが原因のありふれた性感染症で、決して特別な人だけがかかる病気ではありません。ローリスク型のHPV6型・11型が主な原因で、子宮頸がんを起こす型とは医学的に区別されますが、検査の流れでは両者を意識した受診が安心です。
- 尖圭コンジローマはHPV6型・11型による性感染症。子宮頸がんと原因ウイルスのタイプが違う
- 女性は外陰部・小陰唇・大陰唇・膣口・肛門周辺にできやすく、初期は1〜3mmの小さな隆起として現れる
- 感染経路は性的接触が9割以上、潜伏期間は3週間〜8か月と長い
- 受診は婦人科・性感染症内科・皮膚科。視診中心で診断され、保険適用の治療が受けられる
- 治療はイミキモド外用・凍結療法・レーザー・切除など。複数の選択肢から症状に合わせて選ぶ
- 自然治癒の可能性は20〜30%だが、放置はパートナーへの感染拡大・症状悪化のリスクがある
- 再発率は3か月で約25%。経過観察を完走することが実質的な治癒につながる
- HPV9価ワクチン(シルガード9)はコンジローマと子宮頸がんの両方の予防に有効
- パートナーには「責める」より「一緒に治す」スタンスで伝え、同時に受診・治療を進める
気になる隆起やしこりを見つけたとき、不安と恥ずかしさで受診をためらってしまう方は少なくありません。ですが、コンジローマはありふれた病気で、医療現場ではまったく特別なケースとして扱われません。早く受診すればするほど治療の選択肢が広がり、心身の負担も軽くなります。一人で抱え込まず、信頼できる婦人科のドアを叩いてみてくださいね。
参考文献
- 日本性感染症学会「性感染症 診断・治療ガイドライン2020」
- 厚生労働省「性感染症報告数」「ヒトパピローマウイルス感染症(子宮頸がん予防ワクチン)」
- 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編」
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